杜甫 奉節-26-1 《巻15-65 種萵苣 -1自分は今時の君子が、晩年になって少し俸禄を得て、不遇の境遇であって栄進しないのと似ていることを傷ましく思ってこの詩を作ったのである。

 
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年:766年大暦元年55

卷別:    卷二二一              文體:    五言古詩

詩題:    種萵苣【案:萵苣,江東名萵筍。】

詩序:   

 

種萵苣#1并序

(萵苣菜と苦菜を種える詩 并びにその序文)

既雨已秋,堂下理小畦,

既に秋の長雨が降り終って、もう秋になったので、表座敷の下の方の小さなあぜ道の横に畝を作って畑をたがやした。

隔種一兩席許萵苣,向二旬矣,而苣不甲坼。

蓆三枚ほどの広さに萵苣菜と苦菜を間隔をきちんと取って植えた。かれこれ二十日になろうとするが、萵苣のめがはじけてこない

獨野莧青青【伊人莧青青】,

その横には野生の莧だけが青々と茂っている。【ここには人の手にかかったヒョウ菜が青々としている。】

傷時君子或晚得微祿,轗軻不進,因作此詩。

これを見て自分は今時の君子が、晩年になって少し俸禄を得て、不遇の境遇であって栄進しないのと似ていることを傷ましく思ってこの詩を作ったのである。

(萵と苣を種う 并序)  -#1

既に雨あり 已に秋なり,堂の下に小畦を理め,一兩席 許【はか】り萵苣を隔種し,二旬に向う,而して苣 甲坼せず。

獨り野莧【やげん】青青たり【伊人莧青青】,傷む時の君子 或いは晚に微祿を得て,轗軻 進まざることを,因って此詩を作る。

 

種萵苣-#2

陰陽一錯亂,驕蹇不復理。

枯旱於其中,炎方慘如燬。

植物半蹉跎,嘉生將已矣。

雲雷欻奔命,師伯集所使。

-#3

指麾赤白日,澒洞青光起。

雨聲先已風,散足盡西靡。

山泉落滄江,霹靂猶在耳。

終朝紆颯沓,信宿罷瀟灑。

-#4

堂下可以畦,呼童對經始。

苣兮疏之常,隨事蓺其子。

破塊數席間,荷鋤功易止。

兩旬不甲坼,空惜埋泥滓。

-#5

野莧迷汝來,宗生實於此。

此輩豈無秋,亦蒙寒露委。

翻然出地速,滋蔓庭毀。

因知邪干正,掩抑至沒齒。

#6

賢良雖得祿,守道不封己。

擁塞敗芝蘭,眾多盛荊杞。

中園陷蕭艾,老圃永為恥。

登于白玉盤,藉以如霞綺。

莧也無所施,胡顏入筐篚。

(萵と苣を種う)-#2

陰陽 一たび錯亂して,驕蹇 復た理あらず。

枯旱 其の中に於てす,炎方 慘 燬くが如し。

植物 半ば蹉跎たり,嘉生 將に已まんとす。

雲雷 欻【たちま】ち命に奔り,師伯 所使を集む。

-#3

赤白の日を指麾し,澒洞 青光起る。

雨聲 先って風 已み,散足 盡く西靡す。

山泉 滄江に落ち,霹靂 猶お耳に在り。

終朝 紆りて颯沓たり,信宿 罷みて瀟灑【しょうしゃ】たり。

-#4

堂下以って畦す可し,童を呼びて對して經始す。

苣兮【きょ・や】は疏の常なり,事に隨って其の子を蓺【う】う。

塊を破る數席の間,荷鋤 功 止み易し。

兩旬 甲坼せず,空しく惜む 泥滓【でいし】に埋めらるるを。

-#5

野莧【やげん】汝來りて迷い,宗生すること 實に此にいてす。

此の輩 豈に秋無からんや,亦た寒露に委せ蒙らる。

翻然 地を出ずること速やかに,滋蔓 庭を毀【こぼ】つ。

因って知る邪 正を干【おか】す,掩抑【えんよく】沒齒に至る。

#6

賢良は祿を得ると雖も,道を守りて己を封ぜず。

擁塞【ようぞく】芝蘭を敗る,眾多 荊杞を盛んなればなり。

中園 蕭艾に陷いるは,老圃 永く恥と為す。

白玉の盤に登され,藉【し】くに如霞【じょか】の綺を以てするとき。

莧也【げんや】施す所無きに,胡【なん】の顏あってか 筐篚【きょうひ】に入る。 

詩文(含異文)

陰陽一錯亂【陰陽一屯亂】,驕蹇不復理。

枯旱於其中,炎方慘如燬。

植物半蹉跎,嘉生將已矣。

雲雷欻奔命,師伯集所使。

指麾赤白日,澒洞青光起【澒洞雲色起】。

雨聲先已風【雨聲先以風】,散足盡西靡。

山泉落滄江,霹靂猶在耳。

終朝紆颯沓,信宿罷瀟灑。

堂下可以畦,呼童對經始。

苣兮疏之常,隨事蓺其子。

破塊數席間,荷鋤功易止。

兩旬不甲坼,空惜埋泥滓。

野莧迷汝來,宗生【案:〈都賦〉:「宗生高岡。」】實於此。

此輩豈無秋,亦蒙寒露委。

翻然出地速,滋蔓庭毀。

因知邪干正,掩抑至沒齒。

賢良雖得祿,守道不封己。

擁塞敗芝蘭,眾多盛荊杞。

中園陷蕭艾,老圃永為恥。

登于白玉盤,藉以如霞綺。

莧也無所施,胡顏入筐篚。

夔州東川卜居図詳細 001 

 

『種萵苣 并序』 現代語訳と訳註解説
(
本文)

種萵苣#1并序

既雨已秋,堂下理小畦,

隔種一兩席許萵苣,

向二旬矣,而苣不甲坼。

獨野莧青青【伊人莧青青】,

傷時君子或晚得微祿,轗軻不進,因作此詩。



(下し文)

(萵と苣を種う 并序)  -#1

既に雨あり 已に秋なり,堂の下に小畦を理め,一兩席 許【はか】り萵苣を隔種し,二旬に向う,而して苣 甲坼せず。

獨り野莧【やげん】青青たり【伊人莧青青】,傷む時の君子 或いは晚に微祿を得て,轗軻 進まざることを,因って此詩を作る。


(現代語訳)
(萵苣菜と苦菜を種える詩 并びにその序文)

既に秋の長雨が降り終って、もう秋になったので、表座敷の下の方の小さなあぜ道の横に畝を作って畑をたがやした。

蓆三枚ほどの広さに萵苣菜と苦菜を間隔をきちんと取って植えた。かれこれ二十日になろうとするが、萵苣のめがはじけてこない

その横には野生の莧だけが青々と茂っている。【ここには人の手にかかったヒョウ菜が青々としている。】

これを見て自分は今時の君子が、晩年になって少し俸禄を得て、不遇の境遇であって栄進しないのと似ていることを傷ましく思ってこの詩を作ったのである。


(訳注)

種萵苣 并序#1

(萵苣菜と苦菜を種える詩 并びにその序文)

萵苣 萵苣菜と苦菜。

 

既雨已秋,堂下理小畦,

既に秋の長雨が降り終って、もう秋になったので、表座敷の下の方の小さなあぜ道の横に畝を作って畑をたがやした。

既雨已秋 以下のとおり、《雨》が降ったこと詩に著した。

766年大暦元年55-31-1奉節-21-#1《巻15-47 -#1》 杜甫

766年大暦元年55-31-2奉節-22 -#2 《巻15-47 -#2》 杜甫

766年大暦元年55-32奉節-23 《巻15-48 雨 -#1 杜甫

766年大暦元年55-33奉節-23 《巻15-48 雨 -#2 杜甫

766年大暦元年55-33奉節-24 《巻15-49 雨,二首之一》 杜甫

766年大暦元年55-34-#1奉節-25 -#1 《巻15-50 雨,二首之二 -#1 杜甫

766年大暦元年55-34-#2奉節-25 -#2 《巻15-50 雨,二首之二 -#2 杜甫

理小畦 小さなあぜ道の横に畝を作って畑をたがやした。

 

隔種一兩席許萵苣,向二旬矣,而苣不甲坼。

蓆三枚ほどの広さに萵苣菜と苦菜を間隔をきちんと取って植えた。かれこれ二十日になろうとするが、萵苣のめがはじけてこない

隔種一兩席 蓆三枚程度の畑に間隔を取って植える。

二旬 旬は十日であるから二十日間。

甲坼 芽生え、はじけること。

 

獨野莧青青【伊人莧青青】,

その横には野生の莧だけが青々と茂っている。【ここには人の手にかかったヒョウ菜が青々としている。】

 野生の莧。ヒユ科の一年草。高さ約1メートル。葉はやや菱形で互生し、緑・紅・暗紫色のものなどがある。夏から秋、緑色の小花を密につける。葉は食用になる。インドの原産。ひょう。ひょうな。

 

傷時君子或晚得微祿,轗軻不進,因作此詩。

これを見て自分は今時の君子が、晩年になって少し俸禄を得て、不遇の境遇であって栄進しないのと似ていることを傷ましく思ってこの詩を作ったのである。

時君子 この時の仁徳のある人。杜甫、自分のこと。

晚得微祿 晩年になって少し俸禄をえること。

轗軻不進 不遇の境遇であって栄進しないのと似ていること。杜甫55歳756年作品