水檻遣心二首


2013年3月7日 同じ日の紀頌之5つのブログ
●古代中国の結婚感、女性感,不遇な生き方を詠う 三国時代の三曹の一人、三国時代の「詩神」である曹植の詩
Ⅰ李白と李白に影響を与えた詩白馬篇 曹植 魏詩<52-#3>古詩源 巻五 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2028
●唐を代表する中唐の韓愈の儒家としての考えのよくわかる代表作の一つ
Ⅱ中唐詩・晩唐詩原性(まとめ) 韓愈(韓退之) <116-11>Ⅱ中唐詩609 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ2029
●杜甫の全作品1141首を取り上げて訳注解説 ●理想の地を求めて旅をする。"
Ⅲ杜甫詩1000詩集水檻遣心二首其一 杜甫 成都(4部)浣花渓の草堂(4 - 12)  杜甫 <417>  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2030 
●これまで分割して掲載した詩を一括して掲載・改訂掲載・特集  不遇であった詩人だがきめの細やかな山水詩をかいている
Ⅳブログ漢・唐・宋詞詩集従遊京口北固應詔 謝霊運<6> kanbuniinkai 紀 頌之の詩詞ブログ 2031 (03/07)
●森鴎外の小説 ”激しい嫉妬・焦燥に下女を殺してしまった『魚玄機』”といわれているがこれに疑問を持ち異なる視点で解釈して行く。唐時代にここまで率直な詩を書く女性が存在した奇跡の詩
Ⅴ.唐五代詞詩・宋詞詩・女性重陽阻雨 魚玄機  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-97-33-#  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2032
 
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安世房中歌十七首(1) 唐山夫人 漢詩 http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10/archives/67710265.html
為焦仲卿妻作 序 漢詩<143>古詩源 巻三 女性詩 http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10/archives/67729401.html
於凊河見輓船士新婚別妻一首 曹丕(魏文帝) 魏詩 http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10/archives/67759129.html
朔風 (一章) 曹植 魏詩<25-#1>文選 雑詩 上  http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10/archives/67780868.html
謝靈運詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/1901_shareiun000.html 謝靈運詩 六朝期の山水詩人。この人の詩は上品ですがすがしい男性的な深みのある詩である。後世に多大な影響を残している。
謝靈運が傲慢で磊落だったというが彼の詩からはそれを感じさせるということは微塵もない。謝靈運、謝朓、孟浩然は好きな詩人である。
登永嘉緑嶂山詩 #1 謝霊運 <20> 詩集 386ー http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10/archives/67474554.html
登池上樓 #1 謝霊運<25>#1  ー http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10/archives/67502196.html
孟浩然の詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/209mokonen01.html 孟浩然の詩 盛唐初期の詩人であるが謝霊運の詩に傾倒して山水詩人としてとてもきれいな詩を書いている。特に山水画のような病者の中で細やかな部分に動態を感じさせる表現力は素晴らしい。

李商隠詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/3991_rishoin000.html
李商隠詩 華やかな時はほんの1年余り、残りは不遇であった。それが独特な詩を生み出した。この詩人の詩は物語であり、詩を単発で見ては面白くなく、数編から十数編のシリーズになっているのでそれを尊重して読まれることを進める。
女性詩人 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/0josei00index.html 女性詩人 古代から近世に至るまで女性の詩は書くことを許されない環境にあった。貴族の子女、芸妓だけである。残されている詩のほとんどは詞、楽府の優雅、雅なものへの媚の詞である。しかしその中に針のような痛みを感じさせるものがあるのである。
孟郊詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/328_moukou001.html 「文章得其微,物象由我裁。」詩人が作り出す文章は細やかなる描写表現を得ているものだ、万物の事象をも作り出すことさえも詩人自身の裁量でもってするのである。
李商隠詩 http://kanbuniinkai7.dousetsu.com/99_rishoinn150.html Ⅰ李商隠150首

 

詩人杜甫5x5
水檻遣心二首其一 杜甫 成都(4部)浣花渓の草堂(4 - 12)  杜甫 <417>  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2030 

杜甫詩 417首/1000首—600回/1500回 
詩 題:水檻遣心二首其一 
杜甫 成都(4部)浣花渓の草堂(4 - 12) 
作時761年3月杜甫50歳 
掲 載; 杜甫1000首の417首目-#4 – 12
杜甫ブログ1500回予定の-600回目  

前詩『江上值水如海勢聊短述』に見えた水檻に立ち、あたりをながめて隠棲生活をたのしむことをのべる。 

詩題の「水檻(すいかん)に心を遣(や)る」は、川に臨んだ欄干に寄りかかってあたりを眺めやるという意味で、草堂のから一年たった2月の作である。この年は去年の春雪解けの水より、増水が多く岸いっぱいに流れたのだ。


760年の春水を述べた詩
2- 9.江漲
761年 同時期に春水を述べた詩
4- 8.春夜喜雨 杜甫
4- 9.春水生 二絶其一 杜甫
4-10.春水生 二絶其二 杜甫
4-11.江上值水如海勢聊短述 杜甫
4-12.水檻遣心二首其一 杜甫
4-13.水檻遣心二首其二 杜甫
4-18. 春水
4-19.江亭
 水檻遣心二首00









水檻遣心二首其一 
去郭軒楹敞,無村眺望賒。
ここは錦官城の城郭からはなれて我が家屋すっきりとしてあかるくみある。村を成すほど家がないからとおくまで余すところなく眺められる。
澄江平少岸,幽樹晚多花。
濯錦江の水は増水しているが澄んで今は水嵩が上がって中州も平らになって川岸いっぱいに水が上がっている。隠棲するところにあう幽静な樹々は夕暮れの斜めの日差しにたくさんの花が咲いている。
細雨魚兒出,微風燕子斜。
春雨が水面に灌ぐと魚の児が水面にうかびだしてくる。そよふく風にもうつばめがやってきて、ななめに飛びわたる。
城中十萬戶。此地兩三家。

錦官城には十万戸あるというけれど、ここ浣花渓には自分のところと二、三軒の人家があるばかりである。

(水檻にて心を遣る 二首 其の一)
郭を去って軒楹【けんえい】敞【あき】らかなり、村無くして眺望【ちょうぼう】賒【はる】かなり。
澄江【ちょうこう】平らかにして岸少なく 幽樹【ゆうじゅ】晩に花多し。
細雨【さいう】に魚児出で、微風に燕子【えんし】斜めなり。
城中は十万戸なるも、此の地は両三家なり。

杜甫草堂詳細図02
『水檻遣心二首』 現代語訳と訳註
(本文)
水檻遣心二首其一 
去郭軒楹敞,無村眺望賒。
澄江平少岸,幽樹晚多花。
細雨魚兒出,微風燕子斜。
城中十萬戶。此地兩三家。


(下し文)
(水檻にて心を遣る 二首 其の一)
郭を去って軒楹【けんえい】敞【あき】らかなり、村無くして眺望【ちょうぼう】賒【はる】かなり。
澄江【ちょうこう】平らかにして岸少なく 幽樹【ゆうじゅ】晩に花多し。
細雨【さいう】に魚児出で、微風に燕子【えんし】斜めなり。
城中は十万戸なるも、此の地は両三家なり。


(現代語訳)
ここは錦官城の城郭からはなれて我が家屋すっきりとしてあかるくみある。村を成すほど家がないからとおくまで余すところなく眺められる。
濯錦江の水は増水しているが澄んで今は水嵩が上がって中州も平らになって川岸いっぱいに水が上がっている。隠棲するところにあう幽静な樹々は夕暮れの斜めの日差しにたくさんの花が咲いている。
春雨が水面に灌ぐと魚の児が水面にうかびだしてくる。そよふく風にもうつばめがやってきて、ななめに飛びわたる。
錦官城には十万戸あるというけれど、ここ浣花渓には自分のところと二、三軒の人家があるばかりである。


(訳注)
水檻遣心二首其一
 
前詩『江上值水如海勢聊短述』に見えた水檻に立ち、あたりをながめて隠棲生活をたのしむことをのべる。 
詩題の「水檻(すいかん)に心を遣(や)る」は、川に臨んだ欄干に寄りかかってあたりを眺めやるという意味で、草堂のから一年たった2月の作である。この年は去年の春雪解けの水より、増水が多く岸いっぱいに流れたのだ。


去郭軒楹敞,無村眺望賒。
ここは錦官城の城郭からはなれて我が家屋すっきりとしてあかるくみある。村を成すほど家がないからとおくまで余すところなく眺められる。
○去郭 錦官城の城郭からはなれる。6km離れる。
○軒楹 のきとはしら、楹はいり口の柱。ここでは二字で家の建物をいう。
○敞 開敞【かいしょう】1 前面がひらけていて、さえぎるもののないこと。2 港湾が外海に面していて、直接、風波を受けること。すっきりしている。成都の市街地の喧噪に比較している。


澄江平少岸,幽樹晚多花。
濯錦江の水は増水しているが澄んで今は水嵩が上がって中州も平らになって川岸いっぱいに水が上がっている。隠棲するところにあう幽静な樹々は夕暮れの斜めの日差しにたくさんの花が咲いている。
・澄江 春水が増水しているが、雨の水と違って川の水が澄んでいる。雪解けの水は大地を傷つけない万物にとって恵みの水であるということを意識させている。杜甫の精神的にお衝いていることをあらわすものである。
・平少岸 家の前には中州があり、渚があるのであるが、増水により渚がなくなっていることを云う。
・幽樹 ひっそりと静まり返る奥の方を意味する。つまり隠棲を意識させる。
・晚 日が落ちてきて日差しが斜めになり咲き誇る花をスポットライトのように浮かび上がらせることを云っている。こうしたきめの細かい描写をしていることに気が付かないといけない。
・多花 たくさんの花。杜甫は1年前この地を居住の場所と決め、浣花渓と名付けた。花いっぱいにしたかったのである。1年たった春になって念願通り花が咲き誇っているのだ。


細雨魚兒出,微風燕子斜。
春雨が水面に灌ぐと魚の児が水面にうかびだしてくる。そよふく風にもうつばめがやってきて、ななめに飛びわたる


城中十萬戶。此地兩三家。
錦官城には十万戸あるというけれど、ここ浣花渓には自分のところと二、三軒の人家があるばかりである。