杜甫《西山,三首之一》酒瓶の境といわれる荒れた山脈の頂がある。吐蕃の州は積雪のあるあたりである。これをふせぐために味方は城を築くのに白帝の居るかような高いところに依り、兵糧をはこぶのに青天にのぼるほどの困難をしているということだ。
709 《西山,三首之一〔即岷山,捍阻羌夷,全蜀巨障。〕》
蜀中転々 杜甫 <616> 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3390 杜甫詩1000-616-872/1500
詩 題:西山,三首之一〔即岷山,捍阻羌夷,全蜀巨障。〕
作時:763年 廣德元年 杜甫52歳
掲 載; 杜甫1000首の616首目-場面
杜甫ブログ1500回予定の-872回目
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西山,三首之一〔即岷山,捍阻羌夷,全蜀巨障。〕
(吐蕃が松州に攻め込み、その境となる雪嶺山脈、いわゆる西山のことについて詠う三首の其の一)
彝界荒山頂,蕃州積雪邊。
酒瓶の境といわれる荒れた山脈の頂がある。吐蕃の州は積雪のあるあたりである。
築城依白帝,轉粟上青天。
これをふせぐために味方は城を築くのに白帝の居るかような高いところに依り、兵糧をはこぶのに青天にのぼるほどの困難をしているということだ。
蜀將分旗鼓,羌兵助井泉
そうして蜀武将は旗鼓を分かち、挟み撃ちをしてこれをふせぎ、降参した羌兵までが敵に内応して鎧鍵のことの手伝いをしてくれている。
西戎背和好,殺氣日相纏。
西南国境、吐蕃のものが和好を破った。そのために、蜀全域にこうして日日穀気がまといつつあるということなのだ。
彝界【いかい】荒山の頂にあり,蕃の州は積雪の邊にある。
築城 白帝に依り、転粟【てんぞく】青天に上る。
蜀の将 旗鼓を分かち、羌の兵 井泉【がいせん】を助く。
西南 和好に背き、殺気 日【ひご】とに相い纏う。
其二
辛苦三城戍,長防萬里秋。
煙塵侵火井,雨雪閉松州。
風動將軍幕,天寒使者裘。
漫山賊營壘,回首得無憂。
其三
子弟猶深入,關城未解圍。
蠶崖鐵馬瘦,灌口米船稀。
辯士安邊策,元戎決勝威。
今朝烏鵲喜,欲報凱歌歸。
『西山,三首之一』現代語訳と訳註
(本文)
西山,三首之一〔即岷山,捍阻羌夷,全蜀巨障。〕
彝界荒山頂,蕃州積雪邊。
築城依白帝,轉粟上青天。
蜀將分旗鼓,羌兵助井泉
西戎背和好,殺氣日相纏。
(下し文)
彝界【いかい】荒山の頂にあり,蕃の州は積雪の邊にある。
築城 白帝に依り、転粟【てんぞく】青天に上る。
蜀の将 旗鼓を分かち、羌の兵 井泉【がいせん】を助く。
西南 和好に背き、殺気 日【ひご】とに相い纏う。
(現代語訳)
(吐蕃が松州に攻め込み、その境となる雪嶺山脈、いわゆる西山のことについて詠う三首の其の一)
酒瓶の境といわれる荒れた山脈の頂がある。吐蕃の州は積雪のあるあたりである。
これをふせぐために味方は城を築くのに白帝の居るかような高いところに依り、兵糧をはこぶのに青天にのぼるほどの困難をしているということだ。
そうして蜀武将は旗鼓を分かち、挟み撃ちをしてこれをふせぎ、降参した羌兵までが敵に内応して鎧鍵のことの手伝いをしてくれている。
西南国境、吐蕃のものが和好を破った。そのために、蜀全域にこうして日日穀気がまといつつあるということなのだ。
(訳注)
西山,三首之一〔即岷山,捍阻羌夷,全蜀巨障。〕
(吐蕃が松州に攻め込み、その境となる雪嶺山脈、いわゆる西山のことについて詠う三首の其の一)
吐蕃が松州を囲んだときのことをのべる、雪嶺がその境にあるので「西山」と題した。
○西山 雪嶺をいう、吐蕃との接境である。
〔即岷山,捍阻羌夷,全蜀巨障。〕
〔西山とは岷山を云う、羌夷からの攻撃を阻み守る、蜀全域の大きな禍から。〕
彝界荒山頂,蕃州積雪邊。
酒瓶の境といわれる荒れた山脈の頂がある。吐蕃の州は積雪のあるあたりである。
○彝界 酒瓶の境といわれる成都盆地の西側の山脈を云う。
築城依白帝,轉粟上青天。
これをふせぐために味方は城を築くのに白帝の居るかような高いところに依り、兵糧をはこぶのに青天にのぼるほどの困難をしているということだ。
○依白帝 白帝は西方をつかさどる帝(かみ)、その帝のいるところに依っているとは高いことをいう。
○轉粟 兵糧をはこぶこと。
○上青天 山をのぼることの高いことをたとえていう。
蜀將分旗鼓,羌兵助井泉
そうして蜀武将は旗鼓を分かち、挟み撃ちをしてこれをふせぎ、降参した羌兵までが敵に内応して鎧鍵のことの手伝いをしてくれている。
〇分 部隊に分配する。
○鎧鍵 鎧は兜、鍵は小さい矛である。
○羌兵 唐に降参した羌種、吐蕃の兵。
○助 吐蕃の乱に内応することをいうのであろう。
西戎背和好,殺氣日相纏。
西南国境、吐蕃のものが和好を破った。そのために、蜀全域にこうして日日穀気がまといつつあるということなのだ。
○西戎 蜀の吐蕃と境を接した地をいう、西戎とは都よりみて西南の意。一本に戎を南に作るのは簡明であるといえよう。