夢李白二首 其一 <230-#1>杜甫詩kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1118 杜甫特集700- 337

華州から秦州への旅の途中、杜甫は李白の夢を三晩もつづけて李白の夢を見た。それで、李白は死んでしまって魂魄が飛んできて夢に現われたのではないかと疑ったのだ。夢の中で李白は「もう帰る」といいながら落ち着きがなく、「来たること易からず 江湖 風波多し 舟楫 恐らくは失墜せん」と不吉なことを言うのである。
 夢の中の李白に、いつもの傲然としたところがなく、しょぼい白髪頭を掻いている。「まさかとは思うが、あなたほどの人が老境になって罰せられ、死後に名を残すようなことになるのだろうか」と、杜甫は李白の死を心配している。
759年乾元二年7月48歳秦州に向かう道中で書いたもの。


夢李白  二首 其一    杜甫
李白を夢で見る。
#1

死別已吞聲、 生別常惻惻。  
李白は死罪を宣告され、夢ではすでに処刑という死別に声をのんで泣き別れをしているが、もしかしたら生きているかもしれないが、かつて魯郡の石門山で生き別れをして以来、いつも悲しみの心を動かしている。
江南瘴癘地、 逐客無消息。』
李白は長いこと居た江南は毒気の多い土地だ、都を追われて旅客となった李白からどうしたわけか全く便りが無いのである。』
故人入我夢、 明我長相憶。
ところが一夜彼はわが夢のなかにはいってきた。これはわたしが長い間いつもいつも李白をおもっていることを彼ははっきり心得ているからであろう。
恐非平生魂、 路遠不可測。」
さて李白の様子をみるとなんだかふだん在世のたましいではないような気がしてならない、死魂がきたのではないかと心配する。非常に遠路なのに夢であれこんなところまで来るとはどうしたわけかはかり知ることができないのだ。
#2
魂來楓林青、 魂返關塞黑。』
君今在羅網、 何以有羽翼。
落月滿屋樑、 猶疑照顏色。
水深波浪闊、 無使蛟龍得。』

#1
死別 已に聲を吞むも、生別 常に惻惻たり。
江南は瘴癘【しょうれい】の地、逐客【ちくかく】消息無し。
故人【こじん】我が夢に入り、我が長く相憶うを明らかにす。
恐らくは平生【へいぜい】の魂に非じ、路遠くして測る可からず。

#2
魂 來たるとき 楓林【ふうりん】青く、魂返るとき 關塞【かんさい】黑し。
君は今 羅網【らもう】に在り、何を以て 羽翼【うよく】有るや。
落月 屋樑【おくりょう】に滿つ、猶 疑う顏色を照らすかと。
水深くして波浪【はろう】闊【ひろ】し、蚊竜【こうりょう】をして得しむること無れ。』


現代語訳と訳註
(本文)
夢李白  二首 其一  #1
死別已吞聲、 生別常惻惻。  
江南瘴癘地、 逐客無消息。』
故人入我夢、 明我長相憶。
恐非平生魂、 路遠不可測。」


(下し文) #1
死別 已に聲を吞むも、生別 常に惻惻たり。
江南は瘴癘【しょうれい】の地、逐客【ちくかく】消息無し。
故人【こじん】我が夢に入り、我が長く相憶うを明らかにす。
恐らくは平生【へいぜい】の魂に非じ、路遠くして測る可からず。


(現代語訳)
李白を夢で見る。
李白は死罪を宣告され、夢ではすでに処刑という死別に声をのんで泣き別れをしているが、もしかしたら生きているかもしれないが、かつて魯郡の石門山で生き別れをして以来、いつも悲しみの心を動かしている。
李白は長いこと居た江南は毒気の多い土地だ、都を追われて旅客となった李白からどうしたわけか全く便りが無いのである。』
ところが一夜彼はわが夢のなかにはいってきた。これはわたしが長い間いつもいつも李白をおもっていることを彼ははっきり心得ているからであろう。
さて李白の様子をみるとなんだかふだん在世のたましいではないような気がしてならない、死魂がきたのではないかと心配する。非常に遠路なのに夢であれこんなところまで来るとはどうしたわけかはかり知ることができないのだ。


(訳注)#1
夢李白
李白を夢で見る。
 杜甫と李白は745年魯郡の石門山で別れて以来、会っていない。その李白が安史の乱・永王李璘の水軍に入り、て生死不明と聞き、杜甫は李白の夢を見たことで、この詩を作った。李白の情報は、757年2月永王璘敗れ、李白彭澤に逃げ、秋に長安・洛陽、奪回、李白が捕えられ、粛宗、玄宗長安に帰る。李白は潯陽の獄に捕えられる。758年李白は死罪という情報を杜甫は華州で知る。杜甫が華州から秦州へ旅立つ758年7月段階では、いつ処刑されるかわからないが、おそらく近々施されるという段階であった。
758年8月、死罪を言い渡される直前に長安奪還の功労者郭子儀の助言で、夜郎に流刑となった。しかしこの詩の段階では知る由もない。


死別已吞聲、生別常惻惻。  
李白は死罪を宣告され、夢ではすでに処刑という死別に声をのんで泣き別れをしているが、もしかしたら生きているかもしれないが、かつて魯郡の石門山で生き別れをして以来、いつも悲しみの心を動かしている。
死別己春声 此の句については諸説があるが、①死別は745年李白と魯郡の石門山で別れて別れたとき死別だとおもった、己とは往時をさす語である。②およそ死別というものは哀しいもの、生別れもそれに劣らず常に忘れることなく心を痛めるもの。というものである。③ここでは死刑宣告を受けたものとして夢に出ている。杜甫自身、官僚になったものの、天子の良き助言者となり得なく夢破れている。李白も朝廷を追われ、永王璘軍に於けるという軍師としての夢が破れている。互いに将来に対する希望がないという意味で捉えることである。○生別 現在なお存在して別離していることをいう。○側側 心のいたむさま。


江南瘴癘地、逐客無消息。
李白は長いこと居た江南は毒気の多い土地だ、都を追われて旅客となった李白からどうしたわけか全く便りが無いのである。』
江南 長江の下流域の南、宜城、秋浦、天台山、会稽、白の居た地。○瘴癘 わるい水蒸気。マラリアの発症率が高い湿気の多い所。当時は、蚊が媒体するのではなく毒ガスがマラリアの病原と考えられていた。○逐客 朝廷からおいだされたもの、李白をさす、李白は永王璘の挙兵に関係した罪により759年8月乾元2年に夜郎に流され、二年に途中より赦されてもどった。詩は赦されたことをしらない、以前のもののため逐客という。○消息 たより。


故人入我夢、 明我長相憶。
ところが一夜彼はわが夢のなかにはいってきた。これはわたしが長い間いつもいつも李白をおもっていることを彼ははっきり心得ているからであろう。
○故人 ふるなじみ。李白をさす。○ 李白が明らかに知ること、句意は明知しているために夢にあらわれたというのである。○長相憶 いつまでも思う。


恐非平生魂、 路遠不可測。」
さて李白の様子をみるとなんだかふだん在世のたましいではないような気がしてならない、死魂がきたのではないかと心配する。非常に遠路なのに夢であれこんなところまで来るとはどうしたわけかはかり知ることができないのだ。
平生魂 ふだんのたましい、ふだんとは在世のことをいう。○不可測 なぜ遠路を来たのかそのわけがはかり知られぬ。