遣興五首其四 杜甫 <249>遣興22首の⑱番 kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1196 杜甫特集700- 363


(権力者、富貴者の一時の暴威も、忽ち猛虎の縛につけられ敷物になるが、それより悲惨な末路であることをいう。)
其四
猛虎憑其威,往往遭急縛。
獰猛な虎はその威嚇をよりどころにしているが、それが往往にして急にしばられるようなことに遭遇する。
雷吼徒咆哮,枝撐已在腳。
拘束されれば、そこで雷のごとくにはえたててもいたずらに吼えるだけである、機で組み合わせた檻の中ですでに足かせをされているのである。
忽看皮寢處,無複睛閃爍。
その後たちまちにして、その皮は敷物にされてしまうのを看る、そして威嚇していたひとみもきらめきかがやくことはなくなってしまう。
人有甚於斯,足以勸元惡。
人間の場合はこの猛虎よりはなはだしく悲惨なことがある、このことは富貴の人たちよ世間の大悪をやれる限りやることを進めるが充分悲惨な末路となるに足るであろう。

猛虎 其の威に憑り、往往にして急縛に遭ふ。
雷吼 徒らに咆哮するも、枝撐 已に脚に在り。
忽ち看る 皮の寝処にあるを、復た晴の閃煉たる無し。
人 斯よりも甚しき有り、以て元悪を勧むるに足る。


現代語訳と訳註
(本文)其四

猛虎憑其威,往往遭急縛。
雷吼徒咆哮,枝撐已在腳。
忽看皮寢處,無複睛閃爍。
人有甚於斯,足以勸元惡。


(下し文)
猛虎 其の威に憑り、往往にして急縛に遭ふ。
雷吼 徒らに咆哮するも、枝撐 已に脚に在り。
忽ち看る 皮の寝処にあるを、復た晴の閃煉たる無し。
人 斯よりも甚しき有り、以て元悪を勧むるに足る。


(現代語訳)
獰猛な虎はその威嚇をよりどころにしているが、それが往往にして急にしばられるようなことに遭遇する。
拘束されれば、そこで雷のごとくにはえたててもいたずらに吼えるだけである、機で組み合わせた檻の中ですでに足かせをされているのである。
その後たちまちにして、その皮は敷物にされてしまうのを看る、そして威嚇していたひとみもきらめきかがやくことはなくなってしまう。
人間の場合はこの猛虎よりはなはだしく悲惨なことがある、このことは富貴の人たちよ世間の大悪をやれる限りやることを進めるが充分悲惨な末路となるに足るであろう。


(訳注)
其四
猛虎憑其威,往往遭急縛。

獰猛な虎はその威嚇をよりどころにしているが、それが往往にして急にしばられるようなことに遭遇する。
 よる。○急縛 にわかにしばること。


雷吼徒咆哮,枝撐已在腳。
拘束されれば、そこで雷のごとくにはえたててもいたずらに吼えるだけである、機で組み合わせた檻の中ですでに足かせをされているのである。
雷吼 雷のごとくほえる。○咆哮 はえたてる。○枝撐  枝で組み合わせた折をつくること。木の根を組み合わせた足枷をいう、撐は材木をくみあわせること。杜甫『同諸公登慈恩寺墖』(慈恩寺の塔に登る」「方知象教力,足可追冥搜。仰穿龍蛇窟,始出枝撐幽。」(方に知る象教の力 冥捜を追うべきに足るを。仰いで穿つ竜蛇の窟 始めて甘づ枝撐の幽なるを。)つかえ柱、枝撐はつかえ柱をくむことで、ここでは道路の橋の骨組みの意味である。。


忽看皮寢處,無複睛閃爍。
その後たちまちにして、その皮は敷物にされてしまうのを看る、そして威嚇していたひとみもきらめきかがやくことはなくなってしまう。
皮寝処 『左伝、㐮公二十一年』「臣食其肉、而寝処其皮。」(臣は其の肉を食いて、而して其の皮に寝処す」とあるのに本づく、寝処はねおきする。起臥すること、その上にねたり、すわったりすること。○ ひとみ。○閃爍 きらめきかがやく。


人有甚於斯,足以勸元惡。
人間の場合はこの猛虎よりはなはだしく悲惨なことがある、このことは富貴の人たちよ世間の大悪をやれる限りやることを進めるが充分悲惨な末路となるに足るであろう。
 猛虎の場合をさす。○ 勧善懲悪をいう。楊貴妃一族が、安禄山が、富豪がその財力、権力で好き勝手なこと、極悪な事はかならず猛虎なら敷物になって役立つが人の場合には凄惨な、悲惨な末路を迎えるものであり、大悪を「勧」と勧めるということで、意味を強調している。○元悪 大悪。惡が栄えてためしがないということに基づく。