杜甫 遠遊
江闊浮高棟,雲長出斷山。塵沙連越巂,風雨暗荊蠻。
雁矯銜蘆內,猿啼失木間。弊裘蘇季子,歷國未知還。
(遠くに遊ぶ、その感を詠う)
雲が長く連なって、それを断ち切るかのように切り立つ山が顕われ出ているが、その雲と山は、長江の流れを広くするなかに、高い棟木の影が水面に浮いている。
塵砂は越巂の地方まで連なるというし、風雨は荊蛮までは暗くなっている。
この時、雁は蘆を銜えながら用心して上に上がり、猿は啼くべきところの木から離れていて、まるで南の極地に離れている自分のようである。
疲弊した裘を着た、蘇秦ともいうべき自分は、今だに諸国をめぐり経て、故郷へ帰ることもできないでいる。
766年-146杜甫 《卷二二69遠遊》 杜甫詩index-15-766年大暦元年55歲-146 <1018> 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ6770
杜甫詩1500-1018-1516/2500
年:766年大暦元年55歲-146
卷別: 卷二三○ 文體: 五言律詩
詩題: 遠遊
作地點:潭州(江南西道 / 潭州 / 潭州)
及地點:嶲州 (劍南道南部 嶲州 嶲州) 別名:越巂
遠遊
(遠くに遊ぶ、その感を詠う)
江闊浮高棟,雲長出斷山。
雲が長く連なって、それを断ち切るかのように切り立つ山が顕われ出ているが、その雲と山は、長江の流れを広くするなかに、高い棟木の影が水面に浮いている。
塵沙連越巂,風雨暗荊蠻。
塵砂は越巂の地方まで連なるというし、風雨は荊蛮までは暗くなっている。
雁矯銜蘆內,猿啼失木間。
この時、雁は蘆を銜えながら用心して上に上がり、猿は啼くべきところの木から離れていて、まるで南の極地に離れている自分のようである。
弊裘蘇季子,歷國未知還。
疲弊した裘を着た、蘇秦ともいうべき自分は、今だに諸国をめぐり経て、故郷へ帰ることもできないでいる。
(遠遊)
江 闊くして 高棟浮ぶ,雲 長くして 斷山出づ。
塵沙 越巂に連り,風雨 荊蠻に暗し。
雁は矯る 銜蘆の內,猿は啼く 失木の間。
弊裘 蘇季子,歷國 未だ還るを知らず。
『遠遊』 現代語訳と訳註解説
(本文)
遠遊
江闊浮高棟,雲長出斷山。
塵沙連越巂,風雨暗荊蠻。
雁矯銜蘆內,猿啼失木間。
弊裘蘇季子,歷國未知還。
遠遊(含異文)
江闊浮高棟【江闊浮高凍】,雲長出斷山。塵沙連越巂,風雨暗荊蠻。雁矯銜蘆內,猿啼失木間。弊裘蘇季子,歷國未知還。
(下し文)
(遠遊)
江 闊くして 高棟浮ぶ,雲 長くして 斷山出づ。
塵沙 越巂に連り,風雨 荊蠻に暗し。
雁は矯る 銜蘆の內,猿は啼く 失木の間。
弊裘 蘇季子,歷國 未だ還るを知らず。
(現代語訳)
(遠くに遊ぶ、その感を詠う)
雲が長く連なって、それを断ち切るかのように切り立つ山が顕われ出ているが、その雲と山は、長江の流れを広くするなかに、高い棟木の影が水面に浮いている。
塵砂は越巂の地方まで連なるというし、風雨は荊蛮までは暗くなっている。
この時、雁は蘆を銜えながら用心して上に上がり、猿は啼くべきところの木から離れていて、まるで南の極地に離れている自分のようである。
疲弊した裘を着た、蘇秦ともいうべき自分は、今だに諸国をめぐり経て、故郷へ帰ることもできないでいる。
(訳注)
遠遊
(遠くに遊ぶ、その感を詠う。)
766年大暦元年55歲-146
江闊浮高棟,雲長出斷山。
雲が長く連なって、それを断ち切るかのように切り立つ山が顕われ出ているが、その雲と山は、長江の流れを広くするなかに、高い棟木の影が水面に浮いている。
江闊浮高棟 長江の川幅広い流れに、下句の「雲長出斷山」を寫しているのが高い棟木の影が水面に浮いているように見えるという意。この棟木を黄鶴楼としている説もあるがまちがいであろう。
雲長出斷山 高い棟木ような雲が、柱のような山でたちきられている
塵沙連越巂,風雨暗荊蠻。
塵砂は越巂の地方まで連なるというし、風雨は荊蛮までは暗くなっている。
塵沙連越巂 成都の世情不安に嫌気して長江を下っても、世情不安で荊州を過ぎ、湖南まで行く楚安定しているということ意味する。・越巂:越巂郡のことで、中國古郡名,漢武帝元鼎六年(公元前111年)邛都國を開いて置く。郡として治められ、邛都縣(今四川西昌市東南)とある。西漢後期に益州刺史部に隸屬した。
荊蠻 杜甫のいる夔州からして荊州は南の方向で、南蛮である。
雁矯銜蘆內,猿啼失木間。
この時、雁は蘆を銜えながら用心して上に上がり、猿は啼くべきところの木から離れていて、まるで南の極地に離れている自分のようである。
雁矯 雁は用心して上に上がっていくこと。
銜蘆內 蘆を口に銜える。危険に備えつつする動作を言う。
失木間 猿が泣くべきところの木から離れることを言う。《淮南子》「猿狖失木,擒於狐狸,非其所也。」とある。杜甫自身、この場所が自分のいるべきところでないということをいう。
弊裘蘇季子,歷國未知還。
疲弊した裘を着た、蘇秦ともいうべき自分は、今だに諸国をめぐり経て、故郷へ帰ることもできないでいる。
弊裘蘇季子 諸子百家の一つ縦横家の一人である蘇秦が貂の裘を年がら年中着て疲弊していて、勉強したことと同じように机にむかっている。
《1944搖落》 |
(搖落) |
搖落巫山暮,寒江東北流。 |
搖落 巫山暮る,寒江 東北に流る。 |
煙塵多戰鼓,風浪少行舟。 |
煙塵 戰鼓多く,風浪 行舟少し。 |
鵝費羲之墨,貂餘季子裘。 |
鵝は費す 羲之の墨を,貂は餘す 季子の裘を。 |
長懷報明主,臥病復高秋。 |
長懷して 明主に報いん,臥病して 復た高秋なり。 |