杜甫 1523贈崔十三評事公輔#5

會看之子貴,歎及老夫衰。豈但江曾決,還思霧一披。

暗塵生古鏡,拂匣照西施。舅氏多人物,無慚困翮垂。
自分はおまえが必ず貴い身分になることとおもっている、之に反して自分侍臣の老衰を漢がえると歎かぬわけにゆかないのである。そうはいっても、一旦論じれば、江河が決壊するように雄弁であるということについてはきいて知っているが、今後また都であうなら、おまえは、雲霧を披いて青天をみる様であろうとおもうのだ。

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杜甫詩1500-926-#5-1423/2500

紀年:766年大暦元年55

卷別:    卷二二九              文體:    五言古詩

詩題:    贈崔十三評事公輔

交遊人物:崔公輔               書信往來

 

 

贈崔十三評事公輔  #1

(母方の従弟の崔公輔が都へ任官するのを送り、別れに臨んで、この詩を贈った)

飄飄西極馬,來自渥池。

ここに飄颻とただようている西域のはての天馬がをる、これは渥洼の池から來た駿足である。

定山桂,低徊風雨枝。

また寒山をしのいで立つ桂の樹が大風に吹かれている。その雨風をうけた枝はカなく吹きのめされている。それは、君が此の馬や桂の様なものだ。

我聞龍正直,道屈爾何為。

自分は聞くに龍(人君)は正直なものであるというのに、おまえは道を伸ばすことができないというはどういうのであるか、そんな筈は互いのである。

且有元戎命,悲歌識者誰。

そのうえこんどは、元戎からの命が有った、おまえはこれまでは逆境に悲歌していたが識者はちゃんとおまえが如何なる人物であるかは知っているのである。  

#2

官聯辭冗長,行路洗危。

劍主人贈,去帆春色隨。

いままでの幕主からは佩剣を脱してみやげものとして贈られ、ゆく船の帆に風流にも、春景色をしたがへながらでかける。

陰沈鐵鳳闕,教練羽林兒。

おもくるしい鉄の鳳凰がのっている都の宮門につけば、そこでは禁中の軍隊を教練することになるのだ。

天子朝侵早,雲臺仗數移。

おもくるしい鉄の鳳凰がのっている都の宮門につけば、そこでは禁中の軍隊を教練することになるのだ。

#3

分軍應供給,百姓日支離。

禁軍は隊を分けられて、それに、兵站で一々衣食を供給しなければいけない、人民は日日 身の立つ瀬がなくなっている。

黠吏因封己,公才或守雌。

そのどさくさまぎれにつけこんで、ずるい役人どもは自分のふところばかりふくらますし、要路の顕官は言うべきことがあっても、だまっていて消極的な態度を見せる。

燕王買駿骨,渭老得熊羆。

この時にあたって元戎が、おまえを得たのは、たとえばむかし燕王が駿馬を買ったという故事に倣ったようなものであり、また昭王が、渭水の濱で、狩をして熊を獲物をえるように老人太公望をえた様なものだ。

活國名公在,拜壇群寇疑。

いま、国家を活かすに元戒の様な名公がおられ、その人が将壇に拜命されているので、多くの盗賊どもが疑い懼れているというのだ。

#4

冰壺動瑤碧,野水失蛟

そこで、おまえが用いられるのはたとえば玉壷のなかにいれた清氷が、瑤碧の光をたたえている様であり、いよいよ蚊蠣のように偉い者が野中の池から離れて天上の風雨を巻き起そうとするということだ。

入幕諸集,賢高選宜。

元戒の幕中にはもろもろのすぐれた人が集っているが、元戎は賢人を渇望しており、おまえを求められたのであるから、もつと高い地位に選ばれるにふさわしいというものだ。

騫騰坐可致,九萬起於斯。

これからは邈内にいながら、高く飛びあがり、九万里の上の峯にのぼるのもこれからはじまるのである。

復進出矛戟,昭然開鼎彝。

そして、こんどさらに地位が進むならば、門前に矛戟をいだす様な節度使にもなるであろう、そうして、あきらかに鼎に銘せられる様な大勲功を開きおこすであろう。

#5

會看之子貴,歎及老夫衰。

自分はおまえが必ず貴い身分になることとおもっている、之に反して自分侍臣の老衰を漢がえると歎かぬわけにゆかないのである。

豈但江曾決,還思霧一披。

そうはいっても、一旦論じれば、江河が決壊するように雄弁であるということについてはきいて知っているが、今後また都であうなら、おまえは、雲霧を披いて青天をみる様であろうとおもうのだ。

暗塵生古鏡,拂匣照西施。

古鏡には塵がくらくたまっていて、その匣の塵をうち払えば美人西施(杜甫、公輔など)の姿を鏡に照らしてみたくなるものだ。

舅氏多人物,無慚困垂。

叔父さんはよい子をもたれた、よい人物がたくさんいる。だからわしの様に不遇でつかれたつばさを垂れている様な者がいでもそれを愧ることにはあたらないということだ

(崔十三評事公輔に贈る)

瓢諷たり西極の馬、渥の池より來る。

たり寒山の桂、低徊す 風雨の枝。

我聞く 龍は正直なりと、道屈する爾 何すれぞ。

且つ元戎の命有り、悲歌 識者知る。』

#2

官聯 冗長なるを辞し、行路 なるに洗る。

剣を脱して主人贈る、去帆春色随ふ。

陰沈たら鉄鳳の闕、教練す羽林の兒。

天子 朝早を侵す、雲臺 仗数ば移る。

#3

軍を分ちて供給に應ず,百姓 日びに支離す。

黠吏因って己を封す,公才 或は雌を守る。

燕王 駿骨を買う,渭老 熊羆を得。

活國 名公 在り,拜壇 群寇 疑う。

#4

冰壺に 瑤碧動く,野水 蛟螭を

入幕 諸集り,賢 高選宜し。

騫騰 坐ながら致す可し,九萬 於斯れより起る。

復た進みて矛戟を出し,昭然 鼎彝を開かん。

#5

會ず看ん 之の子の貴きを,歎じて及ぶ老夫の衰。

豈に但だ 江 曾て決しのみならんや,還た思う 霧 一たび披かんことを。

暗塵 古鏡に生じ,匣を拂うて西施を照さん。

舅氏 人物多し,慚ずる無れ 困翮の垂るることを

長安城図 作図00 

 

『贈崔十三評事公輔』 現代語訳と訳註解説
(
本文) 
#5

會看之子貴,歎及老夫衰。

豈但江曾決,還思霧一披。

暗塵生古鏡,拂匣照西施。

舅氏多人物,無慚困翮垂。

(下し文) #5

會ず看ん 之の子の貴きを,歎じて及ぶ老夫の衰。

豈に但だ 江 曾て決しのみならんや,還た思う 霧 一たび披かんことを。

暗塵 古鏡に生じ,匣を拂うて西施を照さん。

舅氏 人物多し,慚ずる無れ 困翮の垂るることを。

(現代語訳) #5

自分はおまえが必ず貴い身分になることとおもっている、之に反して自分侍臣の老衰を漢がえると歎かぬわけにゆかないのである。

そうはいっても、一旦論じれば、江河が決壊するように雄弁であるということについてはきいて知っているが、今後また都であうなら、おまえは、雲霧を披いて青天をみる様であろうとおもうのだ。

古鏡には塵がくらくたまっていて、その匣の塵をうち払えば美人西施(杜甫、公輔など)の姿を鏡に照らしてみたくなるものだ。

叔父さんはよい子をもたれた、よい人物がたくさんいる。だからわしの様に不遇でつかれたつばさを垂れている様な者がいでもそれを愧ることにはあたらないということだ

(訳注) 1523贈崔十三評事公輔 -#5》【5分割】

贈崔十三評事公輔

(母方の従弟の崔公輔が都へ任官するのを送り、別れに臨んで、この詩を贈った)766年大暦元年55のさく。

〇贈崔十三評事公輔 評事は官名、大理寺に属す、出使して推案することを掌るものにして出張裁判官の類いである。崔公輔は姓名、詩中に羽林・入幕の語あるので、公輔はじめに評事となり次に幕僚となり、次に元戎の命をうけて、羽林の職についた。崔公輔はははがたの従弟。

 

會看之子貴,歎及老夫衰。

自分はおまえが必ず貴い身分になることとおもっている、之に反して自分侍臣の老衰を漢がえると歎かぬわけにゆかないのである。

○會看 かならず~をみる。

○之子貴 この子が尊き身分のものになること。

○老夫衰 杜甫のことで年老いたことをいう。

 

豈但江曾決,還思霧一披。

そうはいっても、一旦論じれば、江河が決壊するように雄弁であるということについてはきいて知っているが、今後また都であうなら、おまえは、雲霧を披いて青天をみる様であろうとおもうのだ。

○江曾決 一旦論じれば、江河が決壊するように雄弁であるということ。

○霧一披 雲霧の被いを払って晴天を見るということ。

 

暗塵生古鏡,拂匣照西施。

古鏡には塵がくらくたまっていて、その匣の塵をうち払えば美人西施(杜甫、公輔など)の姿を鏡に照らしてみたくなるものだ。

○暗塵生古鏡,拂匣照西施 箱の中に入れてある古い鏡に暗くかかっている塵を奇麗に取り除いてしまえば、あの西施を写したいと思う。

 

舅氏多人物,無慚困翮垂。

叔父さんはよい子をもたれた、よい人物がたくさんいる。だからわしの様に不遇でつかれたつばさを垂れている様な者がいでもそれを愧ることにはあたらないということだ。

○舅氏 母方の叔父。

○無慚 恥入る事は無い。

○困翮垂 羽を垂れ、翮羽によって飛びあがることが困難であること言う。不遇であったことをいう。
夔州東川卜居図詳細 001