杜甫詳注 杜詩の訳注解説 漢文委員会

士族の子で、のほほんとしていた杜甫を変えたのは、三十代李白にあって、強いカルチャーショックを受けたことである。その後十年、就活に励んだ。同時に極限に近い貧困になり、家族を妻の実家に送り届けるときの詩は、そして、子供の死は、杜甫の詩を格段に向上させた。安史の乱直前から、捕縛され、長安での軟禁は、詩にすごみと分かりやすさのすぐれたしにかえてゆき、長安を脱出し、鳳翔の行在所にたどり着き、朝廷に仕えたことは、人間関係の複雑さを体験して、詩に深みが出ることになった。そして、朝廷における疎外感は詩人として数段高めさせてくれた。特に、杜甫の先生に当たる房琯関連の出来事、二十数首の詩は内容のあるものである。  一年朝廷で死に直面し、そして、疎外され、人間的にも成長し、これ以降の詩は多くの人に読まれる。  ◍  華州、秦州、同谷  ◍  成都 春満喫  ◍  蜀州、巴州、転々。 ◍  再び成都 幕府に。 それから、かねてから江陵にむかい、暖かいところで養生して、長安、朝廷に上がるため、蜀を発し、 ◍  忠州、雲州   ◍  夔州   ◍  公安  そして、長安に向かうことなく船上で逝くのである。  本ブログは、上記を完璧に整理し、解説した仇兆鰲の《杜詩詳注》に従い、改めて進めていく。

杜甫の詩、全詩、約1500首。それをきちんと整理したのが、清、仇兆鰲注解 杜詩詳注である。その後今日に至るまで、すべてこの杜詩詳注に基づいて書かれている。筆者も足掛け四年癌と戦い、いったんこれを征することができた。思えば奇跡が何度も起きた。
このブログで、1200首以上掲載したけれど、ブログ開始時は不慣れで誤字脱字も多く、そして、ブログの統一性も不十分である。また、訳注解説にも、手抜き感、不十分さもあり、心機一転、杜詩詳注に完全忠実に初めからやり直すことにした。
・そして、全唐詩と連携して、どちらからでも杜詩の検索ができるようにした。
・杜甫サイトには語順検索、作時編年表からも検索できるようにした。
杜甫詩の4サイト
● http://2019kanbun.turukusa.com/
● http://kanbunkenkyu.webcrow.jp
● http://kanbunkenkyu.web.fc2.com/
● http://kanbuniinka15.yu-nagi.com

送樊二十三侍禦赴漢中判官

送樊二十三侍禦赴漢中判官 #4 杜甫 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 176

送樊二十三侍禦赴漢中判官 #4 杜甫 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 176
(樊二十三侍禦が漢中判官に赴くを送る)
侍御史の官である樊某が漢中王の判官となって任に赴くのを送る詩。製作時は757年至徳二載の初め、鳳翔の行在所に赴いたころの作。
(4回目)


#4
廻風吹獨樹,白日照執袂。
君に別れようとすれば、路傍の一本木を吹きまわしの風が枝を鳴らして吹いてくる、真昼の太陽が別れを惜しんで袖袂をつかまえる手に照らしてくれる。
慟哭蒼煙根,山門萬重閉。
わたしは蒼煙がただよう樹根にむかって慟哭した、周囲には閉ざされた門のような山々がいくえにも立っているのだ。
居人莽牢落,遊子封迢遞。
この居残る自分は茫漠としているけれど地方官を頑張れば中央政府で高官になれるよ。(私のように中央にいるだけでは出世はしないのだ。)旅人たる君はこの上り坂のように役人としての坂を上っていくのだ。
徘徊悲生離,局促老一世。』
自分は辺りをさまよいながら君との生きわかれを悲しくおもい、この局面をどう促進していくかということと老いゆくこの残りの人生をどう生きていくのか思うのである。
陶唐歌遺民,後漢更列帝。
陶唐の歌は永く遺民に歌われて忘れらるることないのだ、後漢は光武帝の以後幾人か代々と天子が受け継がれたように、この唐王朝もその様に遺民はその徳をしたい、その君は幾代もつづいてくれることであろう。
恨無匡複姿,聊欲從此逝。』

ただこれまで天子の過失を正し、王朝、朝廷を回復させるものはいなかったのが悔やまれる、このまま回復できないものなら今からここをたち去って山林へゆこうとおもうのである。


廻風(かいふう) 独樹を吹く、白日 執袂(しっぺい)を照らす。
慟哭(どうこく)す 蒼煙(そうえん)の根、 山門 万重(ばんちょう) 閉ず。
居人 莽(もう)として 牢落たり、 遊子 方(まさ)に 迢遞(ちょうてい)たり。
徘徊(はいかい) 生離(せいり)を悲しむ、 局促(きょくそく) 一世に老ゆ。』
陶唐(とうとう) 遺民(いみん)に歌わる 後漢列帝(れつてい)を更(こ)う。
匡複(きょうふく)の資(し) 恨む無し、 聊(いささ)か此(これ)従り逝(ゆ)かんと欲す。』

送樊二十三侍禦赴漢中判官 現代語訳と訳註
(本文) #4

廻風吹獨樹,白日照執袂。
慟哭蒼煙根,山門萬重閉。
居人莽牢落,遊子封迢遞。
徘徊悲生離,局促老一世。』
陶唐歌遺民,後漢更列帝。
恨無匡複姿,聊欲從此逝。』


(下し文) #4
廻風(かいふう) 独樹を吹く、白日 執袂(しっぺい)を照らす。
慟哭(どうこく)す 蒼煙(そうえん)の根、 山門 万重(ばんちょう) 閉ず。
居人 莽(もう)として 牢落たり、 遊子 方(まさ)に 迢遞(ちょうてい)たり。
徘徊(はいかい) 生離(せいり)を悲しむ、 局促(きょくそく) 一世に老ゆ。』
陶唐(とうとう) 遺民(いみん)に歌わる 後漢列帝(れつてい)を更(こ)う。
匡複(きょうふく)の資(し) 恨む無し、 聊(いささ)か此(これ)従り逝(ゆ)かんと欲す。』


(現代語訳) #4
君に別れようとすれば、路傍の一本木を吹きまわしの風が枝を鳴らして吹いてくる、真昼の太陽が別れを惜しんで袖袂をつかまえる手に照らしてくれる。
わたしは蒼煙がただよう樹根にむかって慟哭した、周囲には閉ざされた門のような山々がいくえにも立っているのだ。
この居残る自分は茫漠としているけれど地方官を頑張れば中央政府で高官になれるよ。(私のように中央にいるだけでは出世はしないのだ。)旅人たる君はこの上り坂のように役人としての坂を上っていくのだ。
自分は辺りをさまよいながら君との生きわかれを悲しくおもい、この局面をどう促進していくかということと老いゆくこの残りの人生をどう生きていくのか思うのである。
陶唐の歌は永く遺民に歌われて忘れらるることないのだ、後漢は光武帝の以後幾人か代々と天子が受け継がれたように、この唐王朝もその様に遺民はその徳をしたい、その君は幾代もつづいてくれることであろう。
ただこれまで天子の過失を正し、王朝、朝廷を回復させるものはいなかったのが悔やまれる、このまま回復できないものなら今からここをたち去って山林へゆこうとおもうのである。


(訳注) #4
廻風吹獨樹,白日照執袂。

君に別れようとすれば、路傍の一本木を吹きまわしの風が枝を鳴らして吹いてくる、真昼の太陽が別れを惜しんで袖袂をつかまえる手に照らしてくれる。
○廻風 ふきまわす風。○獨樹 一本の大木、これはたまたま別処にあったものを写す。○照執袂 執袂とは別れを惜しんであいての袖袂をつかまえること、そのうえに太陽がてりかかる。


慟哭蒼煙根,山門萬重閉。
わたしは蒼煙がただよう樹根にむかって慟哭した、周囲には閉ざされた門のような山々がいくえにも立っているのだ。
蒼煙根   根とは上の独樹の根であり、そのうえに青煙がよこたわる。○山門 門の如く立っている山峰。〇万重 いくえにも。


居人莽牢落,遊子封迢遞。
この居残る自分は茫漠としているけれど地方官を頑張れば中央政府で高官になれるよ。(私のように中央にいるだけでは出世はしないのだ。)旅人たる君はこの上り坂のように役人としての坂を上っていくのだ。
居人 此の句は自分のことをいっている。居人はここに居残る人。○ 茫漠としてたよりないさま。○牢落 おちぶれるさまをいうのだが、杜甫が落ちぶれているというのではない。唐の制度は地方官として良い官僚としての実績を重ねないと高官にはなれないということが前提にある。相手が昇っていくことを強調するための謙遜の語。○遊子 これから青雲に向かって旅ゆく人のことを言う。ここでは樊をさす。○迢遞 高低があって且つはるかなさま。鳳翔から太白山の横の峠に向かい漢水を目指すので山道を登ったものと思われる。


徘徊悲生離,局促老一世。
自分は辺りをさまよいながら君との生きわかれを悲しくおもい、この局面をどう促進していくかということと老いゆくこの残りの人生をどう生きていくのか思うのである。
徘徊 さまよう。○悲生離 此の句も樊との生別をかなしむ自分のことをいっている。○局促 杜甫自身のこの局面をどう促進していくかということ。○老一世 老いゆくこの残りの人生。


陶唐歌遺民,後漢更列帝。
陶唐の歌は永く遺民に歌われて忘れらるることないのだ、後漢は光武帝の以後幾人か代々と天子が受け継がれたように、この唐王朝もその様に遺民はその徳をしたい、その君は幾代もつづいてくれることであろう。
陶唐 陶は山々が連なっていることであり唐王朝が幾久しく続いていくことを歌った歌の題名である。第二代皇帝太宗の時期から唄われたとされる。昔時唐民が陶唐の歌を謳歌したごとくに、今の唐民は唐を思うことをいうのである。○後漢更列帝 更二列帝 代々の帝がつぎつぎにかわったことをいう。これは代わったことをいうのが主ではなく、光武帝の中興があってその後永く続いたことをいうのであり、唐も亦た大宗によってきずかれたように粛宗の中興が以後あるであろうというのである。


恨無匡複姿,聊欲從此逝。
ただこれまで天子の過失を正し、王朝、朝廷を回復させるものはいなかったのが悔やまれる、このまま回復できないものなら今からここをたち去って山林へゆこうとおもうのである。
匡複姿 君の過失を正し、王室を回復するの資質。○従此逝 逝とは去ること、ここを去って山林中に向かって往き隠れること、此よりとは今よりということ。この句もここを去ることが言いたいわけでなく、ここに留まって、王朝を回復させたことを強調するための反語である。
 

送樊二十三侍禦赴漢中判官

#1
威弧不能弦,自爾無寧歲。川穀血橫流,豺狼沸相噬。』
天子從北來,長驅振凋敞。頓兵岐梁下,卻跨沙漠裔。
二京陷未收,四極我得製。蕭索漢水清,緬通淮湖稅。』
#2
使者紛星散,王綱尚旒綴。南伯從事賢,君行立談際。
坐知七曜歷,手畫三軍勢。冰雪淨聰明,雷霆走精銳。』
#3
幕府輟諫官,朝廷無此例。至尊方旰食,仗爾布嘉惠。
補闕暮徵入,柱史晨徵憩。正當艱難時,實藉長久計。』
#4
廻風吹獨樹,白日照執袂。慟哭蒼煙根,山門萬重閉。
居人莽牢落,遊子封迢遞。徘徊悲生離,局促老一世。』
陶唐歌遺民,後漢更列帝。恨無匡複姿,聊欲從此逝。』

威弧(いこ) 弦する能(あた)わず、 爾(しか)りし自(よ)り寧歳(ねいさい)無し。
川谷(せんこく )血横(けつおう) 流す 豺狼(さいろう) 沸(ふつ)として 相 噬(か)む。』
天子 北従り来り、 長駆(ちょうく) 凋敞(ちょうへい)を振(すく)う。
兵を頓す 岐梁(きりょう)の下、 卻って沙漠(さばく)の裔(えい)に跨(またが)る。
二京 陥(おちい)りて 未だ収めざるも 四極(しきょく)我 製するを得。
蕭索(しょうさく) 漢水 清し 緬(はるか)に准湖(わいこ)の税を通ず。』
使者紛としで星散す、王綱(おうこう)尚旒綴(りゅうてい)す。
南伯(なんぱく)従事賢なり、君行きて立談の際。
坐(そぞ)ろに知る七曜暦 手(てずか)ら画す三軍の勢。
泳雪(ひょうせつ)聡明(そうめい)浄(きよ)く、雷霆(らいてい) 精鋭(せいえい)走る。』
幕府 諌官(かんかん)を輟(綴つづる) 朝廷 此の例無し。
至尊(しそん)方(まさ)に旰食(かんしょく)す 爾(なんじ)に仗(よ)って嘉恵(かけい)を布(し)く。
補闕(ほけつ)暮に徴(め)し入る 柱史(ちゅうし)晨(あした)に征(ゆ)かんとして憩(けい)す。
正に艱難(かんなん)の時に当る 実に長久(ちょうきゅう)の計に藉(よ)る』
廻風(かいふう) 独樹を吹く、白日 執袂(しっぺい)を照らす。
慟哭(どうこく)す 蒼煙(そうえん)の根、 山門 万重(ばんちょう) 閉ず。
居人 莽(もう)として 牢落たり、 遊子 方(まさ)に 迢遞(ちょうてい)たり。
徘徊(はいかい) 生離(せいり)を悲しむ、 局促(きょくそく) 一世に老ゆ。』
陶唐(とうとう) 遺民(いみん)に歌わる 後漢列帝(れつてい)を更(こ)う。
匡複(きょうふく)の資(し) 恨む無し、 聊(いささ)か此(これ)従り逝(ゆ)かんと欲す。』


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送樊二十三侍禦赴漢中判官 #3 杜甫 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 175

送樊二十三侍禦赴漢中判官 #3 杜甫 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 175
(樊二十三侍禦が漢中判官に赴くを送る)
侍御史の官である樊某が漢中王の判官となって任に赴くのを送る詩。製作時は757年至徳二載の初め、鳳翔の行在所に赴いたころの作。(3回目)

送樊二十三侍禦赴漢中判官 #1 杜甫 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 173
送樊二十三侍禦赴漢中判官 #2 杜甫 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 174


#2
使者紛星散,王綱尚旒綴。南伯從事賢,君行立談際。
坐知七曜歷,手畫三軍勢。冰雪淨聰明,雷霆走精銳。』
#3
幕府輟諫官,朝廷無此例。
地方の幕府でありながら諌官の職にあった人をつなぎつけておくという事は朝廷にこれまで先例の無いことで、君の場合に始めて之をみるのである。
至尊方旰食,仗爾布嘉惠。
今軍務多忙で陛下は朝日があがりきって食を取ることなされるという始末で、君が腕の振ることによって人民に対し適切なめぐみ、施政をしいてほしいのだ。
補闕暮徵入,柱史晨徵憩。
やっと夕方に補闕の官として君を徵入されたのに、晨にはその柱史(侍御史)となってまた旅立ちの路に就こうとしている旅の合間に少しは路傍に休憩を取ることを忘れるな。
正當艱難時,實藉長久計。』

いまはまさに国家艱難の時にぶっつかっているのだ。之を救うには実に経済上の供給をうまくやるという長久の計によらねばならないのである。』
#4
廻風吹獨樹,白日照執袂。慟哭蒼煙根,山門萬重閉。
居人莽牢落,遊子封迢遞。徘徊悲生離,局促老一世。
陶唐歌遺民,後漢更列帝。恨無匡複姿,聊欲從此逝。』

#2
使者紛としで星散す、王綱(おうこう)尚旒綴(りゅうてい)す。
南伯(なんぱく)従事賢なり、君行きて立談の際。
坐(そぞ)ろに知る七曜暦 手(てずか)ら画す三軍の勢。
泳雪(ひょうせつ)聡明(そうめい)浄(きよ)く、雷霆(らいてい) 精鋭(せいえい)走る。』
#3
幕府 諌官(かんかん)を輟(綴つづる) 朝廷 此の例無し。
至尊(しそん)方(まさ)に旰食(かんしょく)す 爾(なんじ)に仗(よ)って嘉恵(かけい)を布(し)く。
補闕(ほけつ)暮に徴(め)し入る 柱史(ちゅうし)晨(あした)に征(ゆ)かんとして憩(けい)す。
正に艱難(かんなん)の時に当る 実に長久(ちょうきゅう)の計に藉(よ)る』

#4
廻風(かいふう) 独樹を吹く、白日 執袂(しっぺい)を照らす。
慟哭(どうこく)す 蒼煙(そうえん)の根、 山門 万重(ばんちょう) 閉ず。
居人 莽(もう)として 牢落たり、 遊子 方(まさ)に 迢遞(ちょうてい)たり。
徘徊(はいかい) 生離(せいり)を悲しむ、 局促(きょくそく) 一世に老ゆ。』
陶唐(とうとう) 遺民(いみん)に歌わる 後漢列帝(れつてい)を更(こ)う。
匡複(きょうふく)の資(し) 恨む無し、 聊(いささ)か此(これ)従り逝(ゆ)かんと欲す。』




送樊二十三侍禦赴漢中判官#3 現代語訳と訳註
(本文)
#3
幕府輟諫官,朝廷無此例。
至尊方旰食,仗爾布嘉惠。
補闕暮徵入,柱史晨徵憩。
正當艱難時,實藉長久計。』

(下し文) #3
幕府 諌官(かんかん)を輟(綴つづる) 朝廷 此の例無し。
至尊(しそん)方(まさ)に旰食(かんしょく)す 爾(なんじ)に仗(よ)って嘉恵(かけい)を布(し)く。
補闕(ほけつ)暮に徴(め)し入る 柱史(ちゅうし)晨(あした)に征(ゆ)かんとして憩(けい)す。
正に艱難(かんなん)の時に当る 実に長久(ちょうきゅう)の計に藉(よ)る』


(現代語訳)
地方の幕府でありながら諌官の職にあった人をつなぎつけておくという事は朝廷にこれまで先例の無いことで、君の場合に始めて之をみるのである。
今軍務多忙で陛下は朝日があがりきって食を取ることなされるという始末で、君が腕の振ることによって人民に対し適切なめぐみ、施政をしいてほしいのだ。
やっと夕方に補闕の官として君を徵入されたのに、晨にはその柱史(侍御史)となってまた旅立ちの路に就こうとしている旅の合間に少しは路傍に休憩を取ることを忘れるな。
いまはまさに国家艱難の時にぶっつかっているのだ。之を救うには実に経済上の供給をうまくやるという長久の計によらねばならないのである。』



(訳注)
幕府輟諫官,朝廷無此例。
地方の幕府でありながら諌官の職にあった人をつなぎつけておくという事は朝廷にこれまで先例の無いことで、君の場合に始めて之をみるのである。
幕府 漢中王の府をいう。○輟諫官 諌官は侍御史の計をいう、諌官を綴るとは、諌官たる身分の人をそこへつなぎつけておくことをいう。樊は朝廷の侍御史であったために王の幕府へ判官として赴任したのである。○此例 さような先例。地方幕府を色分けし、跎地方の幕府への牽制を兼ねたものであった。


至尊方旰食,仗爾布嘉惠。
今軍務多忙で陛下は朝日があがりきって食を取ることなされるという始末で、君が腕の振ることによって人民に対し適切なめぐみ、施政をしいてほしいのだ。
至尊 粛宗。○旰食 朝日があがりきって食を取る、この時王朝軍は劣勢であったため政務、軍務がいそがしかった。○ 汝に同じ、樊をさす。○布嘉恵 人民に対し、適切なめぐみ、施政をしく。


補闕暮徵入,柱史晨徵憩。
やっと夕方に補闕の官として君を徵入されたのに、晨にはその柱史(侍御史)となってまた旅立ちの路に就こうとしている旅の合間に少しは路傍に休憩を取ることを忘れるな。
補闕 欠点を補う。侍御史は諌官にして天子のかけている処を補う職。○徴入 召して朝廷へ入れる。○柱史 侍御史のこと。周の柱下史、或は侍御史が後世の侍御史にあたる。○晨征憩 晨は上の「暮」に対する。征は征行、旅路へでかけようとすること。憩はちょっとやすむこと、これは作者と別れようとするためである。下節の通風吹独樹の句はこの「憩」の字をうけて書かれている。
 
正當艱難時,實藉長久計。』
いまはまさに国家艱難の時にぶっつかっているのだ。之を救うには実に経済上の供給をうまくやるという長久の計によらねばならないのである。』
艱難時 兵乱の時をいう。○長久計 樊が判官となって行在の糧食等の通運を掌るのは一時の計ではなくして未来長久にわたっての計である。


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送樊二十三侍禦赴漢中判官 #2 杜甫 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 174

送樊二十三侍禦赴漢中判官 杜甫 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 174
(樊二十三侍禦が漢中判官に赴くを送る)
侍御史の官である樊某が漢中王の判官となって任に赴くのを送る詩。製作時は757年至徳二載の初め、鳳翔の行在所に赴いたころの作。
(2回目)
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送樊二十三侍禦赴漢中判官
#1
威弧不能弦,自爾無寧歲。川穀血橫流,豺狼沸相噬。』
天子從北來,長驅振凋敞。頓兵岐梁下,卻跨沙漠裔。
二京陷未收,四極我得製。蕭索漢水清,緬通淮湖稅。』
#2
使者紛星散,王綱尚旒綴。
態勢を整えるため、どちら側に付くか決めかねている諸侯粛白や潘鎮に対して、中央朝廷から使者が星を散らすように八方へ遣わされた、帝王の大道、綱紀、敬いの心はなお存在していた遠方、地方のものは王朝、天子に対して旗の纏いのようにつながってはなれずにあったのである。
南伯從事賢,君行立談際。
南方の伯であった漢中王はその部下に賢者が集まっているのであるおる。君はそこへ赴任するのである、そこへいって立ちながらはなしをするときの注意点がある。
坐知七曜歷,手畫三軍勢。
常日頃のこととして心得ておくことは、七星の暦を熟知しておくこと、自分手ずから三軍の形勢を図にかきしめしておくことである。
冰雪淨聰明,雷霆走精銳。』
冰雪の様に浄化され洗練された聡明さがある、三軍の精鋭を雷霆の如く走らせる君であろう。』

#3
幕府輟諫官,朝廷無此例。至尊方旰食,仗爾布嘉惠。
補闕暮徵入,柱史晨徵憩。正當艱難時,實藉長久計。』
#4
廻風吹獨樹,白日照執袂。慟哭蒼煙根,山門萬重閉。
居人莽牢落,遊子封迢遞。徘徊悲生離,局促老一世。
陶唐歌遺民,後漢更列帝。恨無匡複姿,聊欲從此逝。』


威弧(いこ) 弦する能(あた)わず、 爾(しか)りし自(よ)り寧歳(ねいさい)無し。
川谷(せんこく )血横(けつおう) 流す 豺狼(さいろう) 沸(ふつ)として 相 噬(か)む。』
天子 北従り来り、 長駆(ちょうく) 凋敞(ちょうへい)を振(すく)う。
兵を頓す 岐梁(きりょう)の下、 卻って沙漠(さばく)の裔(えい)に跨(またが)る。
二京 陥(おちい)りて 未だ収めざるも 四極(しきょく)我 製するを得。
蕭索(しょうさく) 漢水 清し 緬(はるか)に准湖(わいこ)の税を通ず。』

#2
使者紛としで星散す、王綱(おうこう)尚旒綴(りゅうてい)す。
南伯(なんぱく)従事賢なり、君行きて立談の際。
坐(そぞ)ろに知る七曜暦 手(てずか)ら画す三軍の勢。
泳雪(ひょうせつ)聡明(そうめい)浄(きよ)く、雷霆(らいてい) 精鋭(せいえい)走る。』

#3
幕府 諌官(かんかん)を輟(綴つづる) 朝廷 此の例無し。
至尊(しそん)方(まさ)に旰食(かんしょく)す 爾(なんじ)に仗(よ)って嘉恵(かけい)を布(し)く。
補闕(ほけつ)暮に徴(め)し入る 柱史(ちゅうし)晨(あした)に征(ゆ)かんとして憩(けい)す。
正に艱難(かんなん)の時に当る 実に長久(ちょうきゅう)の計に藉(よ)る。』
#4
廻風(かいふう) 独樹を吹く、白日 執袂(しっぺい)を照らす。
慟哭(どうこく)す 蒼煙(そうえん)の根、 山門 万重(ばんちょう) 閉ず。
居人 莽(もう)として 牢落たり、 遊子 方(まさ)に 迢遞(ちょうてい)たり。
徘徊(はいかい) 生離(せいり)を悲しむ、 局促(きょくそく) 一世に老ゆ。』
陶唐(とうとう) 遺民(いみん)に歌わる 後漢列帝(れつてい)を更(こ)う。
匡複(きょうふく)の資(し) 恨む無し、 聊(いささ)か此(これ)従り逝(ゆ)かんと欲す。』

#1歲、噬/來,敞、裔、製、稅/#2綴、際、勢、銳。』


 現代語訳と訳註
(本文) #2

使者紛星散,王綱尚旒綴。
南伯從事賢,君行立談際。
坐知七曜歷,手畫三軍勢。
冰雪淨聰明,雷霆走精銳。』


(下し文)
使者紛としで星散す、王綱(おうこう)尚旒綴(りゅうてい)す。
南伯(なんぱく)従事賢なり、君行きて立談の際。
坐(そぞ)ろに知る七曜暦 手(てずか)ら画す三軍の勢。
泳雪(ひょうせつ)聡明(そうめい)浄(きよ)く、雷霆(らいてい) 精鋭(せいえい)走る。』


(現代語訳)
態勢を整えるため、どちら側に付くか決めかねている諸侯粛白や潘鎮に対して、中央朝廷から使者が星を散らすように八方へ遣わされた、帝王の大道、綱紀、敬いの心はなお存在していた遠方、地方のものは王朝、天子に対して旗の纏いのようにつながってはなれずにあったのである。
南方の伯であった漢中王はその部下に賢者が集まっているのであるおる。君はそこへ赴任するのである、そこへいって立ちながらはなしをするときの注意点がある。
常日頃のこととして心得ておくことは、七星の暦を熟知しておくこと、自分手ずから三軍の形勢を図にかきしめしておくことである。
冰雪の様に浄化され洗練された聡明さがある、三軍の精鋭を雷霆の如く走らせる君であろう。』


(訳注)#2
使者紛星散,王綱尚旒綴。

態勢を整えるため、どちら側に付くか決めかねている諸侯粛白や潘鎮に対して、中央朝廷から使者が星を散らすように八方へ遣わされた、帝王の大道、綱紀、敬いの心はなお存在していた遠方、地方のものは王朝、天子に対して旗の纏いのようにつながってはなれずにあったのである。
使者 朝廷から派出される使。○紛 みだれるさま。○星散 星の如くちらぼる、八方へ出ること。○王綱 王者の綱紀、帝王の大道をいう。○旒綴 「詩経」の長発の詩に「小球大球ヲ受ケテ、下国ノ綴旒為り。」とみえる。旒綴の綴はつづりつけること、旒は旗のへりにつけであるびらびらをいう、天子は諸侯の国から献ずる小玉大玉を受けてそれらの国々の係属する所となることが旗のびらびらが旗につく如くであるというのである。ここも其の意を用いる。旗の纏の部分。


南伯從事賢,君行立談際。
南方の伯であった漢中王はその部下に賢者が集まっているのであるおる。君はそこへ赴任するのである、そこへいって立ちながらはなしをするときの注意点がある。
南伯 南方の伯、漢中王瑀をさす。文字は「詩経」の崧高の詩の「王申伯二命ジ、是ノ南邦二式タラシム。」に本つくのであろう。○従事 王の属官のものをさす。○君行 君は樊侍御をさす。○立談 たちながら話す、軍兵馬整備、税徴収、事務など忙しい時であるからである。


坐知七曜歷,手畫三軍勢。
常日頃のこととして心得ておくことは、七星の暦を熟知しておくこと、自分手ずから三軍の形勢を図にかきしめしておくことである。
七曜暦 七曜は七星、七星は日月と、歳星(木星)、熒惑(火星)、填星(土星)、太白(金星)、辰星(水星)の五星とをいう。七曜暦はそれ等の星象に関する暦、昔は兵事は星象と関係があると考えられていた。歩兵戦が基本で農耕との兼ね合いで、輸送は船を利用するもので七曜で判断していた。○手画 手で図をかく。〇三軍勢 王朝軍の陣勢。神策軍、龍武軍、羽林軍がそれぞれ上中下、左右中央、地方にあった。


冰雪淨聰明,雷霆走精銳。』
冰雪の様に浄化され洗練された聡明さがある、三軍の精鋭を雷霆の如く走らせる君であろう。』
冰雪 冰雪の如く浄らかとはすっきりとして凝滞なきことをいう。○聡明 樊の耳目のさとくあきらかなこと。○精鋭 軍隊の力のすぐれたものをさす、○雷霆の如く走る 雷の電撃は一瞬で巨木を粉砕する威力のあることをいう。



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送樊二十三侍禦赴漢中判官 #1 杜甫 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 173

送樊二十三侍禦赴漢中判官  #1 杜甫 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 173
(樊二十三侍禦が漢中判官に赴くを送る)四回に分割して掲載。その第一回
侍御史の官である樊某が漢中王の判官となって任に赴くのを送る詩。製作時は757年至徳二載の初め、鳳翔の行在所に赴いたころの作。

送樊二十三侍禦赴漢中判官
樊侍御史の漢中判官に赴くを送る。
#1
威弧不能弦,自爾無寧歲。
我が唐の王朝軍は三十万の兵をもってして十五万の安禄山の叛乱軍に大敗した。これは威力あるべき弓に弦を加えてその威力を発揮させることができなかったのだ、そのときからこのかた安寧なる年は無くなったのである。
川穀血橫流,豺狼沸相噬。』
川や谷にまで剣や矛による地吹雪が横に飛び流れた、豺狼の様な略奪をほしいままにする叛乱軍はお湯の沸き立つようにあちこちに起って人をかむように傍若無人なのである。』
天子從北來,長驅振凋敞。
新たに即位された若き粛宗皇帝は霊武の北地から決起し、鳳翔に行在所とされた、諸侯も遠地を駆けて集結し始めた疲弊した人民の凋敞をお救いになることである。
頓兵岐梁下,卻跨沙漠裔。
岐山・梁山の下なる鳳翔の地方に兵を留め軍事の整備をされている、その間、他方で回紇と連絡をとって遠く沙漢のはてまで足をのばされ、背後を固め援軍としたのだ。
二京陷未收,四極我得製。
幽州、山東から長安・洛陽の二京までは完全に叛乱軍に陥ってまだ王朝軍は手もだせず奪回はできなかった、その地に及ばない四方、周辺とその先まで王朝軍が之を制御し得るようにはなってきた。
蕭索漢水清,緬通淮湖稅。』
自給できない鳳翔にとって、もともとものさびしい漢水は清流の地であった、二京が陥落している状況下では、この漢中の地は期待するはるかな地、准水両湖の地方の租税を通運し得る重要な場所となったのである。』
#2
使者紛星散,王綱尚旒綴。南伯從事賢,君行立談際。
坐知七曜歷,手畫三軍勢。冰雪淨聰明,雷霆走精銳。』
#3
幕府輟諫官,朝廷無此例。至尊方旰食,仗爾布嘉惠。
補闕暮徵入,柱史晨徵憩。正當艱難時,實藉長久計。』
#4
廻風吹獨樹,白日照執袂。慟哭蒼煙根,山門萬重閉。
居人莽牢落,遊子封迢遞。徘徊悲生離,局促老一世。
陶唐歌遺民,後漢更列帝。恨無匡複姿,聊欲從此逝。』


#1
威弧(いこ) 弦する能(あた)わず、 爾(しか)りし自(よ)り寧歳(ねいさい)無し。
川谷(せんこく )血横(けつおう) 流す 豺狼(さいろう) 沸(ふつ)として 相 噬(か)む。』
天子 北従り来り、 長駆(ちょうく) 凋敞(ちょうへい)を振(すく)う。
兵を頓す 岐梁(きりょう)の下、 卻って沙漠(さばく)の裔(えい)に跨(またが)る。
二京 陥(おちい)りて 未だ収めざるも 四極(しきょく)我 製するを得。
蕭索(しょうさく) 漢水 清し 緬(はるか)に准湖(わいこ)の税を通ず。』
#2
使者紛としで星散す、王綱(おうこう)尚旒綴(りゅうてい)す。
南伯(なんぱく)従事賢なり、君行きて立談の際。
坐(そぞ)ろに知る七曜暦 手(てずか)ら画す三軍の勢。
泳雪(ひょうせつ)聡明(そうめい)浄(きよ)く、雷霆(らいてい) 精鋭(せいえい)走る。』
#3
幕府 諌官(かんかん)を輟(綴つづる) 朝廷 此の例無し。
至尊(しそん)方(まさ)に旰食(かんしょく)す 爾(なんじ)に仗(よ)って嘉恵(かけい)を布(し)く。
補闕(ほけつ)暮に徴(め)し入る 柱史(ちゅうし)晨(あした)に征(ゆ)かんとして憩(けい)す。
正に艱難(かんなん)の時に当る 実に長久(ちょうきゅう)の計に藉(よ)る。』
#4
廻風(かいふう) 独樹を吹く、白日 執袂(しっぺい)を照らす。
慟哭(どうこく)す 蒼煙(そうえん)の根、 山門 万重(ばんちょう) 閉ず。
居人 莽(もう)として 牢落たり、 遊子 方(まさ)に 迢遞(ちょうてい)たり。
徘徊(はいかい) 生離(せいり)を悲しむ、 局促(きょくそく) 一世に老ゆ。』
陶唐(とうとう) 遺民(いみん)に歌わる 後漢列帝(れつてい)を更(こ)う。
匡複(きょうふく)の資(し) 恨む無し、 聊(いささ)か此(これ)従り逝(ゆ)かんと欲す。』



歲、噬/來,敞、裔、製、稅/

送樊二十三侍禦赴漢中判官 #1 現代語訳と訳註
(本文)
#1
威弧不能弦,自爾無寧歲。
川穀血橫流,豺狼沸相噬。』
天子從北來,長驅振凋敞。
頓兵岐梁下,卻跨沙漠裔。
二京陷未收,四極我得製。
蕭索漢水清,緬通淮湖稅。』

(下し文)
威弧(いこ) 弦する能(あた)わず、 爾(しか)りし自(よ)り寧歳(ねいさい)無し。
川谷(せんこく )血横(けつおう) 流す 豺狼(さいろう) 沸(ふつ)として 相 噬(か)む。』
天子 北従り来り、 長駆(ちょうく) 凋敞(ちょうへい)を振(すく)う。
兵を頓す 岐梁(きりょう)の下、 卻って沙漠(さばく)の裔(えい)に跨(またが)る。
二京 陥(おちい)りて 未だ収めざるも 四極(しきょく)我 製するを得。
蕭索(しょうさく) 漢水 清し 緬(はるか)に准湖(わいこ)の税を通ず。』

(現代語訳)
樊侍御史の漢中判官に赴くを送る。
我が唐の王朝軍は三十万の兵をもってして十五万の安禄山の叛乱軍に大敗した。これは威力あるべき弓に弦を加えてその威力を発揮させることができなかったのだ、そのときからこのかた安寧なる年は無くなったのである。
川や谷にまで剣や矛による地吹雪が横に飛び流れた、豺狼の様な略奪をほしいままにする叛乱軍はお湯の沸き立つようにあちこちに起って人をかむように傍若無人なのである。』
新たに即位された若き粛宗皇帝は霊武の北地から決起し、鳳翔に行在所とされた、諸侯も遠地を駆けて集結し始めた疲弊した人民の凋敞をお救いになることである。
岐山・梁山の下なる鳳翔の地方に兵を留め軍事の整備をされている、その間、他方で回紇と連絡をとって遠く沙漢のはてまで足をのばされ、背後を固め援軍としたのだ。
幽州、山東から長安・洛陽の二京までは完全に叛乱軍に陥ってまだ王朝軍は手もだせず奪回はできなかった、その地に及ばない四方、周辺とその先まで王朝軍が之を制御し得るようにはなってきた。
自給できない鳳翔にとって、もともとものさびしい漢水は清流のちであった、二京が陥落している状況下では、この漢中の地は期待するはるかな地、准水両湖の地方の租税を通運し得る重要な場所となったのである。』



(訳注)
送樊二十三侍禦赴漢中判官

樊侍御史の漢中判官に赴くを送る。
樊侍禦 樊は姓、名は未詳、侍御は侍御史の官。○漢中判官 漢中は今の陝西省漢中府南部県治、判官は蓋し時の漢中王璃の下において判官となったのである。 


威弧不能弦,自爾無寧歲。
我が唐の王朝軍は三十万の兵をもってして十五万の安禄山の叛乱軍に大敗した。これは威力あるべき弓に弦を加えてその威力を発揮させることができなかったのだ、そのときからこのかた安寧なる年は無くなったのである。
威弧不能弦 威弧とは威力ある弓をいう。弦とはつるをかけること、弓につるをかけなければ弓の用を為さぬ。王朝軍は三十万の兵をもってして十五万の安禄山の叛乱軍に大敗した。この句はその軍事組織が兵力、精神力で勝っていないことを示すものである。〇自爾 そのときから。 ○寧歳 安らかな年。  


川穀血橫流,豺狼沸相噬。
川や谷にまで剣や矛による地吹雪が横に飛び流れた、豺狼の様な略奪をほしいままにする叛乱軍はお湯の沸き立つようにあちこちに起って人をかむように傍若無人なのである。』
血橫 戦死者の血。血吹雪で飛び散ったさま。 ○豺狼 盗賊をいう。 ○ わきたつ。 ○ 人をかむ。 傍若無人なことをする。


天子從北來,長驅振凋敞。
新たに即位された若き粛宗皇帝は霊武の北地から決起し、鳳翔に行在所とされた、諸侯も遠地を駆けて集結し始めた疲弊した人民の凋敞をお救いになることである。
○天子 756年7月移譲を承け即位した粛宗。 ○従北 来北とは霊武をさす、粛宗は初め霊武に即位し、後に叛乱軍の内紛に乗じて鳳翔にやって来た。○長駆  長遠の路をかけて来る。○振凋敞 振は趣、すくうこと。凋敵は民力のしぼみつかれたこと。


頓兵岐梁下,卻跨沙漠裔。
岐山・梁山の下なる鳳翔の地方に兵を留め軍事の整備をされている、その間、他方で回紇と連絡をとって遠く沙漢のはてまで足をのばされ、背後を固め援軍としたのだ。
頓兵 頓は止めることをいう。○岐梁下 岐山・巣山の下、二山は鳳翔境内にある。○卻跨 かえってまたがる、跨とはその方面へまで足をのはすことをいう。○沙漠裔 裔は衣のすそ、遠地をさす。沙漠とは回紇をさす、此の時回紇より援兵を出さんと請うてきた。この時叛乱軍と回紇が連携していたら挟み撃ちで全滅した。異民族に援軍を要請するほかなかったのである。(後に禍根を残すものではあった。)


二京陷未收,四極我得製。
幽州、山東から長安・洛陽の二京までは完全に叛乱軍に陥ってまだ王朝軍は手もだせず奪回はできなかった、その地に及ばない四方、周辺とその先まで王朝軍が之を制御し得るようにはなってきた。
二京 長安・洛陽。○ 官軍の手へとりこむ。〇四極 四方のはての地。○ 朝廷をさす。○ 制御すること。


蕭索漢水清,緬通淮湖稅。』
自給できない鳳翔にとって、もともとものさびしい漢水は清流の地であった、二京が陥落している状況下では、この漢中の地は期待するはるかな地、准水両湖の地方の租税を通運し得る重要な場所となったのである。』
粛索。ものさびしく、ひっそりしているさま。李白『古風五十九首 其十四 李白:Kanbuniinkai紀頌之の漢詩 李白151』「胡關饒風沙、蕭索竟終古。」○漢水 長江の支流漢水。鳳翔とは太白山を挟む地点に南鄭があった。漢中府にある。○通准湖税 准水及び湖南湖北地方の租税を通運させた。756年至徳元載七月、隴西公瑀を漢中王・梁州都督・山南西道采訪防禦使と為し、十月、第五埼は江淮の租庸を以て軽貨を買い、江漢より泝って洋州(漢中府洋県)に至り、漢中王瑀をして陸運して扶風に至らしめて官軍を助けんと請うた、天子はこれに従った。当時漢中は南方の貨物を鳳翔の行在へ運ぶ唯一の要路にあたっていたのである。
この漢中ルートの補給は粛宗にとって生命線であった。

杜甫図陝西甘粛


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