秦州抒情詩(11)   促織 杜甫 <296> kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1355 杜甫詩 700- 416 

     
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《秦州抒情詩(11)   『促織』 杜甫700の296首目、杜甫ブログ416回目》
きりぎりすの鳴く音を聞いて其の物悲しさを詠んだ。
759年乾元2年 48歳

            
促織
促織甚微細、哀音何動人。
きりぎりすはちっぽけな虫であるが、そのあわれな音はどうしてこんなに人を感動させるのであろう。
草根吟不穏、牀下意相親。
その虫は草の根もとで吟じるのは落ち着かなげであるが、それが閨の寝台の下でなくときはその心は人に親しみを求めてはなしかけるようである。
久客得無涙、故妻難及晨。
この音をきいてはながいあいだ旅人である私も涙なしにはおられないのだ、これでは留守居の人妻たちはとても夜明けまでがまんして聞いてはおられないことだろう。
悲糸与急管、感激異天真。
悲しい琴糸の音と急な指使いの調子の竹笛は人を感激させるものではあるが、「漸く自然に近ければ之れ美なり」という天真の虫の音とは同じようにみられないものである。


現代語訳と訳註
(本文)
促織
促織甚微細、哀音何動人。
草根吟不穏、牀下意相親。
久客得無涙、故妻難及晨。
悲糸与急管、感激異天真。


(下し文)
(促 織)
促織【そくしょく】は  甚【はなは】だ微細なるに、哀音【あいおん】  何ぞ人を動かすや。
草根【そうこん】に 吟ずること 穏かならず、牀下【しょうか】に 意 相【あい】親しむ。
久客【きゅうかく】 涙 無きを得んや、故妻【こさい】  晨【あした】に及び難し。
悲糸【ひし】と急管【きゅうかん】と、感激は天真【てんしん】に異なり。


(現代語訳)
きりぎりすはちっぽけな虫であるが、そのあわれな音はどうしてこんなに人を感動させるのであろう。
その虫は草の根もとで吟じるのは落ち着かなげであるが、それが閨の寝台の下でなくときはその心は人に親しみを求めてはなしかけるようである。
この音をきいてはながいあいだ旅人である私も涙なしにはおられないのだ、これでは留守居の人妻たちはとても夜明けまでがまんして聞いてはおられないことだろう。
悲しい琴糸の音と急な指使いの調子の竹笛は人を感激させるものではあるが、「漸く自然に近ければ之れ美なり」という天真の虫の音とは同じようにみられないものである。


 (訳注)
(促 織)

促織 こおろぎ。冬着の仕度を促がす虫という意味。コオロギのなく音が①冬支度の時を教え、②人を感動させ、③詩経の『豳風、七月』のⅠ章からⅧ章までの事項を連想させ、④寡婦にとって悲しさは耐えきれなく、⑤東晉孟嘉「「漸近自然、之美。」と琴や笛より優るという。味わい深い詩となっている。
詩経、『豳風、七月』「」
○授衣 1 冬着の準備をすること。冬の用意をすること。2 陰暦9月の異称。
『詩経』豳風(ひんぷう)「七月」(ふみづき)
七月流火、九月授衣。
一之日觱發、二之日栗烈。
無衣無褐、何以卒歲。
三之日于耜、四之日舉趾、同我婦子。
饁彼南畝、田畯至喜。
(七月には流る火あり、九月衣を授く。
一の日は觱發たり、二の日は栗烈たり。
衣無く褐無くんば、何を以てか歲を卒へん。
三の日 于(ここ)に耜(し)し、四の日 趾(あし)を舉ぐ、我が婦子とともに。
彼の南畝に饁(かれひ)す、田畯至り喜ぶ。)
に基づく句である。
<大意>七月には火星が西に流れる、九月には家族に衣を与えねばならぬ、十一月には風が寒くなり、十二月には激しく吹く、衣がなければ、どうして年を越せようか、明けて三月には鋤の手入れをし、四月には足を上げて耕さねばならぬ、我が妻子とともに、南の畑で働いていると、田んぼの役人さんがやってきて、喜びなさるだろう(流火:火は火星のこと、それが西へ流れるのを流火という、一之日:十一月をさす、田畯:田んぼを管轄する役人)

孟浩然 『題長安主人壁
久廢南山田,叨陪東閣賢。
欲隨平子去,猶未獻甘泉。
枕籍琴書滿,褰帷遠岫連。
我來如昨日,庭樹忽鳴蟬。
促織驚寒女,秋風感長年。
授衣當九月,無褐竟誰憐。
(久しく南山の田を廢し、叨【みだ】りに東閣の賢に陪す。
平子に隨ひて去らんと欲するも、猶は未だ甘泉を献ぜず。
枕席 琴書満ち、帷を褰ぐれば 遠岫連なる。
我来ること昨日のごときも、庭樹 忽ち蝉鴫く。
促織 寒女を驚かし、秋風 長年を感ぜしむ。
衣を授く 九月に當たる、褐無きも竟に誰か憐れまん。)

題長安主人壁 孟浩然「峴山懐古」関連 Kanbuniinkai 紀頌之の漢詩 李白特集350 -328


促織甚微細,哀音何動人。
きりぎりすはちっぽけな虫であるが、そのあわれな音はどうしてこんなに人を感動させるのであろう。
促織 虫の名、きりぎりすの琴。○微細 形についていう。○ むしのなくこと。


草根吟不穩,床下意相親。
その虫は草の根もとで吟じるのは落ち着かなげであるが、それが閨の寝台の下でなくときはその心は人に親しみを求めてはなしかけるようである。
床下 『詩経』豳風(ひんぷう)「七月」(ふみづき)5章
五月斯螽動股、六月莎鶏振羽。
七月在野、八月在宇、九月在戸、十月蟋蟀。
入我牀下、穹窒熏鼠、塞向墐戸、嗟我婦子。
曰爲改歳、入此室處。
 ○ むしのこころもち。


久客得無淚?故妻難及晨。
この音をきいてはながいあいだ旅人である私も涙なしにはおられないのだ、これでは留守居の人妻たちはとても夜明けまでがまんして聞いてはおられないことだろう。
久客 ながくよそにでているたびびと。○得無涙 得は反語によむ、上に「焉」の字をいれてみる。○故妻 寡婦。棄てられたつま、留守居の妻・やもめの女をさす。○難及農 たえがたいことをいう。


悲絲與急管,感激異天真。
悲しい琴糸の音と急な指使いの調子の竹笛は人を感激させるものではあるが、「漸く自然に近ければ之れ美なり」という天真の虫の音とは同じようにみられないものである。
悲糸 悲しげな琴糸のおと。○急管 急な指使いの調子の竹笛。いわゆる「ピィーーッコロコロコロッ!」という感じであろうか。○感激 きく人の情をして感じ激させること。○天真 きりぎりす、コオロギの天然ありのままの音。○この聯、二句は、器楽と声楽を比較して“東晉孟嘉(296-349)絲不如竹,竹不如肉。」「漸近自然」之美。(絲は竹に如かず,竹は肉に如かず。漸く自然に近ければ之れ美なり。)”に基づいて作られている。
 「龍山落帽」とは、中国の晋の時代、龍山で開かれた重陽の酒宴に招かれた孟嘉が風で帽子を飛ばされたにも関わらず、平然と酒を飲み続けたという故事。中国では、人前で帽子をとることは極めて恥ずかしいこととされていたため、この席を囲んだ者たちは、孟嘉を嘲る詩を作ったが、孟嘉は機知をもってこれに返した。 帽子が脱げた孟嘉を周りの者たちがじろじろと見、卓に背を向けて彼を嘲る詩を作る者も描かれるが、孟嘉は平然と盃を傾ける。



『詩経』豳風(ひんぷう)「七月」(ふみづき)
〔Ⅰ〕 
七月流火 九月授衣
一之日觱発 二之日栗烈
無衣無褐 何以終歳
三之日于耜 四之日舉趾
同我婦子 饁彼南畝
田畯至喜
 
〔Ⅱ〕 
七月流火 九月授衣
春日載陽 有鳴倉庚
女執懿筐 遵彼微行
爰求柔桑 春日遲遲
采蘩祁祁 女心傷悲
殆及公子同歸
 
〔Ⅲ〕 
七月流火 八月萑葦
蠶月條桑 取彼斧〓
以伐遠揚 猗彼女桑
七月鳴鵙 八月載績
載玄載黄 我朱孔陽
爲公子裳
 
〔Ⅳ〕 
四月秀葽 五月鳴蜩
八月其穫 十月隕蘀
一之日于貉 取彼狐狸
爲公子裘
二之日其同 載纉武功
言私其豵 獻豣于公
 
〔Ⅴ〕 
五月斯螽動股 六月莎鶏振羽
七月在野 八月在宇
九月在戸 十月蟋蟀
入我牀下 穹窒熏鼠
塞向墐戸
嗟我婦子 曰爲改歳
入此室處


〔Ⅵ〕 
六月食鬱及薁 七月亨葵及菽
八月剥棗 十月穫稲
爲此春酒 以介眉壽
七月食瓜 八月斷壺
九月叔苴 采荼薪樗
食我農夫
 
〔Ⅶ〕 
九月築場圃 十月納禾稼
黍稷重〓 禾麻菽麥
嗟我農夫 我稼既同
上入執宮功績
晝爾于茅 宵爾索綯
亟其乘屋 其始播百穀
 
 
〔Ⅷ〕
二之日鑿冰沖沖
三之日納于凌陰
四之日其蚤獻羔祭韭
九月粛霜 十月滌場
朋酒斯饗 曰殺羔羊
躋彼公堂
稱彼兕觥 萬壽無疆