杜甫詳注 杜詩の訳注解説 漢文委員会

士族の子で、のほほんとしていた杜甫を変えたのは、三十代李白にあって、強いカルチャーショックを受けたことである。その後十年、就活に励んだ。同時に極限に近い貧困になり、家族を妻の実家に送り届けるときの詩は、そして、子供の死は、杜甫の詩を格段に向上させた。安史の乱直前から、捕縛され、長安での軟禁は、詩にすごみと分かりやすさのすぐれたしにかえてゆき、長安を脱出し、鳳翔の行在所にたどり着き、朝廷に仕えたことは、人間関係の複雑さを体験して、詩に深みが出ることになった。そして、朝廷における疎外感は詩人として数段高めさせてくれた。特に、杜甫の先生に当たる房琯関連の出来事、二十数首の詩は内容のあるものである。  一年朝廷で死に直面し、そして、疎外され、人間的にも成長し、これ以降の詩は多くの人に読まれる。  ◍  華州、秦州、同谷  ◍  成都 春満喫  ◍  蜀州、巴州、転々。 ◍  再び成都 幕府に。 それから、かねてから江陵にむかい、暖かいところで養生して、長安、朝廷に上がるため、蜀を発し、 ◍  忠州、雲州   ◍  夔州   ◍  公安  そして、長安に向かうことなく船上で逝くのである。  本ブログは、上記を完璧に整理し、解説した仇兆鰲の《杜詩詳注》に従い、改めて進めていく。

杜甫の詩、全詩、約1500首。それをきちんと整理したのが、清、仇兆鰲注解 杜詩詳注である。その後今日に至るまで、すべてこの杜詩詳注に基づいて書かれている。筆者も足掛け四年癌と戦い、いったんこれを征することができた。思えば奇跡が何度も起きた。
このブログで、1200首以上掲載したけれど、ブログ開始時は不慣れで誤字脱字も多く、そして、ブログの統一性も不十分である。また、訳注解説にも、手抜き感、不十分さもあり、心機一転、杜詩詳注に完全忠実に初めからやり直すことにした。
・そして、全唐詩と連携して、どちらからでも杜詩の検索ができるようにした。
・杜甫サイトには語順検索、作時編年表からも検索できるようにした。
杜甫詩の4サイト
● http://2019kanbun.turukusa.com/
● http://kanbunkenkyu.webcrow.jp
● http://kanbunkenkyu.web.fc2.com/
● http://kanbuniinka15.yu-nagi.com

送從弟亞赴河西判官

送從弟亞赴河西判官 #3 杜甫 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 185

送從弟亞赴河西判官 #3 杜甫 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 185
いとこの杜亜が河西節度使の判官となって赴任するのを送る詩である。製作時は至徳二載の夏、鳳翔にあって作る。
至徳二載 757年 46歳


送從弟亞赴河西判官
#1
南風作秋聲,殺氣薄炎熾。盛夏鷹隼擊,時危異人至。』
令弟草中來,蒼然請論事。詔書引上殿,奮舌動天意。
兵法五十家,爾腹為篋笥。應對如轉丸,疏通略文字。
經綸皆新語,足以正神器。』#1
#2
宗廟尚為灰,君臣俱下淚。崆峒地無軸,青海天軒輊。
西極最瘡痍,連山暗烽燧。』
帝曰大布衣,藉卿佐元帥。坐看清流沙,所以子奉使。
歸當再前席,適遠非歷試。須存武威郡,為畫長久利。』#2
#3
孤峰石戴驛,快馬金纏轡。
君の通過する幹道では、所によっては単独に山が聳えて、駅路が巌石のうえにのっているようなところがあるのだ、そこを速足の馬が黄金で纏い飾った手綱をくりながら駆ってゆくのである。
黃羊飫不羶,蘆酒多還醉。
途中では臭くない黄羊の肉を十分食べたらよい、そして、いくら蘆酒といっても、たくさん呑めばやっぱり酔うこともあるであろう。
踴躍常人情,慘澹苦士誌。
このたびのように一官にありついて躍り上がって喜ぶのは凡人の情である、志士のこころはかえって苦しいことにあたって惨澹たるものがあるものなのだ。
安邊敵何有,反正計始遂。』
きみが西域の辺地を安寧にすることは請け合いで敵などにはならないものだ、君の子の赴任の旅によって我が天下を正常なものへとってかえすはかりごとの初めの一歩であるから成し遂げるのである。』
吾聞駕鼓車,不合用騏驥。
わたしが聞き及んだところ、太鼓をのせる車などをひかせることであるが、それを騏驥の名馬を用いることはないだろう。
(私が知ってるくらいのことで誰もが知っていることだ、君を河西の判官ぐらいに用いておくというのは騏驥に鼓車をひかせるというものと同じだ。)

龍吟回其頭,夾輔待所致。』
#3
君は龍のように風雲をかき集め、号令一下、頭を西から東へむけかえるのだ、そうすれば鳳翔にある行在所を本来の天子の王宮のある長安王明宮へもどりくることになり、左右の支えとしてお仕えすることになるのだ。


従弟亜が河西判官に赴くを送る
#1
南風秋声を作す、 殺気炎の熾なるに薄る。
盛夏鷹隼撃つ、 時危くして異人至る』
令弟草中より来る、 蒼然事を論ぜんと請う
詔書引いて殿に上らしむ、 舌を奮って天意を動かす
兵法五十家、 繭が腹筐笥為り
応対転丸の如く、 疎通文字を略す
経輪皆新語、 以て神器を正しくするに足れり』
#2
宗廟尚灰と為る、 君臣倶に涙を下す
崆峒地軸無く、 青海天軒輊す
西極最も瘡痍あり 連山烽燧暗し』
帝日く大布衣、 卿に藉りて元帥に佐たらしむと
坐ろに流沙を清むるを看ん、 子が使を奉ずる所以
帰らば当に再び席を前むべし、 遠きに適くは歴試するに非ず。
須らく武威郡を存し、 為めに長久の利を画すべし。』
#3
孤峰 石 駅を戴き、 快馬 金 轡を纏う。
黄羊飫けども羶ならず 蘆酒多ければ還た酔う
踴躍するは常人の情なり、 惨澹たるは苦士の志なり。
辺を安んずる敵何か有らん、 正に反えす計始めて遂げ
ん。』
吾聞く鼓車に駕するには、 騏驥を用う合らずと。
竜吟 其の頭を廻らさん、 爽輔致す所を待つ。』


杜甫図陝西甘粛


送從弟亞赴河西判官 #3  現代語訳と訳註
(本文) #3

孤峰石戴驛,快馬金纏轡。
黃羊飫不羶,蘆酒多還醉。
踴躍常人情,慘澹苦士誌。
安邊敵何有,反正計始遂。』
吾聞駕鼓車,不合用騏驥。
龍吟回其頭,夾輔待所致。』#3


(下し文) #3
孤峰 石 駅を戴き、 快馬 金 轡を纏う。
黄羊飫けども羶ならず 蘆酒多ければ還た酔う
踴躍するは常人の情なり、 惨澹たるは苦士の志なり。
辺を安んずる敵何か有らん、 正に反えす計始めて遂げ
ん。』
吾聞く鼓車に駕するには、 騏驥を用う合らずと。
竜吟 其の頭を廻らさん、 爽輔致す所を待つ。』

(現代語訳)
君の通過する幹道では、所によっては単独に山が聳えて、駅路が巌石のうえにのっているようなところがあるのだ、そこを速足の馬が黄金で纏い飾った手綱をくりながら駆ってゆくのである。
途中では臭くない黄羊の肉を十分食べたらよい、そして、いくら蘆酒といっても、たくさん呑めばやっぱり酔うこともあるであろう。
このたびのように一官にありついて躍り上がって喜ぶのは凡人の情である、志士のこころはかえって苦しいことにあたって惨澹たるものがあるものなのだ。
きみが西域の辺地を安寧にすることは請け合いで敵などにはならないものだ、君の子の赴任の旅によって我が天下を正常なものへとってかえすはかりごとの初めの一歩であるから成し遂げるのである。』
わたしが聞き及んだところ、太鼓をのせる車などをひかせることであるが、それを騏驥の名馬を用いることはないだろう。
(私が知ってるくらいのことで誰もが知っていることだ、君を河西の判官ぐらいに用いておくというのは騏驥に鼓車をひかせるというものと同じだ。)
君は龍のように風雲をかき集め、号令一下、頭を西から東へむけかえるのだ、そうすれば鳳翔にある行在所を本来の天子の王宮のある長安王明宮へもどりくることになり、左右の支えとしてお仕えすることになるのだ。


(訳注)
孤峰石戴驛,快馬金纏轡。
君の通過する幹道では、所によっては単独に山が聳えて、駅路が巌石のうえにのっているようなところがあるのだ、そこを速足の馬が黄金で纏い飾った手綱をくりながら駆ってゆくのである。
孤峰 一つの峰。○石戴駅 駅路が巌石のうえについている。○快馬 あしのはやい鳥。○金纏轡 黄金でたづなの飾りをつける。
 
黃羊飫不羶,蘆酒多還醉。
途中では臭くない黄羊の肉を十分食べたらよい、そして、いくら蘆酒といっても、たくさん呑めばやっぱり酔うこともあるであろう。
黄羊 黄色毛の羊、羊の一種。○ 羶は羊の肉のこと。ヒツジの臭いという意味の字である。○蘆酒 あしのくだで吸ってのむ酒。あまり濃くないが、しかし多くのめば酔うという。蘆酒特曲という酒があるらしい。


踴躍常人情,慘澹苦士誌。
このたびのように一官にありついて躍り上がって喜ぶのは凡人の情である、志士のこころはかえって苦しいことにあたって惨澹たるものがあるものなのだ。
踴躍 このたびの大抜擢によろこんでおどりあがること、官に任ぜられた時の心もちをいう。○常人 ただびと。○惨澹 心を苦しめるさま。○苦士志 心を苦しめる人の志。さかさまに志士の苦み、士は亜をさすもの。


安邊敵何有,反正計始遂。』
きみが西域の辺地を安寧にすることは請け合いで敵などにはならないものだ、君の子の赴任の旅によって我が天下を正常なものへとってかえすはかりごとの初めの一歩であるから成し遂げるのである。』
安辺 西域の辺地、国境を安らかにする。○何有 無きが如くなることをいう。○反正 我が天下を正常なものへとってかえす。粛宗を復び長安に還御させることをさすものをいう。


吾聞駕鼓車,不合用騏驥。
わたしが聞き及んだところ、太鼓をのせる車などをひかせることであるが、それを騏驥の名馬を用いることはないだろう。
(私が知ってるくらいのことで誰もが知っていることだ、君を河西の判官ぐらいに用いておくというのは騏驥に鼓車をひかせるというものと同じだ。)
○駕鼓車 駕は馬を車のかじ棒につなぐこと、鼓車は太鼓をのせる車。鼓車に駕すとは鼓車につけてそれをひかせることをいう。儒教を重んじた後漢の光武帝の建武十三年に異国より名馬を献じたところが、光武は詔してその馬を鼓車に駕せしめたとの事がある。○ 俗語、まさに何々すべし。○麒駿 名馬駿馬。
 
龍吟回其頭,夾輔待所致。』#3
君は龍のように風雲をかき集め、号令一下、頭を西から東へむけかえるのだ、そうすれば鳳翔にある行在所を本来の天子の王宮のある長安王明宮へもどりくることになり、左右の支えとしてお仕えすることになるのだ。
竜吟 河西の地に向かう途中はりゅうでんせつのあるところで杜亜をたとえていう、吟は河西の地で兵を整えて号令をかけること。○廻其頭 河西の西地から都の東方へと頭をめぐらしてもどってくる。叛乱軍を東から攻めたてることは不可能であったのでこういう表現をしている。鳳翔にいる軍だけでは長安の叛乱軍を攻めることは難しかったのだ。○夾輔 「左伝」債公二十六年に「成王ヲ夾輔ス」の語があり、左右からはさんでだくようにしてたすけること。○待作者が亜に対して期待する。○所致 所は天子のいる場所、現在は鳳翔の行在所であるが、これはあくまで仮の朝廷であるもの、長安の王宮に戻らしめることを指すものである。

blogram投票ボタン

毎日それぞれ一首(長詩の場合一部分割掲載)kanbuniinkai紀 頌之の漢詩3ブログ
05rihakushi350

李白詩350首kanbuniinkai紀頌之のブログ

700Toho shi

kanbuniinkai11の頌之漢詩 杜甫詩700首


800tousouSenshu
kanbuniinkai10 頌之の漢詩 唐宋詩人選集 Ⅰ李商隠150首

burogutitl770
http://kanshi100x100.blog.fc2.com/

送從弟亞赴河西判官 #2 杜甫 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 184

送從弟亞赴河西判官 #2 杜甫 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 184
いとこの杜亜が河西節度使の判官となって赴任するのを送る詩である。製作時は至徳二載の夏、鳳翔にあって作る。
至徳二載 757年 46歳


送從弟亞赴河西判官
#1
南風作秋聲,殺氣薄炎熾。盛夏鷹隼擊,時危異人至。』
令弟草中來,蒼然請論事。詔書引上殿,奮舌動天意。
兵法五十家,爾腹為篋笥。應對如轉丸,疏通略文字。
經綸皆新語,足以正神器。』#1
#2
宗廟尚為灰,君臣俱下淚。
今、叛乱軍によって宗廟は焼かれてまだ灰になってしまった、天子の臣下のものはみんなともに涙を流しているのだ。
崆峒地無軸,青海天軒輊。
行在所のある鳳翔はその背後に崆峒の地方があり、その地の生産性を支える軸無く、青海の地方は天さえあがった砂漠のようで行在所の先行きに不安をぬぐえないのである。
西極最瘡痍,連山暗烽燧。』
この西極の地は叛乱軍と野盗・盗賊入り混じって、最も刃傷をうけたものが多いのだ、そのため山々に昼夜とものろし火があがり世情を暗くとざしている。』
帝曰大布衣,藉卿佐元帥。
そういう不安地方に対して天子は君の策論をお聞きになるや、「一平民なる大人物よ、そなたに依頼して元帥の輔佐となることを命ずる。」とおおせられた。
坐看清流沙,所以子奉使。
君が河西の方へ使命を奉じてゆくその地を次第に、徐々に流沙の地方の戦塵を掃い清めてほしいのだ、このことをするため、判官として赴く君をみまもっているのである。
歸當再前席,適遠非歷試。
君が他日こちらへもどって来るときは天子は君の話に集中して座席の前へ身を前のめりになられることは予期されるが、今は君遠くへ赴任することになったのは、一々諸役を経て能力を試験されるのではない突然の大抜擢なのだ。
須存武威郡,為畫長久利。』
#2
君は赴任先の武威郡を朝廷の手に保存しぬくことだ、どうしても我が国家のために永遠の利益をはからねばならないのだ。』

#3
孤峰石戴驛,快馬金纏轡。黃羊飫不羶,蘆酒多還醉。
踴躍常人情,慘澹苦士誌。安邊敵何有,反正計始遂。』
吾聞駕鼓車,不合用騏驥。龍吟回其頭,夾輔待所致。』#3


従弟亜が河西判官に赴くを送る
#1
南風秋声を作す、 殺気炎の熾なるに薄る。
盛夏鷹隼撃つ、 時危くして異人至る』
令弟草中より来る、 蒼然事を論ぜんと請う
詔書引いて殿に上らしむ、 舌を奮って天意を動かす
兵法五十家、 繭が腹筐笥為り
応対転丸の如く、 疎通文字を略す
経輪皆新語、 以て神器を正しくするに足れり』
#2
宗廟尚灰と為る、 君臣倶に涙を下す
崆峒地軸無く、 青海天軒輊す
西極最も瘡痍あり 連山烽燧暗し』
帝日く大布衣、 卿に藉りて元帥に佐たらしむと
坐ろに流沙を清むるを看ん、 子が使を奉ずる所以
帰らば当に再び席を前むべし、 遠きに適くは歴試するに非ず。
須らく武威郡を存し、 為めに長久の利を画すべし。』
#3
孤峰 石 駅を戴き、 快馬 金 轡を纏う。
黄羊飫けども羶ならず 蘆酒多ければ還た酔う
踴躍するは常人の情なり、 惨澹たるは苦士の志なり。
辺を安んずる敵何か有らん、 正に反えす計始めて遂げ
ん。』
吾聞く鼓車に駕するには、 騏驥を用う合らずと。
竜吟 其の頭を廻らさん、 爽輔致す所を待つ。』

鳥居(1)

送從弟亞赴河西判官 #2 現代語訳と訳註
(本文) #2

宗廟尚為灰,君臣俱下淚。
崆峒地無軸,青海天軒輊。
西極最瘡痍,連山暗烽燧。』
帝曰大布衣,藉卿佐元帥。
坐看清流沙,所以子奉使。
歸當再前席,適遠非歷試。
須存武威郡,為畫長久利。』


(下し文) #2
宗廟尚灰と為る、 君臣倶に涙を下す
崆峒地軸無く、 青海天軒輊す
西極最も瘡痍あり 連山烽燧暗し』
帝日く大布衣、 卿に藉りて元帥に佐たらしむと
坐ろに流沙を清むるを看ん、 子が使を奉ずる所以
帰らば当に再び席を前むべし、 遠きに適くは歴試するに非ず。
須らく武威郡を存し、 為めに長久の利を画すべし。』


(現代語訳) #2
今、叛乱軍によって宗廟は焼かれてまだ灰になってしまった、天子の臣下のものはみんなともに涙を流しているのだ。
行在所のある鳳翔はその背後に崆峒の地方があり、その地の生産性を支える軸無く、青海の地方は天さえあがった砂漠のようで行在所の先行きに不安をぬぐえないのである。
この西極の地は叛乱軍と野盗・盗賊入り混じって、最も刃傷をうけたものが多いのだ、そのため山々に昼夜とものろし火があがり世情を暗くとざしている。』
そういう不安地方に対して天子は君の策論をお聞きになるや、「一平民なる大人物よ、そなたに依頼して元帥の輔佐となることを命ずる。」とおおせられた。
君が河西の方へ使命を奉じてゆくその地を次第に、徐々に流沙の地方の戦塵を掃い清めてほしいのだ、このことをするため、判官として赴く君をみまもっているのである。
君が他日こちらへもどって来るときは天子は君の話に集中して座席の前へ身を前のめりになられることは予期されるが、今は君遠くへ赴任することになったのは、一々諸役を経て能力を試験されるのではない突然の大抜擢なのだ。
君は赴任先の武威郡を朝廷の手に保存しぬくことだ、どうしても我が国家のために永遠の利益をはからねばならないのだ。』


(訳注) #2
宗廟尚為灰,君臣俱下淚。
今、叛乱軍によって宗廟は焼かれてまだ灰になってしまった、天子の臣下のものはみんなともに涙を流しているのだ。
宗廟 唐の天子の行政殿。○為灰  叛乱軍にやかれたこと。


崆峒地無軸,青海天軒輊。
行在所のある鳳翔はその背後に崆峒の地方があり、その地の生産性を支える軸無く、青海の地方は天さえあがった砂漠のようで行在所の先行きに不安をぬぐえないのである。
崆峒 山名、臨挑(甘粛省鞏昌府岷州にある山の名。(涇水の水源の山。崑崙山、崆峒山、渭水を挟んで左右に聳える山であるが、ともに仙人の居る山。朝廷、皇居を意味するもの。○地無軸 張華の「博物志」に、地下に四柱、三千六百の軸があって互に牽引しあっている。その軸とは柱をささえるためのものとみえる。○青海 甘粛の西、新藩の東部。崆峒、青海はともに河西節度の統べる所。○天軒輊 軒は車の前部が地について後部があがること、輊とは車の後部が地について前部があがること。即ち上下低昂させることをいう、天があがったり、さがったりするとは位置の不安定なことをいう。
 
西極最瘡痍,連山暗烽燧。』
この西極の地は叛乱軍と野盗・盗賊入り混じって、最も刃傷をうけたものが多いのだ、そのため山々に昼夜とものろし火があがり世情を暗くとざしている。』
西極 西方のはて、河西の地をさす。○瘡痍 きりきず。野党盗賊が多くいて、無政府の部分があったことを示す。○烽燧 昼の狼煙を烽、夜のものを燧という。昼も夜も戦いを強いられた。無政府状態の不安定さを示す。


帝曰大布衣,藉卿佐元帥。
そういう不安地方に対して天子は君の策論をお聞きになるや、「一平民なる大人物よ、そなたに依頼して元帥の輔佐となることを命ずる。」とおおせられた。
 粛宗。○大布衣 布衣とは無官のものをいう、大は称讃していう。杜亜をさす。○ 依頼する。○ おまえ、亜をさす。○ 輔佐の役とする、判官となすことをいう。○元帥 軍務の長官、杜鴻漸をさす。


坐看清流沙,所以子奉使。
君が河西の方へ使命を奉じてゆくその地を次第に、徐々に流沙の地方の戦塵を掃い清めてほしいのだ、このことをするため、判官として赴く君をみまもっているのである。
坐看 そぞろに看んとす、そのうちにさようになるであろう。○ 兵塵のけがれをきよめる。○流沙 新疆の東部、羅布啅爾湖の地方、武威の西北にあたる。○所以 わけ。○ 亜をさす。○奉使 天子の使命を奉ずる、判官として赴くことをいう。○ 天子の御居所へかえる。


歸當再前席,適遠非歷試。
君が他日こちらへもどって来るときは天子は君の話に集中して座席の前へ身を前のめりになられることは予期されるが、今は君遠くへ赴任することになったのは、一々諸役を経て能力を試験されるのではない突然の大抜擢なのだ。
再前席 前席は話に夢中になり座席の前方へと体をのりだすこと。漢の文帝のとき、賈誼が長沙の地よりよびかえされ、一夜鬼神のことを論じたときに文帝は「座を前のめり」になったとの故事がある。再とは亜の今回の論事に粛宗が席を前にのりだしためたことを想像していう。賈誼については、賈生 李商隠:紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集 64参照。○適遠 遠地にゆく。判官となり、武威にゆくことをいう。○非歴試 歴試とは舜の故事、いろいろの瓢難の場合を一々へて経験すること。歴試に非らずとは抜擢され、一挙にして此の官に任ぜられたことをいう。



須存武威郡,為畫長久利。』#2
君は赴任先の武威郡を朝廷の手に保存しぬくことだ、どうしても我が国家のために永遠の利益をはからねばならないのだ。』
○存 我が手に保存すること、敵にとられぬようにすることをいう。○為画 国家のためにはかる。○長久利 永遠の利益。

blogram投票ボタン

毎日それぞれ一首(長詩の場合一部分割掲載)kanbuniinkai紀 頌之の漢詩3ブログ
05rihakushi350

李白詩350首kanbuniinkai紀頌之のブログ

700Toho shi

kanbuniinkai11の頌之漢詩 杜甫詩700首


800tousouSenshu
kanbuniinkai10 頌之の漢詩 唐宋詩人選集 Ⅰ李商隠150首


burogutitl770
http://kanshi100x100.blog.fc2.com/

送從弟亞赴河西判官 #1 杜甫 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 183

送從弟亞赴河西判官 #1 杜甫 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 183いとこの杜亜が河西節度使の判官となって赴任するのを送る詩である。製作時は至徳二載の夏、鳳翔にあって作る。
至徳二載 757年 46歳


送從弟亞赴河西判官
年若いいとこの杜亞が河西の判官に赴くの歌
#1
南風作秋聲,殺氣薄炎熾。
南から吹く夏の風が秋風の音をたてだした、まだまだ炎熱さかんである所へ万物を殺伐とさせる殺気がせまって来た。
盛夏鷹隼擊,時危異人至。』
そうして真夏であるのに鷹や隼が他の獲物を攻撃するかのようなものである、このとき、この国は危急の時を迎えており、非凡な人物を待望していたところ君がやって来たのだ。』
令弟草中來,蒼然請論事。
おまえは叛乱軍の制圧下の中をうちをくぐって来た、あわただし中で論理整然として国事を論じたいと願いでた。
詔書引上殿,奮舌動天意。
その願は許されて、詔書によりひきあげられ、天子の御殿へのぼることができた、おまえは熱心に弁舌をふるって天子の御意を感動させたのだ。
兵法五十家,爾腹為篋笥。
古来兵法を説いたものが五十家もあるが、おまえの腹はその兵法をいれておく箪笥の函みたいなものである。
應對如轉丸,疏通略文字。
君が天子の問いかけに答えるさまは、まるで丸玉をころがす様にすらすらとしていた、そして文字上の事などは省略して、諸説の意を互に関連付けてよくわかる様にのべていた。
經綸皆新語,足以正神器。』#1

このようにして君の述べた軍務の大方針はすべて兵法を租借した新説であり、これならば不正義がなされている天下を正道に戻す十分なものであるといえるもののだ。』
#2
宗廟尚為灰,君臣俱下淚。崆峒地無軸,青海天軒輊。
西極最瘡痍,連山暗烽燧。』
帝曰大布衣,藉卿佐元帥。坐看清流沙,所以子奉使。
歸當再前席,適遠非歷試。須存武威郡,為畫長久利。』#2
#3
孤峰石戴驛,快馬金纏轡。黃羊飫不羶,蘆酒多還醉。
踴躍常人情,慘澹苦士誌。安邊敵何有,反正計始遂。』
吾聞駕鼓車,不合用騏驥。龍吟回其頭,夾輔待所致。』#3


従弟亜が河西判官に赴くを送る
#1
南風秋声を作す、 殺気炎の熾なるに薄る。
盛夏鷹隼撃つ、 時危くして異人至る』
令弟草中より来る、 蒼然事を論ぜんと請う
詔書引いて殿に上らしむ、 舌を奮って天意を動かす
兵法五十家、 繭が腹筐笥為り
応対転丸の如く、 疎通文字を略す
経輪皆新語、 以て神器を正しくするに足れり』

#2
宗廟尚灰と為る、 君臣倶に涙を下す
崆峒地軸無く、 青海天軒輊す
西極最も瘡痍あり 連山烽燧暗し』
帝日く大布衣、 卿に藉りて元帥に佐たらしむと
坐ろに流沙を清むるを看ん、 子が使を奉ずる所以
帰らば当に再び席を前むべし、 遠きに適くは歴試するに非ず。
須らく武威郡を存し、 為めに長久の利を画すべし。』
#3
孤峰 石 駅を戴き、 快馬 金 轡を纏う。
黄羊飫けども羶ならず 蘆酒多ければ還た酔う
踴躍するは常人の情なり、 惨澹たるは苦士の志なり。
辺を安んずる敵何か有らん、 正に反えす計始めて遂げ
ん。』
吾聞く鼓車に駕するには、 騏驥を用う合らずと。
竜吟 其の頭を廻らさん、 爽輔致す所を待つ。』


 現代語訳と訳註
(本文) #1

南風作秋聲,殺氣薄炎熾。
盛夏鷹隼擊,時危異人至。』
令弟草中來,蒼然請論事。
詔書引上殿,奮舌動天意。
兵法五十家,爾腹為篋笥。
應對如轉丸,疏通略文字。
經綸皆新語,足以正神器。』#1


(下し文) #1
南風秋声を作す、 殺気炎の熾なるに薄る。
盛夏鷹隼撃つ、 時危くして異人至る』
令弟草中より来る、 蒼然事を論ぜんと請う
詔書引いて殿に上らしむ、 舌を奮って天意を動かす
兵法五十家、 繭が腹筐笥為り
応対転丸の如く、 疎通文字を略す
経輪皆新語、 以て神器を正しくするに足れり』


(現代語訳)
年若いいとこの杜亞が河西の判官に赴くの歌
南から吹く夏の風が秋風の音をたてだした、まだまだ炎熱さかんである所へ万物を殺伐とさせる殺気がせまって来た。
そうして真夏であるのに鷹や隼が他の獲物を攻撃するかのようなものである、このとき、この国は危急の時を迎えており、非凡な人物を待望していたところ君がやって来たのだ。』
おまえは叛乱軍の制圧下の中をうちをくぐって来た、あわただし中で論理整然として国事を論じたいと願いでた。
その願は許されて、詔書によりひきあげられ、天子の御殿へのぼることができた、おまえは熱心に弁舌をふるって天子の御意を感動させたのだ。
古来兵法を説いたものが五十家もあるが、おまえの腹はその兵法をいれておく箪笥の函みたいなものである。
君が天子の問いかけに答えるさまは、まるで丸玉をころがす様にすらすらとしていた、そして文字上の事などは省略して、諸説の意を互に関連付けてよくわかる様にのべていた。
このようにして君の述べた軍務の大方針はすべて兵法を租借した新説であり、これならば不正義がなされている天下を正道に戻す十分なものであるといえるもののだ。』

hinode0200

(訳注)
送從弟亞赴河西判官
 (従弟亜が河西判官に赴くを送る)
年若いいとこの杜亞が河西の判官に赴くの歌
○従弟 年齢が下のいとこ。○亜 杜亜をいう。杜亜字は次公、自分を京兆の人という。幼くして学に渉り、善く物の理及び歴代の成敗の事を言う。粛宗が霊武に在るとき、上書して時政を論じ、校書郎に抜擢された。其の年、杜鴻漸が河西に節度となるや、杜亜を召して従事となした。しきりに評事・御史を授けられ、東都留守に終った。○河西判官 河西節度使杜鴻漸の属官。河西節度使は甘粛省涼州府武威県にあった。


南風作秋聲,殺氣薄炎熾。(南風秋声を作す、 殺気炎の熾なるに薄る。
南から吹く夏の風が秋風の音をたてだした、まだまだ炎熱さかんである所へ万物を殺伐とさせる殺気がせまって来た。
南風南方より吹く風、夏の風をいう。○秋声秋かぜのおと。○殺気殺伐の気、物の生気を奪わんとする気。○炎俄 炎熱の気のさかんなこと。


盛夏鷹隼擊,時危異人至。』(盛夏鷹隼撃つ、 時危くして異人至る』
そうして真夏であるのに鷹や隼が他の獲物を攻撃するかのようなものである、このとき、この国は危急の時を迎えており、非凡な人物を待望していたところ君がやって来たのだ。』
盛夏 まなつ。○鷹隼撃 たか、はやぶさが他の禽鳥にむかって攻撃することをいう。ここまでの三句は夏から秋への時候の変りと鷹隼を以て杜亜に比喩する。○異人 非凡な人物。○ 鳳翔へやって来たこと。


令弟草中來,蒼然請論事。(令弟草中より来る、 蒼然事を論ぜんと請う
君は叛乱軍の制圧下の中をうちをくぐって来た、あわただし中で論理整然として国事を論じたいと願いでた。
令弟 よき弟、亜をさして優しくいう。○草中來 草野の間、叛乱軍の制圧下の中をうちをくぐって来たことをいう。○蒼然 蒼卒、蒼皇の意という。蒼は倉の仮借字、あわただしい中で論理整然としたさま。○論事 事は国事。


詔書引上殿,奮舌動天意。(詔書引いて殿に上らしむ、 舌を奮って天意を動かす
その願は許されて、詔書によりひきあげられ、天子の御殿へのぼることができた、君は熱心に弁舌をふるって天子の御意を感動させたのだ。
 みちびく。○奮舌 熱心に弁舌をふるう。○天意 天子(粛宗)のこころ。


兵法五十家,爾腹為篋笥。(兵法五十家、 繭が腹筐笥為り
古来兵法を説いたものが五十家もあるが、君の腹はその兵法をいれておく箪笥の函みたいなものである。
五十家 「漢書」の芸文志に凡そ兵家の書五十三家を列する。○ 亜をさす。○篋笥 箪笥のはこ。○応対 天子の問いかけに応じ答える。
 
應對如轉丸,疏通略文字。(応対転丸の如く、 疎通文字を略す
君が天子の問いかけに答えるさまは、まるで丸玉をころがす様にすらすらとしていた、そして文字上の事などは省略して、諸説の意を互に関連付けてよくわかる様にのべていた。
転丸たまをころがす如くすらすらと滞りないこと。○疎通甲乙間の論旨をよくとおらせること。○略文字文字のことははぷいでいわぬ。


經綸皆新語,足以正神器。』(経輪皆新語、 以て神器を正しくするに足れり』#1
このようにして君の述べた軍務の大方針はすべて兵法を租借した新説であり、これならば不正義がなされている天下を正道に戻す十分なものであるといえるもののだ。』
經綸 軍務の大方針をたてること。○新語 これまで人の言わぬことば、新説をいう。故事来歴を述べるだけでなく、それを租借し、自説として述べることをいう。○正神器 神器は天下をいう。天下はいまぞく叛乱軍に奪われているがこれは不正である。正とは正当な事、唐の天子にかえすことをいう。


blogram投票ボタン

毎日それぞれ一首(長詩の場合一部分割掲載)kanbuniinkai紀 頌之の漢詩3ブログ
05rihakushi350

李白詩350首kanbuniinkai紀頌之のブログ

700Toho shi

kanbuniinkai11の頌之漢詩 杜甫詩700首


800tousouSenshu
kanbuniinkai10 頌之の漢詩 唐宋詩人選集 Ⅰ李商隠150首



burogutitl770
http://kanshi100x100.blog.fc2.com/

プロフィール

紀 頌之

Twitter プロフィール
記事検索
最新記事(画像付)
最新記事
記事検索
カテゴリ別アーカイブ
タグクラウド
QRコード
QRコード
記事検索
  • ライブドアブログ