杜甫《天邊行》 蜀中転々 わたしは九回も他人に手紙を頼み預けて洛陽へやったが、十年ばかり兄弟からのたよりが無いのが気になっているのである。

 

2013年9月20日  同じ日の紀頌之5つのブログ
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卷別: 卷二一九  文體: 樂府 

作者: 杜甫  763  廣德元年52

作地點: 成都(劍南道北部 / 益州 / 成都

及地點: 隴右節度使 (隴右道東部 鄯州 隴右節度使) 、洛陽 (都畿道 河南府 洛陽) 別名:洛城、洛、東洛、洛邑、京洛、河洛、洛下     

起句の二字を切りとって題とする、故郷の弟を思うことをのべる。永泰元年三月草堂にあっての作。

 

 

天邊行

天邊老人歸未得,日暮東臨大江哭。

天のはて、国境近くにいるこの老人はいまだに故郷にかえることができずにいる、この日も日ぐれになって、東のかた大江にのぞんでなげいているのである。

隴右河源不種田,胡騎羌兵入巴蜀。

隴右・河源の地方は戦乱のために田地にうえつけができず、それは胡騎や羌兵がこの蜀までいりこんできたからである。

洪濤滔天風拔木,前飛禿鶖後鴻鵠。

また春水に川水が増水し、おおきな波は天にはびこり、大風は木を抜き、前には禿鷲が吹きとばされ、うしろには鴻鵠がとばされている。

九度附書向洛陽,十年骨肉無消息。

わたしは九回も他人に手紙を頼み預けて洛陽へやったが、十年ばかり兄弟からのたよりが無いのが気になっているのである。

 

(天辺行)

天辺の老人帰ること未だ得ず、日暮東大江に臨みて笑す。

隴右 河源 田を種えず、胡騎 羌兵 巴蜀に入る。

洪涛 天に滔り 風木を抜く、前に飛ぶは禿鶖 後には鴻鵠。

九度書を附して洛陽に向かわしむ、十年骨肉消息なし。

 

 

『天邊行』 現代語訳と訳註

(本文)

天邊行

天邊老人歸未得,日暮東臨大江哭。

隴右河源不種田,胡騎羌兵入巴蜀。

洪濤滔天風拔木,前飛禿鶖後鴻鵠。

九度附書向洛陽,十年骨肉無消息。

 

 

(下し文)

(天辺行)

天辺の老人帰ること未だ得ず、日暮東大江に臨みて笑す。

隴右 河源 田を種えず、胡騎 羌兵 巴蜀に入る。

洪涛 天に滔り 風木を抜く、前に飛ぶは禿鶖 後には鴻鵠。

九度書を附して洛陽に向かわしむ、十年骨肉消息なし。

 

 

(現代語訳)

天のはて、国境近くにいるこの老人はいまだに故郷にかえることができずにいる、この日も日ぐれになって、東のかた大江にのぞんでなげいているのである。

隴右・河源の地方は戦乱のために田地にうえつけができず、それは胡騎や羌兵がこの蜀までいりこんできたからである。

また春水に川水が増水し、おおきな波は天にはびこり、大風は木を抜き、前には禿鷲が吹きとばされ、うしろには鴻鵠がとばされている。

わたしは九回も他人に手紙を頼み預けて洛陽へやったが、十年ばかり兄弟からのたよりが無いのが気になっているのである。

 

 

(訳注)

天邊行

起句の二字を切りとって題とする、故郷の弟を思うことをのべる。永泰元年三月草堂にあっての作。

 

天邊老人歸未得,日暮東臨大江哭。

天のはて、国境近くにいるこの老人はいまだに故郷にかえることができずにいる、この日も日ぐれになって、東のかた大江にのぞんでなげいているのである。

○天辺老人 天のはて、国境近くにいる老人、自己をさす。

○帰 故郷にかえる。

○大江 錦江。

 

隴右河源不種田,胡騎羌兵入巴蜀。

隴右・河源の地方は戦乱のために田地にうえつけができず、それは胡騎や羌兵がこの蜀までいりこんできたからである。

○隴右・河源 甘粛省西北部、吐蕃に陥った地方をいう、広徳元年に吐蕃は隴右を陥れた。

○胡騎 吐蕃をさす。

○羌兵 党項売、揮奴刺の類をさす。

○巴蜀 蜀地をさす、広徳元年十二月、吐蕃は松・維・の三州を陥れた。

 

洪濤滔天風拔木,前飛禿鶖後鴻鵠。

また春水に川水が増水し、おおきな波は天にはびこり、大風は木を抜き、前には禿鷲が吹きとばされ、うしろには鴻鵠がとばされている。

○滔天 天にみなぎる、天までみなぎること。きわめて勢いが盛んなこと。「尚書」(尭典)にみえる。

○風抜木 永泰元年三月辛亥、大風が木を抜いた。

○禿鶖 はげたか。

○鴻鵠 鴻はおおとり。鵠は白鳥の類。

 

九度附書向洛陽,十年骨肉無消息。

わたしは九回も他人に手紙を頼み預けて洛陽へやったが、十年ばかり兄弟からのたよりが無いのが気になっているのである。

〇九度 九回も、たびたびの意であろう。

○附書 手紙をひとにあつらえる。

○洛陽 杜甫の故郷。

〇十年 天宝十四載より永泰元年まで。

○骨肉 洛陽にあった弟をさす。

○消息 たより。