杜甫 瞿塘兩崖
三峽傳何處,雙崖壯此門。入天猶石色,穿水忽雲根。
猱玃鬚髯古,蛟龍窟宅尊。羲和冬馭近,愁畏日車翻。
(夔門である瞿塘峡の東西の両崖壁の剣峻なることを述べたもの)
三峡というのは世に知られているがおおよその人間はそれがどこに在るのだろうと思っている、この雙崖は門のようであり、何とも荘厳なものである。上の方は天まで入り込んでもまだ石の色であり、下の方は水の底まで穿っていても忽ち雲の根っこの巌をみとめるのである。その崖には、猱玃の類いの大猿が古ぼけた髭面をして晒しているし、淵の処では、蛟龍が窟宅を尊くして潜んでいる。冬の天は日輪の馭者義和が、日が短く、車を駆ってこの崖に近ずく、これを見る時、自分はあの日輪が乗る車が翻り、ひっくり返ってしまうのではないかと心配するのである。
766年-102杜甫 《1809瞿塘兩崖》 杜甫詩index-15-766年大暦元年55歲-102 <965> 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ6475
杜甫詩1500-965-1466/2500
年:766年大暦元年55歲-102
卷別: 卷二二九 文體: 五言律詩
詩題: 瞿塘兩崖
作地點: 目前尚無資料
及地點:瞿塘峽 (山南東道 夔州 夔州) 別名:瞿塘
瞿塘兩崖
(夔門である瞿塘峡の東西の両崖壁の剣峻なることを述べたもの)
三峽傳何處,雙崖壯此門。
三峡というのは世に知られているがおおよその人間はそれがどこに在るのだろうと思っている、この雙崖は門のようであり、何とも荘厳なものである。
入天猶石色,穿水忽雲根。
上の方は天まで入り込んでもまだ石の色であり、下の方は水の底まで穿っていても忽ち雲の根っこの巌をみとめるのである。
猱玃鬚髯古,蛟龍窟宅尊。
その崖には、猱玃の類いの大猿が古ぼけた髭面をして晒しているし、淵の処では、蛟龍が窟宅を尊くして潜んでいる。
羲和冬馭近,愁畏日車翻。
冬の天は日輪の馭者義和が、日が短く、車を駆ってこの崖に近ずく、これを見る時、自分はあの日輪が乗る車が翻り、ひっくり返ってしまうのではないかと心配するのである。
(瞿塘の兩崖)
三峽傳うるは 何處ぞ,雙崖 此の門 壯なり。
天に入るも 猶お石色,水を穿ちて 忽ち雲根なり。
猱玃【どうかく】鬚髯【しゅぜん】古たり,蛟龍 窟宅 尊し。
羲和 冬馭 近し,愁えて畏る 日車の翻らんことを。
『瞿塘兩崖』 現代語訳と訳註解説
(本文)
瞿塘兩崖
三峽傳何處,雙崖壯此門。
入天猶石色,穿水忽雲根。
猱玃鬚髯古,蛟龍窟宅尊。
羲和冬馭近,愁畏日車翻。
(下し文)
(瞿塘の兩崖)
三峽傳うるは 何處ぞ,雙崖 此の門 壯なり。
天に入るも 猶お石色,水を穿ちて 忽ち雲根なり。
猱玃【どうかく】鬚髯【しゅぜん】古たり,蛟龍 窟宅 尊し。
羲和 冬馭 近し,愁えて畏る 日車の翻らんことを。
(現代語訳)
(夔門である瞿塘峡の東西の両崖壁の剣峻なることを述べたもの)
三峡というのは世に知られているがおおよその人間はそれがどこに在るのだろうと思っている、この雙崖は門のようであり、何とも荘厳なものである。
上の方は天まで入り込んでもまだ石の色であり、下の方は水の底まで穿っていても忽ち雲の根っこの巌をみとめるのである。
その崖には、猱玃の類いの大猿が古ぼけた髭面をして晒しているし、淵の処では、蛟龍が窟宅を尊くして潜んでいる。
冬の天は日輪の馭者義和が、日が短く、車を駆ってこの崖に近ずく、これを見る時、自分はあの日輪が乗る車が翻り、ひっくり返ってしまうのではないかと心配するのである。
(訳注)
瞿塘兩崖
(夔門である瞿塘峡の東西の両崖壁の剣峻なることを述べたもの)
瞿塘兩崖 瞿塘峡の東西の両崖壁。地図に示すように西から流れてきた長江が瞿塘峡で90度まがって南に下って行き瞿塘峡が終われば再び東流してゆく。
瞿塘峽:在夔州東一里,舊名西陵峽,乃三峽之門。
長江二首其一(卷一四65眾水會涪萬,瞿塘爭一門。朝宗人共挹,盜賊爾誰尊?孤石隱如馬,高蘿垂飲猿 。歸心異波浪,何事即飛翻?
(卷一七31)秋興八首其六「瞿塘峽口曲江頭,萬里風煙接素秋。花萼夾城通御氣,芙蓉小苑入邊愁。珠簾繡柱圍黃鵠,錦纜牙檣起白鷗。回首可憐歌舞地,秦中自古帝王州。」
《1810瞿塘懷古》「西南萬壑注,勍敵兩崖開。地與山根裂,江從月窟來。削成當白帝,空曲隱陽臺。疏鑿功雖美,陶鈞力大哉。」
三峽傳何處,雙崖壯此門。
三峡というのは世に知られているがおおよその人間はそれがどこに在るのだろうと思っている、この雙崖は門のようであり、何とも荘厳なものである。
三峽 長江本流にある三つの峡谷の総称。重慶市奉節県の白帝城から湖北省宜昌市の南津関までの193kmの間に、上流から瞿塘峡(くとうきょう、8km)、巫峡(ふきょう、45km)、西陵峡(せいりょうきょう、66km)が連続する景勝地である。
傳何處 「所傳何處」(傳うる所何の處ぞ)
此門 夔門、瞿塘峡の入り口。
入天猶石色,穿水忽雲根。
上の方は天まで入り込んでもまだ石の色であり、下の方は水の底まで穿っていても忽ち雲の根っこの巌をみとめるのである。
雲根 空の雲は、岩場の洞窟から湧いて出るということから、巌を「雲根」という。
猱玃鬚髯古,蛟龍窟宅尊。
その崖には、猱玃の類いの大猿が古ぼけた髭面をして晒しているし、淵の処では、蛟龍が窟宅を尊くして潜んでいる。
猱玃 おおざる。
鬚髯 1 人、特に男性の口の上やあご・ほおのあたりに生える毛。2 動物の口のまわりに生える長い毛状の突起物。また、昆虫の口器にみられる二対の細い突起物。3 1や2を思わせる形状のもの。
羲和冬馭近,愁畏日車翻。
冬の天は日輪の馭者義和が、日が短く、車を駆ってこの崖に近ずく、これを見る時、自分はあの日輪が乗る車が翻り、ひっくり返ってしまうのではないかと心配するのである。
羲和 古代の伝説上の人物で太陽の御者とか太陽を生んだ母といわれる。のちに東南西北のそれぞれの地の天文に関する任務を担当する羲仲 (ぎちゅう) ,羲叔 (ぎしゅく) ,和仲,和叔の4人兄弟の総称であるという説も生れた。神話の女神。帝俊の妻で10個の太陽を産み,毎日産湯をつかわせているという。のち太陽の御者とされ,馬または竜の引く車に太陽を載せて天空をかけるとも。なお,《書経》では非神話化され,羲仲・羲叔・和仲・和叔の4人の総称で,天文をつかさどる官吏。
冬馭近 崖間で、冬の馭者は太陽の高さが低く時間がみじかい。
愁畏日車翻 ここでは、崖が急であるため、自分はあの日輪が乗る車が翻り、ひっくり返ってしまうのではないかと心配するのである。