西枝村尋置草堂地,夜宿贊公土室二首 其一 杜甫 <282-#2> kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1301 杜甫詩 700- 398



(西枝村に草堂を置く地を尋ね、夜賛公が土室に宿す 二首)
秦州の近郊にある西枝村というところで、自分の草屋を設けるための地面をたずねて夜になり、賛公の穴居の室にとまったことをのべた詩である。759年乾元二年の秋冬の交の作。杜佐のいる東桐谷に居を定めた以後のことである。


乾元2年 759年 48歳
西枝村尋置草堂地,夜宿贊公土室二首 其一
出郭眄細岑,披榛得微路。溪行一流水,曲折方屢渡。
贊公湯休徒,好靜心跡素。昨枉霞上作,盛論岩中趣。』
怡然共攜手,恣意同遠步。捫蘿澀先登,陟巘眩反顧。
要求陽岡暖,苦涉陰嶺冱。惆悵老大藤,沈吟屈蟠樹。』
卜居意未展,杖策回旦暮。層巔餘落日,早蔓已多露。』


西枝村尋置草堂地夜宿賛公土室二首 其二
天寒鳥已帰、月出山更静。土室延白光、松門耿疎影。
躋攀倦日短、語楽寄夜永。明然林中薪、暗汲石底井。』
大師京国旧、徳業天機秉。従来支許遊、興趣江湖迥。
数奇謫関塞、道広存箕潁。何知戎馬間、復接塵事屏。』
幽尋豈一路、遠色有諸嶺。晨光稍朦朧、更越西南頂。』



西枝村尋置草堂地,夜宿贊公土室二首 其一
(秦州の近郊の西枝村に草堂にふさわしい場所を尋ねる、夜になって賛公先生の窰洞居室に泊まる。二首)
#1
出郭眄細岑,披榛得微路。
秦州の城郭を出て小さな峯を横にして歩き見ながら、榛のやぶをかきわけすすみつつ、山の中腹に向かう小路をみつけてすすむ。
溪行一流水,曲折方屢渡。
渓谷にそってゆくと一すじの水の流れがあるが、それが折れ曲がっているのでたびたびそれを渡ることになる。
贊公湯休徒,好靜心跡素。
私と賛公先生といえばは昔で謂うと湯恵休と友人であった鮑照のようなものである、閑静を好んで心も行いも生地のままのお方である。
昨枉霞上作,盛論岩中趣。』

昨日先生から「霞上作」の詩篇を頂いたが、中に盛んに巌石の境地のおもむきが論じてあった。』
(西枝村に草堂を置く地を尋ね、夜賛公が土室に宿す 二首 其の一)#1
郭を出でて細岑【さいしん】を眄【み】る、榛【しん】を披【ひら】きて微路【びろ】を得。
渓行【けいこう】すれば一流水、曲折【きょくせつ】方【まさ】に屡【しばし】ば渡る。
賛公は湯休【とうきゅう】の徒、静を好みて心跡【しんせき】素なり。
昨 霞上【かじょう】の作を枉【ま】ぐ、盛りに巌中【がんちゅう】の趣を論ぜり。』

#2
怡然共攜手,恣意同遠步。
今日はこのあたりを手をたずさえて案内してもらい楽しむことができた、わたしの思い通りしてもらいあちこち同じように遠くまで歩んでくれたのである。
捫蘿澀先登,陟巘眩反顧。
姫かずらにつかまっておりたり、あるいは先だちになって登ることに尻ごみをした。或いは丸みをおびた峰に上って後を振り返ってみると目がくらんだりした。
要求陽岡暖,苦涉陰嶺冱。
私が求める場所というのは陽当たりのいい岡がいいとおもっているが、北向きの峰の凍るような冷たさを難儀しながらわたっていった。
惆悵老大藤,沈吟屈蟠樹。』
また、老木であろうか大きい藤のところで恨めしく歎いたりしているし、根株のかがみおれまがり、複雑にいりくんでいる樹のところでためらったりするのである。』
卜居意未展,杖策回旦暮。
それでも占ったうえでもよい住まいの場所でまだきめようと決心するほどおもうようなよい場所にであわなかった、つえをついてかえろうとすれば日ははや暮れかかってくる、
層巔餘落日,早蔓已多露。』

重なった嶺にまだ落ちかかる太陽はのこってはいるものの、道端の草やつるのうえにすでに露がしとどに置かれている。』
怡然【いぜん】共に手を携え、意を恣【ほしいまま】にして同じく遠歩【えんぽ】す。
蘿を椚【と】りて先登【せんとう】するに渋り、巘【】に陟【のぼ】りて反顧【へんこ】するに眩【げん】す。
求めんと要す陽岡【ようこう】の暖【あたたか】かなるを、涉るに苦しむ陰嶺【いんれい】の冱【ご】なるを。
惆悵【ちょうちょう】す老大【ろうだい】の藤に、沈吟【ちんぎん】す屈蟠【くつばん】の樹に。』
居を卜【ぼく】する意未だ展【の】べず、策を杖【つ】きて廻れば且【ほとん】ど暮れんとす。
層巔【そうてん】落日余【あま】るも、草蔓【そうまん】には己に露多し。』


現代語訳と訳註
(本文)
#2
怡然共攜手,恣意同遠步。捫蘿澀先登,陟巘眩反顧。
要求陽岡暖,苦涉陰嶺冱。惆悵老大藤,沈吟屈蟠樹。』
卜居意未展,杖策回旦暮。層巔餘落日,早蔓已多露。』


(下し文) (西枝村に草堂を置く地を尋ね、夜賛公が土室に宿す 二首 其の一)#2
怡然【いぜん】共に手を携え、意を恣【ほしいまま】にして同じく遠歩【えんぽ】す。
蘿を椚【と】りて先登【せんとう】するに渋り、巘【】に陟【のぼ】りて反顧【へんこ】するに眩【げん】す。
求めんと要す陽岡【ようこう】の暖【あたたか】かなるを、涉るに苦しむ陰嶺【いんれい】の冱【ご】なるを。
惆悵【ちょうちょう】す老大【ろうだい】の藤に、沈吟【ちんぎん】す屈蟠【くつばん】の樹に。』
居を卜【ぼく】する意未だ展【の】べず、策を杖【つ】きて廻れば且【ほとん】ど暮れんとす。
層巔【そうてん】落日余【あま】るも、草蔓【そうまん】には己に露多し。』


(現代語訳)
今日はこのあたりを手をたずさえて案内してもらい楽しむことができた、わたしの思い通りしてもらいあちこち同じように遠くまで歩んでくれたのである。
姫かずらにつかまっておりたり、あるいは先だちになって登ることに尻ごみをした。或いは丸みをおびた峰に上って後を振り返ってみると目がくらんだりした。
私が求める場所というのは陽当たりのいい岡がいいとおもっているが、北向きの峰の凍るような冷たさを難儀しながらわたっていった。
また、老木であろうか大きい藤のところで恨めしく歎いたりしているし、根株のかがみおれまがり、複雑にいりくんでいる樹のところでためらったりするのである。』
それでも占ったうえでもよい住まいの場所でまだきめようと決心するほどおもうようなよい場所にであわなかった、つえをついてかえろうとすれば日ははや暮れかかってくる、
重なった嶺にまだ落ちかかる太陽はのこってはいるものの、道端の草やつるのうえにすでに露がしとどに置かれている。』


(訳注) #2
怡然共攜手,恣意同遠步。

今日はこのあたりを手をたずさえて案内してもらい楽しむことができた、わたしの思い通りしてもらいあちこち同じように遠くまで歩んでくれたのである。
怡然 たのしいかたち。喜ぶさま。楽しむさま。


捫蘿澀先登,陟巘眩反顧。
姫かずらにつかまっておりたり、あるいは先だちになって登ることに尻ごみをした。或いは丸みをおびた峰に上って後を振り返ってみると目がくらんだりした。
捫蘿 ひめかつらにつかまる。○陟巘 まるみをおびたみねにのぼる。○ まなこがくらむ。○反顧 ふりかえってみる。


要求陽岡暖,苦涉陰嶺冱。
私が求める場所というのは陽当たりのいい岡がいいとおもっているが、北向きの峰の凍るような冷たさを難儀しながらわたっていった。
陽岡 日あたりのよいおか。○苦涉 渉はこおっている渓をわたることである。渉は一に捗に作る、捗ならば嶺をのぼってゆくこと。○陰嶺 北に面したみね。○冱 こおる。


惆悵老大藤,沈吟屈蟠樹。』
また、老木であろうか大きい藤のところで恨めしく歎いたりしているし、根株のかがみおれまがり、複雑にいりくんでいる樹のところでためらったりするのである。』
○惆悵 [名]恨み嘆くこと。[文][形動タリ]恨み嘆くさま。○沈吟 1 思いにふけること。考え込むこと。2 静かに口ずさむこと。○屈蟠 おれまがる。複雑にいりくんでいること。心にわだかまりがあること。


卜居意未展,杖策回旦暮。
それでも占ったうえでもよい住まいの場所でまだきめようと決心するほどおもうようなよい場所にであわなかった、つえをついてかえろうとすれば日ははや暮れかかってくる、
卜居 よいすまいの場所であるかを占う。占ったうえでもよい住まいの場所である。○意未展 おもうどおりにはまだならないということ。〇枚策 つえをつく。○ 土室の方へかえる。○旦暮 くれかかる。


層巔餘落日,早蔓已多露。』
重なった嶺にまだ落ちかかる太陽はのこってはいるものの、道端の草やつるのうえにすでに露がしとどに置かれている。』
層巔 やまのかさなったいただき。○早蔓 路上の草やつる。○多露 ゆうべのつゆが多くのこる。