そんなことを思い出してみるが、分はもはや、形骸上に属した煩いことは、すっかり払い落としてしまい、今は、本当のことを言って、花が爛漫に咲き時期ほど十分に酔い潰れたいと思っているところだ。
765年永泰元年54歲-57 《長吟》 杜甫index-15 杜甫<857> 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ5020
杜甫詩1500-857-1175/2500765年永泰元年54歲-57
年:765年永泰元年54歲
卷別: 卷二三四 文體: 五言律詩
詩題: 長吟
杜少陵集 巻十四
長吟
(雲安で、成都にいる時の事を思い出して長吟したもの。)
江渚翻鷗戲,官橋帶柳陰。
長江の渚では、翻っているカモメが戯れており、官設の万里橋はやなぎの影を帯びている。
江飛競渡日,草見蹋春心。
丁度、舟の競争する日があり、花も散り始めている。また、草も青く伸びてきたのを人がふみつけるのを見ると、自分の春の心も踏みつけられたようで、気持ちも萎えてくるというものである。
已撥形骸累,真為爛漫深。
そんなことを思い出してみるが、分はもはや、形骸上に属した煩いことは、すっかり払い落としてしまい、今は、本当のことを言って、花が爛漫に咲き時期ほど十分に酔い潰れたいと思っているところだ。
賦詩歌句穩,不免自長吟。
幸い詩を作ってみると、穏やかな句が出来たので、思わずそれを口ずさんでみるのである。
長吟
江渚 翻鷗 戲る,官橋 柳陰を帶ぶ。
江 飛ぶ 競渡の日,草には見る 蹋春の心。
已に形骸の累を撥う,真に爛漫の深きを為す。
賦詩 歌句 穩やかなり,免げず 自ら長吟す。
『長吟』 現代語訳と訳註解説
(本文)
長吟
江渚翻鷗戲,官橋帶柳陰。
江飛競渡日,草見蹋春心。
已撥形骸累,真為爛漫深。
賦詩歌句穩,不免自長吟。
(含異文)
江渚翻鷗戲,官橋帶柳陰。
江飛競渡日,草見蹋春心【草見蹋青心】。
已撥形骸累,真為爛漫深。
賦詩歌句穩【賦詩新句穩】,不免自長吟【不覺自長吟】。
(下し文)
長吟
江渚 翻鷗 戲る,官橋 柳陰を帶ぶ。
江 飛ぶ 競渡の日,草には見る 蹋春の心。
已に形骸の累を撥う,真に爛漫の深きを為す。
賦詩 歌句 穩やかなり,免げず 自ら長吟す。
(現代語訳)
(雲安で、成都にいる時の事を思い出して長吟したもの。)
長江の渚では、翻っているカモメが戯れており、官設の万里橋はやなぎの影を帯びている。
丁度、舟の競争する日があり、花も散り始めている。また、草も青く伸びてきたのを人がふみつけるのを見ると、自分の春の心も踏みつけられたようで、気持ちも萎えてくるというものである。
そんなことを思い出してみるが、分はもはや、形骸上に属した煩いことは、すっかり払い落としてしまい、今は、本当のことを言って、花が爛漫に咲き時期ほど十分に酔い潰れたいと思っているところだ。
幸い詩を作ってみると、穏やかな句が出来たので、思わずそれを口ずさんでみるのである。
(訳注)
長吟
(雲安で、成都にいる時の事を思い出して長吟したもの。)
長吟 声を長く引っ張って詩を吟ずること。
江渚翻鷗戲,官橋帶柳陰。
錦江の渚では、翻っているカモメが戯れており、官設の万里橋はやなぎの影を帯びている。
官橋 官で設置した橋のことで、万里橋をいう。
柳陰 官で作った土手や端には柳が植えられていた。杜甫『西郊』 「時出碧雞坊,西郊向草堂。市橋官柳細,江路野梅香。傍架齊書帙,看題減藥囊。無人覺來往,疏懶意何長。」(時に碧雞坊を出で、西郊より草堂に向かう。市橋には官柳細くあり、江路には野梅香しくある。架に傍いて書帙を斉【ととの】え、題を看て薬嚢を検す。人の来往するを覚【さと】るもの無く、疎憬にして意は何ぞ長きか。)
江飛競渡日,草見蹋春心。
丁度、舟の競争する日があり、花も散り始めている。また、草も青く伸びてきたのを人がふみつけるのを見ると、自分の春の心も踏みつけられたようで、気持ちも萎えてくるというものである。
競渡 憲宗の時、旧暦の二月二日が中和節で、また俗に「龍が頭(こうべ)をもたげる日」と言われてきた。この時、小舟を並べて互いに競争する。それまでは、五月五日屈原が汨羅に投身した日に行われていた。今は五月五日が一般的である。
草見蹋春心 草も青く伸びてきたのを人がふみつけるのを見ると、自分の春の心も踏みつけられたようで、気持ちも萎えてくるというものである・蹋 足で踏みつける。
已撥形骸累,真為爛漫深。
そんなことを思い出してみるが、分はもはや、形骸上に属した煩いことは、すっかり払い落としてしまい、今は、本当のことを言って、花が爛漫に咲き時期ほど十分に酔い潰れたいと思っているところだ。
已撥形骸累 雲安で療養中の自己分析をしている句であり、体はガタガタであるということをいう。
真為爛漫深 本当のことを言って、花が爛漫に咲き時期ほど十分に酔い潰れたいと思っている。
賦詩歌句穩,不免自長吟。