杜甫  見王監兵馬使請余賦詩二首之二  

黑鷹不省人間有,度海疑從北極來。正翮摶風超紫塞,立冬幾夜宿陽臺。

虞羅自各虛施巧,春雁同歸必見猜。萬里寒空祗一日,金眸玉爪不凡才。

(某監であって現に兵馬使である王某君のいうことをきくと、近所の山に白鷹と黒鷹とが居て、羅網をかけて鳥を捕る者が長いあいだそれを取らうとしでいるがいまだに捕れぬという。王君の考では、その鷹は毛も骨も他の鷹とちがったところがある様だ、もし臘節がすぎ春になったら、鷹は飛びあがって暖気を避け、そのつよい翮をもってひどく秋の涼しさを蓋ふ結果としてはるか遠方へ去ってしまって見ることができぬであらう、と。それで自分にたのんでその鷹の詩をつくらせた。) この第二首は黒鷹についてのべ、亦た自己を比し、且つ北歸の情を寓した。

黒鷹などいふものは人間に有るところのものとはおもえないが、有るとすればそれは疑うらくは北極から海を渡って来たものであらう。彼の鷹はまっすぐに翮を張って風にうちつけて長城をこえてきて、冬のあいだ幾晩、南方、夔州の陽雲臺の地に宿ったか。この鷹を羅網師が捕えようとしてもかれは巧を施すことのむだたことなさとるであらう。(彼の鷹が網などにかかるものではない)。また春の雁とつれだって北へ帰るならば、雁のため自己を害しでもするかと猜疑心を以てむかへられるであらう。この鷹にとつては萬里の寒空を飛ぶことはたった一日の仕事である。じつに金眸玉爪をそなえた非凡の材ある鳥である。

766-173杜甫 《1832 〔見王監兵馬使請余賦詩二首之二〕66 杜甫詩index-15-766年大暦元年55-173 <1049> 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ6925

 

 
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杜甫詩1500-1049-1543/2500

年:766年大暦元年55-172

卷別:    卷二三一              文體:    七言律詩

詩題:〔見王監兵馬使請余賦詩二首之二〕見王監兵馬使近山有白黑二鷹,羅者久取竟未能得,王以為毛骨有異他鷹,恐臘後春生鶱飛避暖勁翮思秋之甚,眇不可見,請余賦詩,二首之二

【見王監兵馬使近山有白黑二鷹,羅者久取竟未能得,王以為毛骨有異他鷹,恐臘後春生鶱飛避暖勁翮思秋之甚,眇不可見,請余賦二詩,二首之二】

作地點:              目前尚無資料

交遊人物/地點:王兵馬      當地交遊(山南東道 夔州 夔州)

 

 

見王監兵馬使近山有白黑二鷹,羅者久取竟未能得,王以為毛骨有異他鷹,恐臘後春生鶱飛避暖勁翮思秋之甚,眇不可見,請余賦詩,二首之一

(某監であって現に兵馬使である王某君のいうことをきくと、近所の山に白鷹と黒鷹とが居て、羅網をかけて鳥を捕る者が長いあいだそれを取らうとしでいるがいまだに捕れぬという。王君の考では、その鷹は毛も骨も他の鷹とちがったところがある様だ、もし臘節がすぎ春になったら、鷹は飛びあがって暖気を避け、そのつよい翮をもってひどく秋の涼しさを蓋ふ結果としてはるか遠方へ去ってしまって見ることができぬであらう、と。それで自分にたのんでその鷹の詩をつくらせた。)二首之一

雪飛玉立盡清秋,不惜奇毛恣遠遊。

ここに一匹の白鷹がいる。それは静止していれば玉のごとく立ち、動くときは雪のごとく飛ぶが、すずしい秋がなくなればその非凡な毛羽を惜しむことなく勝手に遠方へ遊びにでかけてしまう。

在野只教心力破,千人何事網羅求。

彼の鷹は、本來、山にあり天に飛ぶ性をもったものであるから原野に居れば心力を破壊するのみであり、他人関係に於いては他人から網羅で取って用いてもらいたい、とつとめる様なことはいらぬのである。

一生自獵知無敵,百中爭能恥下韝。

彼の鷹は生涯自力で猟をなすもので、その点では何ものも敵するものがないことを自ら知っており、鷹使いの弓小手から舞い下って他鷹と百中の能を争うことは恥辱だとおもっている。

鵬礙九天須卻避,兔藏三穴莫深憂。

この鷹にであうでは九天をさまたぐるほどの大きな巽をもった鵬鳥もわきへよけねばなるまいが、三つの窟屋を用意しておいてそこにかくれる様なちっぽけな兎などはこの鷹の眼中に無いからひどく心配するには及ばぬ。

〔王監が兵馬使がくを見る、余に請い詩を賦せしむ,二首の一〕      

(王監が兵馬使がを見る 近山に白黑の二鷹有り,羅者 久しく取らんとするに竟に未だ得る能わず,王 以為【おもえ】らく 毛骨 他鷹に異る有り,恐らくは臘後 春生ぜば飛して暖を避け 勁翮 秋を思う之れ甚しき,眇として見る可からず,余に請い詩を賦せしむ,二首の一)

雪飛 玉立して 清秋盡く,奇毛を惜まず 恣まに 遠遊す。

野に在り 只だ心力をして破れしむ,千人 何事ぞせん 網羅求めらるるを。

一生 自ら獵す 敵 無きを知り,百中 能を爭う 下韝を恥ず

鵬 九天を礙【さまた】ぐ 須らく 卻避すべし,兔 三穴に藏す 深く憂うこと莫れ。

〔見王監兵馬使請余賦詩二首之二〕

見王監兵馬使近山有白黑二鷹,羅者久取竟未能得,王以為毛骨有異他鷹,恐臘後春生鶱飛避暖勁翮思秋之甚,眇不可見,請余賦詩,二首之二

【見王監兵馬使近山有白黑二鷹,羅者久取竟未能得,王以為毛骨有異他鷹,恐臘後春生鶱飛避暖勁翮思秋之甚,眇不可見,請余賦二詩,二首之二】

(某監であって現に兵馬使である王某君のいうことをきくと、近所の山に白鷹と黒鷹とが居て、羅網をかけて鳥を捕る者が長いあいだそれを取らうとしでいるがいまだに捕れぬという。王君の考では、その鷹は毛も骨も他の鷹とちがったところがある様だ、もし臘節がすぎ春になったら、鷹は飛びあがって暖気を避け、そのつよい翮をもってひどく秋の涼しさを蓋ふ結果としてはるか遠方へ去ってしまって見ることができぬであらう、と。それで自分にたのんでその鷹の詩をつくらせた。)

 この第二首は黒鷹についてのべ、亦た自己を比し、且つ北歸の情を寓した。

黑鷹不省人間有,度海疑從北極來。

黒鷹などいふものは人間に有るところのものとはおもえないが、有るとすればそれは疑うらくは北極から海を渡って来たものであらう。

正翮摶風超紫塞,立冬幾夜宿陽臺。

彼の鷹はまっすぐに翮を張って風にうちつけて長城をこえてきて、冬のあいだ幾晩、南方、夔州の陽雲臺の地に宿ったか。

虞羅自各虛施巧,春雁同歸必見猜。

この鷹を羅網師が捕えようとしてもかれは巧を施すことのむだたことなさとるであらう。(彼の鷹が網などにかかるものではない)。

萬里寒空祗一日,金眸玉爪不凡才。

また春の雁とつれだって北へ帰るならば、雁のため自己を害しでもするかと猜疑心を以てむかへられるであらう。この鷹にとつては萬里の寒空を飛ぶことはたった一日の仕事である。じつに金眸玉爪をそなえた非凡の材ある鳥である。

〔王監が兵馬使がくを見る、余に請い詩を賦せしむ,二首の二〕      

(王監が兵馬使がを見る 近山に白黑の二鷹有り,羅者 久しく取らんとするに竟に未だ得る能わず,王 以為【おもえ】らく 毛骨 他鷹に異る有り,恐らくは臘後 春生ぜば飛して暖を避け 勁翮 秋を思う之れ甚しき,眇として見る可からず,余に請い詩を賦せしむ,二首の二)

黑鷹 省みず人間の有なるを,度海をりて疑うらくは北極より來る。

正翮 風に摶ちて紫塞を超え,立冬 幾夜か 陽臺に宿す。

虞羅 自各 虛しく巧を施し,春雁 同歸せば 必ず猜せられん。

萬里 寒空 祗だ一日,金眸 玉爪 不凡の才。

 

 

『見王監兵馬使請余賦詩二首之二』 現代語訳と訳註解説
(
本文)

〔見王監兵馬使請余賦詩二首之二〕

見王監兵馬使近山有白黑二鷹,羅者久取竟未能得,王以為毛骨有異他鷹,恐臘後春生飛避暖勁翮思秋之甚,眇不可見,請余賦詩,二首之二

【見王監兵馬使近山有白黑二鷹,羅者久取竟未能得,王以為毛骨有異他鷹,恐臘後春生飛避暖勁翮思秋之甚,眇不可見,請余賦二詩,二首之二】

黑鷹不省人間有,度海疑從北極來。

正翮摶風超紫塞,立冬幾夜宿陽臺。

虞羅自各虛施巧,春雁同歸必見猜。

萬里寒空祗一日,金眸玉爪不凡才。
詩文(含異文)     黑鷹不省人間有,度海疑從北極來。正翮摶風超紫塞,立冬幾夜宿陽臺【玄冬幾夜宿陽臺】。虞羅自各虛施巧,春雁同歸必見猜。萬里寒空祗一日,金眸玉爪不凡才【金眸玉爪未凡才】。


(下し文)
〔王監が兵馬使がくを見る、余に請い詩を賦せしむ,二首の二〕      

(王監が兵馬使がを見る 近山に白黑の二鷹有り,羅者 久しく取らんとするに竟に未だ得る能わず,王 以為【おもえ】らく 毛骨 他鷹に異る有り,恐らくは臘後 春生ぜば飛して暖を避け 勁翮 秋を思う之れ甚しき,眇として見る可からず,余に請い詩を賦せしむ,二首の二)

黑鷹 省みず人間の有なるを,度海をりて疑うらくは北極より來る。

正翮 風に摶ちて紫塞を超え,立冬 幾夜か 陽臺に宿す。

虞羅 自各 虛しく巧を施し,春雁 同歸せば 必ず猜せられん。

萬里 寒空 祗だ一日,金眸 玉爪 不凡の才。

(現代語訳)
(某監であって現に兵馬使である王某君のいうことをきくと、近所の山に白鷹と黒鷹とが居て、羅網をかけて鳥を捕る者が長いあいだそれを取らうとしでいるがいまだに捕れぬという。王君の考では、その鷹は毛も骨も他の鷹とちがったところがある様だ、もし臘節がすぎ春になったら、鷹は飛びあがって暖気を避け、そのつよい翮をもってひどく秋の涼しさを蓋ふ結果としてはるか遠方へ去ってしまって見ることができぬであらう、と。それで自分にたのんでその鷹の詩をつくらせた。)

 この第二首は黒鷹についてのべ、亦た自己を比し、且つ北歸の情を寓した。

黒鷹などいふものは人間に有るところのものとはおもえないが、有るとすればそれは疑うらくは北極から海を渡って来たものであらう。

彼の鷹はまっすぐに翮を張って風にうちつけて長城をこえてきて、冬のあいだ幾晩、南方、夔州の陽雲臺の地に宿ったか。

 

この鷹を羅網師が捕えようとしてもかれは巧を施すことのむだたことなさとるであらう。(彼の鷹が網などにかかるものではない)。

また春の雁とつれだって北へ帰るならば、雁のため自己を害しでもするかと猜疑心を以てむかへられるであらう。この鷹にとつては萬里の寒空を飛ぶことはたった一日の仕事である。じつに金眸玉爪をそなえた非凡の材ある鳥である。


(訳注)

〔王監が兵馬使がくを見る、余に請い詩を賦せしむ,二首の二〕      

見王監兵馬使近山有白黑二鷹,羅者久取竟未能得,王以為毛骨有異他鷹,恐臘後春生鶱飛避暖勁翮思秋之甚,眇不可見,請余賦詩,二首之二

(某監であって現に兵馬使である王某君のいうことをきくと、近所の山に白鷹と黒鷹とが居て、羅網をかけて鳥を捕る者が長いあいだそれを取らうとしでいるがいまだに捕れぬという。王君の考では、その鷹は毛も骨も他の鷹とちがったところがある様だ、もし臘節がすぎ春になったら、鷹は飛びあがって暖気を避け、そのつよい翮をもってひどく秋の涼しさを蓋ふ結果としてはるか遠方へ去ってしまって見ることができぬであらう、と。それで自分にたのんでその鷹の詩をつくらせた。)

 この第二首は黒鷹についてのべ、亦た自己を比し、且つ北歸の情を寓した。

 

黑鷹不省人間有,度海疑從北極來。

黒鷹などいふものは人間に有るところのものとはおもえないが、有るとすればそれは疑うらくは北極から海を渡って来たものであらう。

【1】    不省 省は察である。どう考えてもそのようにはみえない。

【2】    人間有 有は所有在り。人間に有るものの義。

 

正翮摶風超紫塞,立冬幾夜宿陽臺。

彼の鷹はまっすぐに翮を張って風にうちつけて長城をこえてきて、冬のあいだ幾晩、南方、夔州の陽雲臺の地に宿ったか。

【3】    正翻 たちばねかまっすぐにのばす。

【4】    摶風 摶はうちつけること。

【5】    超紫塞 秦が万里の長城を築くに土色皆紫であったために、紫塞は、異民族から防御する詩的総称として使われている。朔方の塞は雁門、此処では、西の塞、南の塞と超とは之を越えて来ていることをいう。

【6】    幾夜 いくよ。裏面の意に多く宿すること。

【7】    陽臺 楚の陽雲台。巫山神女が往来したところ。巫山縣の西北にある陽雲臺の事であるが、杜甫が夔州城の役所へきてこの詩を作ることから、王監のいるこの役所をさすものである。

 

虞羅自各虛施巧,春雁同歸必見猜。

この鷹を羅網師が捕えようとしてもかれは巧を施すことのむだたことなさとるであらう。(彼の鷹が網などにかかるものではない)。

【8】    虞羅 虞羅は虞人の作る網。虞は虞人、このことから山澤を掌る役人をいみする。

【9】    自各虛施巧 みずからも、おのおののものも、うまくあみの仕掛けするので、仕掛けがわからなくなる。虚とは鷹がそれにかからないことをいう。

【10】  春雁同歸 春に雁が南より北へかへる。同歸とは鷹が雁とおなじく北へかへるをいう。

【11】  必見猜 鷹が雁からそねまれる。 

 

萬里寒空祗一日,金眸玉爪不凡才。
また春の雁とつれだって北へ帰るならば、雁のため自己を害しでもするかと猜疑心を以てむかへられるであらう。この鷹にとつては萬里の寒空を飛ぶことはたった一日の仕事である。じつに金眸玉爪をそなえた非凡の材ある鳥である。

【12】  萬里寒空 南より塞外までの遠いそら。

【13】  金眸 金のように光る鋭い眼。

【14】  玉爪 たまの様な白く堅きつめ。

【15】  不凡材 非凡の材。