杜甫詳注 杜詩の訳注解説 漢文委員会

士族の子で、のほほんとしていた杜甫を変えたのは、三十代李白にあって、強いカルチャーショックを受けたことである。その後十年、就活に励んだ。同時に極限に近い貧困になり、家族を妻の実家に送り届けるときの詩は、そして、子供の死は、杜甫の詩を格段に向上させた。安史の乱直前から、捕縛され、長安での軟禁は、詩にすごみと分かりやすさのすぐれたしにかえてゆき、長安を脱出し、鳳翔の行在所にたどり着き、朝廷に仕えたことは、人間関係の複雑さを体験して、詩に深みが出ることになった。そして、朝廷における疎外感は詩人として数段高めさせてくれた。特に、杜甫の先生に当たる房琯関連の出来事、二十数首の詩は内容のあるものである。  一年朝廷で死に直面し、そして、疎外され、人間的にも成長し、これ以降の詩は多くの人に読まれる。  ◍  華州、秦州、同谷  ◍  成都 春満喫  ◍  蜀州、巴州、転々。 ◍  再び成都 幕府に。 それから、かねてから江陵にむかい、暖かいところで養生して、長安、朝廷に上がるため、蜀を発し、 ◍  忠州、雲州   ◍  夔州   ◍  公安  そして、長安に向かうことなく船上で逝くのである。  本ブログは、上記を完璧に整理し、解説した仇兆鰲の《杜詩詳注》に従い、改めて進めていく。

杜甫の詩、全詩、約1500首。それをきちんと整理したのが、清、仇兆鰲注解 杜詩詳注である。その後今日に至るまで、すべてこの杜詩詳注に基づいて書かれている。筆者も足掛け四年癌と戦い、いったんこれを征することができた。思えば奇跡が何度も起きた。
このブログで、1200首以上掲載したけれど、ブログ開始時は不慣れで誤字脱字も多く、そして、ブログの統一性も不十分である。また、訳注解説にも、手抜き感、不十分さもあり、心機一転、杜詩詳注に完全忠実に初めからやり直すことにした。
・そして、全唐詩と連携して、どちらからでも杜詩の検索ができるようにした。
・杜甫サイトには語順検索、作時編年表からも検索できるようにした。
杜甫詩の4サイト
● http://2019kanbun.turukusa.com/
● http://kanbunkenkyu.webcrow.jp
● http://kanbunkenkyu.web.fc2.com/
● http://kanbuniinka15.yu-nagi.com

其三

羌村三首 其三 杜甫 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 222

羌村三首 其三 杜甫 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 222

羌村三首 其三
群鶏正乱叫、客至鶏闘争。
鶏がむらがっていままさに騒ぎ立てている、客人が来たのに驚きあって互いが戦っているようだ。
駆鶏上樹木、始聞扣柴荊。
その鶏(とり)たちを樹枝の囲いに追いやると、我家の柴といばらの戸をたたく音が聞こえてきた。
父老四五人、問我久遠行。
近所の年寄りたちが四五人である、わたしの長旅の苦労を慰問するということなのだ。
手中各有携、傾榼濁復清。
各自が手に手土産をさげておるのだ、壺からは濁り酒や清酒をかたむけてくれるのだ。
莫辞酒味薄、黍地無人耕。
酒の味が薄いというので嫌いだとこの宴会をしりぞいてはいけない、というのもきびの畑を耕す者がいないだことからなのだ。
兵革既未息、児童尽東征。
いくさはなかなか終わらない、若い者はすべてのものが東のいくさ場に出つくしているのだ。
請為父老歌、艱難愧深情。
ここでこの老人が歌うのをお許し願いたい、この艱難辛苦の世の中では心情の深さほど嬉しいことなのだ。
歌罷仰天嘆、四座涙縦横。
歌い終えると天に向かって嘆くのである、この宴座の人は  涙で頬を濡らしているのだ


其の三 
群鶏(ぐんけい)  正(まさ)に乱叫(らんきょう)し、客至るとき鶏(にわとり)闘争す。
鶏を駆(か)って樹木に上(のぼ)らしめ、始めて柴荊(さいけい)を扣(たた)くを聞く。
父老(ふろう)  四五人、我が久しく遠行(えんこう)せしを問う。
手中(しゅちゅう) 各々(おのおの)携うる有り、榼(こう)を傾くれば  濁(だく)復(ま)た清(せい)。

辞する莫(なか)れ 酒味(しゅみ)の薄きを、黍地(しょち)  人の耕(たがや)す無し。
兵革(へいかく)  既に未(いま)だ息(や)まず、児童(じどう)  尽(ことごと)く東征す。
請(こ)う  父老(ふろう)の為に歌わん、艱難(かんなん)  深情(しんじょう)に愧(は)ず」と。
歌(うた)罷(や)んで  天を仰いで嘆(たん)ずれば、四座(しざ)  涙縦横(じゅうおう)たり。


現代語訳と訳註
(本文)
群鶏正乱叫、客至鶏闘争。
駆鶏上樹木、始聞扣柴荊。
父老四五人、問我久遠行。
手中各有携、傾榼濁復清。
莫辞酒味薄、黍地無人耕。
兵革既未息、児童尽東征。
請為父老歌、艱難愧深情。
歌罷仰天嘆、四座涙縦横。


(下し文)
群鶏(ぐんけい)  正(まさ)に乱叫(らんきょう)し、客至るとき鶏(にわとり)闘争す。
鶏を駆(か)って樹木に上(のぼ)らしめ、始めて柴荊(さいけい)を扣(たた)くを聞く。
父老(ふろう)  四五人、我が久しく遠行(えんこう)せしを問う。
手中(しゅちゅう) 各々(おのおの)携うる有り、榼(こう)を傾くれば  濁(だく)復(ま)た清(せい)。

辞する莫(なか)れ 酒味(しゅみ)の薄きを、黍地(しょち)  人の耕(たがや)す無し。
兵革(へいかく)  既に未(いま)だ息(や)まず、児童(じどう)  尽(ことごと)く東征す。
請(こ)う  父老(ふろう)の為に歌わん、艱難(かんなん)  深情(しんじょう)に愧(は)ず」と。
歌(うた)罷(や)んで  天を仰いで嘆(たん)ずれば、四座(しざ)  涙縦横(じゅうおう)たり。


(現代語訳)
鶏がむらがっていままさに騒ぎ立てている、客人が来たのに驚きあって互いが戦っているようだ。
その鶏(とり)たちを樹枝の囲いに追いやると、我家の柴といばらの戸をたたく音が聞こえてきた。
近所の年寄りたちが四五人である、わたしの長旅の苦労を慰問するということなのだ。
各自が手に手土産をさげておるのだ、壺からは濁り酒や清酒をかたむけてくれるのだ。
酒の味が薄いというので嫌いだとこの宴会をしりぞいてはいけない、というのもきびの畑を耕す者がいないだことからなのだ。
いくさはなかなか終わらない、若い者はすべてのものが東のいくさ場に出つくしているのだ。
ここでこの老人が歌うのをお許し願いたい、この艱難辛苦の世の中では心情の深さほど嬉しいことなのだ。
歌い終えると天に向かって嘆くのである、この宴座の人は  涙で頬を濡らしているのだ。



(訳注) 羌村三首 其の三
群鶏正乱叫、客至鶏闘争。
鶏がむらがっていままさに騒ぎ立てている、客人が来たのに驚きあって互いが戦っているようだ。


駆鶏上樹木、始聞扣柴荊。
その鶏(とり)たちを樹枝の囲いに追いやると、我家の柴といばらの戸をたたく音が聞こえてきた。


父老四五人、問我久遠行。
近所の年寄りたちが四五人である、わたしの長旅の苦労を慰問するということなのだ。


手中各有携、傾榼濁復清。
各自が手に手土産をさげておるのだ、壺からは濁り酒や清酒をかたむけてくれるのだ。


莫辞酒味薄、黍地無人耕。
酒の味が薄いというので嫌いだとこの宴会をしりぞいてはいけない、というのもきびの畑を耕す者がいないだことからなのだ。
黍地 きびの畑。耕す人は酒をつくる人が少ないこと。


兵革既未息、児童尽東征
いくさはなかなか終わらない、若い者はすべてのものが東のいくさ場に出つくしているのだ。
兵革 「兵」は刀・槍などの武器、「革」は鎧(よろい)・兜(かぶと)の意。古くは「へいがく」とも》 1 戦争のための武器・甲冑(かっちゅう)。兵甲。 2 戦争。たたかい。


請為父老歌、艱難愧深情。
ここでこの老人が歌うのをお許し願いたい、この艱難辛苦の世の中では心情の深さほど嬉しいことなのだ。


歌罷仰天嘆、四座涙縦横。
歌い終えると天に向かって嘆くのである、この宴座の人は  涙で頬を濡らしているのだ。


解説

 鶏が騒ぐので村の長老たちも帰還の祝いにやってきたのがわかった。都朝廷の左拾遺である。村人たちにとっては天子の謁見できる高官である。村人の心深い酒を情けに涙するのである。

村の長老たちは酒の味が薄いのは、若者が戦争に出てしまって畑を耕す者がいないからだと弁解なのか、苦しみを訴えるのか、早くいくさがなくなることを心から願うのである。
 杜甫は村人のために詩を詠うのである。艱難辛苦の時代、誰もが同じ思いの宴であった。
この詩の特徴は、杜甫には珍しく平易な語句で作られている。おそらく、村人にその場で披露し他ものであろう。平易で心温まる詩である。

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各詩人についてはブログ内の検索を利用したほうが良い場合もあります。
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唐宋詩 
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自京竄至鳳翔達連行在所 三首 其三 杜甫 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 172

自京竄至鳳翔達連行在所 三首 其三 杜甫 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 172
この其の三の詩で、前半四句は鳳翔へ駆けつけるときのようすをあらわしている。「武功」は図で長安から鳳翔までの中間地点にある街である。太白山は右に見て進んだ。

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自京竄至鳳翔達連行在所 三首 其一 杜甫 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 170
自京竄至鳳翔達連行在所 三首 其二 杜甫 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 171


喜達行在所三首  其三

死去憑誰報、帰来始自憐。

自分がここへ逃げてくる途中で死んでしまったとしたら、それをだれによってほか誰かにつげてもらえようか。今無事でここへもどって来たのではじめて我と我身をいじらしくおもうのである。
猶瞻太白雪、喜遇武功天。

うれしくも粛宗皇帝の行在所ちかき武功の天にであうことができた。まだ南にあたってあの太白山の雪がまっしろにみえている。
影静千官裏、心蘇七校前。

死ぬかとおもわれた自分の自身は影の存在で無事に千の文官のなかに静かに立てたのである。死ぬと思った心はこの画兵の七校尉の護衛の前にきたら生き返っているのを感じたのだ。
今朝漢社稷、新数中興年。

きようの朝から唐の天下のもとにいる、これからは新しく興る御年がはじまるものとかぞえだしてしかるべきだ。


行在所に達するを喜ぶ 三首其の三
死し去らば誰に憑(よ)ってか報ぜん、帰り来たりて始めて自ら憐(あわ)れむ。
猶(な)お瞻(み)る  太白の雪、遇(あ)うを喜ぶ  武功(ぶこう)の天。
影は静かなり  千官(せんかん)の裏(うち)、心は蘇(よみがえ)る  七校(しちこう)の前。
今朝(こんちょう)より漢の社稷(しゃしょく)は、新たに中興(ちゅうこう)の年を数(かぞ)えん。


行在所に達するを喜ぶ 三首
死去したら  誰が知らせてくれたろう、帰って来て始めてやっと自らをいとおしむ。
生きてなお  太白山の雪を瞻(み)る、喜んだ武功の空にめぐりあう。
影は静かに千官のうちに、心は蘇(よみがえ)る安堵の思いで近衛(このえ)の将校たちをみる
今日からは  唐の国家は新しく、中興の時代を迎えるのだ

其三 現代語訳と訳註
(本文)
其三
死去憑誰報、帰来始自憐。
猶瞻太白雪、喜遇武功天。
影静千官裏、心蘇七校前。
今朝漢社稷、新数中興年。


(下し文) 三首その三
死し去らば誰に憑(よ)ってか報ぜん、帰り来たりて始めて自ら憐(あわ)れむ。
猶(な)お瞻(み)る  太白の雪、遇(あ)うを喜ぶ  武功(ぶこう)の天。
影は静かなり  千官(せんかん)の裏(うち)、心は蘇(よみがえ)る  七校(しちこう)の前。
今朝(こんちょう)より漢の社稷(しゃしょく)は、新たに興るに中(あたる)の年を数(かぞ)えん。


(現代語訳)
自分がここへ逃げてくる途中で死んでしまったとしたら、それをだれによってほか誰かにつげてもらえようか。今無事でここへもどって来たのではじめて我と我身をいじらしくおもうのである。
うれしくも粛宗皇帝の行在所ちかき武功の天にであうことができた。まだ南にあたってあの太白山の雪がまっしろにみえている。
死ぬかとおもわれた自分の自身は影の存在で無事に千の文官のなかに静かに立てたのである。死ぬと思った心はこの画兵の七校尉の護衛の前にきたら生き返っているのを感じたのだ。
きようの朝から唐の天下のもとにいる、これからは新しく興る御年がはじまるものとかぞえだしてしかるべきだ。


(訳注)
死去憑誰報、帰来始自憐。
自分がここへ逃げてくる途中で死んでしまったとしたら、それをだれによってほか誰かにつげてもらえようか。今無事でここへもどって来たのではじめて我と我身をいじらしくおもうのである。
憑誰報 何人によってその事をつげしらせようか。○帰来 鳳翔の行在所の方へもどったこと。天使のもとに戻ったということ。〇自憐 我と我身をいじらしくおもう。


猶瞻太白雪、喜遇武功天。
うれしくも粛宗皇帝の行在所ちかき武功の天にであうことができた。まだ南にあたってあの太白山の雪がまっしろにみえている。
太白山の名、武功県の南にあり、長安を去ること三百里。○武功県の名、鳳翔府に属する。「猶瞻」の二句は行在所に近くに帰ってきたことを喜ぶ。


影静千官裏、心蘇七校前。
死ぬかとおもわれた自分の自身は影の存在で無事に千の文官のなかに静かに立てたのである。死ぬと思った心はこの画兵の七校尉の護衛の前にきたら生き返っているのを感じたのだ。
影静 影は自己の身影をいう、死ねば影がない、この影の字によって死から免れ来たった姿をあらわす。此の旬によれば此の時には拾遺の官を授けられたのである。〇千官多くの文官の官員。○心蘇 心は自己の心、蘇はよみがえる、第一首の「心死」の反対。〇七校漢の武帝は中塁・屯騎・歩兵・越騎・長水・胡騎・射声・虎貴の八校尉を置いたが、そのうち胡騎校尉というのは常置しなかったので七校という。これは武官の護衛にあたる者をさす。


今朝漢社稷、新数中興年。
きようの朝から唐の天下のもとにいる、これからは新しく興る御年がはじまるものとかぞえだしてしかるべきだ。
漢社稷 唐の天下をいう。○中興 【1】「興る」は、働きが強まる、奮い立つの意であるが、物事や状態が新たに生じることも表わし、その場合は「起こる」とも書く。【2】「ふるう」は、ふつう「振るう」と書くが、「勇気をふるう」「商売がふるわない」などのように、奮い立たせる意の場合には、「奮う」と書き、「料理に腕をふるう」「熱弁をふるう」などのように、発揮する意の場合には、「揮う」とも書く。【3】「ふるう」には、振り動かす意や、転じて、思うままに取り扱う意もある。「剣を振るう」「采配(さいはい)を振るう」中の字は去声によみ、興るに「あたる」。

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(解説)
○詩型 五言律詩
○押韻 憐、天、前、年。
 長安黄河


深い霧の中から次々と現われてくる並木の樹々、杜甫はそれに導かれるように間道を進んでゆく。霧はその脱走を助け、並樹は道しるべとなった。やがて前方にばっと開ける蓮の花びらのような峰々、それは脱出の成功を喜ぶ杜甫の心を象徴するかのようである。まさに杜甫自身、生涯忘れることのできない決死行であったが、こうして杜甫は、念願かなって鳳翔政府の一員となった。
鳳翔の行在にようやくたどりついた杜甫は、は五月十六日に左拾遺の官を授けられた。「左拾遺」とは、天子の側近にあって、天子が政治上「遣(わす)れ」残したことがらを「「拾い」上げて知らせるいわゆる諌官である。

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大雲寺贊公房四首 其三 杜甫 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 167

大雲寺贊公房四首 其三 杜甫 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 167
杜甫は叛乱軍の拘束中に大雲寺の僧贊公の宿坊に泊まった時に書いたものである。


其三
燈影照無睡,心清聞妙香。
灯火の揺らめきで影がゆれるそのともし火に照らされて寝つけないまま過ごしている、、「妙香の気」がきこえてくるようで、心はとても清々しく気持ちにさせてくれるのである。
夜深殿突兀,風動金瑯璫。
夜もふけて戸外の仏殿をみると突兀とたかくそびえている、風は風鈴を動かしてその音がチリンチリンとなっている。
天黑閉春院,地清棲暗芳。
天空はまっくろで春の奥庭がとじられている、其の地は清らかにしてなかに暗がりの草花のかおりがやどり、はぐくまれているのだ。
玉繩迥斷絕,鐵鳳森翱翔。
天帝の乗り物に連なる北斗の玉縄星は屋根の上のはるかかなたにとだえてみえる、鉄製の鳳の風見鶏がしずかに翅を広げ飛ぼうとしている。
梵放時出寺,鐘殘仍殷床。
そのうちに坊さんのお経を読む声が高くなりだして寺のそとまで流れでてきている、暁をつげる鐘の音はその余韻がのこって寝床までひびいてくるのだ。
明朝在沃野,苦見塵沙黃。』
朝になってこの寺院を辞し去って城外の肥沃な原野に身を置いたならば、街が荒れ果て、黄色の砂塵が吹き惑うのにこまることだろう。

大雲寺の贊公房 四首 其の三

燈影照らして睡る無し 心清くして妙香を聞く
夜深くして殿突兀たり 風動かして金瑯璫たり
天黒くして春院閉ず  地清くして暗芳棲む
玉縄迥に断絶す 鉄鳳森として翱翔す
梵放たれて時に寺を出づ 鐘残って仍牀に殷たり
明朝沃野に在らん 塵沙の黄なるを見るに苦しむ


現代語訳と訳註
(本文) 其三

燈影照無睡,心清聞妙香。
夜深殿突兀,風動金瑯璫。
天黑閉春院,地清棲暗芳。
玉繩迥斷絕,鐵鳳森翱翔。
梵放時出寺,鐘殘仍殷床。
明朝在沃野,苦見塵沙黃。』


(下し文)
燈影照らして睡(ねむ)る無し、心清くして妙香を聞く。
夜深くして殿突(でんとつ)兀(ごつ)たり、風動かして金瑯璫たり。
天黒くして春院閉ず、地清くして暗芳棲む。
玉縄迥に断絶す、鉄鳳森として翱翔す。
梵放たれて時に寺を出づ、鐘残って仍牀に殷たり。
明朝沃野に在らん、塵沙の黄なるを見るに苦しむ。

(現代語訳)
灯火の揺らめきで影がゆれるそのともし火に照らされて寝つけないまま過ごしている、、「妙香の気」がきこえてくるようで、心はとても清々しく気持ちにさせてくれるのである。
夜もふけて戸外の仏殿をみると突兀とたかくそびえている、風は風鈴を動かしてその音がチリンチリンとなっている。
天空はまっくろで春の奥庭がとじられている、其の地は清らかにしてなかに暗がりの草花のかおりがやどり、はぐくまれているのだ。
天帝の乗り物に連なる北斗の玉縄星は屋根の上のはるかかなたにとだえてみえる、鉄製の鳳の風見鶏がしずかに翅を広げ飛ぼうとしている。
そのうちに坊さんのお経を読む声が高くなりだして寺のそとまで流れでてきている、暁をつげる鐘の音はその余韻がのこって寝床までひびいてくるのだ。
朝になってこの寺院を辞し去って城外の肥沃な原野に身を置いたならば、街が荒れ果て、黄色の砂塵が吹き惑うのにこまることだろう。


(訳注)
燈影照無睡,心清聞妙香。

灯火の揺らめきで影がゆれるそのともし火に照らされて寝つけないまま過ごしている、、「妙香の気」がきこえてくるようで、心はとても清々しく気持ちにさせてくれるのである。
○聞妙香 寺であるから香の気がすることをいう。「維摩経」に衆香国において菩薩が香樹の下に坐して妙香を聞くと一切を獲るという、その心をかけていったものであろう。


夜深殿突兀,風動金瑯璫。
夜もふけて戸外の仏殿をみると突兀とたかくそびえている、風は風鈴を動かしてその音がチリンチリンとなっている。
突兀 たかいさま。兀 1.高くて上が平らなさま。2.高くそびえるさま。3.禿たさま。4.無知なさま。5.動かないさま。
 鈴。○填嗜 音のさま。チリンチリン。


天黑閉春院,地清棲暗芳。
天空はまっくろで春の奥庭がとじられている、其の地は清らかにしてなかに暗がりの草花のかおりがやどり、はぐくまれているのだ。
棲暗芳 棲とはやどり、はぐくまれていること。暗芳はくらがりの草花のかおり。


玉繩迥斷絕,鐵鳳森翱翔。
天帝の乗り物に連なる北斗の玉縄星は屋根の上のはるかかなたにとだえてみえる、鉄製の鳳の風見鶏がしずかに翅を広げ飛ぼうとしている。
玉縄 北斗の玉衛星の北の両星をいう。天帝の乗り物と見立てることから玉衡の北にあるという星の名をいう。○鉄鳳 屋根の棟の中央にすえつけ回旋式を以て風の方向にむく所の鉄製の鳳風。風見鶏。○ しずかに立ちならぶさま。○翱翔 翔は翅をひろげてとぶ、翔はめぐりてとぶ。


梵放時出寺,鐘殘仍殷床。
そのうちに坊さんのお経を読む声が高くなりだして寺のそとまで流れでてきている、暁をつげる鐘の音はその余韻がのこって寝床までひびいてくるのだ。
梵放 梵は梵唄、坊さんのお経を読む声、放は高ごえが外部へもれだすこと。○ やっぱり。○殷床 殷は音のひびくさま、床は寝台。


明朝在沃野,苦見塵沙黃。』
朝になってこの寺院を辞し去って城外の肥沃な原野に身を置いたならば、街が荒れ果て、黄色の砂塵が吹き惑うのにこまることだろう。
沃野 こえた原野。肥沃な原野。「関中ノ地ハ、沃野千里」という。これは京師の近郊、即ち杜曲の家へかえるとき経過すべき原野をさしているのであろう。○塵沙黄 街が荒れ果て、黄色の砂塵が吹き惑うことをいう。

後出塞五首 其三 杜甫 : kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 誠実な詩人杜甫特集 97

後出塞五首 其三 杜甫 : kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 誠実な詩人杜甫特集 97


後出塞五首 其三
古人重守邊,今人重高勛。
むかしの人は侵略・拡張的でなく国境を敵から守ることを重んじていた、今の人は之に反して戦をしかけて高い勲功をたてることを重んじているのだ。
豈知英雄主,出師亙長雲。
意外にも英雄である君主も領土拡大を認知している、戦を外へしかけて、その砂塵はまるで長い雲が引き生えたように続いている。
六合已一家,四夷且孤軍。
今や唐王朝の天下は一家のように統一された、四方の夷にむかって孤軍を出して戦うのだ。
遂使貔虎士,奮身勇所聞。
そうしてついに、親は豹と思われるほど勇壮な兵士を使わされた、粉骨砕身自分が聞いている君主のおぼしめしに対して勇み立たせるのである。
拔劍擊大荒,日收胡馬群。
兵士は剣をぬいて極遠の荒れ地を攻撃するのだ、毎日敵の胡の騎馬群をうばいとっていくのだ。
誓開玄冥北,持以奉吾君。
心に誓って玄冥喝神が支配する北の地を開拓して、それを持って吾が君主にたてまつりたいものだというようにかんがえている。



後出塞五首 其三 訳註と解説
(本文)
古人重守邊,今人重高勛。
豈知英雄主,出師亙長雲。
六合已一家,四夷且孤軍。
遂使貔虎士,奮身勇所聞。
拔劍擊大荒,日收胡馬群。
誓開玄冥北,持以奉吾君。

(下し文)
古人は守辺を重んず 今人は高勲を重んず
豈に知らんや英雄の主 師を出して長雲亙る
六合己に一家なるに  四夷に且つ孤軍
遂に貌虎の士をして 身を奮って聞く所に勇ならしむ
剣を抜いて大荒を撃ち 日に胡馬の葦を収め
誓って玄冥の北を開いて 持して以て吾が君に奉ぜん

(現代語訳)
むかしの人は侵略・拡張的でなく国境を敵から守ることを重んじていた、今の人は之に反して戦をしかけて高い勲功をたてることを重んじているのだ。
意外にも英雄である君主も領土拡大を認知している、戦を外へしかけて、その砂塵はまるで長い雲が引き生えたように続いている。
今や唐王朝の天下は一家のように統一された、四方の夷にむかって孤軍を出して戦うのだ。
そうしてついに、親は豹と思われるほど勇壮な兵士を使わされた、粉骨砕身自分が聞いている君主のおぼしめしに対して勇み立たせるのである。
兵士は剣をぬいて極遠の荒れ地を攻撃するのだ、毎日敵の胡の騎馬群をうばいとっていくのだ。
心に誓って玄冥喝神が支配する北の地を開拓して、それを持って吾が君主にたてまつりたいものだというようにかんがえている。


古人重守邊,今人重高勛。
むかしの人は侵略・拡張的でなく国境を敵から守ることを重んじていた、今の人は之に反して戦をしかけて高い勲功をたてることを重んじているのだ。
守辺 国ざかいをまもること。敵を攻めず、敵から侵されぬようにつとめることをいう。○高勲 高いいさおしをたてること、これは戦争をしてたてるのである。



豈知英雄主,出師亙長雲。
意外にも英雄である君主も領土拡大を認知している、戦を外へしかけて、その砂塵はまるで長い雲が引き生えたように続いている。
豈知 意外なことをいう。○英雄 主えらい人主、玄宗をさす。○亙長 その出陣の砂塵はまるで雲長い雲の引き生えているようであることをいう。



六合已一家,四夷且孤軍。
今や唐王朝の天下は一家のように統一された、四方の夷にむかって孤軍を出して戦うのだ。
六合 天地と四方。〇一家 天下一統して一家のごとし。〇四夷且孤軍 此の句は孤軍の二字に属すべき動詞を省略した不完全句であり、孤軍を「出だす」とか「留どむ」とかいう語を添えてみるべきである。四夷は四方のえびす、四夷に対して孤軍をいだす。



遂使貔虎士,奮身勇所聞。
そうしてついに、親は豹と思われるほど勇壮な兵士を使わされた、粉骨砕身自分が聞いている君主のおぼしめしに対して勇み立たせるのである。
貌虎士 つよい兵士、親は豹の如き獣。○奮身 身の力をふるう。○勇所聞 我が耳にした所に対して勇気をだす、耳にした所とは「天子が四夷にむかって兵を用いるおぼしめしである」とのことをさす。



拔劍擊大荒,日收胡馬群。
兵士は剣をぬいて極遠の荒れ地を攻撃するのだ、毎日敵の胡の騎馬群をうばいとっていくのだ。
抜剣以下四句は兵士の決心をいう、即ち「勇所聞」の事実である。○大荒 遠方不毛の地をさす。○日収 毎日とりこむ。○胡馬北方のえびすの馬。



誓開玄冥北,持以奉吾君。
心に誓って玄冥喝神が支配する北の地を開拓して、それを持って吾が君主にたてまつりたいものだというようにかんがえている。
玄冥 玄冥喝神、北方の神の名、北方の地をさしていう。○ たてまつる、ささげる。


(解説)
過去の王朝は、領土を守ることに重点を置いてきた。唐王朝は領土拡大を進めてきた。結果、世界最大の国家になっていた。当時の人々も巨大な唐王朝を誇りに思っていた。律令体制も府兵制もうまくいっていた。ただこの律令体制の府兵制が崩壊し、傭兵性に変わったのである。杜甫のこの詩でこのあたりの点に触れている。杜甫は胡のこの地に行ったことは全くないのである。

秋雨嘆三首 其三 杜甫 : kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 誠実な詩人杜甫特集 88

秋雨嘆三首 其三 杜甫 : kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 誠実な詩人杜甫特集 88(就職活動中 杜曲の家)
天宝13載 754年 43歳
杜甫42 
754年 秋の長雨が、六十日間も雨が降りつづき、前年の日照りと今年は長雨、水害と交互に関中を襲い食糧不足に陥った。城内では米の値段が高騰した。
城内では米の値段が高騰し、米一斗と夜具を取り換えるほどです。

秋雨嘆三首  其一
雨中百草秋爛死、階下決明顏色鮮。
著葉滿枝翠羽蓋、開花無數黃金錢。
涼風蕭蕭吹汝急、恐汝後時難獨立。
堂上書生空白頭、臨風三嗅馨香泣。

秋雨嘆三首  其二 
闌風伏雨秋紛紛、四海八荒同一雲。
去馬来牛不復弁、濁涇清渭何当分。
禾頭生耳黍穂黒、農夫田父無消息。
城中斗米換衾裯、相許寧論両相直。

秋雨嘆三首  其三
長安布衣誰比數,反鎖衡門守環堵。
老夫不出長蓬蒿,稚子無憂走風雨。
雨聲颼颼催早寒,胡雁翅濕高飛難。
秋來未曾見白日,泥汙後土何時乾?


秋雨嘆三首  其三
長安布衣誰比數,反鎖衡門守環堵。
私はだれからも相手にされない長安の一市民。門を閉ざし、土塀で囲まれた家の中でじっとしている。
老夫不出長蓬蒿,稚子無憂走風雨。
おやじが外に出ぬままに雑草は生い茂り、子供は親の苦労も知らぬげに、風雨の中を走りまわっている。
雨聲颼颼催早寒,胡雁翅濕高飛難。
雨はザアザアと、早い冬をせき立て、胡雁は翼が湿って高く飛べない。
秋來未曾見白日,泥汙後土何時乾?

秋になってからこれまで、お日さまを見たことがなく、大地は泥に汚されてしまい、いつになったら乾くのか。




秋雨嘆三首  其三
長安布衣誰比數,反鎖衡門守環堵。
老夫不出長蓬蒿,稚子無憂走風雨。
雨聲颼颼催早寒,胡雁翅濕高飛難。
秋來未曾見白日,泥汙後土何時乾?


長安の布衣の比數するは誰ぞ,反(しか)るに衡門を鎖じて環堵を守る。

老いたる夫(われ)は出でずして蓬蒿を長(しげ) らせ,稚なき子は憂い無くして風雨に走る。

雨聲は颼颼(そうそう)として早(あさ)の寒さを催し,胡の雁は翅(つばさ) を濕いて高く飛ぶに難し。

秋と來りて未だ曾つて白日を見ず,泥は後土を(けが)して何の時か乾かん?


私はだれからも相手にされない長安の一市民。門を閉ざし、土塀で囲まれた家の中でじっとしている。
おやじが外に出ぬままに雑草は生い茂り、子供は親の苦労も知らぬげに、風雨の中を走りまわっている。
雨はザアザアと、早い冬をせき立て、胡雁は翼が湿って高く飛べない。
秋になってからこれまで、お日さまを見たことがなく、大地は泥に汚されてしまい、いつになったら乾くのか。


長安布衣誰比數,反鎖衡門守環堵。
私はだれからも相手にされない長安の一市民。門を閉ざし、土塀で囲まれた家の中でじっとしている。
布衣 粗末な着物。冠位のない人。○比數 取るに足らない。 ○衡門 木を横にした粗末な門。隠者の門。○環堵  家の周囲を取り巻いている垣根。  小さな家。狭い部屋。また、貧しい家。この聯のイメージは杜甫の「貧交行 」を参照。


老夫不出長蓬蒿,稚子無憂走風雨。
おやじが外に出ぬままに雑草は生い茂り、子供は親の苦労も知らぬげに、風雨の中を走りまわっている。
老夫 老爺(ろうや). 翁(おう) 翁(おきな) 老翁(ろうおう). [共通する意味年をとった男性。○蓬蒿 草ぼうぼうの野原。○無憂 むじゃき。憂いを認識しない。  



雨聲颼颼催早寒,胡雁翅濕高飛難。
雨はザアザアと、早い冬をせき立て、胡雁は翼が湿って高く飛べない。
雨聲 雨音 ○颼颼 風雨の音○胡雁 胡に帰る雁。 ○翅濕 羽を濡らせての奥までを湿らせる。   



秋來未曾見白日,泥汙後土何時乾?
秋になってからこれまで、お日さまを見たことがなく、大地は泥に汚されてしまい、いつになったら乾くのか。
泥汙 汙は汚。泥に汚される ○何時乾  乾くのはいつ。




貧困者を救済するために、政府は官の大倉を開いて米を放出し、長安市民に日に五升(日本の二升あまり)ずつ、安価に分け与えた。杜甫も毎日、大倉に出かけていって米の配給を受け、その日その日をやっと食いつないでいた。しかし、それも長くは続かず、彼は仕方なく家族を長安から奉先県に移すことにした。奉先県は長安の東北約一〇〇キロメートルの所にあり、当時そこには妻楊氏の親戚の者が県令として赴任していた。家族を奉先県に送っていった杜甫は、一人で長安に引き返し、あてのない採用通知を待ちつづける。(この時の様子は曲江三章 章五句の第三章にあらわされてる)

長安・杜曲韋曲
杜甫乱前後の図001


曲江三章 章五句 
曲江三章 第一章五句
曲江蕭條秋氣高,菱荷枯折隨風濤。
遊子空嗟垂二毛,白石素沙亦相蕩,哀鴻獨叫求其曹。

(曲江蕭条として 秋氣高く。菱荷(菱と蓮)枯折して 風濤に随ふ。
游子空しく嗟す 二毛(白髪交じり)に垂(なんなん)とするを。
白石素沙 亦た相い蕩(うごか)す。哀鴻(あいこう、哀れなヒシクイ)独り叫び 其の曹(ともがら)を求む)。


曲江三章 第二章五句
即事非今亦非古,長歌激夜梢林莽,比屋豪華固難數。
吾人甘作心似灰,弟侄何傷淚如雨?

(即事 今に非ず 亦た古(いにしへ)に非ず。長歌夜激しくして 林莽(りんぼう、林やくさむら)を捎(はら)ふ。比屋 豪華にして 固より数え難し。吾人 甘んじて 心 灰に似たるを作さん。弟姪 何をか傷みて 泪(なみだ)雨の如くなる。)

曲江三章 第三章五句
自斷此生休問天,杜曲幸有桑麻田,故將移住南山邊。
短衣匹馬隨李廣,看射猛虎終殘年。

(自ら此の生を断つ天に問うを休めよ。杜曲幸に桑麻の田有り。故に将に南山の辺に移住す。短衣匹馬李広に随い。猛虎を射るを看て残年を終えんとす。)


貧交行     杜甫 
翻手作雲覆手雨,紛紛輕薄何須數。
君不見管鮑貧時交,此道今人棄如土。

(手を翻(ひるがへ)せば雲と 作(な)り 手を覆(くつがへ)せば 雨となる。紛紛たる輕薄  何ぞ 數ふるを 須(もち)ゐん。
君見ずや  管鮑(くゎんんぱう) 貧時の交はりを,此(こ)の道  今人(こんじん) 棄つること 土の如し。)

重過何氏五首 其三 杜甫 :kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 誠実な詩人杜甫特集 70

重過何氏五首 其三 杜甫 :kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 誠実な詩人杜甫特集 70
(就職活動中 長安郊外 杜曲の家)


重過何氏五首 其三
落日平台上、春風啜茗時。
平らな露台の上を落日が染める、春風に吹かれ、新茶をすする至福の時である。
石欄斜点筆、桐葉坐題詩。
石の欄干においてある硯に斜めに筆を下ろし、桐の葉に坐ったまま詩を書きつける。
翡翠鳴衣桁、蜻蜓立釣糸。
かわせみが庭先に置かれた着物掛けに飛んできて鳴いており、とんぼが池に垂れた釣り糸にきてとまっている。
自今幽興熱、来往亦無期。

今からは自然の興趣にも十分慣れてきた、心ゆくままに山荘の中を散策しようとおもったのだ。


平らな露台の上を落日が染める、春風に吹かれ、新茶をすする至福の時である。
石の欄干においてある硯に斜めに筆を下ろし、桐の葉に坐ったまま詩を書きつける。
かわせみが庭先に置かれた着物掛けに飛んできて鳴いており、とんぼが池に垂れた釣り糸にきてとまっている。
今からは自然の興趣にも十分慣れてきた、心ゆくままに山荘の中を散策しようとおもったのだ。



落日 平台の上、春風 茗を啜る時。
石欄 斜めに筆を点じ、桐葉 坐して詩を題す。
翡翠は衣桁に鳴き、蜻蜓は釣糸に立つ。
今日り幽興熟さん、来往も亦た期無し。



落日平台上、春風啜茗時。
平らな露台の上を落日が染める、春風に吹かれ、新茶をすする至福の時である。
平台 庭園の中に盛り土して築かれた露台。○啜茗 新茶を茶といい、晩く採った茶を著という。茶が噂好品として用いられるようになったのは、このころからである。○ 至福の時。



石欄斜点筆、桐葉坐題詩。
石の欄干においてある硯に斜めに筆を下ろし、桐の葉に坐ったまま詩を書きつける。
石欄 石の手摺。その上に硯をおく。



翡翠鳴衣桁、蜻蜓立釣糸。
かわせみが庭先に置かれた着物掛けに飛んできて鳴いており、とんぼが池に垂れた釣り糸にきてとまっている。
翡翠 かわせみ。水辺に棲む小鳥で、全身に青黄色の美しい羽毛をもつ。○衣桁 着物などをかけて置く家具。○蜻蜓 とんぼ。



自今幽興熟、来往亦無期。
今からは自然の興趣にも十分慣れてきた、心ゆくままに山荘の中を散策しようとおもったのだ。
幽興熟  一人静かな自然の興趣に十分慣れてきた。熟はこの園になれたこと。 ○来往 自分の家とこの園とを行ったり来たりすること。  ○無期 定まった期限のないこと。 期は約束ごと。



○韻  時、詩、糸、期。

陪鄭広文遊何将軍山林十首 其三 杜甫 :kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 誠実な詩人杜甫特集 57

陪鄭広文遊何将軍山林十首 其三 杜甫 :kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 誠実な詩人杜甫特集 57

753年天宝12載 42歳  五言律詩


陪鄭広文遊何将軍山林十首其三
萬裡戎王子,何年別月支。
戎王子の花は万里の遠くからやってきた、故国の月支に別れをつげたのはいつの年なのか。
異花開絕域,滋蔓匝清池。
その異なった花はずっと地の果てに開いていたものだ、いま蔓をしげりはびこらせているのはこの清らかな池をめぐるあたりだ。
漢使徒空到,神農竟不知。
むかし西域に使いにいった漢の使者はただ行き着いただけでいい草花を持ち帰ることができなかった、さすがの神農さまがついにその草花のことはご存じでなかったのだ。
露翻兼雨打,開坼日離披。

露さえひるがえされ、そのうえ雨に打たれたりしていたが、花を押し開くことは日ごとにしどけなく咲き乱れてきている。



戎王子の花は万里の遠くからやってきた、故国の月支に別れをつげたのはいつの年なのか。
その異なった花はずっと地の果てに開いていたものだ、いま蔓をしげりはびこらせているのはこの清らかな池をめぐるあたりだ。
むかし西域に使いにいった漢の使者はただ行き着いただけでいい草花を持ち帰ることができなかった、さすがの神農さまがついにその草花のことはご存じでなかったのだ。
露さえひるがえされ、そのうえ雨に打たれたりしていたが、花を押し開くことは日ごとにしどけなく咲き乱れてきている。


万里戎王子 何の年か月支に別れし
異花絶域より来り 滋葦清池を匝る
漢使徒に空しく到る 神農寛に知らず
露翻兼ねて雨打 開折 日々に離披たり



萬裡戎王子,何年別月支。
戎王子の花は万里の遠くからやってきた、故国の月支に別れをつげたのはいつの年なのか。
戎王子 草花の名。うどの類であるとの説があるが未詳。〇月支 漢代、西域にあった国の名。



異花開絕域,滋蔓匝清池。
その異なった花はずっと地の果てに開いていたものだ、いま蔓をしげりはびこらせているのはこの清らかな池をめぐるあたりだ。
異花 めずらしい花、即ち戎王子をさす。○絶域 かけはなれた地方、即ち月支をさす。○滋蔓 しげりはびこる。

漢使徒空到,神農竟不知。
むかし西域に使いにいった漢の使者はただ行き着いただけでいい草花を持ち帰ることができなかった、さすがの神農さまがついにその草花のことはご存じでなかったのだ。
漢使 漢の張憲のこと。紀元前二世紀のころ、武帝の命を受けて中央アジアを探険し、諸国との交通を開き、葡萄、天馬、その他種々のものを将来した。○徒空 到いたずらにその地に到ったというのは此のような異草をたずさえてこなかったということ。○神農 中國上代の皇帝の名。医薬の神とされ、百草をなめて人間の食物と薬草とを定めた「本草経」を著わしたとする。○竟不知 知らずというのは本草経に戎王子の草名が録掲載されていないことをしめす。

露翻兼雨打,開坼日離披。
露さえひるがえされ、そのうえ雨に打たれたりしていたが、花を押し開くことは日ごとにしどけなく咲き乱れてきている。
露翻 露さえひるがえされる。○ また。そのうえ。〇雨打 雨にうたれる。 ○開折 花が押し開くこと。花がおし琶かれること。○離披 しどけなく咲きみだれるさま。

○韻 支・池・知・披。

前出塞九首 其三 杜甫

前出塞九首 其三 杜甫 紀頌之の漢詩ブログ誠実な詩人杜甫特集 42
五言律詩

其三
磨刀嗚咽水,水赤刃傷手。
隴山までくるとむせび泣いている水が流れている、その水で刀をみがく。水の色がさっと赤くなる、刀の刃が自分の手を傷つけたのだ。
欲輕腸斷聲,心緒亂已久。
自分はこんな腸はらわたを断たせるという水の音などはたいしたことはないつもりなのだが、家と国とのことを考えると以前からさまざま思っていて心がみだれているのだ。
丈夫誓許國,憤惋複何有?
大丈夫たるものが心に誓って国のために心身をささげる以上は、憤りうらむべき理由などありはしない。
功名圖麒麟,戰骨當速朽。

麒麟閣に勲功者が画かれている。すぐにでも奮って戦場へでかけて朽ち果てようではないか。



隴山までくるとむせび泣いている水が流れている、その水で刀をみがく。水の色がさっと赤くなる、刀の刃が自分の手を傷つけたのだ。
自分はこんな腸はらわたを断たせるという水の音などはたいしたことはないつもりなのだが、家と国とのことを考えると以前からさまざま思っていて心がみだれているのだ。
大丈夫たるものが心に誓って国のために心身をささげる以上は、憤りうらむべき理由などありはしない。
麒麟閣に勲功者が画かれている。すぐにでも奮って戦場へでかけて朽ち果てようではないか。



刀を嗚咽の水に磨けばけば、水赤くして刃手を傷く。
腸断の声を軽んぜんと欲するも、心緒乱るること己に久し。
丈夫誓って国に許す、憤惋復た何ぞ有らん。
功名麒麟に図せられん、戦骨当に速に朽つべし。

 
陝西甘粛出塞 杜甫65


磨刀嗚咽水,水赤刃傷手。
隴山までくるとむせび泣いている水が流れている、その水で刀をみがく。水の色がさっと赤くなる、刀の刃が自分の手を傷つけたのだ。
鳴咽水、腸断声 「三秦記」にいう「隴山の頂に泉有りて、清水四に注ぐ、東のかた秦川を望めば四五里なるが如し。俗歌に『陣頭の流水、鳴声幽咽す。遙かに秦川を望めば、肝腸断絶す』という」と。隴山は今の陝西省鳳翔府隴州の北西にあって、ここを経て甘粛省の方へ赴くが、長安地方の眺望がこれよりみえなくなる様子を詠った歌である。鳴咽の水とはむせびなくような水流をいう。腸断声とは水自身に人をして腸をたたしめるような声のあることをいう。○水赤刃傷手 事実は刃が手をきずつけるから血が染まって水が赤くなるのであるが、我々がであう経験からすれば水が赤いのではっとおどろいてみると刃が手をきずつけていることが知られるということになる。



欲輕腸斷聲,心緒亂已久。
自分はこんな腸はらわたを断たせるという水の音などはたいしたことはないつもりなのだが、家と国とのことを考えると以前からさまざま思っていて心がみだれているのだ。(それがつい誤って手をきずつけさせたのだ。)
○軽 軽く視る、なんでもないものと見なそうとすること。○心緒 さまざまのものおもい。このものおもいのみだれが手をきずつけたわけである。



丈夫誓許國,憤惋複何有?
大丈夫たるものが心に誓って国のために心身をささげる以上は、憤りうらむべき理由などありはしない。
丈夫 ますらお、自ずからをいう。○許国 心身をささげることを国に対して許す。よいとする。○憤椀 いきどおり、おどろきうらむ。


功名圖麒麟,戰骨當速朽。
麒麟閣に勲功者が画かれている。すぐにでも奮って戦場へでかけて朽ち果てようではないか。
功名 自己の戦功をたでた名。○図 画かれること。○戰骨當速朽 戦死したあとの骨など速にくちはつるがいい、骨はくちても芳名が千歳にのこるのだ。
麒麟 宮殿閣の名。漢の宜帝の甘露三年に大将軍容光ら十二人を麒麟閣にえがいた。


長安洛陽鳳翔Map


出塞兵士の物語 3
 戦場で骨は朽ち果て土に帰るが、手柄を立てれば、その名はいつまでも残る。国のために心身を捧げものは、女々しくするものではない。
 詩の場所は、長安からスタートしたシルクロードを西に進む。河川が急激に急流になる。滝のような場所もたくさんある。轟音を立てて流れる。標高2000mを超える峠まで、両岸は切り立っている。
 出征した兵士のほとんどは、こんな嶮しいところは初めてである。それでなくても都から離れていくし、さびしくなるうえにむせび泣く声の水流の音、はらわたを断ち切るような水流の音などにより、かなり追い詰められていく様子を詠いあげている。

故武衛将軍挽詞 三首 其三 杜甫

故武衛将軍挽詞 三首 其三 杜甫 紀頌之の漢詩ブログ杜甫詩 特集 31

〔三〕
哀挽青門去、新阡絳水逢。
将軍の枢はかなしくひかれて青門からでて逝く、。それははるかかなたの故郷の絳水のながれる地方の新しい墓道に向うのである。
路人紛雨泣、天意颯風飆。
送っている道端の人たちも紛々として雨のように涙をおとして泣き、天の思いも悲しいとわかっていて、時折吹く突風がヒューッと音をたてている。
部曲精仍鋭、匈奴氣不騎。
小分隊の部曲の兵隊は、精鋭ぞろいであり、之あるがために匈奴の騎馬隊も威張ることができないのである。
無由覩雄略、大樹日蕭蕭。

遺憾ながら将軍は死んでしまわれたからその勇壮な戦略をみるすべがもうない、ただ将軍を表象する墓辺の大樹が日に日にさびしく立つばかりである。


将軍の枢はかなしくひかれて青門からでて逝く、。それははるかかなたの故郷の絳水のながれる地方の新しい墓道に向うのである。
送っている道端の人たちも紛々として雨のように涙をおとして泣き、天の思いも悲しいとわかっていて、時折吹く突風がヒューッと音をたてている。
小分隊の部曲の兵隊は、精鋭ぞろいであり、之あるがために匈奴の騎馬隊も威張ることができないのである。
遺憾ながら将軍は死んでしまわれたからその勇壮な戦略をみるすべがもうない、ただ将軍を表象する墓辺の大樹が日に日にさびしく立つばかりである。



故武衛将軍挽詞 三首 其三
哀挽 青門より去る  新肝絳水絳水逢かなり
路人 粉として雨泣す 天意 風 飆颯たり
部曲 精にして仍って鋭に 匈奴気驕らず
雄略を覩るに由なし  大樹日に蕭蕭たり


哀挽青門去、新阡絳水逢。
将軍の枢はかなしくひかれて青門からでて逝く、。それははるかかなたの故郷の絳水のながれる地方の新しい墓道に向うのである。
哀挽 かなしく枢をひく。○青門 長安の東面最南、薪城門の別名。其の門の青いのによって青門という。
新阡 阡は墓道、将軍の故郷のそれをいう。○絳水  山西省絳州絳県の西南より流れ出す川、これによれば
将軍は絳州の人であろう。

路人紛雨泣、天意颯風飆。
送っている道端の人たちも紛々として雨のように涙をおとして泣き、天の思いも悲しいとわかっていて、時折吹く突風がヒューッと音をたてている。
 みだれるさま。○雨泣 雨のふる如くに涙をおとしてなく。○天 天のこころ、想像していう。○ 風のおと。○風飆 飆は下より吹きあげるかぜ。つむじかぜ。


部曲精仍鋭、匈奴氣不騎。
小分隊の部曲の兵隊は、精鋭ぞろいであり、之あるがために匈奴の騎馬隊も威張ることができないのである。
部曲 曲とは部に属する小分隊の名。○ えりぬき。○ やっぱり。○ 鉾先するどし。○匈奴 北の異民族。騎馬民族で生活様式が全く異なっていたので、嫌がる総称として使われる。
 
無由覩雄略、大樹日蕭蕭。
遺憾ながら将軍は死んでしまわれたからその勇壮な戦略をみるすべがもうない、ただ将軍を表象する墓辺の大樹が日に日にさびしく立つばかりである。
雄略 いさましい戦略。勇壮な戦略。○大樹 鴻異の故事、すでに前に見える。墓辺の樹をいうのであろう。○蕭蕭 ひっそりとさびしいさま。



李白 8/15 現在125首 130首以上掲載 主に蜀を旅立ちやっと都、長安朝廷に迎えられた。ところまで
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艶情歌 李商隠ほか 新解釈を含め 8/15現在30首以上掲載
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