杜甫 不離西閣,二首之二
西閣從人別,人今亦故亭。江雲飄素練,石壁斷空青。
滄海先迎日,銀河倒列星。平生耽勝事,吁駭始初經。
(西閣より離れて居を移そうとしているが、なかなか移拠できないでいる事を詠う二首の二)「西閣意」は人が別れて行こうが、行かないでいようと構いはしない、人は、今また、人の都合でとどまっている。そのわけは、江上の雲をみれば素い練り絹を翻している、崖の石壁を見れば、空全体の青さの中でその姿は断絶して聳えている。朝は蒼海から真っ先に日が登って来るのを迎えられるし、夜は天上の銀河が地上の大江に逆さまに連なって映っている。普段から自分は、此処の風景の優れていることを見耽っているもので、此処で、この景色を初めて経験した時にどれほど驚いたものであったか、だからここに留まってこの景色を見るのである。
766年-76杜甫 《1817不離西閣,二首之二》 杜甫詩index-15-766年大暦元年55歲-76 <939> 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ6330 杜甫詩
杜甫詩1500-939-1437/2500
年:766年大暦元年55歲
卷別: 卷二二九 文體: 五言律詩
詩題: 不離西閣,二首之二 1817
作地點: 目前尚無資料
寫及地點:西閣 (山南東道 夔州 奉節)
不離西閣,二首之一
(西閣より離れて居を移そうとしているが、なかなか依拠できないでいる事を詠う二首の一)
江柳非時發,江花冷色頻。
長江の川岸の柳は季節外れの新芽を出している。江辺の花はのびのびはできないものの、頻りにそれらしい色を出そうとしている。
地偏應有瘴,臘近已含春。
この地は南に偏ったところだから、瘴癘の病気が蔓延する、都で臘節と云えば肌寒い早春の移り変わりの時期なのに、此処ではすでに春満開なのである。
失學從愚子,無家住老身。
この時愚かな子供は学問をしていないので仕方がないが、この老人にとっては、此処での棲むべき家もないのであるが、これもまた仕方のないことだ。
不知西閣意,肯別定留人。
さて、この西閣の意中はどうだろうか、よくわからない、自分をこの地から別れさそうというのか、それともここへ留めおこうというのか。
(西閣を離れず,二首の一)
江柳 非時 發し,江花 冷色 頻りなり。
地 偏にして 應に 瘴 有るなるべし,臘 近にして已に春を含む。
失學 愚子に從【まか】し,無家 老身に 住【や】む。
知らず 西閣の意,肯えて 別れしめんや 定めて人を留まらしめんや。
不離西閣,二首之二
(西閣より離れて居を移そうとしているが、なかなか移拠できないでいる事を詠う二首の二)
西閣從人別,人今亦故亭。
「西閣意」は人が別れて行こうが、行かないでいようと構いはしない、人は、今また、人の都合でとどまっている。
江雲飄素練,石壁斷空青。
そのわけは、江上の雲をみれば素い練り絹を翻している、崖の石壁を見れば、空全体の青さの中でその姿は断絶して聳えている。
滄海先迎日,銀河倒列星。
朝は蒼海から真っ先に日が登って来るのを迎えられるし、夜は天上の銀河が地上の大江に逆さまに連なって映っている。
平生耽勝事,吁駭始初經。
普段から自分は、此処の風景の優れていることを見耽っているもので、此処で、この景色を初めて経験した時にどれほど驚いたものであったか、だからここに留まってこの景色を見るのである。
(西閣を離れず,二首の二)
西閣 人の別るるに從【まか】し,人 今 亦た 故【わざわざ】亭【とど】まる。
江雲 素練 飄えり,石壁 空青 斷ゆ。
滄海 先ず 日を迎え,銀河 倒しまに 星を列す。
平生 勝事に耽り,吁駭【くがい】せりしこと始めて 初經せり。
『不離西閣,二首之二』 現代語訳と訳註解説
(本文)
不離西閣,二首之二
西閣從人別,人今亦故亭。
江雲飄素練,石壁斷空青。
滄海先迎日,銀河倒列星。
平生耽勝事,吁駭始初經。
不離西閣,二首之二(含異文)
西閣從人別,人今亦故亭。江雲飄素練【江雲飄素葉】,石壁斷空青【石壁斬空青】。滄海先迎日,銀河倒列星。平生耽勝事,吁駭始初經【吁怪始初經】。
(下し文)
(西閣を離れず,二首の二)
西閣 人の別るるに從【まか】し,人 今 亦た 故【わざわざ】亭【とど】まる。
江雲 素練 飄えり,石壁 空青 斷ゆ。
滄海 先ず 日を迎え,銀河 倒しまに 星を列す。
平生 勝事に耽り,吁駭【くがい】せりしこと始めて 初經せり。
(現代語訳)
(西閣より離れて居を移そうとしているが、なかなか移拠できないでいる事を詠う二首の二)
「西閣意」は人が別れて行こうが、行かないでいようと構いはしない、人は、今また、人の都合でとどまっている。
そのわけは、江上の雲をみれば素い練り絹を翻している、崖の石壁を見れば、空全体の青さの中でその姿は断絶して聳えている。
朝は蒼海から真っ先に日が登って来るのを迎えられるし、夜は天上の銀河が地上の大江に逆さまに連なって映っている。
普段から自分は、此処の風景の優れていることを見耽っているもので、此処で、この景色を初めて経験した時にどれほど驚いたものであったか、だからここに留まってこの景色を見るのである。
(訳注)
不離西閣,二首之二
(西閣より離れて居を移そうとしているが、なかなか移拠できないでいる事を詠う二首の二)
1812西閣口號【案:呈元二十一。】 |
1713西閣雨望 |
1816不離西閣,二首之一 |
1817不離西閣,二首之二 |
1714西閣三度期大昌嚴明府,同宿不到 |
1715西閣,二首之一 |
1716西閣,二首之二 |
1813閣夜 |
1717西閣夜 |
西閣從人別,人今亦故亭。
「西閣意」は人が別れて行こうが、行かないでいようと構いはしない、人は、今また、人の都合でとどまっている。
故亭 亭は亭に停ること。
この句は、前詩「不知西閣意,肯別定留人。」(さて、この西閣の意中はどうだろうか、よくわからない、自分をこの地から別れさそうというのか、それともここへ留めおこうというのか。)をうけている。
江雲飄素練,石壁斷空青。
そのわけは、江上の雲をみれば素い練り絹を翻している、崖の石壁を見れば、空全体の青さの中でその姿は断絶して聳えている。
斷空青 江雲、素練、石壁のそれぞれが青空の中で断絶して存在している。
滄海先迎日,銀河倒列星。
朝は蒼海から真っ先に日が登って来るのを迎えられるし、夜は天上の銀河が地上の大江に逆さまに連なって映っている。
滄海 あおあおとした広い海。あおうなばら。滄海変じて桑田となる《儲光羲「献八舅東帰」から》広い海原が桑畑に変わる。世の中の移り変わりの激しいことのたとえ。桑田変じて海となる。桑田変じて滄海となる。滄海桑田。
銀河 あまのがわ。天河・銀河・経河・銀漢・雲漢・星漢・天津・漢津等はみなその異名である。杜甫『天河』。
列星 天上の銀河が大江にうつる星と連なっている。
平生耽勝事,吁駭始初經。
普段から自分は、此処の風景の優れていることを見耽っているもので、此処で、この景色を初めて経験した時にどれほど驚いたものであったか、だからここに留まってこの景色を見るのである。
吁駭始初經 吁駭は過去において感歎し、奮駭したことをいう。始初經は始めと初と重なり、初を重ね、それを経験経てゆくこと、此処に留まることを意味する。