杜甫  不寐   

瞿唐夜水黑,城改更籌。翳翳月沉霧,輝輝星近樓。

氣衰甘少寐,心弱恨容愁。多壘滿山谷,桃源何處求。

(眠りにつけないときに思うことを述べたもの)瞿唐峽のあたりは夜の水の色は濃く、城内では漏刻の告げる声が幾度か変わった。暗く陰っている月は、霧の中へ沈んでいったし、頭上の星たちは、キラキラと光り、高殿の近くに輝いている。気力が衰えてくると、眠れなくなるのも平気なものであるが、愁いというものを容認してやり過ごす自分の心の弱さについては、恨めしく思われる。このあたりの山には、異民族との国境近くということもあって塞・防塁がいっぱいに設置されている、本来は、隠遁に適したところであるはずなのに、どこに行ったら桃源郷がもとめられるのであろうか。

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杜甫詩1500-1012-1510/2500

年:766年大暦元年55-140

卷別: 卷二三○ (卷一七(5)一四六三) 文體: 五言律詩 

詩題:不寐

作地點:夔州(山南東道 / 夔州 / 夔州) 

及地點:草閣(山南東道 夔州 夔州) 別名:江邊閣

巫州 (黔中道 巫州 巫州)  別名:黔陽  

 

 

不寐

(眠りにつけないときに思うことを述べたもの)

瞿唐夜水黑,城改更籌。

瞿唐峽のあたりは夜の水の色は濃く、城内では漏刻の告げる声が幾度か変わった。

翳翳月沉霧,輝輝星近樓。

暗く陰っている月は、霧の中へ沈んでいったし、頭上の星たちは、キラキラと光り、高殿の近くに輝いている。

氣衰甘少寐,心弱恨容愁。

気力が衰えてくると、眠れなくなるのも平気なものであるが、愁いというものを容認してやり過ごす自分の心の弱さについては、恨めしく思われる。

多壘滿山谷,桃源何處求。

このあたりの山には、異民族との国境近くということもあって塞・防塁がいっぱいに設置されている、本来は、隠遁に適したところであるはずなのに、どこに行ったら桃源郷がもとめられるのであろうか。

(不寐)

瞿唐 夜水黑く,城 更籌改まる。

翳翳として 月 霧に沉み,輝輝として 星 樓に近し。

氣 衰えて寐ぬること少きに甘んず,心 弱くして愁を容るるを恨む

多壘 山谷に滿つ,桃源 何の處にか求めん。

 

 

『不寐』 現代語訳と訳註解説
(
本文)

不寐

瞿唐夜水黑,城改更籌。

翳翳月沉霧,輝輝星近樓。

氣衰甘少寐,心弱恨容愁。

多壘滿山谷,桃源何處求。
不寐

瞿唐夜水黑,城改更籌。

翳翳月沉霧,輝輝星近樓。

氣衰甘少寐,心弱恨容(黃氏作容,作和,一作知)愁。

多壘(陳作壘恨)滿山谷,桃源何(一作無)處求。


(下し文)
(不寐)

瞿唐 夜水黑く,城 更籌改まる。

翳翳として 月 霧に沉み,輝輝として 星 樓に近し。

氣 衰えて寐ぬること少きに甘んず,心 弱くして愁を容るるを恨む

多壘 山谷に滿つ,桃源 何の處にか求めん。


(現代語訳)
(眠りにつけないときに思うことを述べたもの)

瞿唐峽のあたりは夜の水の色は濃く、城内では漏刻の告げる声が幾度か変わった。

暗く陰っている月は、霧の中へ沈んでいったし、頭上の星たちは、キラキラと光り、高殿の近くに輝いている。

気力が衰えてくると、眠れなくなるのも平気なものであるが、愁いというものを容認してやり過ごす自分の心の弱さについては、恨めしく思われる。

このあたりの山には、異民族との国境近くということもあって塞・防塁がいっぱいに設置されている、本来は、隠遁に適したところであるはずなのに、どこに行ったら桃源郷がもとめられるのであろうか。


(訳注)

不寐

(眠りにつけないときに思うことを述べたもの)

 

瞿唐夜水黑,城改更籌。

瞿唐峽のあたりは夜の水の色は濃く、城内では漏刻の告げる声が幾度か変わった。

○瞿唐 中国の重慶市と湖北省の境界をなす巫山を長江(揚子江)が浸食して形成した大峡谷。重慶市奉節県の白帝城から湖北省宜昌市の南津関までで全長196km。その間が瞿唐(くとう)峡,巫(ぶ)峡,西陵峡の三つの峡谷に大別されることから,三峡と呼ばれる。山地の上昇運動に先行して下方浸食が営まれたことにより形成された。その中心部は花崗岩であるが,長江の流れが石灰岩層を貫くところでは両岸が迫り,川幅が100mに満たない地点もあり,断崖絶壁をなして水面から崖の上まで500mをこえる。

○城 夔州城郭内。

改更籌 漏刻のフロートによる時間のすすめが分かること。通常漏刻で時間を見て鹿野をついて時を知らせる。籌: 数をかぞえるのに用いた木の串(くし)。かずさし。かずとり。ここでは、杜甫は眠れないために、土岐の知らせをいちいち聞いていることを言い、夜長の時間経過を表現している。

 

翳翳月沉霧,輝輝星近樓。

暗く陰っている月は、霧の中へ沈んでいったし、頭上の星たちは、キラキラと光り、高殿の近くに輝いている。

翳翳 隠遁するにふさわしいような静けさのある暗く陰っているようす. 1.晦暗不明貌。 2.草木茂密成貌。隱約不明的樣子。文選·陶淵明·歸去來辭:「景翳翳以將入,撫孤松而盤桓。(景は翳翳として以て將に入らんとし、孤松を撫でて盤桓【ばんかん】す)

 

氣衰甘少寐,心弱恨容愁。

気力が衰えてくると、眠れなくなるのも平気なものであるが、愁いというものを容認してやり過ごす自分の心の弱さについては、恨めしく思われる。

容愁 気力が衰えてきて、自分の心が弱くなってしまい、愁いを受け容れてしまうこと。

 

多壘滿山谷,桃源何處求。

このあたりの山には、異民族との国境近くということもあって塞・防塁がいっぱいに設置されている、本来は、隠遁に適したところであるはずなのに、どこに行ったら桃源郷がもとめられるのであろうか。

多壘滿山谷 夔州城の守りのために、山の中に、防塁を築いていること。この地は温暖であるため本来なら、隠遁者が多くいるところであるはずが、そうした山中に防塁、戦のための要塞が築かれていて、隠遁者がいない。

桃源 武陵の桃源郷:世俗を離れた仙郷、別天地。理想郷、ユートピアと同意で、武陵桃源ともいう。中国、東晋(とうしん)の太元年中(376396)武陵の漁師が舟で川をさかのぼってモモの花が咲きにおう林に迷い込み、林の尽きる水源の奥の洞窟(どうくつ)を抜け出ると、そこには秦(しん)の戦乱を避けてこの地に隠れ住んだ人々が、漢・魏()・晋(しん)と数百年にわたって世の中の推移も知らず、平和な別天地での生活を営んでいた、と記す陶淵明(えんめい)の『桃花源記』による。

瞿塘峡・白帝城・魚復 

 

766年大暦元年55夔州、同時期の詩

 

1            卷一八 覆舟二首其一(頁一五九二)    巫峽盤渦曉,黔陽貢物秋。丹砂同隕石,翠羽共沉舟。羈使空斜影(一作景),    龍宮(一作居)閟積流。篙工幸不溺,俄頃逐輕鷗。

766年-133杜甫 《1835-1覆舟,二首之一》 杜甫詩index-15-766年大暦元年55-133 <1005 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ6705

 

2            卷一八   覆舟二首 其二(頁一五九三)    竹宮時望拜,桂館或求仙。(女宅)女凌波日,神光照夜年。徒聞斬蛟劍,無復    爨犀船。使者隨秋色,迢迢獨上天。

766年-134杜甫 《1835-覆舟,二首之二》 杜甫詩index-15-766年大暦元年55-134 <1006 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ6710

 

3            卷一七  垂白((四)一四六二)    垂白(一云白首)馮唐老,清秋宋玉悲。江喧長少睡,樓迥獨移時。多難身何補    ,無家病不辭。甘從千日醉,未許〈七哀〉詩。中宵(卷一七(四)一四六二)

766年-135杜甫 《1703垂白【白首】》 杜甫詩index-15-766年大暦元年55-135 <1007 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ6715

 

4              草閣(卷一七(四)一四六八)    草閣臨無(王作蕪,非)地,柴扉永不關。魚龍迴夜水,星月動秋山。久(一作    夕)露晴(一作清)初濕,高雲薄未還。泛舟慚小婦,飄泊損紅顏。  宿江邊閣(卷一七(四)一四六九)

766年-136杜甫 《1710草閣》 杜甫詩index-15-766年大暦元年55-136 <1008 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ6720

 

5             江月(卷一七(四)一四六五)    江育光於(一作如)水,高樓思殺人。天邊長作客,老去一霑巾。玉露清影,    銀河沒半輪。誰家挑錦字?燭滅(一作滅燭)翠眉顰(一作嚬)。月圓(卷一七(四)一四六六)

6              江上(卷一五(三)一三二八)    江上日多雨(一作病),蕭蕭荊楚秋。高風下木葉,永夜攬(一作絜)貂裘。勳    業頻看鏡,行藏讀倚樓。時危思報主,衰謝不能休。~t48fkx2l20;  雨晴(卷一五(三)一三三○)

7              中夜(卷一七(四)一四六○)    中夜江山靜,危樓望北辰。長為萬里客,有愧百年身。故國風雲氣,高堂戰伐塵    。胡雛負恩澤,嗟爾太平人。  垂白(卷一七(四)一四六二)

8            不寐(卷一七(四)一四六三)    瞿唐夜水黑,城改更籌。翳翳月沉霧,輝輝星近樓。氣衰甘少寐,心弱恨容(    黃氏作容,作和,一作知)愁。多壘(陳作壘恨)滿山谷,桃源何(一作無)    處求。

9            月圓(卷一七(四)一四六六)孤月當樓滿,寒江動夜扉。委波金不定,照席綺逾依。未缺空山靜,高懸列宿稀。故園松桂(一作菊)發,萬里共清輝。

10          中宵(卷一七(四)一四六二)西閣百尋餘,中霄步綺疏。飛星過水白,落月動沙(一作簷)虛。擇木知幽鳥,潛波想巨魚。親朋滿天地,兵甲少來書。

11          遣愁(卷九35(二)七五一)養拙蓬為,茫茫何所開?江通神女館,地隔望相臺。漸惜容顏老,無由弟妹來。兵戈與人事,回首一悲哀。

12          南極(卷一八(四)一五五六)南極青山眾(一作外,非),西江白谷分。古城疏落木,荒戍密寒雲。月蛇常見,風飆虎忽(一作或)聞。近身皆鳥道,殊俗自人群。睥睨登哀(木斥),蝥 (舊作矛,趙作蝥)胡弧照夕曛。亂離多醉尉,愁殺李將軍。

13          搖落(卷一九(四)一七二六)搖落巫山暮,寒江東北流。煙塵多戰鼓,風浪少行舟。鵝費羲之墨,貂餘季子裘。長懷報明主,臥病復高秋。

14          遠遊(卷二二69(五)一九九八)江闊浮高棟(晉作凍),雲長出斷山。塵沙連越,風雨暗荊蠻。雁矯銜蘆,猿啼失木間。敝裘蘇季子,歷國未知還。

15            夜(卷一七(四)一四六七)    露下天高秋水(一作氣)清,空山獨夜旅魂驚。疏燈自照孤帆宿,新月猶懸雙杵    鳴。南菊(一作國)再逢人臥病,北書不至(一作到)雁無情。步簷(一作蟾)    倚仗看牛斗,銀漢遙應接鳳城。

16            晚晴(卷一五(三)一三三二)    返(一作晚)照斜初徹(一作散),浮雲薄未歸。江虹明遠(一作近)飲,峽雨    落餘飛。鳧雁(一作鶴)終高去,熊羆覺自肥。秋分客尚在,竹露夕(一作久)    微微。~t48fkx2l20;

17            返照(卷一五(三)一三三六)    楚王宮北正黃昏,白帝城西過雨痕。返照入江翻石壁,歸雲擁樹失山村。衰年病    肺惟高枕,塞愁時早閉門。不可久留豺虎亂,南方實有未招魂。~t48fkx2l20;

18          (卷一五  熱三首  其一 (頁一三○○)雷霆空霹靂,雲雨竟虛無。炎赫衣流汗,低垂氣不蘇。乞為寒水玉,願作冷秋菰。何似兒童,風涼出舞雩。

19          (卷一五  熱三首其二(頁一三○○)瘴雲終不滅,瀘水復西來。閉人高臥,歸林鳥卻回。峽中都是火,江上只空(一作聞)雷。想見陰宮雪,風門颯沓(一作踏)開。

20          (卷一五  熱三首其三(頁一三○一)朱李沉不冷,凋胡(一作菰)炊履新。將衰骨盡病,被暍(一作褐,非)味空頻。欻翕炎蒸景,飄颻征戍(一作伐)人。十年可解甲,為爾一霑巾。

21            雨晴(卷一五(三)一三三○)    雨時(一作晴)山不改,晴罷峽如新。天路看殊俗,秋江思殺人。有猿揮淚盡,    無犬附(一作送)書頻。故國愁眉外,長歌欲損神。~t48fkx2l20;  雨不(卷一五(三)一三三○)

22            雨(卷一五(三)一三二三)    峽雲行清曉,煙霧相徘徊。風吹蒼江樹(朱子改作去,董作澍),雨灑石壁來。    淒涼生餘寒,殷殷兼出雷。白谷變氣候,朱炎安在哉?高鳥濕不下,居人門未開    。楚宮久已滅,幽珮為誰哀?侍臣書王夢,賦有冠古才。冥冥翠龍駕,多自巫山    臺。