杜甫《空城》一夜で5000kmを 走るという8頭の駿馬は穆王という良い天子のもとだから付き従ったのであり、(何もしない、強くもない代宗のまわりには賢臣がいなくて)群臣の者たちは、武力の強い天子に盲目的に従うだけだ。
廣徳2年764-59 《空城【城上】》 ふたたび成都 杜甫<735> 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4005 杜甫詩1500-735-972/250023
製作年: 764年 廣德二年 53歲
卷別: 卷二二七 文體: 五言律詩
詩題: 城上【空城】
及地點: 巴西 (劍南道北部 綿州 巴西)
空城〔城上〕
(何にも施政が届かない空しい城郭を詠う)
草滿巴西綠,空城白日長。
希望の春で草草が成長している巴西辺りには緑いっぱいである。誰もいない空しい城郭には日差しが長く当たっている。
風吹花片片,春動水茫茫。
風が吹けば、さきほこるはなはゆらゆらゆれているし、春景色に増水した春水にゆったりと遙か先まで流れて行く。
八駿隨天子,群臣從武皇。
一夜で5000kmを 走るという8頭の駿馬は穆王という良い天子のもとだから付き従ったのであり、(何もしない、強くもない代宗のまわりには賢臣がいなくて)群臣の者たちは、武力の強い天子に盲目的に従うだけだ。
遙聞出巡守,早晚遍遐荒。
遠くのほうだけで聞こえるという、国を立て直すためには主要の各地を視察・巡守の出征をすることであるの声だが、(これに全く耳をかたむけない代宗であるから、)まあじきに、ここの空城のようにどこもかしこも、遠く離れた未開の異民族の地のようになってしまうことだろう。
詩文(含異文):
草滿巴西綠,空城白日長【城空白日長】。
風吹花片片,春動水茫茫【春送雨茫茫】【春蕩水茫茫】。
八駿隨天子,群臣從武皇。
遙聞出巡守,早晚遍遐荒。
空城〔城上〕
草滿ちる巴西の綠,空城 白日長し。
風吹き花片片たりて,春動き水茫茫たり。
八駿 天子に隨い,群臣 武皇に從う。
遙に聞く巡守に出るを,早晚 遐荒なるを遍ねからん。
『空城〔城上〕』現代語訳と訳註
(本文)
空城〔城上〕
草滿巴西綠,空城白日長。
風吹花片片,春動水茫茫。
八駿隨天子,群臣從武皇。
遙聞出巡守,早晚遍遐荒。
(下し文)
空城〔城上〕
草滿ちる巴西の綠,空城 白日長し。
風吹き花片片たりて,春動き水茫茫たり。
八駿 天子に隨い,群臣 武皇に從う。
遙に聞く巡守に出るを,早晚 遐荒なるを遍ねからん。
(現代語訳)
(何にも施政が届かない空しい城郭を詠う)
希望の春で草草が成長している巴西辺りには緑いっぱいである。誰もいない空しい城郭には日差しが長く当たっている。
風が吹けば、さきほこるはなはゆらゆらゆれているし、春景色に増水した春水にゆったりと遙か先まで流れて行く。
一夜で5000kmを 走るという8頭の駿馬は穆王という良い天子のもとだから付き従ったのであり、(何もしない、強くもない代宗のまわりには賢臣がいなくて)群臣の者たちは、武力の強い天子に盲目的に従うだけだ。
遠くのほうだけで聞こえるという、国を立て直すためには主要の各地を視察・巡守の出征をすることであるの声だが、(これに全く耳をかたむけない代宗であるから、)まあじきに、ここの空城のようにどこもかしこも、遠く離れた未開の異民族の地のようになってしまうことだろう。
(訳注)
空城〔城上〕
(何にも施政が届かない空しい城郭を詠う)
○城 綿州巴西の城。
ここ数年、この地は叛乱軍の者たちにいれかわりたちかわり支配され、異民族にも支配された。その間に住民は逃散したということで、荒れ果てた城郭をいうのだが、詩の内容からすると、代宗の無策を批判して、国中が「空城」になってしまうと憂いているのである。全部の聯が対句となっている。
草滿巴西綠,空城白日長。
希望の春で草草が成長している巴西辺りには緑いっぱいである。誰もいない空しい城郭には春の日差しが長く当たっている。
風吹花片片,春動水茫茫。
風が吹けば、さきほこるはなはゆらゆらゆれているし、春景色に増水した春水にゆったりと遙か先まで流れて行く。
○片々 風が吹いては長い甫方向に向いてしまうこと。強いものには巻かれろ。風の吹くままに揺れていくことをいう。① 二つあるうちの一方。かたほう。かたつかた。 ② かたすみ。かたわら。
○春動 春けしが変わっていくこと。ここではまず雪解けで河川の水量が増水し、万物が成長していくさまをいう。この聯でこれらの語「片片・茫茫」を次の聯のかたや「穆王八駿」にたいしてどこ捜しても、遙か先まで「群臣」しかいないということをあらわしている。
○茫茫 1 広々としてはるかなさま。「―とした大海原」「―たる砂漠」 2 ぼんやりかすんではっきりしないさま。「―たる記憶」「―と暗路(やみじ)に物を探るごとく」〈露伴・五重塔〉 3 草・髪などが伸びて乱れている。
八駿隨天子,群臣從武皇。
一夜で5000kmを 走るという8頭の駿馬は穆王という良い天子のもとだから付き従ったのであり、(何もしない、強くもない代宗のまわりには賢臣がいなくて)群臣の者たちは、武力の強い天子に盲目的に従うだけだ。
○八駿 穆王八駿のこと。中国の伝説に登場する8頭の駿馬(しゅんめ・よく走る 馬の称)。 紀元前11世紀頃の周王朝の穆王が所有していたとされる。 土を踏まない ほど速く走れる「絶地(ぜっち)」、鳥を追い越せる「翻羽(ほんう)」、一夜で5000kmを 走るという。
遙聞出巡守,早晚遍遐荒。
遠くのほうだけで聞こえるという、国を立て直すためには主要の各地を視察・巡守の出征をすることであるの声だが、(これに全く耳をかたむけない代宗であるから、)まあじきに、ここの空城のようにどこもかしこも、遠く離れた未開の異民族の地のようになってしまうことだろう。