秦州抒情詩(19)   秋笛 杜甫 <304> kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1379 杜甫詩 700- 424

     
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 《秦州抒情詩(19)   『秋笛』 杜甫700の304首目、杜甫ブログ424回目》
琴に合わせて笛の音がきこえて來る。出征した主人の戦士の報せがあり、亡骸の帰宅を待つ家族の家で演奏されている。


秋笛
清商欲盡奏,奏苦血沾衣。
琴に合わせて笛の清苦にして哀愁のある音調の演奏をしつくしてほしいと思う。その演奏を続ける苦しさは血を吐き衣は血に染まるほどなのだ。
他日傷心極,徵人白骨歸。
そんなことがあった後日傷ついた心が窮まった時に出征していた夫が白骨となって帰ってきた。
相逢恐恨過,故作發聲微。
こうなって互いに遭うことが出来たのであるが恨みに思う心はこれ以上ないほどになっている、だから声が鳴き枯れてしまって僅かな声を出すだけになって笛の音さえ出ないのだ。
不見秋雲動,悲風稍稍飛。

人生の写しでもある秋の雲が動いているのさえ見えないのだが、かなしみをもった笛の音が風にのりようやく飛んでいってくれる。



現代語訳と訳註
(本文)
秋笛
清商欲盡奏,奏苦血沾衣。
他日傷心極,徵人白骨歸。
相逢恐恨過,故作發聲微。
不見秋雲動,悲風稍稍飛。


(下し文)
清商 奏を盡さんと欲す,奏苦して血 衣を沾す。
他日 傷心 極り,徵人 白骨 歸る。
相逢いて恨過を恐れ,故に聲微を發するを作す。
秋雲の動きを見えず,悲風 稍稍として飛ぶ。


(現代語訳)
琴に合わせて笛の清苦にして哀愁のある音調の演奏をしつくしてほしいと思う。その演奏を続ける苦しさは血を吐き衣は血に染まるほどなのだ。
そんなことがあった後日傷ついた心が窮まった時に出征していた夫が白骨となって帰ってきた。
こうなって互いに遭うことが出来たのであるが恨みに思う心はこれ以上ないほどになっている、だから声が鳴き枯れてしまって僅かな声を出すだけになって笛の音さえ出ないのだ。
人生の写しでもある秋の雲が動いているのさえ見えないのだが、かなしみをもった笛の音が風にのりようやく飛んでいってくれる。


(訳注)
秋笛

この時代、「清商」というと琴に和せて笛を吹き演奏するのは相当高い身分の人であることが想像される。秦州の郊外、東柯谷で経験したことではなく創作されたものであろう。
また、同様なイメージの「吹笛」という七言律詩があるが、秦州で創作した「秋笛」の5年後夔州での作品があり。末尾に参考としてあげている。


清商欲盡奏,奏苦血沾衣。
琴に合わせて笛の清苦にして哀愁のある音調の演奏をしつくしてほしいと思う。その演奏を続ける苦しさは血を吐き衣は血に染まるほどなのだ。
清商 清苦にして哀愁のある音調。 ・商 秋、秋風。西の方角。星座のこと。五音階。「宮・商・角・徴・羽」隋・唐は中国史上で最も強大・安定し、音楽・絵画・書・舞踊・建築などが発展した。 音楽は「宮廷音楽(七部伎=清商伎・国伎・亀慈伎・安国伎・天竺伎・高麗伎・文康伎)」と 「民間音楽(山歌・小曲、器楽=琵琶・笙・笛などの演奏)」に二分される。
曹丕(曹子桓/魏文帝)詩 『燕歌行』 
燕歌行
秋風蕭瑟天気涼、草木搖落露為霜、
羣燕辭帰雁南翔。
念君客遊思断腸、慊慊思帰戀故郷、
何為淹留寄他方。』
賤妾煢煢守空房、憂来思君不敢忘。
不覚涙下霑衣裳。
援琴鳴絃發清商、短歌微吟不能長。』
明月皎皎照我牀、星漢西流夜未央。
牽牛織女遥相望、爾獨何辜限河梁。』


他日傷心極,徵人白骨歸。
そんなことがあった後日傷ついた心が窮まった時に出征していた夫が白骨となって帰ってきた。
征人 国境警備の兵士。戍客。 


相逢恐恨過,故作發聲微。
こうなって互いに遭うことが出来たのであるが恨みに思う心はこれ以上ないほどになっている、だから声が鳴き枯れてしまって僅かな声を出すだけになって笛の音さえ出ないのだ。


不見秋雲動,悲風稍稍飛。
人生の写しでもある秋の雲が動いているのさえ見えないのだが、かなしみをもった笛の音が風にのりようやく飛んでいってくれる。
稍稍 ややすこし。ようやく。しだいに。


参考 大暦元年 766年 55歳 夔州   
吹笛杜甫
吹笛秋山風月清,誰家巧作斷腸聲。
風飄律呂相和切,月傍關山幾處明。
胡騎中宵堪北走,武陵一曲想南征。
故園楊柳今搖落,何得愁中曲盡生。


(笛を吹く)
笛を吹く秋山 風月の清きに、誰が家か巧みに 斷腸の聲を作す。
風は律呂を飄して 相和すること切に、月は關山に傍うて 幾處か明らかなる。
胡騎中宵 北走するに堪えたり、武陵の一曲は 南征を想う。
故園の楊柳は 今搖落す、何ぞ得ん愁中 卻って盡く生ずるを。

斷腸聲 聞く人の腸をかきむしるような悲しい声

律 呂 音楽の調子を陰陽の二つに分け陰を呂(六呂=りくりょ) 陽を律(六律 =りくりつ)という
關 山 国境にある山
中 宵 真夜中
胡騎北走 唐代 北方または西方の異民族を胡(えびす)と呼んだ 晋の将軍劉〈王昆〉(りゅうこん= 270ー318)が并州(へいしゅう)を孤立無援で堅く守り 月のさえた夜城楼に上り胡笳を吹いたところ 胡軍はその悲しみに涙を流し北の 故郷へ帰り去ったという故事
武陵一曲 後漢(ごかん)の馬援(ばえん=前14ー49)が交趾(こうし=現ベトナム )の蛮族を征服した後 武陵(湖南省北部)に遠征した時 部下の笛に合せて 僻地(へきち)遠征の寂寥の歌を詠んだ この歌を「武陵深行(ぶ りょうしんこう)」という
    

 秋の山の風も月も清らかにさえわたる夜、笛の音が聞こえてくる。誰がこれほど巧みに、人の腸をかきむしるよう に物悲しい音を吹きならすのだろうか。
 風は律呂の響きをひるがえして調和もとれ、月は関山によりそうて、幾つかの峰にさえわたっている。
 このような笛の音を聞けば、晋の劉〈王昆〉の故事のように、手荒い胡の兵も悲しみに堪え切れず、夜中に北方の故郷へ 逃げ去ったであろう。また後漢の馬援が武陵に遠征した時、部下の曲に合せて歌った「武陵深行」という曲もこのように悲しいものであ ったろうか。
 故郷の柳も秋になって葉も落ちつくしたであろう。それなのに今巧みな「折楊柳」の曲をきくと、愁いにふさがる 私の胸の中に緑の柳の芽を出させ、その枝を折って別れのなげきをくり返すことが出来ようか。