秦州抒情詩(10)   搗衣(擣衣) 杜甫 <295> kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1352 杜甫詩 700- 415 


     
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《秦州抒情詩(10)   『搗衣(擣衣)』 杜甫700の295首目、杜甫ブログ415回目》
出征している夫の妻が衣をうつことをのべる。その妻のこころを代ってのべたさまである。秋の風物詩である。


擣衣
亦知戍不返,秋至拭清砧。
今年もまた辺境のまもりにでている夫が返ってはこないことがわかったので、わたしは秋がきたから汚れを「きぬた」払って冬の寒さの仕度をする。
已近苦寒月,況經長別心。
もはや貧しいものに厳しい苦寒の月もまぢかになってきた、ましてもう長く別れている妻の私の心もちにおいていえるのだ。
寧辭擣衣倦,一寄塞垣深。
どうして衣を打つに疲れるぐらいのことを厭おうというのか、厭いはしない。心はただ一つ、着物を仕立てて奥まった遠い塞にいる人のところへ送ってやろうとおもうばかりなのである。
用盡閨中力,君聽空外音。

この閨に住んでいる女の力を精一杯だして衣を打つのであるが、あなたは空に伝わるその音をどうぞ心とめて聞いてください。

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現代語訳と訳註
(本文)
擣衣
亦知戍不返,秋至拭清砧。
已近苦寒月,況經長別心。
寧辭擣衣倦,一寄塞垣深。
用盡閨中力,君聽空外音。


(下し文) (衣を擣つ)
亦た知る戊【じゅう】の返らざるを、秋至りて清砧【せいちん】を拭【ぬぐ】う。
己に近し苦寒の月、況【いわ】んや長別の心を経たるをや。
寧【なん】ぞ辭せん擣衣【とうい】の倦【う】むを,一に塞垣【さいえん】の深きに寄す。
用い尽くす閨中【けいちゅう】の力 君聴け空外【くうがい】の音を。


(現代語訳)
今年もまた辺境のまもりにでている夫が返ってはこないことがわかったので、わたしは秋がきたから汚れを「きぬた」払って冬の寒さの仕度をする。
もはや貧しいものに厳しい苦寒の月もまぢかになってきた、ましてもう長く別れている妻の私の心もちにおいていえるのだ。
どうして衣を打つに疲れるぐらいのことを厭おうというのか、厭いはしない。心はただ一つ、着物を仕立てて奥まった遠い塞にいる人のところへ送ってやろうとおもうばかりなのである。
この閨に住んでいる女の力を精一杯だして衣を打つのであるが、あなたは空に伝わるその音をどうぞ心とめて聞いてください。


(訳注)
擣衣

搗衣(擣衣)【とうい】砧【きぬた】で衣を打つこと。「擣【う】つ砧を臼にいれ、布を杵(棒杵)でつく。砧でつくのは洗濯ではなく、冬用の厚いごわごわした布を柔軟にするため。
李白『子夜呉歌其三 秋』「長安一片月、万戸擣衣声。秋風吹不尽、総是玉関情。何日平胡虜、良人罷遠征。」(長安 一片の月、万戸衣を擣つの声。秋風 吹いて尽きず、総て是れ玉関【ぎょくかん】の情。何【いず】れの日か胡虜【こりょ】を平らげ、良人 遠征を罷【や】めん。)

李白24 子夜呉歌其三 秋 25 冬

 謝惠連 『擣衣』 
衡紀無淹度,晷運倐如催。白露滋園菊,秋風落庭槐。
肅肅莎雞羽,烈烈寒螿啼。夕陰結空幙,宵月皓中閨。
美人戒裳服,端飾相招攜。簪玉出北房,鳴金步南階。
櫩高砧響發,楹長杵聲哀。微芳起兩袖,輕汗染雙題。
紈素既已成,君子行未歸。裁用笥中刀,縫為萬里衣。
盈篋自余手,幽緘候君開。腰帶準疇昔,不知今是非。


亦知戍不返,秋至拭清砧。
今年もまた辺境のまもりにでている夫が返ってはこないことがわかったので、わたしは秋がきたから汚れを「きぬた」払って冬の寒さの仕度をする。
亦知 亦は今年もまたの意、知るは閏婦が知るのである。○ 屯守すること、ここはまもりにでかけている人すなわち夫をさす。○ ほこりをぬぐいさる。○清砧 さっぱりしたきぬた、砧は衣をうつ台石をいう。


已近苦寒月,況經長別心。
もはや貧しいものに厳しい苦寒の月もまぢかになってきた、ましてもう長く別れている妻の私の心もちにおいていえるのだ。
苦寒 月仲冬の頃をさす。魏武帝(曹操)『苦寒行』『薦士』韓退之(韓愈)「酸寒溧陽尉,五十幾何耄。」・酸寒 

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寧辭擣衣倦,一寄塞垣深。
どうして衣を打つに疲れるぐらいのことを厭おうというのか、厭いはしない。心はただ一つ、着物を仕立てて奥まった遠い塞にいる人のところへ送ってやろうとおもうばかりなのである。
一寄 一は専一。○塞垣 とりでといしがき:長城のあたりをさす。○ 西域・北方の奥地へ入り込むことの深いことをいう、遠いこと。


用盡閨中力,君聽空外音。
この閨に住んでいる女の力を精一杯だして衣を打つのであるが、あなたは空に伝わるその音をどうぞ心とめて聞いてください。
閨中力 婦人の力をいう。○ 夫をさす。○空外音 空外は天外の意、