杜甫 奉節-13 《巻15-60 殿中楊監見示張旭草書圖 -#1》(朝廷の殿中省の高官の楊が菱州の地に立ち寄った際、張旭の草書図を見せてくれたので、お礼に詠んだもの)【《毒熱寄簡崔評事十六弟》と同様、朝廷によろしく計らってくれという意味を含んだ詩である】
766年大暦元年55歲-21-1奉節-13 《巻15-60 殿中楊監見示張旭草書圖 -#1》 杜甫index-15 杜甫<884-1>漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ5360
杜甫詩1500-884-1-1243/2500766年大暦元年55歲-21-1
年:766年大暦元年55歲-21-1
卷別: 卷二二一 文體: 五言古詩
詩題: 殿中楊監見示張旭草書圖【殿中監掌天子服御事,楊監謂楊炎。】
交遊人物/地點: 楊炎 當地交遊(山南東道 夔州 夔州)
殿中楊監見示張旭草書圖
(朝廷の殿中省の高官の楊が菱州の地に立ち寄った際、張旭の草書図を見せてくれたので、お礼に詠んだもの)【《毒熱寄簡崔評事十六弟》と同様、朝廷によろしく計らってくれという意味を含んだ詩である】
斯人已云亡,草聖秘難得。
張旭が死んでしまってからは草聖とよばれ張伯英の秘伝は得がたいものである。
及茲煩見示,滿目一淒惻。
いま幸いにして、楊殿のおかげで張旭の筆蹟をみせてもらったが、みてすぐに、胸中全く悽惻の情にたえないのである。
悲風生微綃,萬里起古色。
書をひろげると悲しそうな風が絹の表地に生じ、はるか遠地から古色が起ってくる。
鏘鏘鳴玉動,落落群松直。
連山蟠其間,溟漲與筆力。
有練實先書,臨池真盡墨。
俊拔為之主,暮年思轉極。
未知張王後,誰並百代則。
鳴呼東吳精,逸氣感清識。
楊公拂篋笥,舒卷忘寢食。
念昔揮毫端,不獨觀酒德。
(殿中 楊監 張旭が草書圖を見示【しめ】さる。)
斯の人 已に云【ここ】に亡し,草聖 秘 得難し。
茲に見示【しめ】さるるを煩わすに及び,滿目 一つに淒惻【せいそく】す。
悲風 微綃【びしょう】に生じ,萬里 古色起る。
#2
鏘鏘【しょうしょう】として鳴玉 動き,落落として群松直し。
連山 其の間に蟠り,溟漲【めいちょう】筆力を與う。
練有りて實に先ず書し,池に臨みて真に盡く墨す。
俊拔 之が主と為し,暮年 思う 轉た極まれり。
#3
未だ知らず 張王の後,誰か百代の則を並ばん。
鳴呼 東吳の精,逸氣 清識を感ぜん。
楊公 篋笥を拂い,舒卷【じょけん】寢食を忘る。
念う昔 毫端を揮いしを,獨り酒德を觀るのみならず。
(含異文): 斯人已云亡,草聖秘難得。及茲煩見示,滿目一淒惻。悲風生微綃,萬里起古色。鏘鏘鳴玉動,落落群松直。連山蟠其間,溟漲與筆力。有練實先書,臨池真盡墨。俊拔為之主,暮年思轉極。未知張王後,誰並百代則。鳴呼東吳精【⇒李頎贈張顛詩「皓首窮草隸,時稱太湖精」。】,逸氣感清識。楊公拂篋笥,舒卷忘寢食。念昔揮毫端,不獨觀酒德。
『殿中楊監見示張旭草書圖』 現代語訳と訳註解説
(本文)
殿中楊監見示張旭草書圖
斯人已云亡,草聖秘難得。及茲煩見示,滿目一淒惻。悲風生微綃,萬里起古色。
(下し文)
(殿中 楊監 張旭が草書圖を見示【しめ】さる。)
斯の人 已に云【ここ】に亡し,草聖 秘 得難し。
茲に見示【しめ】さるるを煩わすに及び,滿目 一つに淒惻【せいそく】す。
悲風 微綃【びしょう】に生じ,萬里 古色起る。
(現代語訳)
(朝廷の殿中省の高官の楊が菱州の地に立ち寄った際、張旭の草書図を見せてくれたので、お礼に詠んだもの)【《毒熱寄簡崔評事十六弟》と同様、朝廷によろしく計らってくれという意味を含んだ詩である】
張旭が死んでしまってからは草聖とよばれ張伯英の秘伝は得がたいものである。
いま幸いにして、楊殿のおかげで張旭の筆蹟をみせてもらったが、みてすぐに、胸中全く悽惻の情にたえないのである。
書をひろげると悲しそうな風が絹の表地に生じ、はるか遠地から古色が起ってくる。
(訳注)
殿中楊監見示張旭草書圖
(朝廷の殿中省の高官の楊が菱州の地に立ち寄った際、張旭の草書図を見せてくれたので、お礼に詠んだもの)【《毒熱寄簡崔評事十六弟》と同様、朝廷によろしく計らってくれという意味を含んだ詩である】
殿中監 殿中省(でんちゅう-しょう)は中国の古代官制の一つ。皇帝の衣食住を管轄した。三国時代、魏により設置された殿中監を前身とする。隋代に殿内省とされたは、唐朝が成立すると620年(武徳3年)に殿中省と改称され、殿中監、殿中少監、殿中丞の下に尚食、尚薬、尚衣、尚舎、尚乗、尚輦の6局が設置された。
楊 朝廷の高官の楊が菱州の地に立ち寄ったもの。
張旭 呉郡の人、右率府長史となる。草書を善くし、酒を好み、酔えば号呼狂走しつつ筆をもとめて渾灑し、又或は大叫しながら頭髪を以て水墨の中をかきまわして書き、さめて後自ずから視て神異となしたという。杜甫《飲中八仙歌》「張旭三杯草聖傳,脫帽露頂王公前,揮毫落紙如雲煙。』張旭は三杯の酒を飲んで見事な草書を披露する、王侯の前で脱帽して頭を向け、筆を振るえば雲のように自在な字が現れる。」飲中八仙歌 杜甫
草書圖 王羲之の筆陣図のようなもの
斯人已云亡,草聖秘難得。
張旭が死んでしまってからは草聖とよばれ張伯英の秘伝は得がたいものである。
斯人 張旭を指す。
草聖 ○草聖伝 後漢の張芝、字は伯英、韋仲將之は草書の聖人とよばれたが、張旭が酔うと草聖の書法が、彼に伝わるというのを『飲中八仙歌』でものべている。
及茲煩見示,滿目一淒惻。
いま幸いにして、楊殿のおかげで張旭の筆蹟をみせてもらったが、みてすぐに、胸中全く悽惻の情にたえないのである。
及茲 今ここにもそれが~のように及んでいるの意。
煩見示 てかずをかけてみせてもらうこと。以上ここまで、書圖を見せてもらっての感じを述べたもの。
悲風生微綃,萬里起古色。
書をひろげると悲しそうな風が絹の表地に生じ、はるか遠地から古色が起ってくる。
微綃 細微なる織りかたのきぬ。
萬里 実際の距離ではなく遠地よりというほどの意。