天門から北へ流れていた長江が東へ向きを変えると、舟はやがて江寧(こうねい・江蘇省南京市)の渡津(としん)に着く。江寧郡城は六朝の古都建康(けんこう)の跡である。雅名を金陵(きんりょう)といい、李白はほとんどの詩に「金陵」の雅名を用いている。金陵の渡津は古都の南郊を流れる秦淮河(しんわいか)の河口にあり、長干里(ちょうかんり)と横塘(おうとう)の歓楽地があ。そして酒旗高楼が林立している。
李白 7
金陵酒肆留別
風吹柳花満店香、呉姫圧酒喚客嘗。
風は柳絮(りゅうじょ)を吹き散らし 酒場は香ばしい匂いで満ちる
呉の美女が酒をしぼって客を呼び 味見をさせる
金陵子弟来相送、欲行不行各尽觴。
金陵の若者たちは 集まって別れの宴を開いてくれ
行こうとするが立ち去りがたく 心ゆくまで杯を重ね合う
請君試問東流水、別意与之誰長短。
どうか諸君 東に流れる水に尋ねてくれ
別れのつらさとこの水は どちらが深く長いかと
風は柳絮(りゅうじょ)を吹き散らし 酒場は香ばしい匂いで満ちる
呉の美女が酒をしぼって客を呼び 味見をさせる
金陵の若者たちは 集まって別れの宴を開いてくれ
行こうとするが立ち去りがたく 心ゆくまで杯を重ね合う
どうか諸君 東に流れる水に尋ねてくれ
別れのつらさとこの水は どちらが深く長いかと
李白は秋から翌年の春にかけて、金陵の街で過ごし、地元の知識人や若い詩人たちと交流した。半年近く滞在した後、726年開元十四年、暮春に舟を出し、さらに東へ進む。詩は金陵を立つ時の別れの詩で、呉の美女がいる酒肆(しゅし)に知友が集まり、送別の宴を催してくれる。
韻は、香、送、觴。/嘗、短。
金陵酒肆留別
風吹柳花満店香、呉姫圧酒喚客嘗。
金陵子弟来相送、欲行不行各尽觴。
請君試問東流水、別意与之誰長短
(下し文)
金陵の酒肆にて留別す
風は柳花(りゅうか)を吹きて 満店香(かん)ばし
呉姫(ごき)は酒を圧して 客を喚びて嘗(な)めしむ
金陵の子弟(してい) 来りて相い送り
行かんと欲して行かず 各々觴(さかずき)を尽くす
請う君 試みに問え 東流(とうりゅう)の水に
別意(べつい)と之(これ)と 誰か長短なるやと
李白の詩 連載中 7/12現在 75首
2011・6・30 3000首掲載
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