秦州見敕,薛三璩授司議郎,畢四曜除監察,與二子有故,遠喜遷官,兼述索居,凡三十韻 杜甫 <315-#1>漢文委員会 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1412 杜甫詩 700- 435


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秦州見敕,薛三璩授司議郎,畢四曜除監察,與二子有故,遠喜遷官,兼述索居,凡三十韻 杜甫 <315-#1>漢文委員会 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1412 杜甫詩 700- 435

   
 李商隠詩李商隠/韓愈韓退之(韓愈)・柳宗元・李煜・王安石・蘇東坡 
   2011/7/11李商隠 1 錦瑟 
      2011/7/11 ~ 2012/1/11 まで毎日掲載 全130首(187回) 
   2012/1/11 唐宋 Ⅰ李商隠187 行次西郊作一百韻  白文/現代語訳 (全文) 
     

杜甫が秦州に来て作った詩(秦州における85首)には
詩人として生きて行こうとしていること、
隠棲の地を求めたこと、
土地、家を買いたいとおもっていること、
資金不足であって親戚、友人知人に援助を依頼している、
友人からの資金援助のてがみをまっている、のである。将来を考えることができなくて、今を生きることさえ毎日が不安であった様子もこれらの詩にあらわれている。
私はそうは思わないが、この頃の杜甫の詩は「食料が豊かな町ではなく、国境の町の異様な自然と人事は、杜甫の神経を極度に苛んだらしく、この頃の詩は、病的に尖鋭であり、絶望的である。」(黒川洋一著)というのが一般的な杜甫の心情分析結果である。

わたしは詩人的表現が次第に強くなっていったもの、友人知人に援助以来のため詩人的表現をしたものと思える。杜甫にとって戦争がトラウマで沙州・隴西―長安・洛陽のラインで戦争は継続していたことが杜甫の神経を尖鋭にしていたものである。半分世の中を棄てようとしているのでその部分が絶望的ということになるのであろう。しかしそれは杜甫の本質ではない。

 このブログではできる限り、杜甫の詩を割愛したり、都合のいい部分を拾い集めて、自らの論理にあてはめるということはしない。全体の詩を取り上げたうえで考察のためにシリーズ、紀行など範疇をひろげて振り返って行って論評したいと考えている。一詩だけで、一句だけの判断は間違いが多いと考えるからである。



秦州見敕,薛三璩授司議郎,畢四曜除監察,
與二子有故,遠喜遷官,兼述索居,凡三十韻

759年秋秦州において、杜甫は、任官の目次を目にした。見たところ、薛拠は司議郎を授けられ、畢曜は監察御史に除せられていた。この二人は杜甫と旧交のあるものであったので遠方ながら彼らが転任したことを喜び、また兼ねて自己がさびしい生活をなしていることをのべて、ついに凡そ三十韻六十句のこの篇をなした。
大雅何寥闊,斯人尚典刑。
優れて正しい詩文の本筋・正道はどうしてこのようにさびしくなったものか、それでもまだ薛三璩、畢四曜の二人が認められているために、古来の法則とすべき型が存在しているということなのだ。
交期余潦倒,才力爾精靈。
君たちと交際はあるとはいえわたしは今落ちぶれている、しかし、君たちはその人物力量において人力以上の不思議な気をもっている。
二子聲同日,諸生困一經。
だから両君は、同日に除任せられて声名がなりひびくけれども、わたしは仕官せぬ多くの学者としてひとつの経典を修学していて、そのために困窮しているのだ。
文章開窔奧,遷擢潤朝廷。
両君は文章においては奥ふかい道を真剣に取り組む姿勢を開いており、朝廷の恩沢にうるおうて他人よりもぬきんでて官を遷されたということだろう。
舊好何由展,新詩更憶聽。
これまで詩文を交わしたり、唱和してきたなかまであるが今何に由ってのべたらいいのであろうか、どうにかしてもっと両君の最新作があるだろうからさらに聴きたいと思うのだ。
別來頭並白,相見眼終青。』

別れてからお互いに頭は白くなっていることだろうが、もし面会が叶うなら以前にかわらず賢人同志、青眼を以て濁り酒を飲むことになるであろう。』

伊昔貧皆甚,同憂歲不寧。棲遑分半菽,浩蕩逐流萍。
俗態猶猜忌,妖氛忽杳冥。獨慚投漢閣,俱議哭秦庭。
遠蜀衹無補,囚梁亦固扃。華夷相混合,宇宙一羶腥!』

帝力收三統,天威總四溟。舊都俄望幸,清廟肅維馨。
雜種雖高壘,長驅甚建瓴。焚香淑景殿,漲水望雲亭。
法駕初還日,群公若會星。」

宮宦仍點染,柱史正零丁。官忝趨棲鳳,朝回嘆聚螢。
喚人看腰裊,不嫁惜娉婷。掘劍知埋獄,提刀見發硎。
侏儒應共飽,漁父忌偏醒。』

旅泊窮清渭,長吟望濁涇。羽書還似急,烽火未全停。
師老資殘寇,戎生及近坰。忠臣詞憤激,烈士涕飄零。
上將盈邊鄙,元勛溢鼎銘。仰思調玉燭,誰定握青萍。』
隴俗輕鸚鵡,原情類鶺鴒。秋風動關塞,高臥想儀形。
秦州にて敕目【ちょくもく】を見るに,薛三璩【さつさんきょ】は司議郎【しぎろう】を授けられ,畢四曜【ひつしよう】は監察に除せられ,二子と故有り,遠く遷官【せんかん】を喜ぶ,兼ねて索居【さくきょ】を述べる,凡そ三十韻。
大雅何ぞ寥闊【りょうかつ】なる、斯の人尚お典型。
交期余【われ】潦倒【ろうとう】、材力爾【なんじ】精霊。
二子同日に声あり、諸生一経に困す。
文章窔奥【ようおう】を開く、遷擢【せんたく】朝廷より潤【うるお】さる。
旧好何に由りてか展【の】べん、新詩更に聴かんことを憶う。
別来頭併せて白し、相見ば眼終【つい】に青ならん。』


伊【こ】れ昔貧皆同じ、同じく憂う歳の寧【やす】からざるを。
栖遑【せいこう】半菽【はんしゅく】を分かつ、浩蕩【こうとう】流萍【りゅうへ】いを逐う。
俗態猶お猜忌【さいき】、妖氛【ようふん】忽【たちま】ち杳冥【ようめい】。
独り慚【は】ず漢閣【かんかく】より投ずるを、倶に議す秦庭【しんてい】に哭するを。
局に還る穂だ補い無く、梁に囚わる亦た固より扁さる。
華夷相混合す、宇宙一に羶腥【せんせい】なり。』

帝力三統を収め、天威四冥を総すぶ。
旧都俄【にわか】に幸を望む、清廟 惟馨【いけい】を粛む。
雑種 塁を高くすと雖も、長駆 瓴【れい】を建つるよりも甚し。
香を焚く淑景殿【しゅくけいでん】、水を漲みなぎらす望雲亭【ぼううんてい】。
法駕【ほうが】初めて還る日、群公【ぐんこう】会星の若し。

宮宦【きゅうしん】仍お点染【てんせん】す、柱史【ふうし】正に零丁【れいてい】たり。
官は忝かたじけのうす 棲鳳に趨するを、朝より回りて衆螢しゅうけいを歎ず。
人を喚びて腰裊ようじょうを看せしむ、嫁せざるに娉婷へいていを惜しむ。
獄を掘りて埋剣【まいけん】を知り、刀を提げて発桝【はっけい】を見る。
侏儒【しゅじゅ】応に共に飽くなるべし、漁父偏醒【へんせい】を忌む。』

旅泊 清渭【せいい】を窮【きわ】む、長吟 濁涇【だくけい】を望む。
羽書【はしょ】還た急なるに似たり、烽火 未だ全く停まらず。
師老いて 残寇に資す、戎生じて近坰【きんけい】に及ぶ。
忠臣 詞 憤激【ふんげき】、 烈士【れっし】 涕 諷零【ひょうれい】。
上將【じょうしょう】 邊鄙【へんぴ】に盈【み】つ、元勲【げんくん】 鼎銘【ていめい】に溢る。
仰いで思う 玉燭【ぎょくしょく】調【ととの】わんことを、誰か定めて青萍【せいへい】を握らん。』

隴俗【ろうぞく】鸚鵡【おうむ】を軽んず、原情【げんじょう】鶺鴒【せきれい】に類す。
秋風 関塞【かんさい】に動く、高臥【こうが】儀形【ぎけい】を想う。』


現代語訳と訳註
(本文)

大雅何寥闊,斯人尚典刑。交期余潦倒,才力爾精靈。
二子聲同日,諸生困一經。文章開窔奧,遷擢潤朝廷。
舊好何由展,新詩更憶聽。別來頭並白,相見眼終青。』


(下し文)
秦州にて敕目【ちょくもく】を見るに,薛三璩【さつさんきょ】は司議郎【しぎろう】を授けられ,畢四曜【ひつしよう】は監察に除せられ,二子と故有り,遠く遷官【せんかん】を喜ぶ,兼ねて索居【さくきょ】を述べる,凡そ三十韻。

大雅何ぞ寥闊【りょうかつ】なる、斯の人尚お典型。
交期余【われ】潦倒【ろうとう】、材力爾【なんじ】精霊。
二子同日に声あり、諸生一経に困す。
文章窔奥【ようおう】を開く、遷擢【せんたく】朝廷より潤【うるお】さる。
旧好何に由りてか展【の】べん、新詩更に聴かんことを憶う。
別来頭併せて白し、相見ば眼終【つい】に青ならん。』


(現代語訳)
759年秋秦州において、杜甫は、任官の目次を目にした。見たところ、薛拠は司議郎を授けられ、畢曜は監察御史に除せられていた。この二人は杜甫と旧交のあるものであったので遠方ながら彼らが転任したことを喜び、また兼ねて自己がさびしい生活をなしていることをのべて、ついに凡そ三十韻六十句のこの篇をなした。
優れて正しい詩文の本筋・正道はどうしてこのようにさびしくなったものか、それでもまだ薛三璩、畢四曜の二人が認められているために、古来の法則とすべき型が存在しているということなのだ。
君たちと交際はあるとはいえわたしは今落ちぶれている、しかし、君たちはその人物力量において人力以上の不思議な気をもっている。
だから両君は、同日に除任せられて声名がなりひびくけれども、わたしは仕官せぬ多くの学者としてひとつの経典を修学していて、そのために困窮しているのだ。
両君は文章においては奥ふかい道を真剣に取り組む姿勢を開いており、朝廷の恩沢にうるおうて他人よりもぬきんでて官を遷されたということだろう。
これまで詩文を交わしたり、唱和してきたなかまであるが今何に由ってのべたらいいのであろうか、どうにかしてもっと両君の最新作があるだろうからさらに聴きたいと思うのだ。
別れてからお互いに頭は白くなっていることだろうが、もし面会が叶うなら以前にかわらず賢人同志、青眼を以て濁り酒を飲むことになるであろう。』


(訳注)
秦州見敕,薛三璩授司議郎,畢四曜除監察,與二子有故,遠喜遷官,兼述索居,凡三十韻
759年秋秦州において、杜甫は、任官の目次を目にした。見たところ、薛拠は司議郎を授けられ、畢曜は監察御史に除せられていた。この二人は杜甫と旧交のあるものであったので遠方ながら彼らが転任したことを喜び、また兼ねて自己がさびしい生活をなしていることをのべて、ついに凡そ三十韻六十句のこの篇をなした。
勅目 勅命による任官の目次。
薛三璩 薛拠は作者の友、同諸公登慈恩寺塔 杜甫39 の注にみえる。
司義郎 東宮の官属で侍従規諌し、啓奏を駁正し、東宮の記注を記録することをつかさどる。
畢四曜 畢曜は作者の友、他に「偪側行、畢四曜に贈る」、「畢四曜に贈る」の詩がある。758年乾元元年47歳左拾遺から華州へ左遷される直前のころ『逼側行贈畢曜』『贈畢四曜』を書いている。
『贈畢四曜』は次の通り。
才大今詩伯,家貧苦宦卑。饑寒奴樸賤,顏狀老翁為。
同調嗟誰惜,論文笑自知。流傳江鮑體,相顧免無兒。
監察 監察御史のこと、百僚を分察し、州県を巡按することをつかさどる。
二子 薛拠・畢曜。
 古い交際。
遷官 官職をうつされたこと。
索居 朋友とはなれてさびしくくらしていること。


大雅何寥闊,斯人尚典刑。:大雅何ぞ寥闊【りょうかつ】なる、斯の人尚お典型。
優れて正しい詩文の本筋・正道はどうしてこのようにさびしくなったものか、それでもまだ薛三璩、畢四曜の二人が認められているために、古来の法則とすべき型が存在しているということなのだ。
大雅 すぐれてただしい。学識のあるもの。文人同士の敬称。優れて正しい詩文の本筋。
寥闊 さびしいさま。
斯人 薛三璩、畢四曜のふたり。
典刑 一定の刑罰。古い手本。手本とすべき形。『詩経、大雅、蕩』「雖無老成人、尚有典刑。」(老成人なしと雖も、尚お典刑あり。」とみえる。


交期余潦倒,才力爾精靈。:交期余【われ】潦倒【ろうとう】、材力爾【なんじ】精霊。
君たちと交際はあるとはいえわたしは今落ちぶれている、しかし、君たちはその人物力量において人力以上の不思議な気をもっている。
交期 交際契合のこと。
潦倒 おちぶれたさま。
材力 人物力量。
 薛三璩、畢四曜の二人。
精靈 万物の根源をなしている、とされる不思議な気のこと。


二子聲同日,諸生困一經。:二子同日に声あり、諸生一経に困す。
だから両君は、同日に除任せられて声名がなりひびくけれども、わたしは仕官せぬ多くの学者としてひとつの経典を修学していて、そのために困窮しているのだ。
 世間に名声のあること、このたびの任官をいう。
諸生 仕官せぬ多くの学者ども、暗に杜甫自身をさしていう。
困一経 ひとつの経典を修学していて、そのために困窮していること。


文章開窔奧,遷擢潤朝廷。:文章窔奥【ようおう】を開く、遷擢【せんたく】朝廷より潤【うるお】さる。
両君は文章においては奥ふかい道を真剣に取り組む姿勢を開いており、朝廷の恩沢にうるおうて他人よりもぬきんでて官を遷されたということだろう。
窔奧 室の西南隅を奥といい、室の東南隅を窔といい、五行では奧を修学の意、窔は就寝の意とあって、寝ても覚めても学問の勉強することを意味する。転じて文章の奥ふかい道を真剣に取り組む姿勢をいう。
遷擢 うつしぬきんでられる。○潤朝廷 朝廷の恩沢にうるおされることをいう。


舊好何由展,新詩更憶聽。:旧好何に由りてか展【の】べん、新詩更に聴かんことを憶う。
これまで詩文を交わしたり、唱和してきたなかまであるが今何に由ってのべたらいいのであろうか、どうにかしてもっと両君の最新作があるだろうからさらに聴きたいと思うのだ。
旧好 これまでのなかのよさ。


別來頭並白,相見眼終青。:別来頭併せて白し、相見ば眼終【つい】に青ならん。』
別れてからお互いに頭は白くなっていることだろうが、もし面会が叶うなら以前にかわらず賢人同志、青眼を以て濁り酒を飲むことになるであろう。』
併白 彼も白い我もともに。
眼終青 眼青は魏の阮籍の故事、籍は佳客を見れば青眼(くろめ)をなし、俗客を見れば白眼(にらみめ)をなしたという。青眼でにごり酒を呑み政治の談議をすることをいう。賢者はにごり酒、儒者聖人は清酒を飲んだ。
阮籍 詠懐詩、 白眼視    嵆康 幽憤詩を参照。