ここへきてもむなしく、旅を強いられ客分となっている自分はいたずらに涙をながすだけで、この地の長官である主人(姪)の世話になろうなどとはと考えてはいけないと思っているのである。
765年永泰元年54歲-37 《題忠州龍興寺所居院壁》 杜甫index-15 杜甫<837> 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4920 杜甫詩1500-837-1155/2500
765年永泰元年54歲-37
年:765年永泰元年54歲
卷別: 卷二二九 文體: 五言律詩
詩題: 題忠州龍興寺所居院壁
作地點: 忠州(山南東道 / 忠州 / 忠州)
寫及地點:龍興寺 (山南東道忠州 忠州)
忠州 (山南東道忠州 忠州)
題忠州龍興寺所居院壁
忠州三峽內,井邑聚雲根。
小市常爭米,孤城早閉門。
空看過客淚,莫覓主人恩。
淹泊仍愁虎,深居賴獨園。
(忠州の竜興寺の寓居のおくざしきの壁にかきつけた詩。)
忠州は三峡の奥にあって県城の人家が崖壁のもとに集まっている。
小さい市場でいつも人が米を早く売りたいのと安く買おうと思うものとが争っているし、山の中のひとつポツンとある孤城であるから、夕方は早くから城門を閉じて防備するのである。
ここへきてもむなしく、旅を強いられ客分となっている自分はいたずらに涙をながすだけで、この地の長官である主人(姪)の世話になろうなどとはと考えてはいけないと思っているのである。
ひさしく滞在している間にも、虎におそわれるおそれがあるので、お寺にたよって、奥まった居室にひっこんでいるのである。
(忠州竜興寺の居る所の院壁に題す)
忠州は三峡の内、井邑 雲根に聚まる。
小市 常に米を争い、孤城 早く門を閉ず。
空しく看る 過客の涙、覓むる莫れ 主人の恩。
淹泊 仍お虎を愁い、深居 独園に頼る。
『題忠州龍興寺所居院壁』 現代語訳と訳註
(本文)
(含異文)
忠州三峽內,井邑聚雲根。
小市常爭米,孤城早閉門。
空看過客淚【豈看過客淚】,莫覓主人恩。
淹泊仍愁虎【淹薄仍愁虎】,深居賴獨園。
(下し文)
(忠州竜興寺の居る所の院壁に題す)
忠州は三峡の内、井邑 雲根に聚まる。
小市 常に米を争い、孤城 早く門を閉ず。
空しく看る 過客の涙、覓むる莫れ 主人の恩。
淹泊 仍お虎を愁い、深居 独園に頼る。
(現代語訳)
(忠州の竜興寺の寓居のおくざしきの壁にかきつけた詩。)
忠州は三峡の奥にあって県城の人家が崖壁のもとに集まっている。
小さい市場でいつも人が米を早く売りたいのと安く買おうと思うものとが争っているし、山の中のひとつポツンとある孤城であるから、夕方は早くから城門を閉じて防備するのである。
ここへきてもむなしく、旅を強いられ客分となっている自分はいたずらに涙をながすだけで、この地の長官である主人(姪)の世話になろうなどとはと考えてはいけないと思っているのである。
ひさしく滞在している間にも、虎におそわれるおそれがあるので、お寺にたよって、奥まった居室にひっこんでいるのである。
(訳注)
題忠州龍興寺所居院壁
(忠州の竜興寺の寓居のおくざしきの壁にかきつけた詩。)
永泰元年忠州にあっての作。
◍ 聞高常侍亡〔自注:忠州作。〕
◍ 宴忠州使君姪宅
◍ 禹廟〔此忠州臨江縣禹祠也。〕
◍ 題忠州龍興寺所居院壁
忠州三峽內,井邑聚雲根。
忠州は三峡の奥にあって県城の人家が崖壁のもとに集まっている。
〇三峡内 三昧には諸説があり、上流よりかぞえで夔峡(瞿塘峡)・巫峡・西陵峡(宜昌の西にあるもの)の三つをいうと為す説がよろしいようである。内とは杜甫が上流の成都から下ってきて、忠州にいて三峡の下流の方を「峡外」とし、上流側に三峡、忠州とあるので内とする、忠州は夔峡よりさらに上流にある。したがって、内である。
○井邑 井は田地九百畝を九等分した経界を意味するがここは忠州城郭の街衡の条理をいい、邑は県をいう。井邑は県城の人家をさす。
○雲根 崖壁のもとをいう、雲は、岩場や洞窟から生じるというのが古代の考え方。
小市常爭米,孤城早閉門。
小さい市場でいつも人が米を早く売りたいのと安く買おうと思うものとが争っているし、山の中のひとつポツンとある孤城であるから、夕方は早くから城門を閉じて防備するのである。
○争米 米を買おうとあらそう。値段交渉を争うという。
○早閉門 はやく城門をしめる、盗賊をふせぐためである。盗賊は山に住むもので、夜に襲ってくるのである。税負担に堪えられないものは「逃散」ということで人別帳から逃れ、山に入った。杜甫《北征》、《三吏三別》李商隠《行次西郊作一百韻》など多くに述べている。
北征 #12 杜甫 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 219
空看過客淚,莫覓主人恩。
ここへきてもむなしく、旅を強いられ客分となっている自分はいたずらに涙をながすだけで、この地の長官である主人(姪)の世話になろうなどとはと考えてはいけないと思っているのである。
○過客 作者自己をいう。
○主人 刺史姪をいう。
淹泊仍愁虎,深居賴獨園。
ひさしく滞在している間にも、虎におそわれるおそれがあるので、お寺にたよって、奥まった居室にひっこんでいるのである。
○淹泊 ひさしくとまっておる。
○獨園 絵孤独の園、寺をいう、すでにみえる。ここは竜興寺をさす。
(忠州竜興寺の居る所の院壁に題す)
忠州は三峡の内、井邑 雲根に聚まる。
小市 常に米を争い、孤城 早く門を閉ず。
空しく看る 過客の涙、覓むる莫れ 主人の恩。
淹泊 仍お虎を愁い、深居 独園に頼る。