剣南東川節度の幕府で秋風が吹いてくるようになり、夜昼清々しくなってきた、それに、あわい雲やまばらな雨が高い城をとおりすぎてゆく。木の葉の繁りの中心部あたりにあかく見えていた木の実が見ている間にぽとりと落ちる、階の表面についている青苔が古ぼけながらまた新しく生える。
《院中晚晴懷西郭茅舍》杜甫index-14 764年 杜甫<780> 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4565 杜甫詩1500-780-1084/2500
製作年: 764年 廣德二年 53歲
卷別: 卷二二八 文體: 七言律詩
杜少陵集 巻十四
詩題: 院中晚晴懷西郭茅舍
及地點: 草堂 (劍南道北部益州 成都) 別名:一室、西郭茅舍
浣花溪 (劍南道北部 益州 益州) 別名:花溪
院中晚晴懷西郭茅舍
(成都城郭の東にあった節度使官邸の奥座敷で夕晴れにあい城西の先にある草堂のことをおもってよんだ詩。広徳二年秋の作。)
幕府秋風日夜清,澹雲疏雨過高城。
剣南東川節度の幕府で秋風が吹いてくるようになり、夜昼清々しくなってきた、それに、あわい雲やまばらな雨が高い城をとおりすぎてゆく。
葉心朱實看時落,階面青苔先自生。
木の葉の繁りの中心部あたりにあかく見えていた木の実が見ている間にぽとりと落ちる、階の表面についている青苔が古ぼけながらまた新しく生える。
複有樓臺銜暮景,不勞鐘鼓報新晴。
近くの楼台をみるとまた夕ぐれの日光が射していてまるで日差しをふくんでいるようだ、これでは鐘鼓の音の知らせを煩わすまでもなく、新たに天気が晴れている知らせをしなくてもわかるというものだ。
浣花溪裏花饒笑,肯信吾兼吏隱名。
さて、私は、浣花渓と名付けたのは花いっぱいの場所にしたかったからで、そこにはもう多くの秋の花が咲いているだろう、それを見ずに私がここにいるというのは、半官半隠を自負していたのに、果たしてどうだか疑わしく、隠遁者としての名は兼有していないということにしかならないのである。
(院中の晩晴に西郭の茅合を懐う)
幕府 秋風 日夜清し、澹雲 疏雨 高城を過ぐ。
葉心の朱実は看時に落ち、階面の青苔 先ず更に生ず。
復た楼台の暮景を銜む有り、労せず鐘鼓の新晴を報ずるを。
浣花渓 裏花 饒く笑う、肯て信ぜんや 吾 吏隠の名を兼ぬるを。
『院中晚晴懷西郭茅舍』 現代語訳と訳註
(本文)
院中晚晴懷西郭茅舍
幕府秋風日夜清,澹雲疏雨過高城。
葉心朱實看時落,階面青苔先自生。
複有樓臺銜暮景,不勞鐘鼓報新晴。
浣花溪裏花饒笑,肯信吾兼吏隱名。
(下し文)
(院中の晩晴に西郭の茅合を懐う)
幕府 秋風 日夜清し、澹雲 疏雨 高城を過ぐ。
葉心の朱実は看時に落ち、階面の青苔 先ず更に生ず。
復た楼台の暮景を銜む有り、労せず鐘鼓の新晴を報ずるを。
浣花渓 裏花 饒く笑う、肯て信ぜんや 吾 吏隠の名を兼ぬるを。
(現代語訳)
(成都城郭の東にあった節度使官邸の奥座敷で夕晴れにあい城西の先にある草堂のことをおもってよんだ詩。広徳二年秋の作。)
剣南東川節度の幕府で秋風が吹いてくるようになり、夜昼清々しくなってきた、それに、あわい雲やまばらな雨が高い城をとおりすぎてゆく。
木の葉の繁りの中心部あたりにあかく見えていた木の実が見ている間にぽとりと落ちる、階の表面についている青苔が古ぼけながらまた新しく生える。
近くの楼台をみるとまた夕ぐれの日光が射していてまるで日差しをふくんでいるようだ、これでは鐘鼓の音の知らせを煩わすまでもなく、新たに天気が晴れている知らせをしなくてもわかるというものだ。
さて、私は、浣花渓と名付けたのは花いっぱいの場所にしたかったからで、そこにはもう多くの秋の花が咲いているだろう、それを見ずに私がここにいるというのは、半官半隠を自負していたのに、果たしてどうだか疑わしく、隠遁者としての名は兼有していないということにしかならないのである。
(訳注)
院中晩晴懐西郭茅舎
(成都城郭の東にあった節度使官邸の奥座敷で夕晴れにあい城西の先にある草堂のことをおもってよんだ詩。広徳二年秋の作。)
○西郭茅舎 城西の郭の茅葺の小屋、浣花渓の杜甫草堂をさす。
幕府秋風日夜清,澹雲疏雨過高城。
剣南東川節度の幕府で秋風が吹いてくるようになり、夜昼清々しくなってきた、それに、あわい雲やまばらな雨が高い城をとおりすぎてゆく。
○幕府 剣南東川節度の幕府、厳武の幕府。
〇滴 すずしいこと。
○澹雲 あわいくも。
○疏雨 ばらばらあめ。
葉心朱實看時落,階面青苔先自生。
木の葉の繁りの中心部あたりにあかく見えていた木の実が見ている間にぽとりと落ちる、階の表面についている青苔が古ぼけながらまた新しく生える。
○葉心 心とは中央をいう。
○看時 みているときに。
○先 ふるぼけること。
複有樓臺銜暮景,不勞鐘鼓報新晴。
近くの楼台をみるとまた夕ぐれの日光が射していてまるで日差しをふくんでいるようだ、これでは鐘鼓の音の知らせを煩わすまでもなく、新たに天気が晴れている知らせをしなくてもわかるというものだ。
○銜暮景 夕ぐれの日光が射していてまるで日差しをふくんでいるようだ、、晴れたさまをいう。
○不労 わずらわすまでもない。
○鐘鼓報新晴 太鼓の音で鐘鼓の音の知らせを煩わすまでもなく、新たに天気が晴れている知らせをしなくてもわかるというものだ。
浣花溪裏花饒笑,肯信吾兼吏隱名。
さて、私は、浣花渓と名付けたのは花いっぱいの場所にしたかったからで、そこにはもう多くの秋の花が咲いているだろう、それを見ずに私がここにいるというのは、半官半隠を自負していたのに、果たしてどうだか疑わしく、隠遁者としての名は兼有していないということにしかならないのである。
○花饒笑 饒は多いこと。浣花渓という名称は杜甫がこの地にもともと花が咲いていたが、更に花を植えて、花が一杯の谷間という意味である。
○肯信 反語、不信とおなじ意。旧解に「信」字の主語を上旬の「花」としているが、省略されている「我」の字であると考えるのがよい。「我不レ信」とは言い換えれば「我自ズカラ疑り」ということである。
○吏隠名 役人と隠遁者と二つの名。この頃の隠遁者の理想は半官半隠ということであり、杜甫もそうしたいと思っていたことをいう。
(院中の晩晴に西郭の茅合を懐う)
幕府 秋風 日夜清し、澹雲 疏雨 高城を過ぐ。
葉心の朱実は看時に落ち、階面の青苔 先ず更に生ず。
復た楼台の暮景を銜む有り、労せず鐘鼓の新晴を報ずるを。
浣花渓 裏花 饒く笑う、肯て信ぜんや 吾 吏隠の名を兼ぬるを。
院中晚晴懷西郭茅舍
幕府秋風日夜清,澹雲疏雨過高城。
葉心朱實看時落,階面青苔先自生。
複有樓臺銜暮景,不勞鐘鼓報新晴。