杜甫 聽楊氏歌
佳人絕代歌,獨立發皓齒。滿堂慘不樂,響下清虛裏。』
江城帶素月,況乃清夜起。老夫悲暮年,壯士淚如水。
(都で一盤の歌い手といわれた楊某の歌声を聴く。)絶代の歌の名手である一佳人が独り立ちあがって、皓い歯をひらいて歌をうたいだす。その歌は虚空にまいあがって虚空から響きがくだってくるように感ぜられる、これをきくものは満堂のものすべて、ものがなしさをおぼえる。
55杜甫 《1722聽楊氏歌-#1》 杜甫詩index-15- <920 -#1> 766年大暦元年55歲-漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ6170
杜甫詩1500-920 -#1-1405/2500
年:766年大暦元年55歲
卷別: 卷二二二 文體: 樂府
詩題: 聽楊氏歌
交遊人物/地點:
楊氏 當地交遊(山南東道 夔州 夔州)
聽楊氏歌 #1
(都で一盤の歌い手といわれた楊某の歌声を聴く。)
佳人絕代歌,獨立發皓齒。
絶代の歌の名手である一佳人が独り立ちあがって、皓い歯をひらいて歌をうたいだす。
滿堂慘不樂,響下清虛裡。
その歌は虚空にまいあがって虚空から響きがくだってくるように感ぜられる、これをきくものは満堂のものすべて、ものがなしさをおぼえる。
江城帶素月,況乃清夜起。
ちょうど長江のほとりの城は、しろい月の光を帯びている頃で、すみわたった夜にこの歌声が起こるのであるから一層その感が深い。
老夫悲暮年,壯士淚如水。
じぶんごとき老人は己れの晩年の身を悲しくおもうし、壮士と雖も、涙が水のようにながれおちる。
#2
玉杯久寂寞,金管迷宮徵。
勿云聽者疲,愚智心盡死。
古來傑出士,豈待一知己。
吾聞昔秦青,傾側天下耳。
(楊氏歌を聽く)
佳人 絶代の歌、独り立ちて 皓歯を発く。
満堂 惨として 楽しまず、響きは 下る清虚の裏。
江城 素月を帯び、況んや 乃ち 晴夜に起こるをや。
老夫暮 年を悲しみ、壮士も 涙 水の如し。
#2
玉杯 久しく寂寞、金管 宮徴に迷う。
云う勿れ 聴く者疲ると、愚智心尽く死す。
古来 傑出の士、豈に特【ひと】り 一知己あるのみならんや。
吾聞く 昔秦青、天下の耳を傾側すと。
『聽楊氏歌』 現代語訳と訳註解説
(本文)
聽楊氏歌
大暦元年 766年 55歳
佳人絕代歌,獨立發皓齒。
滿堂慘不樂,響下清虛裏。』
江城帶素月,況乃清夜起。
老夫悲暮年,壯士淚如水。
(下し文)
(楊氏歌を聽く)
佳人 絶代の歌、独り立ちて 皓歯を発く。
満堂 惨として 楽しまず、響きは 下る清虚の裏。
江城 素月を帯び、況んや 乃ち 晴夜に起こるをや。
老夫暮 年を悲しみ、壮士も 涙 水の如し。
(現代語訳)
(都で一盤の歌い手といわれた楊某の歌声を聴く。)
絶代の歌の名手である一佳人が独り立ちあがって、皓い歯をひらいて歌をうたいだす。
その歌は虚空にまいあがって虚空から響きがくだってくるように感ぜられる、これをきくものは満堂のものすべて、ものがなしさをおぼえる。
ちょうど長江のほとりの城は、しろい月の光を帯びている頃で、すみわたった夜にこの歌声が起こるのであるから一層その感が深い。
じぶんごとき老人は己れの晩年の身を悲しくおもうし、壮士と雖も、涙が水のようにながれおちる。
(訳注)
聽楊氏歌 #1
(都で一盤の歌い手といわれた楊某の歌声を聴く。)
佳人絕代歌,獨立發皓齒。
絶代の歌の名手である一佳人が独り立ちあがって、皓い歯をひらいて歌をうたいだす。
○絶代 この人のほか世の中に絶えてないことをいう。
滿堂慘不樂,響下清虛裡。
その歌は虚空にまいあがって虚空から響きがくだってくるように感ぜられる、これをきくものは満堂のものすべて、ものがなしさをおぼえる。
〇清虛裡 清虚は虚空をいう、歌声が一旦高く虚空にのぼって更に虚空よりくだって来るがごとである。佳人以下起四句は先ず楊氏の歌声を叙する。
江城帶素月,況乃清夜起。
ちょうど長江のほとりの城は、しろい月の光を帯びている頃で、すみわたった夜にこの歌声が起こるのであるから一層その感が深い。
○江城 江ぞいの城、夔州奉節の城をいう。
○清夜起 清夜はすんだ夜、起とは歌声のおこることをいう。
老夫悲暮年,壯士淚如水。
じぶんごとき老人は己れの晩年の身を悲しくおもうし、壮士と雖も、涙が水のようにながれおちる。
○老夫 杜甫自身をさす。
(楊氏歌を聽く)
佳人 絶代の歌、独り立ちて 皓歯を発く。
満堂 惨として 楽しまず、響きは 下る清虚の裏。
江城 素月を帯び、況んや 乃ち 晴夜に起こるをや。
老夫暮 年を悲しみ、壮士も 涙 水の如し。
玉杯 久しく寂寞、金管 宮徴に迷う。
云う勿れ 聴く者疲ると、愚智心尽く死す。
古来 傑出の士、豈に特【ひと】り 一知己あるのみならんや。
吾聞く 昔秦青、天下の耳を傾側すと。