安史軍の殲滅は人々を安史の乱のまえに還した。敗残兵はそれらの出身でもって自分らでうたがいあって自滅した。朝廷に上がる高級官僚たちは、差配も名目上のもので断絶したかりのものであったし、君主や主に対する酬いることはそれぞれがどういうわけか遅れた。

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卷別: 卷二二七  文體: 五言律詩 

詩題: 有感,五首之五 



有感,五首之一  

(その一は西域のことについて思うことがある)

將帥蒙恩澤,兵戈有年。

郭子儀を筆頭にした大将たちは、天子の慈しみを大いに受けているというのに、戦火はこの年内にもまだまだあるのだ。

至今勞聖主,何以報皇天。

今に至っても聖天子にも苦労が絶えないし、そんなことでは、皇天子にどうやって恩を酬いたらよいというのか。

白骨新交戰,雲臺舊拓邊。

この騒乱の中に路上や原野に放置された白骨を片付けてもいないうちに、新たに交戦をしているし、漢の光武帝は洛陽に雲台を設置して国境を開拓して異民族から防衛をすることをしたのにその雲台も古くしてしまっている。
乘槎斷消息,無處覓張騫。

こんなことではわたしが船筏の乗船して消息を絶ってしまいたいと思うようになるし、西域の情報を的確に知らしめて、大勝利に貢献した張騫のような人物を探し求めてもどこにもいやしないというものだ。

 


(感有り,五首の一)  

將帥 恩澤を蒙り,兵戈 年に有る

今に至り聖主勞し,何を以て 皇天に報ゆ。

白骨 交戰を新たにし,雲臺 拓邊を舊す。

槎に乘じて消息を斷つは,張騫を覓むる處無し。

華山001 


有感,五首之二  

(その二は北域幽州のこと、西と南の地域への政策批判について詠う)

幽薊餘蛇豕,乾坤尚虎狼。

北域幽州・薊州には蛇や豬などであふれた。天上天下はいまだなお虎や狼だらけである。

諸侯春不貢,使者日相望。

その地の諸侯は前年中にしないといけないのに春というのに貢納しないし、租庸使は困って朝廷に報告し援軍や援助を求めても 朝廷からの使者は一日中ただ待ちのぞんでいるのだ。

慎勿吞青海,無勞問越裳。

北西部の青海は吐蕃に侵略されたままで何もしないで慎んでいることはないはずだし、五嶺山脈を越えた南のヴェトナムの異民族に問いかけて講和する努力もしていない。

大君先息戰,歸馬華山陽。  

代宗は今まず、戰が終結して一息ついているところであり、やっと馬でもって華山を越えて、長安に帰ったところだ。

 

(感有り,五首の二)  

幽薊 蛇豕を餘し,乾坤 尚お虎狼あり。

諸侯 春貢がず,使者 日び相い望む。

慎む勿れ青海を吞むを,勞しむ無し 越裳を問うを。

大君 先ず戰を息み,馬を歸すは華山の陽に。  

 

有感,五首之三 

(その三は都を洛陽に移すというが、そのことについて思うことがある)

洛下舟車入,天中貢賦均。

洛陽には水路と陸路を整備して船と車が入れるようにするため、朝廷は納貢賦役をひとしく加重された。

日聞紅粟腐,寒待翠華春。

それなのに日々聞かれるようになるのは実る稲が腐るし寒さが続き緑の花さく春も遅くなった。

莫取金湯固,長令宇宙新。

金城湯池の守りを固めることを取り去ることはいけないし、この天下世界を新しくすることを使命としなければいけないのだ。

不過行儉德,盜賊本王臣。  


倹約と仁徳を行い華美・奢侈の行きすぎをやめ、今はびこる盗賊たちはもともと奢侈と仁徳から漏れた天子の家臣たちだったのだ。

 

(感有り,五首の三) 

洛下 舟車入るに,天中 貢賦均す。

日に聞く 紅粟腐り,寒待す 翠華の春を。

金湯の固を取る莫れ,長く宇宙新たにしましむ。

儉德を行うを過ぎずして,盜賊 本もと王の臣なり。

 

 Ta唐 長安近郊圖  新02

有感,五首之四 

(その四は朝廷のあり方について思うことがある)

丹桂風霜急,青梧日夜凋。

天子の庭、朝廷には風雲急を告げ厳しい霜にあっていて、梧桐の青葉の後宮にも昼も夜もはなやいだことはなく凋落の様相を呈している。

由來強幹地,未有不臣朝。

この地はもともと強い地の利を持っていて国の根幹をなすところなのだ。それなのにいまだに家臣たちで朝廷ウィ立て直すことさえできずにいるのだ。

受鉞親賢往,卑宮制詔遙。

親族や賢臣の者たちが武器を受けたならば朝廷のもとに行かねばならない、今は卑しいものによって宮殿を征圧されており天子の詔もはるかとどかない状態なのだ。

終依古封建,豈獨聽簫韶。

今は古の仁徳と、忠義の封建制度というものは終焉したというのか。どうしてなのだろうか、一人だけでも虞舜の時代の音楽の簫韶九成をきくという、仁徳で施政するということができないのだろうか。

 

有感,五首之四 

丹桂 風霜急なり,青梧 日夜凋む。

強幹の地に由來し,未だ臣朝ならざるに有らず。

鉞を受けて 親賢往き,宮を卑くして詔を制す遙なり。

古の封建に依るを終る,豈に獨り簫韶を聽かん。

 

其五

(その五は 国を治める筋道が狂っているということについて思うことがある)

盜滅人還亂,兵殘將自疑。

安史軍の殲滅は人々を安史の乱のまえに還した。敗残兵はそれらの出身でもって自分らでうたがいあって自滅した。

登壇名假,報主爾何遲。

朝廷に上がる高級官僚たちは、差配も名目上のもので断絶したかりのものであったし、君主や主に対する酬いることはそれぞれがどういうわけか遅れた。

領郡輒無色,之官皆有詞。

所領や郡域のものたちもどうしてかどっち附かずという色を見せない。官僚の仕事は皆が詞にして言うだけにした。

願聞哀痛詔,端拱問瘡痍。

皆が願うことは適切な天子の詔であって、悲しいこと、傷ましい天子の言葉ではない。國を治める道筋が満身創痍であることが問題なのである。


感有り,五首の五 

盜滅 人 還える亂る,兵殘 將て自疑す。

登壇 名 假に,主に報うは 爾 何に遲る。

領郡 輒んぞ色無し,之官 皆 詞有り。

願いて聞く 哀痛の詔,端拱 瘡痍を問う。   



『有感,五首之五』 現代語訳と訳註

(本文)

有感,五首之五 

盜滅人還亂,兵殘將自疑。

登壇名假,報主爾何遲。

領郡輒無色,之官皆有詞。

願聞哀痛詔,端拱問瘡痍。


(下し文)

感有り,五首の五 

盜滅 人 還える亂る,兵殘 將て自疑す。

登壇 名 假にち,主に報うは 爾 何に遲る。

領郡 輒んぞ色無し,之官 皆 詞有り。

願いて聞く 哀痛の詔,端拱 瘡痍を問う。  


(現代語訳)

(その五は 国を治める筋道が狂っているということについて思うことがある)

安史軍の殲滅は人々を安史の乱のまえに還した。敗残兵はそれらの出身でもって自分らでうたがいあって自滅した。

朝廷に上がる高級官僚たちは、差配も名目上のもので断絶したかりのものであったし、君主や主に対する酬いることはそれぞれがどういうわけか遅れた。

所領や郡域のものたちもどうしてかどっち附かずという色を見せない。官僚の仕事は皆が詞にして言うだけにした。

皆が願うことは適切な天子の詔であって、悲しいこと、傷ましい天子の言葉ではない。國を治める道筋が満身創痍であることが問題なのである。



(訳注)

有感,五首之五

(その五は 国を治める筋道が狂っているということについて思うことがある)


盜滅 還亂,兵殘 自疑

安史軍の殲滅は人々を安史の乱のまえに還した。敗残兵はそれらの出身でもって自分らでうたがいあって自滅した。

「盜」安史軍は各地で略奪の限りを尽くした。

「滅」10年近くかかって安史軍は殲滅された。

「自疑」安史軍は寄せ集めの軍隊で、その軍の中で勢力争いをして自滅したことをいう。


登壇 ,報主 何遲

朝廷に上がる高級官僚たちは、差配も名目上のもので断絶したかりのものであったし、君主や主に対する酬いることはそれぞれがどういうわけか遅れた。

「登壇」寺廟道觀の壇をいうが、ここでは、朝廷や幕府の施政側の高級官僚のこと。


領郡 輒無色 ,之官 皆有詞

所領や郡域のものたちもどうしてかどっち附かずという色を見せない。官僚の仕事は皆が詞にして言うだけにした。

「領郡」潘鎮、郡令。

「無色」無気力、忠誠信を持って仕事をしないこと。


願聞 哀痛 ,端拱 瘡痍

皆が願うことは適切な天子の詔であって、悲しいこと、傷ましい天子の言葉ではない。國を治める道筋が満身創痍であることが問題なのである。

「詔」天子の詔。ここでは適切な詔が必要ということ。

「端拱」國を治める道筋。

「問」問題点があること。

大明宮-座標02

 

 

 

 

 

Ta唐 長安近郊圖  新02 

 

 

木蘭02 

 

 



有感,五首之五