杜甫研究【月】について 4.-4-3-1 夔州での生活境の中での『月』(3) 

 

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●杜甫の全作品1500首を訳注解説 ●理想の地を求めて旅をする。"

Ⅲ 杜詩

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杜甫詩(1)736~751年  53

杜甫詩(2)752年~754年、43歳 73

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杜甫詩(4)757年、左拾遺 43

杜甫詩(5)758年47歳 左遷 53

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杜甫詩(12)762年 蜀中転々 49

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(16-2) 766年雲安、暮春、夔州 168首 の(1)81

 

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杜甫詩 (17-2) 767・瀼西・東屯 133

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杜甫研究【月】について 4.-4-3 夔州での生活境の中での『月』(3)   Ⅲ 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ9829-1

 

 

 

 

 

杜甫    《月    詩》

 

 

4-4-1

---10-----------------------------------------------------------

766-102 /10  山南東道 夔州 奉節 瀼西

巻別:全唐詩  230_25      

   杜詩詳注 卷一七(四)一四六五

   杜少陵集 巻7-17

   全詩訳注 ID 966

江月

江月光于水,高樓思殺人。天邊長作客,老去一沾巾。

玉露團清影,銀河沒半輪。誰家挑錦字,滅燭翠眉顰。

---11-----------------------------------------------------------

766-103 / 5               山南東道 夔州 奉節 瀼西

巻別:全唐詩  230_35      

   杜詩詳注 卷一七(四)一四六六

   杜少陵集 巻8-17

   全詩訳注 ID 967

月圓

孤月當樓滿,寒江動夜扉。委波金不定,照席綺逾依。

未缺空山靜,高懸列宿稀。故園松桂發,萬里共清輝。


---12-----------------------------------------------------------

767-113 / 山南東道 夔州 奉節 瀼西

巻別:全唐詩  230_67      

   杜詩詳注 卷一七(四)一四七六

   杜少陵集 巻17-18

   全詩訳注 ID 977

月 

四更山吐月,殘夜水明樓。塵匣元開鏡,風簾自上鉤。

兔應疑鶴髮,蟾亦戀貂裘。斟酌姮娥寡,天寒奈九秋。

 

4-4-2

---13-----------------------------------------------------------

767-44 / 3-1  山南東道 夔州 奉節 瀼西

巻別:全唐詩  230_50      

   杜詩詳注 卷一八(四)頁一六二九

   杜少陵集 巻18-84

   全詩訳注 ID 1111

月三首其一

斷續巫山雨,天河此夜新。若無青嶂月,愁殺白頭人。

魍魎移深樹,蝦蟆動半輪。故園當北斗,直指照西秦。

---14-----------------------------------------------------------

767    45 / 3-2  山南東道 夔州 奉節 瀼西

巻別:全唐詩  230_50      

   杜詩詳注 卷一八(四)頁一六三○

   杜少陵集 巻18-85

   全詩訳注 ID 1112

月三首 其二

並照巫山出,新窺楚水清。羈棲愁裏見,二十四回明。

必驗升沉體,如知進退情。不違銀漢落,亦伴玉繩橫。

---15-----------------------------------------------------------

767    46 / 3-3  山南東道 夔州 奉節 瀼西

巻別:全唐詩  230_50      

   杜詩詳注 卷一八(四)頁一六三一

   杜少陵集 巻18-86

   全詩訳注 ID 1113

月三首 其三

萬里瞿塘峽,春來六上弦。時時開暗室,故故滿青天。 

爽合風襟靜,高當淚臉懸。南飛有烏鵲,夜久落江邊。 

 

4-4-3

---16-----------------------------------------------------------

767    168 / 8-1  山南東道 夔州 奉節 瀼西

巻別:全唐詩  230_59      

   杜詩詳注 卷二○(四)頁一七五○

   杜少陵集 巻20-33

   全詩訳注 ID 1193

八月十五夜月二首其一

滿目飛明鏡,歸心折大刀。轉蓬行地遠,攀桂仰天高。

水路疑霜雪,林棲見羽毛。此時瞻白兔,直欲數秋毫。

---17-----------------------------------------------------------

767    169 / 8-2  山南東道 夔州 奉節 瀼西

巻別:全唐詩  230_59      

   杜詩詳注 卷二○(四)頁一七五一

   杜少陵集 巻20-34

   全詩訳注 ID 1194

八月十五夜月二首其二

稍下巫山峽,猶銜白帝城。氣沈全浦暗,輪仄半樓明。

刁鬥皆催曉,蟾蜍且自傾。張弓倚殘魄,不獨漢家營。

---18-----------------------------------------------------------

767    170        山南東道 夔州 奉節 瀼西

巻別:全唐詩  230_60      

   杜詩詳注 卷二○(四)一七五二

   杜少陵集 巻20-35

   全詩訳注 ID 1195

十六夜玩月

舊挹金波爽,皆傳玉露秋。關山隨地闊,河漢近人流。

穀口樵歸唱,孤城笛起愁。巴童渾不寢,半夜有行舟。

---19-----------------------------------------------------------

767    171        山南東道 夔州 奉節 瀼西

巻別:全唐詩  230_61      

   杜詩詳注 卷二○(四)一七五三

   杜少陵集 巻20-36

   全詩訳注 ID 1196

十七夜對月

秋月仍圓夜,江村獨老身。捲簾還照客,倚杖更隨人。

光射潛虯動,明翻宿鳥頻。茅齋依橘柚,清切露華新。

---20-----------------------------------------------------------

767    152        山南東道 夔州 奉節 東屯

巻別:全唐詩  229_59      

   杜詩詳注 卷二○(四)一七六九

   杜少陵集 巻20-55

   全詩訳注 ID 1215

東屯月夜

抱疾漂萍老,防邊舊穀屯。春農親異俗,月在衡門。

青女霜楓重,黃牛峽水喧。泥留虎鬥跡,月掛客愁村。

喬木澄稀影,輕雲倚細根。數驚聞雀噪,暫睡想猿蹲。

日轉東方白,風來北斗昏。天寒不成寢,無夢寄歸魂。 

 

 

 

 

4.-4-3 

州での生活境の中での『月』(3)

 

 

4-4-3

---16-----------------------------------------------------------

767    168 / 8-1  山南東道 夔州 奉節 瀼西

巻別:全唐詩  230_59      

   杜詩詳注 卷二○(四)頁一七五○

   杜少陵集 巻20-33

   全詩訳注 ID 1193

八月十五夜月二首其一

滿目飛明鏡,歸心折大刀。

轉蓬行地遠,攀桂仰天高。

水路疑霜雪,林棲見羽毛。

此時瞻白兔,直欲數秋毫。

(八月十五夜月二首其の一)

満目 明鏡飛び、帰心 大刀折らる。

転蓬 地を行くこと遠く、攀桂 天の高きを 仰ぐ。

水路 霜雪かと疑い、林棲 羽毛を見る。

此の時 白免を瞻れば、直ちに秋毫を数えんと欲す。

 

 

作時年:

767

大暦2

56

全唐詩

 卷二三〇_59

文體:

五言律詩

杜詩詳注

卷二○(四)頁一七五○

2033 -

詩題:

八月十五夜月二首其一(卷二○(四)頁一七五○)

序文

 

作地點:

奉節(山南東道 / 夔州 /瀼西・東屯)

及地點:

奉節(山南東道 / 夔州 / 瀼西)

0

0

 

交遊人物:

 

0

0

 

 

八月十五夜月二首其一

(月は故郷を思い浮かべるが特に中秋の名月は、特に帰京の気持ちを高ぶらせる気持ちを詠ったもの)

滿目飛明鏡,歸心折大刀。

目に映るものといえば、天に上った中秋の名月であるが、この明鏡は故郷をも同じように照らしている、私の長安へ帰りたいと思う心は、病気に伏せるのと、三峡の航路不安によって、戻る願いは大刀でぶった斬られ、くじかれたままである。

轉蓬行地遠,攀桂仰天高。

私は転がる蓬草のように遠くまでやってきたが、よじ登れるほどに近く見える月を仰いで長安を思う。

水路疑霜雪,林棲見羽毛。

月の光を浴びて、水面は白く光って霜や雪が降ったのかと疑い、林に棲む鳥の羽毛までもがはっきりと見える。

此時瞻白兔,直欲數秋毫。

この時、月に棲むという白ウサギを見れば、秋に生える細い毛も数えられるだろう。

 

(八月十五夜月二首其の一)

満目 明鏡飛び、帰心 大刀折らる。

転蓬 地を行くこと遠く、攀桂 天の高きを 仰ぐ。

水路 霜雪かと疑い、林棲 羽毛を見る。

此の時 白免を瞻れば、直ちに秋毫を数えんと欲す。

 

八月十五夜月二首其二

稍下巫山峽,猶銜白帝城。氣沈全浦暗,輪仄半樓明。

刁鬥皆催曉,蟾蜍且自傾。張弓倚殘魄,不獨漢家營。

 

 

《八月十五夜月二首其一》現代語訳と訳註解説
(
本文)
 
八月十五夜月二首其一

滿目飛明鏡,歸心折大刀。

轉蓬行地遠,攀桂仰天高。

水路疑霜雪,林棲見羽毛。

此時瞻白兔,直欲數秋毫。

 

(下し文)
(八月十五夜月二首其の一)

満目 明鏡飛び、帰心 大刀折らる。

転蓬 地を行くこと遠く、攀桂 天の高きを 仰ぐ。

水路 霜雪かと疑い、林棲 羽毛を見る。

此の時 白免を瞻れば、直ちに秋毫を数えんと欲す。

 

(現代語訳)

(月は故郷を思い浮かべるが特に中秋の名月は、特に帰京の気持ちを高ぶらせる気持ちを詠ったもの)

目に映るものといえば、天に上った中秋の名月であるが、この明鏡は故郷をも同じように照らしている、私の長安へ帰りたいと思う心は、病気に伏せるのと、三峡の航路不安によって、戻る願いは大刀でぶった斬られ、くじかれたままである。

私は転がる蓬草のように遠くまでやってきたが、よじ登れるほどに近く見える月を仰いで長安を思う。

月の光を浴びて、水面は白く光って霜や雪が降ったのかと疑い、林に棲む鳥の羽毛までもがはっきりと見える。

この時、月に棲むという白ウサギを見れば、秋に生える細い毛も数えられるだろう。

 

 

(訳注)

八月十五夜月二首其一

1. (月は故郷を思い浮かべるが特に中秋の名月は、特に帰京の気持ちを高ぶらせる気持ちを詠ったもの)

2. 【題意】 大暦二年(七六七)旧暦八月十五日の夜、夔州の瀼西での作と考えるのが大方である。ただ、『黄鶴補注』巻三〇は永泰元年(七六五)の作とするものもある。其の一は長安を思いつつ、中秋の明るい月を眺める。其の二は白帝城を照らす明け方の月を詠じる。

旧暦の8月15日を、中国では「仲秋節」とよび、「春節」(旧正月)に次ぐ一大行事となっています。

3. 八月十五夜 古代中国では、秋の収穫期に収穫をもたらしてくれた神様に感謝すると共に、収穫そのものの喜びをこめて、美しい月を拝む習慣が出来ました。

また、この時期は秋雨によって、空気中の塵や埃が洗い流されるために、空気が澄み、月が大変美しく見えることも”お月見”をする要因にもなっている。また、中国では「仲秋節」に伝統菓子でもある『月餅』を食べる習慣が古くからある。月餅は、中に餡や栗、胡桃や卵黄などを入れて作る焼き菓子で、その丸い形から家族の円満をあらわしていて、99日、高い山に登って故郷に思いを馳せたものはが故郷に帰り、「仲秋節」に、家族が集まり、家族そろって食事をし、食後に『月餅』を食べ、家族の団欒の幸せを願う。

 

滿目飛明鏡,歸心折大刀。

目に映るものといえば、天に上った中秋の名月であるが、この明鏡は故郷をも同じように照らしている、私の長安へ帰りたいと思う心は、病気に伏せるのと、三峡の航路不安によって、戻る願いは大刀でぶった斬られ、くじかれたままである。

4. 満目 視野に入るものすべて。……だけが目に入る。双声語「マンモク」。

5. 明鏡 満月。(上下絃の月を破鏡という)つまり、この後は、下絃の月のころに夫が帰ってくるという隠語である。

6. 折大刀 帰京の気持ちが果たされない。大刀の柄の頭(手元部分)に環(輪形の玉器)があることから、「還(かえる)」(環と同音)の隠語となる。『玉台新詠』巻一〇「古絶句四首其一」に「藁砧今何在、山上復有山。何當大刀頭、破鏡飛上天。」(何ぞ当に大刀の頭なるべき、破鏡(半月の隠語)飛びて天に上るいつお帰りになるの。たぶん半月が空に昇る頃。杜甫はこの詩を踏まえて、満月になっても帰れないことをいう。

 

轉蓬行地遠,攀桂仰天高。

私は転がる蓬草のように遠くまでやってきたが、よじ登れるほどに近く見える月を仰いで長安を思う。

7. 轉蓬 転がる蓬草。杜甫が故郷に帰れず、各地を放浪することを比喩したものであるが、杜甫は、同じ場所に朝木で家を構えたことがないので、しばしばこの後を使う。「蓬」はヨモギ(キク科)ではなく、アカザ科の植物で、秋になると根元から切れて、丸まって飛ぶ。三國・魏・曹植「吁嗟篇」に「吁嗟此轉蓬,居世何獨然。」(吁嗟此の転蓬、世に居ること何ぞ独り然るや。)、ああ、ここに転びゆくよもぎがある。この世にあるもので、どうしてお前だけが、この「轉蓬」となるのあろうか。

8. 攀桂 よじ登れるほどに近く見える月。桂はモクセイで、月に生えるとの伝承から月そのものを指す。

9. 仰天高 嵩高い天を仰ぐ。長安を望むことの比喩。

 

水路疑霜雪,林棲見羽毛。

月の光を浴びて、水面は白く光って霜や雪が降ったのかと疑い、林に棲む鳥の羽毛までもがはっきりと見える。

10. 霜雪 しもとゆき。双声語「ソウセツ」。

 

此時瞻白兔,直欲數秋毫。 
この時、月に棲むという白ウサギを見れば、秋に生える細い毛も数えられるだろう。

11. 白兎 白いウサギ。月にウサギが住み、仙薬を抱くという伝承を承ける。鈴木注は「月影」、すなわち月の形という。

12. 秋毫 秋になって細く密に生える冬に備えるウサギの毛。ここでは地上のウサギの毛をいう。


---17-----------------------------------------------------------

767    169 / 8-2  山南東道 夔州 奉節 瀼西

巻別:全唐詩  230_59      

   杜詩詳注 卷二○(四)頁一七五一

   杜少陵集 巻20-34

   全詩訳注 ID 1194

八月十五夜月二首其二

稍下巫山峽,猶銜白帝城。

氣沈全浦暗,輪仄半樓明。

刁鬥皆催曉,蟾蜍且自傾。

張弓倚殘魄,不獨漢家營。

(八月十五夜月二首其の二)

稍や下る巫山の峡、猶お銜む白帝の城。

気沈みて 全浦暗く、輪仄きて 半楼明かなり。

刁鬥 皆な暁を催し、蟾蜍 且く 自ら傾かんとす。

弓を張りて殘魄に倚るは、独り漢家の営のみならず。

 

八月十五夜月二首其二

(中秋の名月も西に傾き始めたが白帝城は、月にてらされ、輝いている、唐の軍営も次第に整ってきている。)

稍下巫山峽,猶銜白帝城。

月は少しずつ巫山の谷間に落ちていくが、それでも光は高台の白帝城を包む。

氣沈全浦暗,輪仄半樓明。

夜気が覆いかぶさって奉節、魚復浦地域全体は、谷あいの底であるから、一気に暗く見えなくなるが、月光が斜めに射して白帝城の高楼は、王冠のように、半分はまだ明るい。

刁鬥皆催曉,蟾蜍且自傾。

夜に打ち鳴らす刁鬥の音が朝が来るのをうながす時、満月で蟾蜍が良く見える月は次第に傾いていく。

張弓倚殘魄,不獨漢家營。

有り明けの月のもと、兵士が弓を張るのは、白帝城の軍営だけではなく、東西南北の異民族にたいして、ようやく軍営が整ってきた。

 

(八月十五夜月二首其の二)

稍や下る巫山の峡、猶お銜む白帝の城。

気沈みて 全浦暗く、輪仄きて 半楼明かなり。

刁鬥 皆な暁を催し、蟾蜍 且く 自ら傾かんとす。

弓を張りて殘魄に倚るは、独り漢家の営のみならず。

 

 

 

《八月十五夜月二首其二》現代語訳と訳註解説

(本文)
八月十五夜月二首其二

稍下巫山峽,猶銜白帝城。

氣沈全浦暗,輪仄半樓明。

刁鬥皆催曉,蟾蜍且自傾。

張弓倚殘魄,不獨漢家營。

 

(下し文)
(八月十五夜月二首其の二)

稍や下る巫山の峡、猶お銜む白帝の城。

気沈みて 全浦暗く、輪仄きて 半楼明かなり。

刁鬥 皆な暁を催し、蟾蜍 且く 自ら傾かんとす。

弓を張りて殘魄に倚るは、独り漢家の営のみならず。

 

(現代語訳)

(中秋の名月も西に傾き始めたが白帝城は、月にてらされ、輝いている、唐の軍営も次第に整ってきている。)

月は少しずつ巫山の谷間に落ちていくが、それでも光は高台の白帝城を包む。

夜気が覆いかぶさって奉節、魚復浦地域全体は、谷あいの底であるから、一気に暗く見えなくなるが、月光が斜めに射して白帝城の高楼は、王冠のように、半分はまだ明るい。

夜に打ち鳴らす刁鬥の音が朝が来るのをうながす時、満月で蟾蜍が良く見える月は次第に傾いていく。

有り明けの月のもと、兵士が弓を張るのは、白帝城の軍営だけではなく、東西南北の異民族にたいして、ようやく軍営が整ってきた。

 

(訳注)

八月十五夜月二首其二

13. (中秋の名月も西に傾き始めたが白帝城は、月にてらされ、輝いている、唐の軍営も次第に整ってきている。)

14. 【補説】 第八句について、軍営が白帝城の一カ所ではないことという。「漢家営」を都(長安)の陣営と見て、都ばかりではなくここ白帝城でも厳戒態勢だと解釈する。この句を(昔の)漢の陣営だけでなく、今も同様であると解する。

 

稍下巫山峽,猶銜白帝城。

月は少しずつ巫山の谷間に落ちていくが、それでも光は高台の白帝城を包む。

15. 巫山峡 巫山(重慶市巫山県の東にある山なみ)の下を流れる巫峽。ここでは広く白帝城の辺りから東に続く三峡をいう。

16. 白帝城 長江三峡の入り口にあたる瞿塘峡峡の北岸の山上に立つ城の名。

 

氣沈全浦暗,輪仄半樓明。

夜気が覆いかぶさって奉節、魚復浦地域全体は、谷あいの底であるから、一気に暗く見えなくなるが、月光が斜めに射して白帝城の高楼は、王冠のように、半分はまだ明るい。

17. 全浦 水辺全体。ここでは白帝城の西の長江北岸の魚復浦をいう。

 

刁鬥皆催曉,蟾蜍且自傾。

夜に打ち鳴らす刁鬥の音が朝が来るのをうながす時、満月で蟾蜍が良く見える月は次第に傾いていく。

18. 刁鬥 ひしゃく型の鋼製の軍用品。昼は炊飯に用い、夜は叩いて警戒を行った。双声語「チョウト」。

19. 催曉 朝になるのをうながす。まもなく朝になること。

20. 蟾蜍 ヒキガエル。月にヒキガエルが住むという伝承(『准南子』精神訓)から、月そのものを指す。双声語「センジョ」。

 

張弓倚殘魄,不獨漢家營。
有り明けの月のもと、兵士が弓を張るのは、白帝城の軍営だけではなく、東西南北の異民族にたいして、ようやく軍営が整ってきた。

21. 殘魄 残月に同じ。有明の月。明け方に光が薄くなった月。

22. 漢家營 漢朝の軍営。唐は安史の乱から、内部崩壊直前まで追い詰められ、ようやくこの時期になって、異民族に対する軍営が整ってきたことを言う。