杜甫詳注 杜詩の訳注解説 漢文委員会

士族の子で、のほほんとしていた杜甫を変えたのは、三十代李白にあって、強いカルチャーショックを受けたことである。その後十年、就活に励んだ。同時に極限に近い貧困になり、家族を妻の実家に送り届けるときの詩は、そして、子供の死は、杜甫の詩を格段に向上させた。安史の乱直前から、捕縛され、長安での軟禁は、詩にすごみと分かりやすさのすぐれたしにかえてゆき、長安を脱出し、鳳翔の行在所にたどり着き、朝廷に仕えたことは、人間関係の複雑さを体験して、詩に深みが出ることになった。そして、朝廷における疎外感は詩人として数段高めさせてくれた。特に、杜甫の先生に当たる房琯関連の出来事、二十数首の詩は内容のあるものである。  一年朝廷で死に直面し、そして、疎外され、人間的にも成長し、これ以降の詩は多くの人に読まれる。  ◍  華州、秦州、同谷  ◍  成都 春満喫  ◍  蜀州、巴州、転々。 ◍  再び成都 幕府に。 それから、かねてから江陵にむかい、暖かいところで養生して、長安、朝廷に上がるため、蜀を発し、 ◍  忠州、雲州   ◍  夔州   ◍  公安  そして、長安に向かうことなく船上で逝くのである。  本ブログは、上記を完璧に整理し、解説した仇兆鰲の《杜詩詳注》に従い、改めて進めていく。

杜甫の詩、全詩、約1500首。それをきちんと整理したのが、清、仇兆鰲注解 杜詩詳注である。その後今日に至るまで、すべてこの杜詩詳注に基づいて書かれている。筆者も足掛け四年癌と戦い、いったんこれを征することができた。思えば奇跡が何度も起きた。
このブログで、1200首以上掲載したけれど、ブログ開始時は不慣れで誤字脱字も多く、そして、ブログの統一性も不十分である。また、訳注解説にも、手抜き感、不十分さもあり、心機一転、杜詩詳注に完全忠実に初めからやり直すことにした。
・そして、全唐詩と連携して、どちらからでも杜詩の検索ができるようにした。
・杜甫サイトには語順検索、作時編年表からも検索できるようにした。
杜甫詩の4サイト
● http://2019kanbun.turukusa.com/
● http://kanbunkenkyu.webcrow.jp
● http://kanbunkenkyu.web.fc2.com/
● http://kanbuniinka15.yu-nagi.com

彭衙行

彭衙行 #4 杜甫 135 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 132

彭衙行 #4 杜甫 135 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 132 (ほうがこう)


#1
憶昔避賊初,北走經險艱。夜深彭衙道,月照白水山。』
盡室久徒步,逢人多厚顏。參差穀鳥吟,不見遊子還。
癡女饑咬我,啼畏虎狼聞。懷中掩其口,反側聲愈嗔。
小兒強解事,故索苦李餐。』
#2
一旬半雷雨,泥濘相牽攀。既無禦雨備,徑滑衣又寒。
有時經契闊,竟日數裡間。野果充 ?糧,卑枝成屋椽。
早行石上水,暮宿天邊煙。』
#3
少留同家窪,欲出蘆子關。故人有孫宰,高義薄曾雲。
延客已曛黑,張燈啟重門。暖湯濯我足,剪紙招我魂。』
#4
從此出妻孥,相視涕闌幹。
それから自分は妻子をださせて彼にひき合せた、お互にみあわせてともに涙と鼻水をながしとめどない大泣きをした。
眾雛爛熳睡,喚起沾盤飧。
いつもは鳥のひなの様な子どもたちなのに、みるとみんなさかんによく眠っている。それをよびおこした、それから大皿に盛った御飯のもてなしとうるおわせてくれるのだ。
誓將與夫子,永結為弟昆。
そのとき孫宰は自分にむかって「誓ってあなたと永く交りを結んで兄弟となりましょう」といってくれる。
遂空所坐堂,安居奉我歡。
とうとうここの主人がいつも使っているる座敷をからにあけてくれた、居どころを安穏にして 我々がよろこぶ様にとしてくれるのだ。
誰肯艱難際,豁達露心肝。』
この難儀な時節だというのにだれが孫宰の様にしてくれようか、そのうえ、「永結為弟昆」と自己のはらのなかをうちあけて親切をつくしてくれるのである。』
別來歲月周,胡羯仍構患。
おもいまわせばあなたと別れてこのかたまる一年ばかりたった。しかし、叛乱軍の勢いが止まらない、やっぱり患難なことなのだ。
何時有翅翎,飛去墮爾前?』

いつになったら自分のからだにはねがはえてきて、飛んでいってあなたの前におちることができるのだろうか?』


此(これ)従(より)妻孥(さいど)を出す 相視て涕(なみだ)闌幹(らんかん)たり。
衆雛(しゅうすう) 爛漫(らんまん)として睡(ねむ)る、喚び 起して 盤飧(ばんそん)に 沾(うるお)わしむ。
誓って将に夫子(ふうし)と、永く結び て 弟昆(ていこん)と為らんと す と。
遂に坐する所の堂を空(むな)しくして、居を安(あんじ)て 我が歓(よろこび)を奉ず。
誰か 肯(あえ)て 艱難(かんなん)の際、豁達(かつたつ) 心肝(しんかん)を露(あら)わさん。』
別来(べつらい) 歳月周(めぐ)る 胡羯(こけつ)  仍(なお) 患(うれい)を構(かも)う
何時(いつ)か 翅翎(しれい)有って 飛び去って爾(なんじ)が前に堕(おつ)べき。』


彭衙行 #4 現代語訳と訳註
(本文)

從此出妻孥,相視涕闌幹。眾雛爛熳睡,喚起沾盤飧。
誓將與夫子,永結為弟昆。遂空所坐堂,安居奉我歡。
誰肯艱難際,豁達露心肝。』
別來歲月周,胡羯仍構患。何時有翅翎,飛去墮爾前?』

幹。飧。昆。歡。肝。/患。前。

(下し文)
此(これ)従(より)妻孥(さいど)を出す 相視て涕(なみだ)闌幹(らんかん)たり。
衆雛(しゅうすう) 爛漫(らんまん)として睡(ねむ)る、喚び 起して 盤飧(ばんそん)に 沾(うるお)わしむ。
誓って将に夫子(ふうし)と、永く結び て 弟昆(ていこん)と為らんと す と。
遂に坐する所の堂を空(むな)しくして、居を安(あんじ)て 我が歓(よろこび)を奉ず。
誰か 肯(あえ)て 艱難(かんなん)の際、豁達(かつたつ) 心肝(しんかん)を露(あら)わさん。』
別来(べつらい) 歳月周(めぐ)る 胡羯(こけつ)  仍(なお) 患(うれい)を構(かも)う
何時(いつ)か 翅翎(しれい)有って 飛び去って爾(なんじ)が前に堕(おつ)べき。』

(現代語訳)
それから自分は妻子をださせて彼にひき合せた、お互にみあわせてともに涙と鼻水をながしとめどない大泣きをした。
いつもは鳥のひなの様な子どもたちなのに、みるとみんなさかんによく眠っている。それをよびおこした、それから大皿に盛った御飯のもてなしとうるおわせてくれるのだ。
そのとき孫宰は自分にむかって「誓ってあなたと永く交りを結んで兄弟となりましょう」といってくれる。
とうとうここの主人がいつも使っているる座敷をからにあけてくれた、居どころを安穏にして 我々がよろこぶ様にとしてくれるのだ。
この難儀な時節だというのにだれが孫宰の様にしてくれようか、そのうえ、「永結為弟昆」と自己のはらのなかをうちあけて親切をつくしてくれるのである。』
おもいまわせばあなたと別れてこのかたまる一年ばかりたった。しかし、叛乱軍の勢いが止まらない、やっぱり患難なことなのだ。
いつになったら自分のからだにはねがはえてきて、飛んでいってあなたの前におちることができるのだろうか?』


(訳注)#4
從此出妻孥,相視涕闌幹。

それから自分は妻子をださせて彼にひき合せた、お互にみあわせてともに涙と鼻水をながしとめどない大泣きをした。
従此 それから。○出妻孥 杜甫の妻子をださせて孫宰に面会させる。○相視 たがいによくみあう。○闌幹 あふれてながれるさま。


眾雛爛熳睡,喚起沾盤飧。
いつもは鳥のひなの様な子どもたちなのに、みるとみんなさかんによく眠っている。それをよびおこした、それから大皿に盛った御飯のもてなしとうるおわせてくれるのだ。
衆雛 多くの幼少なこども。いつもは鳥のように騒いでいることをいうため雛と使う。○爛漫 ねむりのまっさかりにあるさま。○喚起 よびおこす。○宿 そのめぐみにうるおわしめる。○盤殆 盤は大皿、娘は食事。

誓將與夫子,永結為弟昆。
そのとき孫宰は自分にむかって「誓ってあなたと永く交りを結んで兄弟となりましょう」といってくれる。
○この二句は孫宰の言葉。夫子とは孫雫よりみた、杜甫のことをさす語、弟昆の昆は兄、弟昆は兄弟をいう。


遂空所坐堂,安居奉我歡。
とうとうここの主人がいつも使っているる座敷をからにあけてくれた、居どころを安穏にして 我々がよろこぶ様にとしてくれるのだ。
 からにしてあけてくれる。○所坐堂 主人がいつも使っている奥座敷。○安居 居どころを安穏にして。○奉我歓 我々に我々の歓ぶことをあたえでくれる。


誰肯艱難際,豁達露心肝。』
この難儀な時節だというのにだれが孫宰の様にしてくれようか、そのうえ、「永結為弟昆」と自己のはらのなかをうちあけて親切をつくしてくれるのである。』
誰骨 次句までかかっている、反語である。だれがそんなにすることを承知しょうか、するものはない。○艱難 世事のなんぎなこと。○豁達 ひろびろと。○露心肝 心のおくそこまで他人にだしてみせる。この句までが二聯前から、かかっている。


別來歲月周,胡羯仍構患。
おもいまわせばあなたと別れてこのかたまる一年ばかりたった。しかし、叛乱軍の勢いが止まらない、やっぱり患難なことなのだ。
別来 わかれてこのかた。○周 抄とめぐりする。前年の夏より今年の秋までで一周である。○胡羯仍構患 叛乱軍、史忠明の兵が太原に攻め込み、安慶緒・尹子奇などに睢陽に赴かせた等のことをさしている。・仍 やっぱり。・構患 心配事をこしらえている。叛乱軍の勢いが止まらないこと。


何時有翅翎,飛去墮爾前?』
いつになったら自分のからだにはねがはえてきて、飛んでいってあなたの前におちることができるのだろうか?。
翅翎 つばさ、はね。○ 汝、孫宰のこと。


○五言古詩
○押韻 幹。飧。昆。歡。肝。/患。前。


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彭衙行
#1
憶昔避賊初,北走經險艱。夜深彭衙道,月照白水山。』
盡室久徒步,逢人多厚顏。參差穀鳥吟,不見遊子還。
癡女饑咬我,啼畏虎狼聞。懷中掩其口,反側聲愈嗔。
小兒強解事,故索苦李餐。』
#2
一旬半雷雨,泥濘相牽攀。既無禦雨備,徑滑衣又寒。
有時經契闊,竟日數裡間。野果充 ?糧,卑枝成屋椽。
早行石上水,暮宿天邊煙。』
#3
少留同家窪,欲出蘆子關。故人有孫宰,高義薄曾雲。
延客已曛黑,張燈啟重門。暖湯濯我足,剪紙招我魂。』
#4
從此出妻孥,相視涕闌幹。眾雛爛熳睡,喚起沾盤飧。
誓將與夫子,永結為弟昆。遂空所坐堂,安居奉我歡。
誰肯艱難際,豁達露心肝。』
別來歲月周,胡羯仍構患。何時有翅翎,飛去墮爾前?』

#1
憶(おも)う  昔  賊を避けし初め、北に走って険難(けんなん)を経(へ)たり。
夜は深し  彭衙(ほうが)の道、月は照る  白水(はくすい)の山。
室(しつ)を尽くして久しく徒歩す、人に逢えば厚顔(こうがん)多し。
参差(しんし)として谷鳥(こくちょう)鳴き、遊子(ゆうし)還(かえ)るを見ず。
痴女(ちじょ)は飢(う)えて我れを咬(か)み、啼(な)いて畏(おそ)る  虎狼(ころう)の聞ゆるを。
中(うち)に懐(いだ)いて其の口を掩(おお)えば、反側(はんそく)して声愈々(いよいよ)嗔(いか)る。
小児(しょうに)は強(し)いて事を解し、故(ことさ)らに苦李(くり)を索(もと)めて餐(くら)う。』
#2
一旬(いちじゅん)  半(なか)ばは雷雨、泥濘(でいねい)   相(あい)攀牽(はんけん)す。
既に雨を禦(ふせ)ぐ備え無く、径(みち)滑かにして衣(い)又寒し。
時(とき)有りて契闊(けつかつ)たるを経(ふ)、竟日(きょうじつ)  数里の間(かん)。
野果(やか)を餱糧(こうりょう)に充(あ)て、卑枝(ひし)を屋椽(おくてん)と成(な)す。
早(あした)には行く  石上(せきじょう)の水、暮(くれ)には宿る   天辺(てんぺん)の煙。』
#3
少(しば)らく同家窪(どうかあ)に留(とど)まり、蘆子関(ろしかん)に出でんと欲す。
故人(こじん)  孫宰(そんさい)有り、高義(こうぎ)  曾雲(そううん)に薄(せま)る。
客を延(ひ)くとき己に曛黒(くんこく)なり 燈を張りて重門(ちょうもん)を啓(ひら)く。
湯を暖めて我が足を濯(あら)わしめ 紙を剪(き)って我が魂を招(まね)く』
#4
此(これ)従(より)妻孥(さいど)を出す 相視て涕(なみだ)闌幹(らんかん)たり。
衆雛(しゅうすう) 爛漫(らんまん)として睡(ねむ)る、喚び 起して 盤飧(ばんそん)に 沾(うるお)わしむ。
誓って将に夫子(ふうし)と、永く結び て 弟昆(ていこん)と為らんと す と。
遂に坐する所の堂を空(むな)しくして、居を安(あんじ)て 我が歓(よろこび)を奉ず。
誰か 肯(あえ)て 艱難(かんなん)の際、豁達(かつたつ) 心肝(しんかん)を露(あら)わさん。』
別来(べつらい) 歳月周(めぐ)る 胡羯(こけつ)  仍(なお) 患(うれい)を構(かも)う
何時(いつ)か 翅翎(しれい)有って 飛び去って爾(なんじ)が前に堕(おつ)べき。』

唐宋詩 
(Ⅰ李商隠Ⅱ韓退之(韓愈))

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彭衙行 #3 杜甫 134 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 132#3

彭衙行 #3 杜甫 134 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 132#3 (ほうがこう)


必死の思いで避難を続ける杜甫とその家族は(王触一家もいっしょだったであろうが)、三川県の周家窪という村にやっとたどり着いたが、その村で杜甫は思いもかけず、知り合いの孫宰に出会い、手厚いもてなしを受けることになった。


#1
憶昔避賊初,北走經險艱。夜深彭衙道,月照白水山。』
盡室久徒步,逢人多厚顏。參差穀鳥吟,不見遊子還。
癡女饑咬我,啼畏虎狼聞。懷中掩其口,反側聲愈嗔。
小兒強解事,故索苦李餐。』
#2
一旬半雷雨,泥濘相牽攀。既無禦雨備,徑滑衣又寒。
有時經契闊,竟日數裡間。野果充 ?糧,卑枝成屋椽。
早行石上水,暮宿天邊煙。』
#3
少留同家窪,欲出蘆子關。
故人有孫宰,高義薄曾雲。
延客已曛黑,張燈啟重門。
暖湯濯我足,剪紙招我魂。』

自分たちはしばらく同家窪で滞在してそれから蘆子関を出て北進しようと思っている。
同家窪にはふるなじみの孫辛というものがいて義理を重んじ人格のたかいことは雲にせまるほどであった。
彼が自分たちを案内してくれたときはもうすでにうすくらがりであり、あかりをつけて幾重かの門をあけてくれたのである。
そうしてお湯をわかして我々に足をあらわせ、紙をきって我々の元気の力、生き霊をよびかえらせてくれた。』

#4
從此出妻孥,相視涕闌幹。眾雛爛熳睡,喚起沾盤飧。
誓將與夫子,永結為弟昆。遂空所坐堂,安居奉我歡。
誰肯艱難際,豁達露心肝。』
別來歲月周,胡羯仍構患。何時有翅翎,飛去墮爾前?』


#3
少(しば)らく同家窪(どうかあ)に留(とど)まり、蘆子関(ろしかん)に出でんと欲す。
故人(こじん)  孫宰(そんさい)有り、高義(こうぎ)  曾雲(そううん)に薄(せま)る。
客を延(ひ)くとき己に曛黒(くんこく)なり 燈を張りて重門(ちょうもん)を啓(ひら)く。
湯を暖めて我が足を濯(あら)わしめ 紙を剪(き)って我が魂を招(まね)く』


#3 現代語訳と訳註
(本文)

少留同家窪,欲出蘆子關。故人有孫宰,高義薄曾雲。
延客已曛黑,張燈啟重門。暖湯濯我足,剪紙招我魂。』

(下し文)
少(しば)らく同家窪(どうかあ)に留(とど)まり、蘆子関(ろしかん)に出でんと欲す。
故人(こじん)  孫宰(そんさい)有り、高義(こうぎ)  曾雲(そううん)に薄(せま)る。
客を延(ひ)くとき己に曛黒(くんこく)なり 燈を張りて重門(ちょうもん)を啓(ひら)く。
湯を暖めて我が足を濯(あら)わしめ 紙を剪(き)って我が魂を招(まね)く』

(現代語訳)
自分たちはしばらく同家窪で滞在してそれから蘆子関を出て北進しようと思っている。
同家窪にはふるなじみの孫辛というものがいて義理を重んじ人格のたかいことは雲にせまるほどであった。
彼が自分たちを案内してくれたときはもうすでにうすくらがりであり、あかりをつけて幾重かの門をあけてくれたのである。
そうしてお湯をわかして我々に足をあらわせ、紙をきって我々の元気の力、生き霊をよびかえらせてくれた。』


(訳注)#3
少留同家窪,欲出蘆子關。
自分たちはしばらく同家窪で滞在してそれから蘆子関を出て北進しようと思っている。
少留 しばらく滞在する。○同家窪 白水県の郷村の名とおもわれる。孫宰の居る所。○蘆子關 関の名、延安府安塞県にある。鄜州よりさらに北にあり、霊武(地図の左側最上部)へ達する路。蘆子關は地図の中ほど最上部にある。杜甫のこの時地図の真ん中にある三川から鄜州にたどり着くのに艱難辛苦していたのだ
杜甫乱前後の図003鳳翔

  

故人有孫宰,高義薄曾雲。
同家窪にはふるなじみの孫辛というものがいて義理を重んじ人格のたかいことは雲にせまるほどであった。
故人 ふるなじみの人。○孫宰 姓は孫、宰は名とみる。○高義 義理を重んじ人格のたかいこと。○曾雲 かさなれるくも、骨は層に同じ。


延客已曛黑,張燈啟重門。
彼が自分たちを案内してくれたときはもうすでにうすくらがりであり、あかりをつけて幾重かの門をあけてくれたのである。
延客 お客をこちらへとひく、客は杜甫。○曛黑 うすくらがり。○張燈 あかりを設ける。○啟重門 幾重にもなっている門をひらく。


暖湯濯我足,剪紙招我魂。』
そうしてお湯をわかして我々に足をあらわせ、紙をきって我々の元気の力、生き霊をよびかえらせてくれた。』
暖湯 おゆをわかす。○濯我足 杜甫の足をあらわせる。○剪紙 紙をはさみできり、はたをつくり魂をまねく式に用いる。旅の間に落としていった元気の魂をかき集める儀式をする。○招我魂 くたびれ果てて自分ではないような感じになっている。我とは作者をさす。杜詩には往々にして招魂をいうが、これは生き霊をまねくことをいう、生者の魂が散じて四方にあるのによってこれをよびかえすこと。

彭衙行 #2 杜甫 133 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 132#2

彭衙行 #2 杜甫 133 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 132#2 (ほうがこう)


幼児らを連れて夜の山道を徒歩でゆく逃避行は困難を極めた。さらに艱難は続く。
#1
憶昔避賊初,北走經險艱。夜深彭衙道,月照白水山。』
盡室久徒步,逢人多厚顏。參差穀鳥吟,不見遊子還。
癡女饑咬我,啼畏虎狼聞。懷中掩其口,反側聲愈嗔。
小兒強解事,故索苦李餐。』

#2
一旬半雷雨,泥濘相牽攀。
凡そ十日のうち半分は雷があり雨の日だ、道はぬかるみで、なにかに掴まったり、手でひっぱりあったりしてやっと進めるのだ。
既無禦雨備,徑滑衣又寒。
急いで出発したので、もともと雨をふせぐ用意などしていない。そのうえ、小みちはすべり、著物もうすぎなので寒さにこたえる。
有時經契闊,竟日數裡間。
こういう時もあるのだ何日も続いて難儀をしているのだ、だから、一日中かかってやっと二三里しかあるけないのだ。
野果充糇糧,卑枝成屋椽。
野生のくだものを食糧の代りにたべたり、樹木の低い枝を屋根垂木の代りにして樹枝の下に野宿する。
早行石上水,暮宿天邊煙。』

朝早くには谷間の水に沿ってあるく、夕暮れになると峰の一番高いところに野宿するのだ。』
#3
少留同家窪,欲出蘆子關。故人有孫宰,高義薄曾雲。
延客已曛黑,張燈啟重門。暖湯濯我足,剪紙招我魂。』
#4
從此出妻孥,相視涕闌幹。眾雛爛熳睡,喚起沾盤飧。
誓將與夫子,永結為弟昆。遂空所坐堂,安居奉我歡。
誰肯艱難際,豁達露心肝。』
別來歲月周,胡羯仍構患。何時有翅翎,飛去墮爾前?』



#2
一旬(いちじゅん)  半(なか)ばは雷雨、泥濘(でいねい)   相(あい)攀牽(はんけん)す。
既に雨を禦(ふせ)ぐ備え無く、径(みち)滑かにして衣(い)又寒し。
時(とき)有りて契闊(けつかつ)たるを経(ふ)、竟日(きょうじつ)  数里の間(かん)。
野果(やか)を餱糧(こうりょう)に充(あ)て、卑枝(ひし)を屋椽(おくてん)と成(な)す。
早(あした)には行く  石上(せきじょう)の水、暮(くれ)には宿る   天辺(てんぺん)の煙。』


彭衙行 現代語訳と訳註
(本文)

一旬半雷雨,泥濘相牽攀。既無禦雨備,徑滑衣又寒。
有時經契闊,竟日數裡間。野果充 ?糧,卑枝成屋椽。
早行石上水,暮宿天邊煙。』

(下し文)
一旬(いちじゅん)  半(なか)ばは雷雨、泥濘(でいねい)   相(あい)攀牽(はんけん)す。
既に雨を禦(ふせ)ぐ備え無く、径(みち)滑かにして衣(い)又寒し。
時(とき)有りて契闊(けつかつ)たるを経(ふ)、竟日(きょうじつ)  数里の間(かん)。
野果(やか)を餱糧(こうりょう)に充(あ)て、卑枝(ひし)を屋椽(おくてん)と成(な)す。
早(あした)には行く  石上(せきじょう)の水、暮(くれ)には宿る   天辺(てんぺん)の煙。』

(現代語訳)
凡そ十日のうち半分は雷があり雨の日だ、道はぬかるみで、なにかに掴まったり、手でひっぱりあったりしてやっと進めるのだ。
急いで出発したので、もともと雨をふせぐ用意などしていない。そのうえ、小みちはすべり、著物もうすぎなので寒さにこたえる。
こういう時もあるのだ何日も続いて難儀をしているのだ、だから、一日中かかってやっと二三里しかあるけないのだ。
野生のくだものを食糧の代りにたべたり、樹木の低い枝を屋根垂木の代りにして樹枝の下に野宿する。
朝早くには谷間の水に沿ってあるく、夕暮れになると峰の一番高いところに野宿するのだ。』




(訳注)#2
一旬半雷雨,泥濘相牽攀。

凡そ十日のうち半分は雷があり雨の日だ、道はぬかるみで、なにかに掴まったり、手でひっぱりあったりしてやっと進めるのだ。
一旬 十日間。○泥浮 ぬかるみ。○攣牽 ものにつかまり、又はひっぱりあう。


既無禦雨備,徑滑衣又寒。
急いで出発したので、もともと雨をふせぐ用意などしていない。そのうえ、小みちはすべり、著物もうすぎなので寒さにこたえる。
禦雨備 雨をふせぐようい。○ こみち。


有時經契闊,竟日數裡間。
こういう時もあるのだ何日も続いて難儀をしているのだ、だから、一日中かかってやっと二三里しかあるけないのだ
有時 こういう時もある。○契闊 艱難辛苦するさま、契闊たるを契とはいくにちもつづいて難儀すること。○竟日 一日中、一日いっぱい。
 
野果充糇糧,卑枝成屋椽。
野生のくだものを食糧の代りにたべたり、樹木の低い枝を屋根垂木の代りにして樹枝の下に野宿する。
野果 野生のくだもの。○糇糧 食糧、かて。くいもの。○卑枝 ひくくさがっている枝。○成屋橡 やねのたるきとする、これは家をかまえるのではなく、樹枝の下に野宿することをいう。


早行石上水,暮宿天邊煙。』
朝早くには谷間の水に沿ってあるく、夕暮れになると峰の一番高いところに野宿するのだ。』
早行 早は朝はやく。○石上水 渓のいわまの水。○天辺煙 高峰のけむり。



(解説)
唐の国軍は叛乱軍の倍の数であった。誰もが、暫くすると叛乱軍も平定される、少し時間はかかるかもしれないが、と思っていたのだ。誰もかれもが逃げるに精一杯なのだ。ただ、叛乱軍は、唐国軍が総崩れしたのを見て、厳しい追跡をしなかったのだ。そこが叛乱軍によって唐王朝を滅亡させられなかった叛乱軍の内部矛盾があったのだ。それは不満分子の集まりでしかなかったのだ。凶暴で略奪するのみで、統治することに関心がなかった。端的に言えば、唐軍を甘く見たということ、それほど簡単で脆いものだったのだ。それは当初、唐国軍側は楊貴妃の親族の楊国忠が率いていたことが最大の問題だったのだ。
したがって、杜甫も逃げられたのだし、玄宗も同様である。

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