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“同谷紀行(2)” 赤穀 杜甫 <322>#1 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1523 杜甫詩 700- 472

詩 題:“同谷紀行(2)” 赤穀 五言古詩
時 期:乾元2年10月 759年 48歳
掲 載; 杜甫700の322首目-#1
杜甫ブログ;472回目

1.發秦州→ 2.赤穀→ 3.鐵堂峽→ 4.鹽井→ 5.寒峡→ 6.法鏡寺→ 7.青陽峡→ 8.龍門鎮→ 9.石龕→ 10.積草嶺→ 11.泥功山→ 12.鳳凰台

杜甫は秦州から同谷への旅路の中で、「発秦州」をはじめにして十二首の詩を詠んでいる。いづれも旅の途中での体験を物語る旅行記のような趣の詩である。
  
秦州をたって最初に詠んだ場所がこの詩にある赤谷だ。秦州から南へ4キロほどの地点にある。まだ旅は始まったばかりだが、杜甫の思いは未来への希望というより、現実苦に集中している。ここでもやはり子供たちが、飢えを訴えて泣いているのだ。
詩人と隠遁者では将来について表現方法は変わる。この頃の杜甫は、隠遁者から詩人として生きていくことに心を置いているようである。
将来は先に待っている長い道のりを考えると、途中で野垂れ死にしてしまうのではないか、杜甫は詩人的発想で、そんな恐怖感に襲われるのを感じ、もしそうなったらひとびとに笑われるだけだと、自らに鞭を打っている。
東柯谷・赤谷は隠遁地の候補地であったところであるが、詩人の目にはもう違って映っているようだ。

赤穀
天寒霜雪繁,遊子有所之。
天気は寒く、霜と雪がふる季節になっても松柏が寒気にめげしげっている、こんな時旅人はひたすら旅を行くのである。
豈但歲月暮?重來未有期。
ただ、この年のくれにさしかかろうとしているが、ここには再びもう来ることはないだろうと思う。
晨發赤穀亭,險艱方自茲。
日出のころに赤谷の駅を出発するのである、行く路の艱難はこれからいよいよ始まるということになる。
亂石無改轍,我車已載脂。

道の乱れた石がすごいのにわだちを別に変えられる道はないし、我々一行の車には道に入る前に油を指している。
#2
山深苦多風,落日童稚饑。悄然村墟迥。煙火何由追?
貧病轉零落,故鄉不可思。常恐死道路。永為高人嗤。

(赤穀)
天寒くして霜雪【そうせつ】繁し、遊子之く所有り。
豈に但に歲月の暮るるのみならんや、重ねて來ること未だ期有らず。
晨【あした】に赤穀の亭を發す、險艱【けんかん】方【まさ】に茲【ここ】よりす。
亂石【らんせき】轍を改むるべくなく、我が車已に載【すなわ】ち脂さす。

#2
山深こうして多風に苦しみ、落日 童稚【どうち】饑【う】う。
悄然【しょうぜん】たり村墟【そんきょ】の迥かなるに、煙火 何【いずこ】由よか追はん。
貧病【ひんびょう】轉【うた】た零落【れいらく】す、故鄉 思ふ可からず。
常に恐る 道路に死して、永く為す 高人の嗤【わら】われんことを


現代語訳と訳註
(本文)
赤穀
天寒霜雪繁,遊子有所之。豈但歲月暮?重來未有期。
晨發赤穀亭,險艱方自茲。亂石無改轍,我車已載脂。


(下し文)
天寒くして霜雪【そうせつ】繁し、遊子之く所有り。
豈に但に歲月の暮るるのみならんや、重ねて來ること未だ期有らず。
晨【あした】に赤穀の亭を發す、險艱【けんかん】方【まさ】に茲【ここ】よりす。
亂石【らんせき】轍を改むるべくなく、我が車已に載【すなわ】ち脂さす。


(現代語訳)
天気は寒く、霜と雪がふる季節になっても松柏が寒気にめげしげっている、こんな時旅人はひたすら旅を行くのである。
ただ、この年のくれにさしかかろうとしているが、ここには再びもう来ることはないだろうと思う。
日出のころに赤谷の駅を出発するのである、行く路の艱難はこれからいよいよ始まるということになる。
道の乱れた石がすごいのにわだちを別に変えられる道はないし、我々一行の車には道に入る前に油を指している。


(訳注)
赤穀

秦州から南へ4キロほど川沿いに下った地点にある。東北に谷間を2km上流にいけば東柯谷で、赤谷は秦州と東柯谷方面の分岐点である。


天寒霜雪繁,遊子有所之。
天気は寒く、霜と雪がふる季節になっても松柏が寒気にめげしげっている、こんな時旅人は名残惜しさを残してひたすら旅を行くのである。
天寒霜雪繁 『荘子・譲王』「天寒既至、霜雪既降、吾是以知松柏之茂也。」(天寒 既に至り、霜雪 既に降る、吾是を以って松柏の茂るを知る也。)にもとづくくである。
遊子 旅人。杜甫自身をさす。李陵『與蘇武詩三首』其三[攜手上河梁,遊子暮何之?]
この頃の作品にも以下の通り使う。
758年乾元元年罷諌官後作③『遣興三首其二』
「客子念故宅,三年門巷空。」759年『夢李白二首 其二』「浮雲終日行、遊子久不至。」757年『送樊二十三侍禦赴漢中判官』「居人莽牢落,遊子封迢遞。」757年『曲江三章 章五句』「遊子空嗟垂二毛,白石素沙亦相蕩,哀鴻獨叫求其曹。」
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豈但歲月暮?重來未有期。
ただ、この年のくれにさしかかろうとしているが、ここには再びもう来ることはないだろうと思うと侘しいことである。
・歲月暮 『古詩十九、第一首』「思君令人老、歳月忽已晩。」(君を思い 人をして老いせしむ、歳月 忽ち已に晩れる。)
古詩十九首 (1) 漢詩<88>Ⅱ李白に影響を与えた詩520 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1377

未有期 期は約束。時期。
蘇武『詩四首』其二「行役在戰場,相見未有期。」(行役戰場に在り、相い見る未だ期有らず。)


晨發赤穀亭,險艱方自茲。
日出のころに赤谷の駅を出発するのである、行く路の艱難はこれからいよいよ始まるということになる。
・赤穀亭 赤谷の宿場駅。
・方自茲 任昉『贈郭桐廬出谿口見候餘既未至郭仍進村維』「滄江路穹此,湍險方自茲。」


亂石無改轍,我車已載脂。
道の乱れた石がすごいのにわだちを別に変えられる道はないし、我々一行の車には道に入る前に油を指している。
・無改轍 この路以外に別の道はないという意。曹植 『贈白馬王彪、第一章』「中逵絶無軌、改轍登高岡。」(中逵にも絶えて軌無し、轍を改めて高岡に登る。) 
・載脂 載:すなわち。脂:車に油を指すこと。
『詩経、邶風、泉水』「載脂載牽、還車言邁。」(載ち脂さし載ち牽さす、車を還して言に邁かむ。)