晩晴 杜甫 成都(4部)浣花渓の草堂(4 - 29)
草堂の晩に晴れたことをのべる。上元二年の夏の作。
この14首はそれぞれテーマを設定している。この詩は後漢の王符についてである。
2013年3月24日 | 同じ日の紀頌之5つのブログ |
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詩 題:晩晴 杜甫 成都(4部)浣花渓の草堂(4 - 29)
作時761年5月杜甫50歳
掲 載; 杜甫1000首の434首目-場面4 - 29
杜甫ブログ1500回予定の-617回目 40727
草堂の晩に晴れたことをのべる。上元二年の夏の作。
成都2年目の律詩のシリーズ
・春水 ・江亭 ・早起 ・可惜 ・落日 ・獨酌 ・徐步 ・寒食 ・石鏡 ・琴台 ・朝雨 ・晚晴 ・高楠 ・惡樹
この14首はそれぞれテーマを設定している。この詩は後漢の王符についてである。
晚晴
村晚驚風度,庭幽過雨沾。
村に夕暮れが訪れてくる。はげしい風がふきわたっている。そうして草堂の庭は隠棲生活に似合う静かに通り雨にうるおされる。
夕陽薰細草,江色映疏簾。
雨が過ぎて香りをはなつ細かな草花などに夕日が射し始める。庭先の濯錦江に夕日を移した反照が目の粗い簾に映っている。
書亂誰能帙,杯幹可自添。
読みかけの書物はみだれておいているのだが、だれかそれを文巻のなかにとりかたづけてくれないものか、杯をのみ干して、更に自分で手酌をして愉しむのである。
時聞有餘論,未怪老夫潛。
こんなふうに隠遁生活を楽しんでいて、時として時世を論じて『潜夫論』のようなことを聞くのである。こうしてみればこのわたしも老夫としてもう表に出ないで潜んでいるとしてもなにも後漢王符のように怪しいもののようなことではないのである。
(晩 晴)
村晩れて驚風【けいふう】度【わた】る、庭 幽にして過雨に需【うるお】う。
夕陽【せきよう】に細草【さいそう】薫る、江色 疎簾【それん】に映ず。
書亂れて誰か能く帙【ちつ】せん、杯き乾きて自ら添う可し。
時に聞く余論有るを、未だ怪しまず老夫の潜。
『晚晴』 現代語訳と訳註(本文)
村晚驚風度,庭幽過雨沾。
夕陽薰細草,江色映疏簾。
書亂誰能帙,杯幹可自添。
時聞有餘論,未怪老夫潛。
(下し文)
(晩 晴)
村晩れて驚風【けいふう】度【わた】る、庭 幽にして過雨に需【うるお】う。
夕陽【せきよう】に細草【さいそう】薫る、江色 疎簾【それん】に映ず。
書亂れて誰か能く帙【ちつ】せん、杯き乾きて自ら添う可し。
時に聞く余論有るを、未だ怪しまず老夫の潜。
(現代語訳)
村に夕暮れが訪れてくる。はげしい風がふきわたっている。そうして草堂の庭は隠棲生活に似合う静かに通り雨にうるおされる。
雨が過ぎて香りをはなつ細かな草花などに夕日が射し始める。庭先の濯錦江に夕日を移した反照が目の粗い簾に映っている。
読みかけの書物はみだれておいているのだが、だれかそれを文巻のなかにとりかたづけてくれないものか、杯をのみ干して、更に自分で手酌をして愉しむのである。
こんなふうに隠遁生活を楽しんでいて、時として時世を論じて『潜夫論』のようなことを聞くのである。こうしてみればこのわたしも老夫としてもう表に出ないで潜んでいるとしてもなにも後漢王符のように怪しいもののようなことではないのである。
(訳注)
晚晴
夕方になって晴れた草堂のまわりのことをのべ、後漢の王符を自分自身になぞらえているしである。761年夏の作である。
村晚驚風度,庭幽過雨沾。
村に夕暮れが訪れてくる。はげしい風がふきわたっている。そうして草堂の庭は隠棲生活に似合う静かに通り雨にうるおされる。○驚風 つよい風。
〇度 渡に同じ。
○過雨 とおりあめ。
夕陽薰細草,江色映疏簾。
雨が過ぎて香りをはなつ細かな草花などに夕日が射し始める。庭先の濯錦江に夕日を移した反照が目の粗い簾に映っている。
・薰細草 雨に潤った夏草に夕日が当たって香りを放つということ。この時代あったかどうかわからないが薰衣草を想像される。薰衣草:ラベンダー(lavender、lavandula)は、シソ科の背丈の低い常緑樹の1属である。学名でラヴァンドゥラ、ラヴァンデュラとも。
書亂誰能帙,杯幹可自添。読みかけの書物はみだれておいているのだが、だれかそれを文巻のなかにとりかたづけてくれないものか、杯をのみ干して、更に自分で手酌をして愉しむのである。
○峡 書物の損傷を防ぐために包む覆い。厚紙を芯(しん)とし、表に布をはって作る。文巻(ふまき)。文包(ふみづつみ)。
○添 酒をつぎそえる。ここは手酌ということ。
時聞有餘論,未怪老夫潛。
こんなふうに隠遁生活を楽しんでいて、時として時世を論じて『潜夫論』のようなことを聞くのである。こうしてみればこのわたしも老夫としてもう表に出ないで潜んでいるとしてもなにも後漢王符のように怪しいもののようなことではないのである。
〇時聞 聞とは自他ともにきくこと。
○余論 当時の貴族主義的風潮に強く対抗した「潜夫の論」をさす。『潜夫論』中国,後漢の社会批判の書。10巻36編。王符(2世紀中ごろ)の著で,桓帝のときに成立。王符は,張衡(ちようこう)や馬融らと親交をもったが,門閥勢力の盛行した当時の官界に合わなかった。皇甫規のように彼の節操を慕う高官もあったが,昇進の機会のないまま隠退。発憤して著述に専念,社会の積弊を暴露して時政を攻撃した。《潜夫論》の〈潜夫〉とは世に埋れて名をなさない者の意で,もとより王符の姿勢を表す。内容は,学識を積んだ賢能の任用を説く能力主義や民生安定のための重農思想を主張し,とくに西北辺境の国防策と富貴の奢侈に警告し,さらに迷信の打破を強調して,当時の貴族主義的風潮に強く対抗した。
○未怪 怪とは自他ともに怪しむ行動までしようということ。
○老夫潜 『潜夫論』を著した王符(85?~162?)のこと。老夫ということで、とほじしんをいしきしている。
王符(85?~162?)とは、字は節信。安定郡臨経の人。若いころから学問を好み、名利を求める心が薄く、時風や世俗に従わなかった。生涯、官途につかなかった。気を万物の根源と論じ、農業や養蚕を富国の本と強調した。『潜夫論』。
晚晴
村晚驚風度,庭幽過雨沾。
夕陽薰細草,江色映疏簾。
書亂誰能帙,杯幹可自添。
時聞有餘論,未怪老夫潛。
(晩 晴)
村晩れて驚風【けいふう】度【わた】る、庭 幽にして過雨に需【うるお】う。
夕陽【せきよう】に細草【さいそう】薫る、江色 疎簾【それん】に映ず。
書亂れて誰か能く帙【ちつ】せん、杯き乾きて自ら添う可し。
時に聞く余論有るを、未だ怪しまず老夫の潜。