杜甫詳注 杜詩の訳注解説 漢文委員会

士族の子で、のほほんとしていた杜甫を変えたのは、三十代李白にあって、強いカルチャーショックを受けたことである。その後十年、就活に励んだ。同時に極限に近い貧困になり、家族を妻の実家に送り届けるときの詩は、そして、子供の死は、杜甫の詩を格段に向上させた。安史の乱直前から、捕縛され、長安での軟禁は、詩にすごみと分かりやすさのすぐれたしにかえてゆき、長安を脱出し、鳳翔の行在所にたどり着き、朝廷に仕えたことは、人間関係の複雑さを体験して、詩に深みが出ることになった。そして、朝廷における疎外感は詩人として数段高めさせてくれた。特に、杜甫の先生に当たる房琯関連の出来事、二十数首の詩は内容のあるものである。  一年朝廷で死に直面し、そして、疎外され、人間的にも成長し、これ以降の詩は多くの人に読まれる。  ◍  華州、秦州、同谷  ◍  成都 春満喫  ◍  蜀州、巴州、転々。 ◍  再び成都 幕府に。 それから、かねてから江陵にむかい、暖かいところで養生して、長安、朝廷に上がるため、蜀を発し、 ◍  忠州、雲州   ◍  夔州   ◍  公安  そして、長安に向かうことなく船上で逝くのである。  本ブログは、上記を完璧に整理し、解説した仇兆鰲の《杜詩詳注》に従い、改めて進めていく。

杜甫の詩、全詩、約1500首。それをきちんと整理したのが、清、仇兆鰲注解 杜詩詳注である。その後今日に至るまで、すべてこの杜詩詳注に基づいて書かれている。筆者も足掛け四年癌と戦い、いったんこれを征することができた。思えば奇跡が何度も起きた。
このブログで、1200首以上掲載したけれど、ブログ開始時は不慣れで誤字脱字も多く、そして、ブログの統一性も不十分である。また、訳注解説にも、手抜き感、不十分さもあり、心機一転、杜詩詳注に完全忠実に初めからやり直すことにした。
・そして、全唐詩と連携して、どちらからでも杜詩の検索ができるようにした。
・杜甫サイトには語順検索、作時編年表からも検索できるようにした。
杜甫詩の4サイト
● http://2019kanbun.turukusa.com/
● http://kanbunkenkyu.webcrow.jp
● http://kanbunkenkyu.web.fc2.com/
● http://kanbuniinka15.yu-nagi.com

逃避行

彭衙行 #4 杜甫 135 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 132

彭衙行 #4 杜甫 135 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 132 (ほうがこう)


#1
憶昔避賊初,北走經險艱。夜深彭衙道,月照白水山。』
盡室久徒步,逢人多厚顏。參差穀鳥吟,不見遊子還。
癡女饑咬我,啼畏虎狼聞。懷中掩其口,反側聲愈嗔。
小兒強解事,故索苦李餐。』
#2
一旬半雷雨,泥濘相牽攀。既無禦雨備,徑滑衣又寒。
有時經契闊,竟日數裡間。野果充 ?糧,卑枝成屋椽。
早行石上水,暮宿天邊煙。』
#3
少留同家窪,欲出蘆子關。故人有孫宰,高義薄曾雲。
延客已曛黑,張燈啟重門。暖湯濯我足,剪紙招我魂。』
#4
從此出妻孥,相視涕闌幹。
それから自分は妻子をださせて彼にひき合せた、お互にみあわせてともに涙と鼻水をながしとめどない大泣きをした。
眾雛爛熳睡,喚起沾盤飧。
いつもは鳥のひなの様な子どもたちなのに、みるとみんなさかんによく眠っている。それをよびおこした、それから大皿に盛った御飯のもてなしとうるおわせてくれるのだ。
誓將與夫子,永結為弟昆。
そのとき孫宰は自分にむかって「誓ってあなたと永く交りを結んで兄弟となりましょう」といってくれる。
遂空所坐堂,安居奉我歡。
とうとうここの主人がいつも使っているる座敷をからにあけてくれた、居どころを安穏にして 我々がよろこぶ様にとしてくれるのだ。
誰肯艱難際,豁達露心肝。』
この難儀な時節だというのにだれが孫宰の様にしてくれようか、そのうえ、「永結為弟昆」と自己のはらのなかをうちあけて親切をつくしてくれるのである。』
別來歲月周,胡羯仍構患。
おもいまわせばあなたと別れてこのかたまる一年ばかりたった。しかし、叛乱軍の勢いが止まらない、やっぱり患難なことなのだ。
何時有翅翎,飛去墮爾前?』

いつになったら自分のからだにはねがはえてきて、飛んでいってあなたの前におちることができるのだろうか?』


此(これ)従(より)妻孥(さいど)を出す 相視て涕(なみだ)闌幹(らんかん)たり。
衆雛(しゅうすう) 爛漫(らんまん)として睡(ねむ)る、喚び 起して 盤飧(ばんそん)に 沾(うるお)わしむ。
誓って将に夫子(ふうし)と、永く結び て 弟昆(ていこん)と為らんと す と。
遂に坐する所の堂を空(むな)しくして、居を安(あんじ)て 我が歓(よろこび)を奉ず。
誰か 肯(あえ)て 艱難(かんなん)の際、豁達(かつたつ) 心肝(しんかん)を露(あら)わさん。』
別来(べつらい) 歳月周(めぐ)る 胡羯(こけつ)  仍(なお) 患(うれい)を構(かも)う
何時(いつ)か 翅翎(しれい)有って 飛び去って爾(なんじ)が前に堕(おつ)べき。』


彭衙行 #4 現代語訳と訳註
(本文)

從此出妻孥,相視涕闌幹。眾雛爛熳睡,喚起沾盤飧。
誓將與夫子,永結為弟昆。遂空所坐堂,安居奉我歡。
誰肯艱難際,豁達露心肝。』
別來歲月周,胡羯仍構患。何時有翅翎,飛去墮爾前?』

幹。飧。昆。歡。肝。/患。前。

(下し文)
此(これ)従(より)妻孥(さいど)を出す 相視て涕(なみだ)闌幹(らんかん)たり。
衆雛(しゅうすう) 爛漫(らんまん)として睡(ねむ)る、喚び 起して 盤飧(ばんそん)に 沾(うるお)わしむ。
誓って将に夫子(ふうし)と、永く結び て 弟昆(ていこん)と為らんと す と。
遂に坐する所の堂を空(むな)しくして、居を安(あんじ)て 我が歓(よろこび)を奉ず。
誰か 肯(あえ)て 艱難(かんなん)の際、豁達(かつたつ) 心肝(しんかん)を露(あら)わさん。』
別来(べつらい) 歳月周(めぐ)る 胡羯(こけつ)  仍(なお) 患(うれい)を構(かも)う
何時(いつ)か 翅翎(しれい)有って 飛び去って爾(なんじ)が前に堕(おつ)べき。』

(現代語訳)
それから自分は妻子をださせて彼にひき合せた、お互にみあわせてともに涙と鼻水をながしとめどない大泣きをした。
いつもは鳥のひなの様な子どもたちなのに、みるとみんなさかんによく眠っている。それをよびおこした、それから大皿に盛った御飯のもてなしとうるおわせてくれるのだ。
そのとき孫宰は自分にむかって「誓ってあなたと永く交りを結んで兄弟となりましょう」といってくれる。
とうとうここの主人がいつも使っているる座敷をからにあけてくれた、居どころを安穏にして 我々がよろこぶ様にとしてくれるのだ。
この難儀な時節だというのにだれが孫宰の様にしてくれようか、そのうえ、「永結為弟昆」と自己のはらのなかをうちあけて親切をつくしてくれるのである。』
おもいまわせばあなたと別れてこのかたまる一年ばかりたった。しかし、叛乱軍の勢いが止まらない、やっぱり患難なことなのだ。
いつになったら自分のからだにはねがはえてきて、飛んでいってあなたの前におちることができるのだろうか?』


(訳注)#4
從此出妻孥,相視涕闌幹。

それから自分は妻子をださせて彼にひき合せた、お互にみあわせてともに涙と鼻水をながしとめどない大泣きをした。
従此 それから。○出妻孥 杜甫の妻子をださせて孫宰に面会させる。○相視 たがいによくみあう。○闌幹 あふれてながれるさま。


眾雛爛熳睡,喚起沾盤飧。
いつもは鳥のひなの様な子どもたちなのに、みるとみんなさかんによく眠っている。それをよびおこした、それから大皿に盛った御飯のもてなしとうるおわせてくれるのだ。
衆雛 多くの幼少なこども。いつもは鳥のように騒いでいることをいうため雛と使う。○爛漫 ねむりのまっさかりにあるさま。○喚起 よびおこす。○宿 そのめぐみにうるおわしめる。○盤殆 盤は大皿、娘は食事。

誓將與夫子,永結為弟昆。
そのとき孫宰は自分にむかって「誓ってあなたと永く交りを結んで兄弟となりましょう」といってくれる。
○この二句は孫宰の言葉。夫子とは孫雫よりみた、杜甫のことをさす語、弟昆の昆は兄、弟昆は兄弟をいう。


遂空所坐堂,安居奉我歡。
とうとうここの主人がいつも使っているる座敷をからにあけてくれた、居どころを安穏にして 我々がよろこぶ様にとしてくれるのだ。
 からにしてあけてくれる。○所坐堂 主人がいつも使っている奥座敷。○安居 居どころを安穏にして。○奉我歓 我々に我々の歓ぶことをあたえでくれる。


誰肯艱難際,豁達露心肝。』
この難儀な時節だというのにだれが孫宰の様にしてくれようか、そのうえ、「永結為弟昆」と自己のはらのなかをうちあけて親切をつくしてくれるのである。』
誰骨 次句までかかっている、反語である。だれがそんなにすることを承知しょうか、するものはない。○艱難 世事のなんぎなこと。○豁達 ひろびろと。○露心肝 心のおくそこまで他人にだしてみせる。この句までが二聯前から、かかっている。


別來歲月周,胡羯仍構患。
おもいまわせばあなたと別れてこのかたまる一年ばかりたった。しかし、叛乱軍の勢いが止まらない、やっぱり患難なことなのだ。
別来 わかれてこのかた。○周 抄とめぐりする。前年の夏より今年の秋までで一周である。○胡羯仍構患 叛乱軍、史忠明の兵が太原に攻め込み、安慶緒・尹子奇などに睢陽に赴かせた等のことをさしている。・仍 やっぱり。・構患 心配事をこしらえている。叛乱軍の勢いが止まらないこと。


何時有翅翎,飛去墮爾前?』
いつになったら自分のからだにはねがはえてきて、飛んでいってあなたの前におちることができるのだろうか?。
翅翎 つばさ、はね。○ 汝、孫宰のこと。


○五言古詩
○押韻 幹。飧。昆。歡。肝。/患。前。


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彭衙行
#1
憶昔避賊初,北走經險艱。夜深彭衙道,月照白水山。』
盡室久徒步,逢人多厚顏。參差穀鳥吟,不見遊子還。
癡女饑咬我,啼畏虎狼聞。懷中掩其口,反側聲愈嗔。
小兒強解事,故索苦李餐。』
#2
一旬半雷雨,泥濘相牽攀。既無禦雨備,徑滑衣又寒。
有時經契闊,竟日數裡間。野果充 ?糧,卑枝成屋椽。
早行石上水,暮宿天邊煙。』
#3
少留同家窪,欲出蘆子關。故人有孫宰,高義薄曾雲。
延客已曛黑,張燈啟重門。暖湯濯我足,剪紙招我魂。』
#4
從此出妻孥,相視涕闌幹。眾雛爛熳睡,喚起沾盤飧。
誓將與夫子,永結為弟昆。遂空所坐堂,安居奉我歡。
誰肯艱難際,豁達露心肝。』
別來歲月周,胡羯仍構患。何時有翅翎,飛去墮爾前?』

#1
憶(おも)う  昔  賊を避けし初め、北に走って険難(けんなん)を経(へ)たり。
夜は深し  彭衙(ほうが)の道、月は照る  白水(はくすい)の山。
室(しつ)を尽くして久しく徒歩す、人に逢えば厚顔(こうがん)多し。
参差(しんし)として谷鳥(こくちょう)鳴き、遊子(ゆうし)還(かえ)るを見ず。
痴女(ちじょ)は飢(う)えて我れを咬(か)み、啼(な)いて畏(おそ)る  虎狼(ころう)の聞ゆるを。
中(うち)に懐(いだ)いて其の口を掩(おお)えば、反側(はんそく)して声愈々(いよいよ)嗔(いか)る。
小児(しょうに)は強(し)いて事を解し、故(ことさ)らに苦李(くり)を索(もと)めて餐(くら)う。』
#2
一旬(いちじゅん)  半(なか)ばは雷雨、泥濘(でいねい)   相(あい)攀牽(はんけん)す。
既に雨を禦(ふせ)ぐ備え無く、径(みち)滑かにして衣(い)又寒し。
時(とき)有りて契闊(けつかつ)たるを経(ふ)、竟日(きょうじつ)  数里の間(かん)。
野果(やか)を餱糧(こうりょう)に充(あ)て、卑枝(ひし)を屋椽(おくてん)と成(な)す。
早(あした)には行く  石上(せきじょう)の水、暮(くれ)には宿る   天辺(てんぺん)の煙。』
#3
少(しば)らく同家窪(どうかあ)に留(とど)まり、蘆子関(ろしかん)に出でんと欲す。
故人(こじん)  孫宰(そんさい)有り、高義(こうぎ)  曾雲(そううん)に薄(せま)る。
客を延(ひ)くとき己に曛黒(くんこく)なり 燈を張りて重門(ちょうもん)を啓(ひら)く。
湯を暖めて我が足を濯(あら)わしめ 紙を剪(き)って我が魂を招(まね)く』
#4
此(これ)従(より)妻孥(さいど)を出す 相視て涕(なみだ)闌幹(らんかん)たり。
衆雛(しゅうすう) 爛漫(らんまん)として睡(ねむ)る、喚び 起して 盤飧(ばんそん)に 沾(うるお)わしむ。
誓って将に夫子(ふうし)と、永く結び て 弟昆(ていこん)と為らんと す と。
遂に坐する所の堂を空(むな)しくして、居を安(あんじ)て 我が歓(よろこび)を奉ず。
誰か 肯(あえ)て 艱難(かんなん)の際、豁達(かつたつ) 心肝(しんかん)を露(あら)わさん。』
別来(べつらい) 歳月周(めぐ)る 胡羯(こけつ)  仍(なお) 患(うれい)を構(かも)う
何時(いつ)か 翅翎(しれい)有って 飛び去って爾(なんじ)が前に堕(おつ)べき。』

唐宋詩 
(Ⅰ李商隠Ⅱ韓退之(韓愈))

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彭衙行 #3 杜甫 134 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 132#3

彭衙行 #3 杜甫 134 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 132#3 (ほうがこう)


必死の思いで避難を続ける杜甫とその家族は(王触一家もいっしょだったであろうが)、三川県の周家窪という村にやっとたどり着いたが、その村で杜甫は思いもかけず、知り合いの孫宰に出会い、手厚いもてなしを受けることになった。


#1
憶昔避賊初,北走經險艱。夜深彭衙道,月照白水山。』
盡室久徒步,逢人多厚顏。參差穀鳥吟,不見遊子還。
癡女饑咬我,啼畏虎狼聞。懷中掩其口,反側聲愈嗔。
小兒強解事,故索苦李餐。』
#2
一旬半雷雨,泥濘相牽攀。既無禦雨備,徑滑衣又寒。
有時經契闊,竟日數裡間。野果充 ?糧,卑枝成屋椽。
早行石上水,暮宿天邊煙。』
#3
少留同家窪,欲出蘆子關。
故人有孫宰,高義薄曾雲。
延客已曛黑,張燈啟重門。
暖湯濯我足,剪紙招我魂。』

自分たちはしばらく同家窪で滞在してそれから蘆子関を出て北進しようと思っている。
同家窪にはふるなじみの孫辛というものがいて義理を重んじ人格のたかいことは雲にせまるほどであった。
彼が自分たちを案内してくれたときはもうすでにうすくらがりであり、あかりをつけて幾重かの門をあけてくれたのである。
そうしてお湯をわかして我々に足をあらわせ、紙をきって我々の元気の力、生き霊をよびかえらせてくれた。』

#4
從此出妻孥,相視涕闌幹。眾雛爛熳睡,喚起沾盤飧。
誓將與夫子,永結為弟昆。遂空所坐堂,安居奉我歡。
誰肯艱難際,豁達露心肝。』
別來歲月周,胡羯仍構患。何時有翅翎,飛去墮爾前?』


#3
少(しば)らく同家窪(どうかあ)に留(とど)まり、蘆子関(ろしかん)に出でんと欲す。
故人(こじん)  孫宰(そんさい)有り、高義(こうぎ)  曾雲(そううん)に薄(せま)る。
客を延(ひ)くとき己に曛黒(くんこく)なり 燈を張りて重門(ちょうもん)を啓(ひら)く。
湯を暖めて我が足を濯(あら)わしめ 紙を剪(き)って我が魂を招(まね)く』


#3 現代語訳と訳註
(本文)

少留同家窪,欲出蘆子關。故人有孫宰,高義薄曾雲。
延客已曛黑,張燈啟重門。暖湯濯我足,剪紙招我魂。』

(下し文)
少(しば)らく同家窪(どうかあ)に留(とど)まり、蘆子関(ろしかん)に出でんと欲す。
故人(こじん)  孫宰(そんさい)有り、高義(こうぎ)  曾雲(そううん)に薄(せま)る。
客を延(ひ)くとき己に曛黒(くんこく)なり 燈を張りて重門(ちょうもん)を啓(ひら)く。
湯を暖めて我が足を濯(あら)わしめ 紙を剪(き)って我が魂を招(まね)く』

(現代語訳)
自分たちはしばらく同家窪で滞在してそれから蘆子関を出て北進しようと思っている。
同家窪にはふるなじみの孫辛というものがいて義理を重んじ人格のたかいことは雲にせまるほどであった。
彼が自分たちを案内してくれたときはもうすでにうすくらがりであり、あかりをつけて幾重かの門をあけてくれたのである。
そうしてお湯をわかして我々に足をあらわせ、紙をきって我々の元気の力、生き霊をよびかえらせてくれた。』


(訳注)#3
少留同家窪,欲出蘆子關。
自分たちはしばらく同家窪で滞在してそれから蘆子関を出て北進しようと思っている。
少留 しばらく滞在する。○同家窪 白水県の郷村の名とおもわれる。孫宰の居る所。○蘆子關 関の名、延安府安塞県にある。鄜州よりさらに北にあり、霊武(地図の左側最上部)へ達する路。蘆子關は地図の中ほど最上部にある。杜甫のこの時地図の真ん中にある三川から鄜州にたどり着くのに艱難辛苦していたのだ
杜甫乱前後の図003鳳翔

  

故人有孫宰,高義薄曾雲。
同家窪にはふるなじみの孫辛というものがいて義理を重んじ人格のたかいことは雲にせまるほどであった。
故人 ふるなじみの人。○孫宰 姓は孫、宰は名とみる。○高義 義理を重んじ人格のたかいこと。○曾雲 かさなれるくも、骨は層に同じ。


延客已曛黑,張燈啟重門。
彼が自分たちを案内してくれたときはもうすでにうすくらがりであり、あかりをつけて幾重かの門をあけてくれたのである。
延客 お客をこちらへとひく、客は杜甫。○曛黑 うすくらがり。○張燈 あかりを設ける。○啟重門 幾重にもなっている門をひらく。


暖湯濯我足,剪紙招我魂。』
そうしてお湯をわかして我々に足をあらわせ、紙をきって我々の元気の力、生き霊をよびかえらせてくれた。』
暖湯 おゆをわかす。○濯我足 杜甫の足をあらわせる。○剪紙 紙をはさみできり、はたをつくり魂をまねく式に用いる。旅の間に落としていった元気の魂をかき集める儀式をする。○招我魂 くたびれ果てて自分ではないような感じになっている。我とは作者をさす。杜詩には往々にして招魂をいうが、これは生き霊をまねくことをいう、生者の魂が散じて四方にあるのによってこれをよびかえすこと。

彭衙行 #2 杜甫 133 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 132#2

彭衙行 #2 杜甫 133 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 132#2 (ほうがこう)


幼児らを連れて夜の山道を徒歩でゆく逃避行は困難を極めた。さらに艱難は続く。
#1
憶昔避賊初,北走經險艱。夜深彭衙道,月照白水山。』
盡室久徒步,逢人多厚顏。參差穀鳥吟,不見遊子還。
癡女饑咬我,啼畏虎狼聞。懷中掩其口,反側聲愈嗔。
小兒強解事,故索苦李餐。』

#2
一旬半雷雨,泥濘相牽攀。
凡そ十日のうち半分は雷があり雨の日だ、道はぬかるみで、なにかに掴まったり、手でひっぱりあったりしてやっと進めるのだ。
既無禦雨備,徑滑衣又寒。
急いで出発したので、もともと雨をふせぐ用意などしていない。そのうえ、小みちはすべり、著物もうすぎなので寒さにこたえる。
有時經契闊,竟日數裡間。
こういう時もあるのだ何日も続いて難儀をしているのだ、だから、一日中かかってやっと二三里しかあるけないのだ。
野果充糇糧,卑枝成屋椽。
野生のくだものを食糧の代りにたべたり、樹木の低い枝を屋根垂木の代りにして樹枝の下に野宿する。
早行石上水,暮宿天邊煙。』

朝早くには谷間の水に沿ってあるく、夕暮れになると峰の一番高いところに野宿するのだ。』
#3
少留同家窪,欲出蘆子關。故人有孫宰,高義薄曾雲。
延客已曛黑,張燈啟重門。暖湯濯我足,剪紙招我魂。』
#4
從此出妻孥,相視涕闌幹。眾雛爛熳睡,喚起沾盤飧。
誓將與夫子,永結為弟昆。遂空所坐堂,安居奉我歡。
誰肯艱難際,豁達露心肝。』
別來歲月周,胡羯仍構患。何時有翅翎,飛去墮爾前?』



#2
一旬(いちじゅん)  半(なか)ばは雷雨、泥濘(でいねい)   相(あい)攀牽(はんけん)す。
既に雨を禦(ふせ)ぐ備え無く、径(みち)滑かにして衣(い)又寒し。
時(とき)有りて契闊(けつかつ)たるを経(ふ)、竟日(きょうじつ)  数里の間(かん)。
野果(やか)を餱糧(こうりょう)に充(あ)て、卑枝(ひし)を屋椽(おくてん)と成(な)す。
早(あした)には行く  石上(せきじょう)の水、暮(くれ)には宿る   天辺(てんぺん)の煙。』


彭衙行 現代語訳と訳註
(本文)

一旬半雷雨,泥濘相牽攀。既無禦雨備,徑滑衣又寒。
有時經契闊,竟日數裡間。野果充 ?糧,卑枝成屋椽。
早行石上水,暮宿天邊煙。』

(下し文)
一旬(いちじゅん)  半(なか)ばは雷雨、泥濘(でいねい)   相(あい)攀牽(はんけん)す。
既に雨を禦(ふせ)ぐ備え無く、径(みち)滑かにして衣(い)又寒し。
時(とき)有りて契闊(けつかつ)たるを経(ふ)、竟日(きょうじつ)  数里の間(かん)。
野果(やか)を餱糧(こうりょう)に充(あ)て、卑枝(ひし)を屋椽(おくてん)と成(な)す。
早(あした)には行く  石上(せきじょう)の水、暮(くれ)には宿る   天辺(てんぺん)の煙。』

(現代語訳)
凡そ十日のうち半分は雷があり雨の日だ、道はぬかるみで、なにかに掴まったり、手でひっぱりあったりしてやっと進めるのだ。
急いで出発したので、もともと雨をふせぐ用意などしていない。そのうえ、小みちはすべり、著物もうすぎなので寒さにこたえる。
こういう時もあるのだ何日も続いて難儀をしているのだ、だから、一日中かかってやっと二三里しかあるけないのだ。
野生のくだものを食糧の代りにたべたり、樹木の低い枝を屋根垂木の代りにして樹枝の下に野宿する。
朝早くには谷間の水に沿ってあるく、夕暮れになると峰の一番高いところに野宿するのだ。』




(訳注)#2
一旬半雷雨,泥濘相牽攀。

凡そ十日のうち半分は雷があり雨の日だ、道はぬかるみで、なにかに掴まったり、手でひっぱりあったりしてやっと進めるのだ。
一旬 十日間。○泥浮 ぬかるみ。○攣牽 ものにつかまり、又はひっぱりあう。


既無禦雨備,徑滑衣又寒。
急いで出発したので、もともと雨をふせぐ用意などしていない。そのうえ、小みちはすべり、著物もうすぎなので寒さにこたえる。
禦雨備 雨をふせぐようい。○ こみち。


有時經契闊,竟日數裡間。
こういう時もあるのだ何日も続いて難儀をしているのだ、だから、一日中かかってやっと二三里しかあるけないのだ
有時 こういう時もある。○契闊 艱難辛苦するさま、契闊たるを契とはいくにちもつづいて難儀すること。○竟日 一日中、一日いっぱい。
 
野果充糇糧,卑枝成屋椽。
野生のくだものを食糧の代りにたべたり、樹木の低い枝を屋根垂木の代りにして樹枝の下に野宿する。
野果 野生のくだもの。○糇糧 食糧、かて。くいもの。○卑枝 ひくくさがっている枝。○成屋橡 やねのたるきとする、これは家をかまえるのではなく、樹枝の下に野宿することをいう。


早行石上水,暮宿天邊煙。』
朝早くには谷間の水に沿ってあるく、夕暮れになると峰の一番高いところに野宿するのだ。』
早行 早は朝はやく。○石上水 渓のいわまの水。○天辺煙 高峰のけむり。



(解説)
唐の国軍は叛乱軍の倍の数であった。誰もが、暫くすると叛乱軍も平定される、少し時間はかかるかもしれないが、と思っていたのだ。誰もかれもが逃げるに精一杯なのだ。ただ、叛乱軍は、唐国軍が総崩れしたのを見て、厳しい追跡をしなかったのだ。そこが叛乱軍によって唐王朝を滅亡させられなかった叛乱軍の内部矛盾があったのだ。それは不満分子の集まりでしかなかったのだ。凶暴で略奪するのみで、統治することに関心がなかった。端的に言えば、唐軍を甘く見たということ、それほど簡単で脆いものだったのだ。それは当初、唐国軍側は楊貴妃の親族の楊国忠が率いていたことが最大の問題だったのだ。
したがって、杜甫も逃げられたのだし、玄宗も同様である。

彭衙行 杜甫 132 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 132 -#1

彭衙行 杜甫 132 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 132 -#1
(ほうがこう)
作時 757年(756年の逃避行を懐臆して作ったもの)


五言古詩「彭衙行」(ほうがこう)は756年彭衙の地を過ぎたことを追憶して作った詩(757年)である。彭衙は漢代の県の名、陝西省同州府白水県の東北六十里にあり、白水に同家窪(どうかあ)があり、孫宰というもの(杜詩の中に孫宰、王宰などという宰はその人の名であるのか、邑の長をいうものであるかは判明しない)が其の地に居た。作者が前年鄜州に赴き更に蘆子関を経て、霊武に達しょうとしたとき、思いもかけず白水を経て孫宰の厚遇を受けた。今年(至徳二載秋)鄜州の家を見舞うにあたって白水の西を過ぎてしかも孫を訪ることができなかったので往事を追懐して此の篇を作った。幼児らを連れて夜の山道を徒歩でゆく逃避行は困難を極めた。

#1
憶昔避賊初,北走經險艱。
今も一年間のことを思い出す、叛乱軍を避けながら更に北に向って走って嶮しく困難な場所を経過した。
夜深彭衙道,月照白水山。』
深夜、彭衙への道を進んだ、白水の山々を月が照らしていた。』
盡室久徒步,逢人多厚顏。
自分たちは一家内そろってながく徒歩で進んだ。家族そろって逃げ出せた人が稀なので他の人にであえばあつかましい様なきもちがした。
參差穀鳥吟,不見遊子還。
谷間の鳥はたがいちがいに飛び交い鳴いている、しかし、人間はだれも行き違うものはなく 旅人が家路へもどってくる様なものはまったく見うけないのだった。
癡女饑咬我,啼畏虎狼聞。
知恵はのゆかない娘は腹がへったといってわたしにかじりついてくる。こんどは泣いては虎や狼の声が聞こえるといって怖がる。
懷中掩其口,反側聲愈嗔。
泣きじゃくるので、私の胸に抱き寄せ泣いている口をおおうことをしてみた、身を反っくり返り、かえって泣き声が大きくなったのだ。
小兒強解事,故索苦李餐。』

また小児はいろんなことが分かってきたがまだ半わかりではある、わざと、早生のまだ苦いような李をねだってたべたりした。』

#2
一旬半雷雨,泥濘相牽攀。既無禦雨備,徑滑衣又寒。
有時經契闊,竟日數裡間。野果充 ?糧,卑枝成屋椽。
早行石上水,暮宿天邊煙。』
#3
少留同家窪,欲出蘆子關。故人有孫宰,高義薄曾雲。
延客已曛黑,張燈啟重門。暖湯濯我足,剪紙招我魂。』
#4
從此出妻孥,相視涕闌幹。眾雛爛熳睡,喚起沾盤飧。
誓將與夫子,永結為弟昆。遂空所坐堂,安居奉我歡。
誰肯艱難際,豁達露心肝。』
別來歲月周,胡羯仍構患。何時有翅翎,飛去墮爾前?』


杜甫乱前後の図003鳳翔


天宝十五載 756年 45歳
彭衙行

#1
憶昔避賊初,北走經險艱。夜深彭衙道,月照白水山。』
盡室久徒步,逢人多厚顏。參差穀鳥吟,不見遊子還。
癡女饑咬我,啼畏虎狼聞。懷中掩其口,反側聲愈嗔。
小兒強解事,故索苦李餐。』

憶(おも)う  昔  賊を避けし初め、北に走って険難(けんなん)を経(へ)たり。
夜は深し  彭衙(ほうが)の道、月は照る  白水(はくすい)の山。
室(しつ)を尽くして久しく徒歩す、人に逢えば厚顔(こうがん)多し。
参差(しんし)として谷鳥(こくちょう)鳴き、遊子(ゆうし)還(かえ)るを見ず。
痴女(ちじょ)は飢(う)えて我れを咬(か)み、啼(な)いて畏(おそ)る  虎狼(ころう)の聞ゆるを。
中(うち)に懐(いだ)いて其の口を掩(おお)えば、反側(はんそく)して声愈々(いよいよ)嗔(いか)る。
小児(しょうに)は強(し)いて事を解し、故(ことさ)らに苦李(くり)を索(もと)めて餐(くら)う。』



彭衙行 #1 現代語訳と訳註
(本文) #1
憶昔避賊初,北走經險艱。夜深彭衙道,月照白水山。』
盡室久徒步,逢人多厚顏。參差穀鳥吟,不見遊子還。
癡女饑咬我,啼畏虎狼聞。懷中掩其口,反側聲愈嗔。
小兒強解事,故索苦李餐。』

艱。艱。顏。還。聞。聞。聞。


(下し文)
憶(おも)う  昔  賊を避けし初め、北に走って険難(けんなん)を経(へ)たり。
夜は深し  彭衙(ほうが)の道、月は照る  白水(はくすい)の山。
室(しつ)を尽くして久しく徒歩す、人に逢えば厚顔(こうがん)多し。
参差(しんし)として谷鳥(こくちょう)鳴き、遊子(ゆうし)還(かえ)るを見ず。
痴女(ちじょ)は飢(う)えて我れを咬(か)み、啼(な)いて畏(おそ)る  虎狼(ころう)の聞ゆるを。
中(うち)に懐(いだ)いて其の口を掩(おお)えば、反側(はんそく)して声愈々(いよいよ)嗔(いか)る。
小児(しょうに)は強(し)いて事を解し、故(ことさ)らに苦李(くり)を索(もと)めて餐(くら)う。』


(現代語訳)
今も一年間のことを思い出す、叛乱軍を避けながら更に北に向って走って嶮しく困難な場所を経過した。
深夜、彭衙への道を進んだ、白水の山々を月が照らしていた。』
自分たちは一家内そろってながく徒歩で進んだ。家族そろって逃げ出せた人が稀なので他の人にであえばあつかましい様なきもちがした。
谷間の鳥はたがいちがいに飛び交い鳴いている、しかし、人間はだれも行き違うものはなく 旅人が家路へもどってくる様なものはまったく見うけないのだった。
知恵はのゆかない娘は腹がへったといってわたしにかじりついてくる。こんどは泣いては虎や狼の声が聞こえるといって怖がる。
泣きじゃくるので、私の胸に抱き寄せ泣いている口をおおうことをしてみた、身を反っくり返り、かえって泣き声が大きくなったのだ。
また小児はいろんなことが分かってきたがまだ半わかりではある、わざと、早生のまだ苦いような李をねだってたべたりした。』



 (訳注)#1
憶昔避賊初,北走經險艱。

今も一年間のことを思い出す、叛乱軍を避けながら更に北に向って走って嶮しく困難な場所を経過した。
億昔 昔とは前年756年至徳元載をさす。○避賊初 奉先より白水に行ったことをいう。
 
夜深彭衙道,月照白水山。』
深夜、彭衙への道を進んだ、白水の山々を月が照らしていた。』
彭衙 陝西省同州府白水県、長安より東北六十里。〇白水 上に同じ。


盡室久徒步,逢人多厚顏。
わたしたちは一家内そろってながく徒歩で進んだ。家族そろって逃げ出せた人が稀なので他の人にであえばあつかましい様なきもちがした。
尽室 全家こぞって。○多厚顔 厚顔は面皮のあついこと、恥を知らぬさま。世が乱れて家族の離散するものが多い時に自己のみ全家そろって旅をしつつあることを心にはじ謙遜してかくいう。


參差穀鳥吟,不見遊子還。
谷間の鳥はたがいちがいに飛び交い鳴いている、しかし、人間はだれも行き違うものはなく 旅人が家路へもどってくる様なものはまったく見うけないのだった。
参差 たがいちがいに飛び交うさま。○遊子一般の行旅の人をさす。


癡女饑咬我,啼畏虎狼聞。
知恵はのゆかない娘は腹がへったといってわたしにかじりついてくる。こんどは泣いては虎や狼の声が聞こえるといって怖がる。
癡女 癡は痴で知恵はのゆかないむすめ。頭のぼんやりして鈍い。○ かじりつく。


懷中掩其口,反側聲愈嗔。
泣きじゃくるので、私の胸に抱き寄せ泣いている口をおおうことをしてみた、身を反っくり返り、かえって泣き声が大きくなったのだ。
懐中 胸の内にだきこむ。○其口 むすめの口。○反側 あちらへ向きかえる。


小兒強解事,故索苦李餐。』
また小児はいろんなことが分かってきたがまだ半わかりではある、わざと、早生のまだ苦いような李をねだってたべたりした。』
強解事 半わかりのこと、わかっていぬくせにわかったとする。○ わざと。○苦李 早生の 苦い李。


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三川觀水漲二十韻 杜甫 130 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 127-#4

三川觀水漲二十韻 杜甫 130 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 127-#4

危険の迫った白水県を去り、多くの避難民に混じって洛河ぞいに華原を経てさらに北に進んだ。
「三川觀水漲二十韻」(三川にて水の漲るを観る)には、その途中の様子を次のように記す。「華原を過ぎてからは、もはや平らな土地は見られない。北に向かってゆくが、ただ土山が続いているばかり。来る日も来る日も、せばまった深い谷間を通ってゆく。空には赤くやけた雲が時となくわき立ち、電光がきらめく。山が深いために雨がよく降り、道は川になって激流がぶつかりあう」。その中を杜甫の一行は手を引きあって進んでゆく。

このとき、杜甫の遠い親戚にあたる王砅一家もいっしょに避難したが、のちに770年大暦五年、といえは、杜甫が亡くなる年に浮州で、南海に使者として赴く王砅を送る際に作った「送重表姪王秋評事便南海」(重表姪の王秋評事の南海に使いするを送る)には、避難の途中における危難のさまが詠われている。131 王砅「送重表姪王秋評事便南海」


#3
及觀泉源漲,反懼江海覆。
漂沙坼岸去,漱壑松柏禿。
乘陵破山門,回斡裂地軸。
交洛赴洪河,及關豈信宿。
應沉數州沒,如聽萬室哭。
穢濁殊未清,風濤怒猶蓄。
何時通舟車?陰氣不黲黷。』
#4
浮生有蕩汨,吾道正羈束。
浮き草のような生活は水の早き流れに漂うようなものである、わたしの生きる道はこのように他からしばられているのだ。
人寰難容身,石壁滑側足。
世渡りの上手い世界には身を容れおくことがむずかしい、それでいて、このような山中へはいってくればここではまた石壁の路がすべるようなので足の指先、足の外側に力を入れて歩くのだ。
雲雷屯不已,艱險路更跼。』
雲雷の雨水の難儀は止みそうにない、山行の急坂はその路はさらに進みづらくなってきた。』
普天無川梁,欲濟願水縮。
見渡すにかぎりどこにも舟橋は無い、川を渡ることができるためには水量の減ずるのを願うばかりである。
因悲中林士,未脫眾魚腹。
それにつけて悲しむのはこの山林に居る人々のことだ、彼等はまだ魚の腹からのがれることはできずにいるのだ。
舉頭向蒼天,安得騎鴻鵠?』

わたしは頭をあげて天をむかってみている、どうしたならば鴻や鵠などの鳥にのって空へ駆け上がってこの水災(叛乱軍の戦火)からのがれることができるであろうかと。


束。足。跼。縮。腹。鵠。
#3
泉源の漲るを観るに及んで 反って江海の覆(くつが)えるを懼る。
沙を漂わして坼岸(きんがん)去り、壑(がく)に漱(そそ)ぎて松柏禿(とく)す。
乗陵(じょうりょう)山門破れ、廻斡(かいあつ) 地軸 裂く。
洛に交りて洪河(こうか)に赴く、関に及ぶ豈に信宿ならんや。
応に数州を沈めて没せしむるなるべし、万室の哭するを聴くが如し。
穢濁(あいだく)殊に未だ清からず、風涛怒り 猶 蓄(たくお)う。
何の時か 舟車を通じて、陰気 黲黷(しんとく)ならざらん。』

4

浮生 蕩汨(とういつ)有り、吾が道正に羈束(きそく)せらる。

人寰 身を容れ難く、石壁滑かにして足を側(そばだ)つ。

雲雷 屯(ちゅん)己まず 艱險(かんけん) 路更に跼(きょく)す。』

普天 川梁 無し、済(わた)らんと欲して水の縮(ちじ)まんことを願う。

因って悲しむ中林の士 未だ衆魚の腹より脱せず。

頭を挙げて蒼天に向う、安んぞ鴻鵠(こうこく)に騎()ることを得ん。』



三川觀水漲二十韻 現代語訳と訳註
(本文) #4

浮生有蕩汨,吾道正羈束。
人寰難容身,石壁滑側足。
雲雷屯不已,艱險路更跼。』
普天無川梁,欲濟願水縮。
因悲中林士,未脫眾魚腹。
舉頭向蒼天,安得騎鴻鵠?』

(下し文) #4
浮生 蕩汨(とういつ)有り、吾が道正に羈束(きそく)せらる。
人寰 身を容れ難く、石壁滑かにして足を側(そばだ)つ。
雲雷 屯(ちゅん)己まず 艱險(かんけん) 路更に跼(きょく)す。』
普天 川梁 無し、済(わた)らんと欲して水の縮(ちじ)まんことを願う。
因って悲しむ中林の士 未だ衆魚の腹より脱せず。
頭を挙げて蒼天に向う、安んぞ鴻鵠(こうこく)に騎(の)ることを得ん。』


(現代語訳)
浮き草のような生活は水の早き流れに漂うようなものである、わたしの生きる道はこのように他からしばられているのだ。
世渡りの上手い世界には身を容れおくことがむずかしい、それでいて、このような山中へはいってくればここではまた石壁の路がすべるようなので足の指先、足の外側に力を入れて歩くのだ。
雲雷の雨水の難儀は止みそうにない、山行の急坂はその路はさらに進みづらくなってきた。』
見渡すにかぎりどこにも舟橋は無い、川を渡ることができるためには水量の減ずるのを願うばかりである。
それにつけて悲しむのはこの山林に居る人々のことだ、彼等はまだ魚の腹からのがれることはできずにいるのだ。
わたしは頭をあげて天をむかってみている、どうしたならば鴻や鵠などの鳥にのって空へ駆け上がってこの水災(叛乱軍の戦火)からのがれることができるであろうかと。


(訳注) #4

浮生有蕩汨,吾道正羈束。
浮き草のような生活は水の早き流れに漂うようなものである、わたしの生きる道はこのように他からしばられているのだ。
浮生 浮き草のような生活。○蕩汨 蕩はうごく、汨は水のはやく流れるさま。○羈束 きずなをつけ、しばられる。

人寰難容身,石壁滑側足。
世渡りの上手い世界には身を容れおくことがむずかしい、それでいて、このような山中へはいってくればここではまた石壁の路がすべるようなので足の指先、足の外側に力を入れて歩くのだ。
人寰 人の存在する区域、世界。こびへつらいの世界。世渡りの上手い世界。○容身 わがからだをいれておく。○側足 足をそばだてる。足の指先、足の外側に力を入れて歩くことを言う。

雲雷屯不已,艱險路更跼。』
雲雷の雨水の難儀は止みそうにない、山行の急坂はその路はさらに進みづらくなってきた。』
 なやみ、難儀。○ せぐくまる。ちじこまる。馬が進まない。


普天無川梁,欲濟願水縮。
見渡すにかぎりどこにも舟橋は無い、川を渡ることができるためには水量の減ずるのを願うばかりである。
普天 天下じゅう。○川梁 梁はふなはし。○水縮 縮はちぢむ、量の減ずること。水嵩が減ること。

因悲中林士,未脫眾魚腹。
それにつけて悲しむのはこの山林に居る人々のことだ、彼等はまだ魚の腹からのがれることはできずにいるのだ。
中林士 林中土と同じ、山林のなかの集落の者。○衆魚腹 衆は集落、多くの魚の腹、山崩れが起きれば飲み込まれる。叛乱軍に襲撃されれば、殺されてしまう。盆地の集落が魚の腹の中という表現をしたのだ。
前#3にでている
漂沙坼岸去,漱壑松柏禿。
乘陵破山門,回斡裂地軸。
『大雨でで手が決壊し、山の木々や土砂崩れが起きそうだ』ということを受けている。杜甫たちが少し高い所に来て盆地状の集落を見ていること。


舉頭向蒼天,安得騎鴻鵠?』
わたしは頭をあげて天をむかってみている、どうしたならば鴻や鵠などの鳥にのって空へ駆け上がってこの水災(叛乱軍の戦火)からのがれることができるであろうかと。
○安得 希望の辞。○騎鴻鵠 この鳥にのって水災(叛乱軍の戦火)より離脱するのである。


○押韻 束。足。跼。縮。腹。鵠。




三川觀水漲二十韻
#1
我經華原來,不複見平陸。北上惟土山,連天走窮穀。
火雲無時出,飛電常在目。』
#2
自多窮岫雨,行潦相豗蹙。蓊匒川氣黃,群流會空曲。
清晨望高浪,忽謂陰崖踣。恐泥竄蛟龍,登危聚麋鹿。
枯查卷拔樹,礧磈共沖塞。聲吹鬼神下,勢閱人代速。
不有萬穴歸,何以尊四瀆。』

#3
及觀泉源漲,反懼江海覆。漂沙坼岸去,漱壑松柏禿。
乘陵破山門,回斡裂地軸。交洛赴洪河,及關豈信宿。
應沉數州沒,如聽萬室哭。穢濁殊未清,風濤怒猶蓄。
何時通舟車?陰氣不黲黷。』
#4
浮生有蕩汨,吾道正羈束。人寰難容身,石壁滑側足。
雲雷屯不已,艱險路更跼。』
普天無川梁,欲濟願水縮。因悲中林士,未脫眾魚腹。
舉頭向蒼天,安得騎鴻鵠?』

#1
我 華原を経て来る、復た平陸を見ず。
北上すれば惟 土山、連天窮谷に走る。
火雲出づるや時無し、飛電 常に目に在り。』
#2
自ら窮岫(きゅうしゅう)の雨多し、行潦(こうろう) 相 豗蹙(かいしゅく)す。
蓊匒(おうこう)として川気(せんき) 黄なり、羣流 空曲に会す。
清晨 高浪を望む、忽ち謂う陰崖 踣(たお)れるかと。
泥(なず)まんことを恐れて蛟龍(こうりゅう) 竄(かく)れ、 危きに登りて 麋鹿(びろく) 聚(あつ)まる。
枯査 抜樹を巻き、礧磈(らいかい)として共に充塞(じゅうそく)す。
声は鬼神を吹きて下す、勢は人代(じんだい)の速かなることを閱(けみ)す。
万穴の帰する有らずんば、何を以ってか 四瀆(しとく)を尊(たっとし)とせん』
#3
泉源の漲るを観るに及んで 反って江海の覆(くつが)えるを懼る。
沙を漂わして坼岸(きんがん)去り、壑(がく)に漱(そそ)ぎて松柏禿(とく)す。
乗陵(じょうりょう)山門破れ、廻斡(かいあつ) 地軸 裂く。
洛に交りて洪河(こうか)に赴く、関に及ぶ豈に信宿ならんや。
応に数州を沈めて没せしむるなるべし、万室の哭するを聴くが如し。
穢濁(あいだく)殊に未だ清からず、風涛怒り 猶 蓄(たくお)う。
何の時か 舟車を通じて、陰気 黲黷(しんとく)ならざらん。』
#4
浮生 蕩汨(とういつ)有り、吾が道正に羈束(きそく)せらる。
人寰 身を容れ難く、石壁滑かにして足を側(そばだ)つ。
雲雷 屯(ちゅん)己まず 艱險(かんけん) 路更に跼(きょく)す。』
普天 川梁 無し、済(わた)らんと欲して水の縮(ちじ)まんことを願う。
因って悲しむ中林の士 未だ衆魚の腹より脱せず。
頭を挙げて蒼天に向う、安んぞ鴻鵠(こうこく)に騎(の)ることを得ん。』

毎日それぞれ一首(長詩の場合一部分割掲載)kanbuniinkai紀 頌之の漢詩3ブログ
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三川觀水漲二十韻 杜甫 129 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 127-#3

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#2
自多窮岫雨,行潦相豗蹙。蓊匒川氣黃,群流會空曲。
清晨望高浪,忽謂陰崖踣。恐泥竄蛟龍,登危聚麋鹿。
枯查卷拔樹,礧磈共沖塞。聲吹鬼神下,勢閱人代速。
不有萬穴歸,何以尊四瀆。』
#3
及觀泉源漲,反懼江海覆。
川流の淵源にこれだけこの広野に水が漲るのを見るに及んで、あべこべに田や下流河江や海から水がぶちまけられるのでないかとおそれるのである。
漂沙坼岸去,漱壑松柏禿。
その水勢は沙をただよわすによって山の岸はなくなってしまい、水が大きなたににそそぐによって松や柏もぬけてしまう。
乘陵破山門,回斡裂地軸。
又その水の勢が丘に乗り越えることによって山の崖門が破壊される、水勢のまわりめぐらせる力は地軸も裂けてしまわせるのだ。
交洛赴洪河,及關豈信宿。
この水流は洛水と交りて黄河の方へ赴くのであるが、潼関へ達するには一泊とはかかるものでなくすぐにも達するほどである。
應沉數州沒,如聽萬室哭。
この分だとさだめし幾つかの州を沈没させてしまうことだろう。万家の人の哭する声を現に聞こえてくるようであるのだ。
穢濁殊未清,風濤怒猶蓄。
水のけがれにごりはすむには至らぬが、風にあれくるう涛はまだ怒りをたくわえている。
何時通舟車?陰氣不黲黷。』

いつになったら舟や車を自由に交通させて、陰気がうすぐろくたなびかないようになり得るのだろうか。』
#4
浮生有蕩汨,吾道正羈束。人寰難容身,石壁滑側足。
雲雷屯不已,艱險路更跼。』
普天無川梁,欲濟願水縮。因悲中林士,未脫眾魚腹。
舉頭向蒼天,安得騎鴻鵠?』


#2
自ら窮岫(きゅうしゅう)の雨多し、行潦(こうろう) 相 豗蹙(かいしゅく)す。
蓊匒(おうこう)として川気(せんき) 黄なり、羣流 空曲に会す。
清晨 高浪を望む、忽ち謂う陰崖 踣(たお)れるかと。
泥(なず)まんことを恐れて蛟龍(こうりゅう) 竄(かく)れ、 危きに登りて 麋鹿(びろく) 聚(あつ)まる。
枯査 抜樹を巻き、礧磈(らいかい)として共に充塞(じゅうそく)す。
声は鬼神を吹きて下す、勢は人代(じんだい)の速かなることを閱(けみ)す。
万穴の帰する有らずんば、何を以ってか 四瀆(しとく)を尊(たっとし)とせん』

3

泉源の漲るを観るに及んで 反って江海の覆(くつが)えるを懼る。

沙を漂わして(きんがん)去り、壑(がく)に漱(そそ)ぎて松柏禿(とく)す。

乗陵(じょうりょう)山門破れ、廻斡(かいあつ) 地軸 裂く。

洛に交りて洪河(こうか)に赴く、関に及ぶ豈に信宿ならんや。

応に数州を沈めて没せしむるなるべし、万室の哭するを聴くが如し。

穢濁(あいだく)殊に未だ清からず、風涛怒り 猶 蓄(たくお)う。

何の時か 舟車を通じて、陰気 (しんとく)ならざらん。


#4
浮生蕩汨有り 吾が道正に羈束せらる
人裏身を容れ難く 石壁滑かにして足を側つ
雲雷屯己まず 艱險路更に跼す』
普天川梁無し 済らんと欲して水の縮まんことを願う
因って悲しむ中林の士 未だ衆魚の腹より脱せず
頭を挙げて蒼天に向う 安んぞ鴻鵠に騎ることを得ん』


現代語訳と訳註
(本文) #3

及觀泉源漲,反懼江海覆。
漂沙坼岸去,漱壑松柏禿。
乘陵破山門,回斡裂地軸。
交洛赴洪河,及關豈信宿。
應沉數州沒,如聽萬室哭。
穢濁殊未清,風濤怒猶蓄。
何時通舟車?陰氣不黲黷。』


(下し文) #3

泉源の漲るを観るに及んで 反って江海の覆(くつが)えるを懼る。

沙を漂わして坼岸(きんがん)去り、壑(がく)に漱(そそ)ぎて松柏禿(とく)す。

乗陵(じょうりょう)山門破れ、廻斡(かいあつ) 地軸 裂く。

洛に交りて洪河(こうか)に赴く、関に及ぶ豈に信宿ならんや。

応に数州を沈めて没せしむるなるべし、万室の哭するを聴くが如し。

穢濁(あいだく)殊に未だ清からず、風涛怒り 猶 蓄(たくお)う。

何の時か 舟車を通じて、陰気 黲黷(しんとく)ならざらん。』


(現代語訳)
川流の淵源にこれだけこの広野に水が漲るのを見るに及んで、あべこべに田や下流河江や海から水がぶちまけられるのでないかとおそれるのである。
その水勢は沙をただよわすによって山の岸はなくなってしまい、水が大きなたににそそぐによって松や柏もぬけてしまう。
又その水の勢が丘に乗り越えることによって山の崖門が破壊される、水勢のまわりめぐらせる力は地軸も裂けてしまわせるのだ。
この水流は洛水と交りて黄河の方へ赴くのであるが、潼関へ達するには一泊とはかかるものでなくすぐにも達するほどである。
この分だとさだめし幾つかの州を沈没させてしまうことだろう。万家の人の哭する声を現に聞こえてくるようであるのだ。
水のけがれ濁りは清むには至らないが、風にあれくるう涛はまだ怒りをたくわえている
いつになったら舟や車を自由に交通させて、陰気がうすぐろくたなびかないようになり得るのだろうか。』


(訳注)#3
及觀泉源漲,反懼江海覆。

川流の淵源にこれだけこの広野に水が漲るのを見るに及んで、あべこべに田や下流河江や海から水がぶちまけられるのでないかとおそれるのである。
泉源 淵源。泉は淵の代字。
 
漂沙坼岸去,漱壑松柏禿。
その水勢は沙をただよわすによって山の岸はなくなってしまい、水が大きなたににそそぐによって松や柏もぬけてしまう。
漂沙 水勢が沙をただよわす。土石流の様な濁流を言う。○坼岸去 坼は堤と同じく岸または界の意、去とはくずれてなくなること。土手の決壊。○漱壑 水が大きなたににそそぎこむ。○禿 髪がぬけてはげになるように樹木が無くなることをいう。


乘陵破山門,回斡裂地軸。
又その水の勢が丘に乗り越えることによって山の崖門が破壊される、水勢のまわりめぐらせる力は地軸も裂けてしまわせるのだ。
乗陵 水勢がのぼりしのぐ。○破山門 左右の山崖がこわれる。○廻斡 水勢がめぐり、めぐらす。○地軸 大地をささえるじく。


交洛赴洪河,及關豈信宿。
この水流は洛水と交りて黄河の方へ赴くのであるが、潼関へ達するには一泊とはかかるものでなくすぐにも達するほどである。
交洛 水流が洛水にまじわる、この洛水は延安府より麟州を経て同州府に入り朝邑県において黄河に会する川をいう。○決河 大きな河、黄河をさす。○及関 関は潼関をいう、洛水は黄河に入って潼関のところへつきあたる、及ぶとはそこへ達することをいう。〇信宿 再宿を信という、一晩や二晩ということ。この時叛乱軍と哥舒翰率いる国軍が潼関で対峙していた。


應沉數州沒,如聽萬室哭。
この分だとさだめし幾つかの州を沈没させてしまうことだろう。万家の人の哭する声を現に聞こえてくるようであるのだ。
万室 万家。


穢濁殊未清,風濤怒猶蓄。
水のけがれ濁りは清むには至らないが、風にあれくるう涛はまだ怒りをたくわえている。


何時通舟車?陰氣不黲黷。』
いつになったら舟や車を自由に交通させて、陰気がうすぐろくたなびかないようになり得るのだろうか。』
○何時 いつか、この二字は下旬までにかかる。○陰気 雨ぐもりの気。○黲黷 垢がつき黒いこと。前の聯の清を受けての垢、黷は謀叛、叛乱軍を示している。


覆。禿。軸。宿。哭。蓄。黷。



三川觀水漲二十韻 杜甫 128 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 127-#2

三川觀水漲二十韻 杜甫 128 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 127-#2

#1
我經華原來,不複見平陸。
北上惟土山,連天走窮穀。
火雲無時出,飛電常在目。』
#2
自多窮岫雨,行潦相豗蹙。
若し万穴の水の帰著する所が無かったなら、どうして四瀆の大川が尊ばれる値打ちがあろう。(四瀆の尊きはこれらの洪水をひきうけて集めるところにある。)』
蓊匒川氣黃,群流會空曲。
だからおのずとゆきづまった山、穴のある山には雨が多くふってくる、道路上を歩くことできないほどながれだす雨水は水と水とがぶつかり合って號濁音をたてている。
清晨望高浪,忽謂陰崖踣。
川面にはこんもり繁り、かさなりあっており、濁流の気が流れを黄色している、さまざまの流れが一緒になってさびしい山の隈にあつまってながれているのだ。
恐泥竄蛟龍,登危聚麋鹿。
きよらかな朝をむかえたがこうした高い浪をながめている、奥まった日陰の崖がこの道に倒れてこないかときゅうにおもったのだ。
枯查卷拔樹,礧磈共沖塞。
蛟が畏れ暴れて、水流が濁流になり、蚊竜もどこかへにげかくれるのだ、あぶなそうな高い処へあがって麋鹿があっまっているようだ。
聲吹鬼神下,勢閱人代速。
枯れた浮き木は抜けて、流れてきた筏のようになった大木を一緒に巻き込んで、うず高く重なっていっぱいになっているのだ。
不有萬穴歸,何以尊四瀆。』

土石流の声の凄まじさは、天から陰陽道の神々を吹きおろすかのようである、そして水の勢のはやさは人世の経過の速さをうかがい知ることでるほどのものなのである。
#3
及觀泉源漲,反懼江海覆。
漂沙坼岸去,漱壑松柏禿。
乘陵破山門,回斡裂地軸。
交洛赴洪河,及關豈信宿。
應沉數州沒,如聽萬室哭。
穢濁殊未清,風濤怒猶蓄。
何時通舟車?陰氣不黲黷。』


#1
我 華原を経て来る、復た平陸を見ず。
北上すれば惟 土山、連天窮谷に走る。
火雲出づるや時無し、飛電 常に目に在り。』

#2
自ら窮地の雨多し 行潦豗蹙極愛す
蓊匒として川気黄なり 羣流空曲に会す
清晨高浪を望む 忽ち謂う陰崖の踣るるかと
泥まんことを恐れて蛟龍竄れ 危きに登りて麋鹿聚まる
枯査抜樹を巻き 礧磈として共に充塞す
声は鬼神を吹きて下す  勢は人代の速かなるを閱す
万穴の帰する有らずんば 何を以てか四瀆を尊しとせん』

#3
泉源の滞るを観るに及んで 反って江海の覆えるを憤る
抄を漂わして折岸去り 峯に激ぎて松柏禿す
乗陵山門破れ 廻斡地軸裂く
洛に交りて洪河に赴く 関に及ぶ豈に信宿ならんや
応に数州を沈めて没せしむるなるべし 万室の宍するを聴くが如し
穢濁殊に未だ清からず 風涛怒り猶蓄う
何の時か舟車を通じて 陰気黲黷ならざらん』
杜甫乱前後の図003鳳翔


三川觀水漲二十韻 現代語訳と訳註
(本文) #2

自多窮岫雨,行潦相豗蹙。
蓊匒川氣黃,群流會空曲。
清晨望高浪,忽謂陰崖踣。
恐泥竄蛟龍,登危聚麋鹿。
枯查卷拔樹,礧磈共沖塞。
聲吹鬼神下,勢閱人代速。
不有萬穴歸,何以尊四瀆。』


(下し文) #2

自ら窮岫(きゅうしゅう)の雨多し、行潦(こうろう) 相 豗蹙(かいしゅく)す。
蓊匒(おうこう)として川気(せんき) 黄なり、羣流 空曲に会す。
清晨 高浪を望む、忽ち謂う陰崖 踣(たお)れるかと。
泥(なず)まんことを恐れて蛟龍(こうりゅう) 竄(かく)れ、 危きに登りて 麋鹿(びろく) 聚(あつ)まる。
枯査 抜樹を巻き、礧磈(らいかい)として共に充塞(じゅうそく)す。
声は鬼神を吹きて下す、勢は人代(じんだい)の速かなることを閱(けみ)す。
万穴の帰する有らずんば、何を以ってか 四瀆(しとく)を尊(たっとし)とせん』


(現代語訳)
だからおのずとゆきづまった山、穴のある山には雨が多くふってくる、道路上を歩くことできないほどながれだす雨水は水と水とがぶつかり合って號濁音をたてている。
川面にはこんもり繁り、かさなりあっており、濁流の気が流れを黄色している、さまざまの流れが一緒になってさびしい山の隈にあつまってながれているのだ。
きよらかな朝をむかえたがこうした高い浪をながめている、奥まった日陰の崖がこの道に倒れてこないかときゅうにおもったのだ。
蛟が畏れ暴れて、水流が濁流になり、蚊竜もどこかへにげかくれるのだ、あぶなそうな高い処へあがって麋鹿があっまっているようだ。
枯れた浮き木は抜けて、流れてきた筏のようになった大木を一緒に巻き込んで、うず高く重なっていっぱいになっているのだ。
土石流の声の凄まじさは、天から陰陽道の神々を吹きおろすかのようである、そして水の勢のはやさは人世の経過の速さをうかがい知ることでるほどのものなのである。

若し万穴の水の帰著する所が無かったなら、どうして四瀆の大川が尊ばれる値打ちがあろう。(四瀆の尊きはこれらの洪水をひきうけて集めるところにある。)』

(訳注)

自多窮岫雨,行潦相豗蹙。
だからおのずとゆきづまった山、穴のある山には雨が多くふってくる、道路上を歩くことできないほどながれだす雨水は水と水とがぶつかり合って號濁音をたてている。
○窮岫 ゆきづまった山、穴のある山を岫という。○行潦 道路上を歩くことできないほどながれだす雨水。○豗蹙 豗はかまびすしい、水と水とがぶつかり合って號濁音をたててやかましいこと。蹙は水が相い迫ってちぢめあうこと。

蓊匒川氣黃,群流會空曲。
川面にはこんもり繁り、かさなりあっており、濁流の気が流れを黄色している、さまざまの流れが一緒になってさびしい山の隈にあつまってながれているのだ。
○蓊匒 蓊はしげるさま、匒はかさなるさま。○川気 川面の濁流の気。○群流 多くの水流。○ あつまる。○空曲 さびしい山の隈。

清晨望高浪,忽謂陰崖踣。
きよらかな朝をむかえたがこうした高い浪をながめている、奥まった日陰の崖がこの道に倒れてこないかときゅうにおもったのだ。
○清晨 きよらかな朝。すがすがしい朝○陰崖 日光をうけぬがけ。

恐泥竄蛟龍,登危聚麋鹿。
蛟が畏れ暴れて、水流が濁流になり、蚊竜もどこかへにげかくれるのだ、あぶなそうな高い処へあがって麋鹿があっまっているようだ。
 濁流。蛟が畏れ暴れて、水流が濁流になることを示す。○ にげかくれる。○登危 危は高くあやうい場所をいう。

枯查卷拔樹,礧磈共沖塞。
枯れた浮き木は抜けて、流れてきた筏のようになった大木を一緒に巻き込んで、うず高く重なっていっぱいになっているのだ。
○枯 査は桂と同じ、いかだ、これは水中の浮き木をいう。○ まきこむ。○抜樹 あたらしく根からぬけた樹木。○礧磈 石のかさなるさま。○充塞 みちふさがる。今でいう土石流ということであろう。

聲吹鬼神下,勢閱人代速。
土石流の声の凄まじさは、天から陰陽道の神々を吹きおろすかのようである、そして水の勢のはやさは人世の経過の速さをうかがい知ることでるほどのものなのである。
声吹 水の声は風が鬼神を吹きおろすようだという意。○鬼神 鬼は隠の神、神は陽の神。どちらも霊妙な働きを持つ超自然の存在。○ 水勢。〇人代速 人間の過ぎ去った過去が速かにすぎ去ったこと。光陰矢のごとしの人生の経過しているさま。杜甫この時45歳、アットいう間に経過したのだ。洪水の流れを人生に経過に見ることはあまり例がない。

不有萬穴歸,何以尊四瀆。』
若し万穴の水の帰著する所が無かったなら、どうして四瀆の大川が尊ばれる値打ちがあろう。(四瀆の尊きはこれらの洪水をひきうけて集めるところにある。)』
○萬穴 雲が湧き出、大水のもとが巌谷の穴から出てくると思われていた。○四瀆 ほかの大河と交わらず海に流れており、江水(長江)、河水(黄河)、淮水(淮河)とともに「華夏四瀆」と称された。


○押韻 蹙。曲。踣。踣。鹿。塞。速。瀆。』

三川觀水漲二十韻 杜甫 127 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 127-#1

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安禄山が反旗を翻したとき、杜甫はまだ奉先県の家族のもとにいたが、その後の数か月間の足どりは明らかでない。そのまま奉先県に留まっていたとも思える。しかし、家族のもとからすぐに長安に引き返して右衛率府の仕事についていたが、しだいに賊が迫ってきたため、家族を避難させようとして長安を離れたということではないか。帰省後の数か月間の杜甫の行動は、このように不明であるが、五月には、家族を連れて、親戚の崔氏が県令となっている白水県に移っている。白水県は奉先県の北にある県であるが、この地も戦雲がみなぎり、厳しい状況のもとにあったということだ。
六月に入って哥舒翰の軍が潼関で大敗し、叛乱軍が長安に迫ってきたため、杜甫は家族を連れて危険の迫った白水県を去り、多くの避難民に混じって洛河ぞいに葦原を経てさらに北に進んだ。「三川観水漲二十韻」(三川にて水の漲るを観る)には、その途中の様子を次のように記す

三川觀水漲二十韻
#1
我經華原來,不複見平陸。
わたしは華原の地を経過しつつやって来た、ここらのあたりにはこれまでの様に平地をみることはなくなったのだ。
北上惟土山,連天走窮穀。
北へとのぼりみちすればただ土門山がつづいている、連日ゆきづまった谷を走っている。
火雲無時出,飛電常在目。』

空にいつとなく赤焼けの雲が現われでてくる、雷が飛ぶのはいつも見えていることなのだ。』
#2
自多窮岫雨,行潦相豗蹙。
蓊匒川氣黃,群流會空曲。
清晨望高浪,忽謂陰崖踣。
恐泥竄蛟龍,登危聚麋鹿。
枯查卷拔樹,礧磈共沖塞。
聲吹鬼神下,勢閱人代速。
不有萬穴歸,何以尊四瀆。』

我華原を経て来る 復た平陸を見ず
北上すれば惟土山 連天窮谷に走る
火雲出づるや時無し 飛電常に目に在り』

#2
自ら窮岫(きゅうしゅう)の雨多し、行潦(こうろう) 相 豗蹙(かいしゅく)す。
蓊匒(おうこう)として川気(せんき) 黄なり、羣流 空曲に会す。
清晨 高浪を望む、忽ち謂う陰崖 踣(たお)れるかと。
泥(なず)まんことを恐れて蛟龍(こうりゅう) 竄(かく)れ、 危きに登りて 麋鹿(びろく) 聚(あつ)まる。
枯査 抜樹を巻き、礧磈(らいかい)として共に充塞(じゅうそく)す。
声は鬼神を吹きて下す、勢は人代(じんだい)の速かなることを閱(けみ)す。
万穴の帰する有らずんば、何を以ってか 四瀆(しとく)を尊(たっとし)とせん』



三川觀水漲二十韻 現代語訳と訳註
(本文) #1

我經華原來,不複見平陸。
北上惟土山,連天走窮穀。
火雲無時出,飛電常在目。』

(下し文)
我華原を経て来る 復た平陸を見ず
北上すれば惟土山 連天窮谷に走る
火雲出づるや時無し 飛電常に目に在り』

(現代語訳)
わたしは華原の地を経過しつつやって来た、ここらのあたりにはこれまでの様に平地をみることはなくなったのだ。
北へとのぼりみちすればただ土門山がつづいている、連日ゆきづまった谷を走っている。
空にいつとなく赤焼けの雲が現われでてくる、雷が飛ぶのはいつも見えていることなのだ。』

杜甫乱前後の図003鳳翔

(訳注)
我經華原來,不複見平陸。

わたしは華原の地を経過しつつやって来た、ここらのあたりにはこれまでの様に平地をみることはなくなったのだ。
華原 陝西省西安府擢州治。○平陸 平地。

北上惟土山,連天走窮穀。
北へとのぼりみちすればただ土門山がつづいている、連日ゆきづまった谷を走っている。
北上 北に向かってのぼりみちをする。○土山 華原県の東南にある土門山。○連天 連日のこと。○窮穀  穀は谷 ゆきづまったたに。

火雲無時出,飛電常在目。』
空にいつとなく赤焼けの雲が現われでてくる、雷が飛ぶのはいつも見えていることなのだ。』
火雲 あかくやけたくも。○出無時 時のきまりなくでる。
長安黄河
毎日それぞれ一首(長詩の場合一部分割掲載)kanbuniinkai紀 頌之の漢詩3ブログ
05rihakushi350

李白詩350首kanbuniinkai紀頌之のブログ

700Toho shi
kanbuniinkai11の頌之漢詩 杜甫詩700首

800tousouSenshu
kanbuniinkai10 頌之の漢詩 唐宋詩人選集 Ⅰ李商隠150首

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