夢李白二首 其一 <230-#2>杜甫詩kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1121 杜甫特集700- 338



夢李白  二首 其一    杜甫
李白を夢で見る。
#1
死別已吞聲、 生別常惻惻。  
李白は死罪を宣告され、夢ではすでに処刑という死別に声をのんで泣き別れをしているが、もしかしたら生きているかもしれないが、かつて魯郡の石門山で生き別れをして以来、いつも悲しみの心を動かしている。
江南瘴癘地、 逐客無消息。』
李白は長いこと居た江南は毒気の多い土地だ、都を追われて旅客となった李白からどうしたわけか全く便りが無いのである。』
故人入我夢、 明我長相憶。
ところが一夜彼はわが夢のなかにはいってきた。これはわたしが長い間いつもいつも李白をおもっていることを彼ははっきり心得ているからであろう。
恐非平生魂、 路遠不可測。」

さて李白の様子をみるとなんだかふだん在世のたましいではないような気がしてならない、死魂がきたのではないかと心配する。非常に遠路なのに夢であれこんなところまで来るとはどうしたわけかはかり知ることができないのだ。


#2
魂來楓林青、 魂返關塞黑。』
李白の魂は楓林の青くぼんやりとしたところからここへとやって来たのであろう。こんどは魂が帰っていくのは関所や塞の夜の黒闇に向かっていったのである。
君今在羅網、 何以有羽翼。
君は今、罪人で網檻のなかにはいっているはずではないか、どうして羽の翼があってここへとんでくることができたのだろうが、(もしかしたら処刑されたのだろうか。)』
落月滿屋樑、 猶疑照顏色。
わたしは寝室で横になったまま明け方落ちかかる満月の光が梁の木を明るく照らすのを見続ける、その光はまだ李白の顔を照らしているのか疑われるのである。
水深波浪闊、 無使蛟龍得。』
南方江湖の水が深く、波浪を起こし、広くひろがっていくから、蛟竜に良いように為され、それに害せられないようにしないといけないのだ。』

#1
死別 已に聲を吞むも、生別 常に惻惻たり。
江南は瘴癘【しょうれい】の地、逐客【ちくかく】消息無し。
故人【こじん】我が夢に入り、我が長く相憶うを明らかにす。
恐らくは平生【へいぜい】の魂に非じ、路遠くして測る可からず。
#2
魂 來たるとき 楓林【ふうりん】青く、魂返るとき 關塞【かんさい】黑し。
君は今 羅網【らもう】に在り、何を以て 羽翼【うよく】有るや。
落月 屋樑【おくりょう】に滿つ、猶 疑う顏色を照らすかと。
水深くして波浪【はろう】闊【ひろ】し、蚊竜【こうりょう】をして得しむること無れ。』


現代語訳と訳註
(本文)
#2
魂來楓林青、 魂返關塞黑。』
君今在羅網、 何以有羽翼。
落月滿屋樑、 猶疑照顏色。
水深波浪闊、 無使蛟龍得。』


(下し文) #2
魂 來たるとき 楓林【ふうりん】青く、魂返るとき 關塞【かんさい】黑し。
君は今 羅網【らもう】に在り、何を以て 羽翼【うよく】有るや。
落月 屋樑【おくりょう】に滿つ、猶 疑う顏色を照らすかと。
水深くして波浪【はろう】闊【ひろ】し、蚊竜【こうりょう】をして得しむること無れ。』


(現代語訳)
李白の魂は楓林の青くぼんやりとしたところからここへとやって来たのであろう。こんどは魂が帰っていくのは関所や塞の夜の黒闇に向かっていったのである。
君は今、罪人で網檻のなかにはいっているはずではないか、どうして羽の翼があってここへとんでくることができたのだろうが、(もしかしたら処刑されたのだろうか。)』
わたしは寝室で横になったまま明け方落ちかかる満月の光が梁の木を明るく照らすのを見続ける、その光はまだ李白の顔を照らしているのか疑われるのである。
南方江湖の水が深く、波浪を起こし、広くひろがっていくから、蛟竜に良いように為され、それに害せられないようにしないといけないのだ。』


(訳注)
魂來楓林青、 魂返關塞黑

李白の魂は楓林の青くぼんやりとしたところからここへとやって来たのであろう。こんどは魂が帰っていくのは関所や塞の夜の黒闇に向かっていったのである。
魂来 李白の魂が杜甫の居る所へくる。○楓林青 楓林は江南の名木、江南地方の物であるが青は夜の霞でぼんやりとはっきり見えない状況をいう遠近法である。○魂返 李白の魂が江南の楓林なのか、獄舎なのかわからないが、かえること言う。○関塞 関所、塞、獄舎など即ち官舎などの物である。○ 遠近法で暗い闇の状態の中に「関所・塞」がみえないほどのなかにあることをいう、夜の色のこと。靑は生まれてくる色、初めの色であり、黒は終わりの色、透明の色、亡くなる色として使っている。


君今在羅網、 何以有羽翼。
君は今、罪人で網檻のなかにはいっているはずではないか、どうして羽の翼があってここへとんでくることができたのだろうが、(もしかしたら処刑されたのだろうか。)』
君今在羅網、何以有羽巽 君は李白をさし、羅網は罪禍のあみのこと監獄、罪人は鳥が網の中へ入れられているように拘束されている。自分の夢に出てきたということは、もしかして処刑されて、魂だけが、ここへ来たのだろうか。
靑は生まれてくる色、初めの色であり、黒は終わりの色、透明の色、亡くなる色として使っている。


落月滿屋樑、 猶疑照顏色。
わたしは寝室で横になったまま明け方落ちかかる満月の光が梁の木を明るく照らすのを見続ける、その光はまだ李白の顔を照らしているのか疑われるのである。
落月 落ちかかる月の光。○屋梁 やねのはりの木。寝た状態で見るときの表現法である。寝ているのか起きているのかわからない状態をいう写実的な表現法である。○猶疑 猶とは夢のさめたのちまだの意。○顔色 李白のかおつき。


水深波浪闊、 無使蛟龍得。」
南方江湖の水が深く、波浪を起こし、広くひろがっていくから、蛟竜に良いように為され、それに害せられないようにしないといけないのだ。』
水深 水は南方の江湖の水をいう。〇蛟龍 人を害するみずち。○ 得意、好き勝手にされる、せしめることをいう。


夢李白
 杜甫と李白は745年魯郡の石門山で別れて以来、会っていない。その李白が安史の乱・永王李璘の水軍に入り、て生死不明と聞き、杜甫は李白の夢を見たことで、この詩を作った。李白の情報は、757年2月永王璘敗れ、李白彭澤に逃げ、秋に長安・洛陽、奪回、李白が捕えられ、粛宗、玄宗長安に帰る。李白は潯陽の獄に捕えられる。758年李白は死罪という情報を杜甫は華州で知る。杜甫が華州から秦州へ旅立つ758年7月段階では、いつ処刑されるかわからないが、おそらく近々施されるという段階であった。
758年8月、死罪を言い渡される直前に長安奪還の功労者郭子儀の助言で、夜郎に流刑となった。しかしこの詩の段階では知る由もない。

夢李白  二首 其一    杜甫
死別已吞聲、 生別常惻惻。  死別 已に聲を吞むも、生別 常に惻惻たり。
江南瘴癘地、 逐客無消息。江南は瘴癘【しょうれい】の地、逐客【ちくかく】消息無し。
故人入我夢、 明我長相憶。故人【こじん】我が夢に入り、我が長く相憶うを明らかにす。
恐非平生魂、 路遠不可測。恐らくは平生【へいぜい】の魂に非じ、路遠くして測る可からず。
魂來楓林青、 魂返關塞黑。魂 來たるとき 楓林【ふうりん】青く、魂返るとき 關塞【かんさい】黑し。
君今在羅網、 何以有羽翼。君は今 羅網【らもう】に在り、何を以て 羽翼【うよく】有るや。
落月滿屋樑、 猶疑照顏色。落月 屋樑【おくりょう】に滿つ、猶 疑う顏色を照らすかと。
水深波浪闊、 無使蛟龍得。水深くして波浪【はろう】闊【ひろ】し、蚊竜【こうりょう】をして得しむること無れ。』