杜甫  天池 -#1

天池馬不到,嵐壁鳥纔通。百頃青雲杪,層波白石中。

鬱紆騰秀氣,蕭瑟浸寒空。直對巫山出,兼疑夏禹功。

魚龍開闢有,菱芡古今同。

 (夔州の東、巫山十二峰の中の何処かの山頂にあった池について述べた詩)ここの山頂にある池には馬で登って来ることはできない。嵐気の横たわる絶壁には、鳥がわずかにやっと通えるという。青雲の上に百頃ばかりのところが広がり、水があって、白石の乱れ立つ間に幾重の波が起こっている。ここからは、靈秀の山の気が立てこもってあがり、また秋風が静かに寂しく寒空を水面に浸している。ここは巫山の峡谷と真向かいになっているところで、こんな池を開いたのは水利土木の夏の禹王の功ではないかと疑われている。ここに住む、魚龍は開闢以来の者であり、菱や芡は今も昔も同じように生えている。

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杜甫詩1500-964-#1-1465/2500

年:766年大暦元年55-101

卷別:    卷二二九              文體:    五言古詩

詩題:    天池

作地點:              奉節(山南東道 / 夔州 / 奉節)

及地點:              天池 (山南東道 夔州 巫山)              

巫山 (山南東道 夔州 巫山)             

 

 

天池

天池馬不到,嵐壁鳥纔通。

百頃青雲杪,層波白石中。

鬱紆騰秀氣,蕭瑟浸寒空。

直對巫山出,兼疑夏禹功。

魚龍開闢有,菱芡古今同。

(夔州の東、巫山十二峰の中の何処かの山頂にあった池について述べた詩)

ここの山頂にある池には馬で登って来ることはできない。嵐気の横たわる絶壁には、鳥がわずかにやっと通えるという。

青雲の上に百頃ばかりのところが広がり、水があって、白石の乱れ立つ間に幾重の波が起こっている。

ここからは、靈秀の山の気が立てこもってあがり、また秋風が静かに寂しく寒空を水面に浸している。

ここは巫山の峡谷と真向かいになっているところで、こんな池を開いたのは水利土木の夏の禹王の功ではないかと疑われている。

ここに住む、魚龍は開闢以来の者であり、菱や芡は今も昔も同じように生えている。

 

聞道奔雷黑,初看浴日紅。

飄零神女雨,斷續楚王風。

欲問支機石,如臨獻寶宮。

九秋驚雁序,萬里狎漁翁。

更是無人處,誅茅任薄躬。

 

(天池)#1

天池 馬 到らず,嵐壁 鳥 纔かに通ず。

百頃 青雲の杪,層波 白石の中。

鬱紆 秀氣 騰る,蕭瑟 寒空を浸す。

直ちに對す 巫山出るを,兼ねて疑う 夏禹の功。

魚龍は開闢より有り,菱芡は古今同じ。

#2

聞道く 奔雷 黑し,初めて看る 浴日の紅を。

飄零す 神女の雨,斷續す 楚王の風。

問わんと欲す 支機石,臨むが如し 獻寶宮。

九秋 雁序に驚く,萬里 漁翁に狎る。

更に是れ 人無き處,誅茅 薄躬に任せん。

 

天池(含異文)    

天池馬不到,嵐壁鳥纔通。百頃青雲杪,層波白石中。

鬱紆騰秀氣,蕭瑟浸寒空。直對巫山出【直對巫山峽】,兼疑夏禹功。

魚龍開闢有,菱芡古今同【菱芡古今豐】【菱芰古今同】【菱芰古今豐】。聞道奔雷黑,初看浴日紅。

飄零神女雨,斷續楚王風。欲問支機石,如臨獻寶宮。

九秋驚雁序,萬里狎漁翁【萬里狎樵童】。更是無人處,誅茅任薄躬【誅勞任薄躬】。

瞿塘峡・白帝城・魚復 

 

『天池』 現代語訳と訳註解説
(
本文)

天池 -#1

天池馬不到,嵐壁鳥纔通。

百頃青雲杪,層波白石中。

鬱紆騰秀氣,蕭瑟浸寒空。

直對巫山出,兼疑夏禹功。

魚龍開闢有,菱芡古今同。


(下し文)
(天池)#1

天池 馬 到らず,嵐壁 鳥 纔かに通ず。

百頃 青雲の杪,層波 白石の中。

鬱紆 秀氣 騰る,蕭瑟 寒空を浸す。

直ちに對す 巫山出るを,兼ねて疑う 夏禹の功。

魚龍は開闢より有り,菱芡は古今同じ。

瞿塘峡001

(現代語訳)
(夔州の東、巫山十二峰の中の何処かの山頂にあった池について述べた詩)

ここの山頂にある池には馬で登って来ることはできない。嵐気の横たわる絶壁には、鳥がわずかにやっと通えるという。

青雲の上に百頃ばかりのところが広がり、水があって、白石の乱れ立つ間に幾重の波が起こっている。

ここからは、靈秀の山の気が立てこもってあがり、また秋風が静かに寂しく寒空を水面に浸している。

ここは巫山の峡谷と真向かいになっているところで、こんな池を開いたのは水利土木の夏の禹王の功ではないかと疑われている。

ここに住む、魚龍は開闢以来の者であり、菱や芡は今も昔も同じように生えている。


(訳注)

天池

(夔州の東、巫山十二峰の中の何処かの山頂にあった池について述べた詩)

天池 山の上に在る池。初句の二字を取って詩題にする。

巫山(ふざん)は中国・重慶市巫山県と湖北省の境にある名山。長江が山中を貫流して、巫峡を形成。山は重畳して天日を隠蔽するという。巫山十二峰と言われ、その中で代表的なものに神女峰がある。巫山は東西に走るに多数平行して走る褶曲山脈の中でも最も大きく最も東にある山脈で、四川盆地の北東の境界に北西から南東へ走る褶曲山脈の大巴山脈へと合わさってゆく。長さは40km余り、主峰の烏雲頂は海抜2,400mに達する。西から流れてきた長江は北西から南東方向へ向けて巫山山脈を貫き、高低差が高く幅の狭い巫峡になっている。また霧や雨が多く、長年の雨で浸食された石灰岩の峰が霧の中で奇怪な形でそそり立つ。当時、山頂近くに小さい池が点在していたのであろう。

 

天池馬不到,嵐壁鳥纔通。

ここの山頂にある池には馬で登って来ることはできない。嵐気の横たわる絶壁には、鳥がわずかにやっと通えるという。

 鳥はやっと通えるが馬では通えない。

 

百頃青雲杪,層波白石中。

青雲の上に百頃ばかりのところが広がり、水があって、白石の乱れ立つ間に幾重の波が起こっている。

百頃 田の面積の単位。百畝。1尺が32cmであったので、1頃は 61,440m2 になる。

青雲杪 髙い所にあることをいう。

層波 幾重の波が起こっている。

白石中 石灰岩がりんりつする。

 

鬱紆騰秀氣,蕭瑟浸寒空。

ここからは、靈秀の山の気が立てこもってあがり、また秋風が静かに寂しく寒空を水面に浸している。

鬱紆 ①山道などが曲がりくねるさま。 ②「鬱悒(ウツユウ)」と同じ。

騰秀氣 山岳秀靈の気が湧きあがる。

蕭瑟 秋風が寂しく吹くこと。また、そのさま。

 

直對巫山出,兼疑夏禹功。

ここは巫山の峡谷と真向かいになっているところで、こんな池を開いたのは水利土木の夏の禹王の功ではないかと疑われている。

巫山出 巫山の峡谷。

夏禹功 中国古代、夏 () 王朝の始祖とされる伝説上の帝王。姓は姒 () 、名を文命ともいう。父鯀 (こん) の業を継いで治水に成功。舜 (しゅん) から帝位を譲られた。ここでは池水の事業を成功させたということで、ついでに山の上に池を掘らせたのではないかと、冗談を言っている。実際には。地形、地質的に出来上がったもの、杜甫もわかっている。。

 

魚龍開闢有,菱芡古今同。

ここに住む、魚龍は開闢以来の者であり、菱や芡は今も昔も同じように生えている。

開闢 天地開闢のこと。世界の始まりのこと。天と地はもともとは混沌として一つであったのが、天と地に分離したとする中国の古代思想を背景に成り立っている

 ヒシ科の一年草の水草。池沼に生え、種子は食される。

 オニバスはスイレン科の一年生の水生植物である。浮水性の水草であり、夏ごろに巨大な葉を水面に広げる。本種のみでオニバス属を構成する。