于南山往北山経湖中瞻眺 謝霊運<37>#1 詩集 416 kanbuniinkai紀 頌之漢詩ブログ1065
(南山より北山に往き湖中の瞻眺を経たり)
謝霊運はその退屈しのぎに、相変わらずあちこちと遊び歩いていたらしい。巫湖の南に南山、北に北山という山があったが、霊運はいつも南山に居住し、常に湖を船で渡っては遵造していた。かつて、南山から北山に行かんとして、船中で眺めた美景を歌ったものに、「南山より北山に往き湖中の瞻眺を経たり」を作っている。これは『文選』の巻二十二の 「遊覧」に選ばれている。
于南山往北山經湖中瞻眺
故郷の会稽の南山の仏教修行館から北山の別荘に行く途中巫湖の中から見上げ眺めた風景。
朝旦發陽崖,景落憩陰峯。
夜が明け朝のうちに南の日向の崖を出発して、夕陽が西におちる頃、北の日蔭の峯に着いて休む。
舍舟眺迥渚,停策倚茂松。
次いで、舟を乗り捨てて陸行すると、遠ざかる方で廻っているなぎさを眺める。そして杖をとどめて茂った松に倚りかかる。
側徑既窈窕,環洲亦玲瓏。
側に寄った狭い小道は遠くうねり曲がり、川水めぐる中洲もまた夕日に明るく輝いている。
俛視喬木杪,仰聆大壑灇。
目を俛せたあと高い木のこずえを見あげ、仰ぎみると大きな谷川の水のそそぐ音がきこえてくる。
石橫水分流,林密蹊絕蹤。』
巌は川の中に横たわって流れを二つに分け、林は密に茂って山道には人の足あともまったく見えない。
解作竟何感,升長皆豐容。
初篁苞綠籜,新蒲含紫茸。
海鷗戲春岸,天雞弄和風。
撫化心無厭,覽物眷彌重。
不惜去人遠,但恨莫與同。
孤遊非情歎,賞廢理誰通?』
(南山より北山に往き湖中の瞻眺を経たり)#1
朝旦【ちょうたん】に陽崖【ようがい】(南山)を発し、景【ひ】落ちて陰峰【いんぽう】(北山)に憩う。
舟を舎てて迥渚【かいしょ】を眺め、策【つえ】を停【とど】めて茂れる松に倚る。
側徑【そくけい】既に窃窕【ようちょう】、環洲も亦た玲瓏【れいろう】なり。
俛して喬木【きょうぼく】の杪【こずえ】を視、仰ぎて大壑の灇【そそ】ぐを聆く。
石は横たわりて水 流れを分かち、林は密にして蹊【みち】は蹤【あと】を絶つ。』
#2
解作【かいさく】は竟に何をか感ぜしむる、升長【しょうちょう】皆な豐容【ぼうよう】たり。
初篁【しょこう】は綠籜【りょくたく】に苞まれ,新蒲は紫茸【しじょう】を含む。
海鴎【かいおう】は春岸に戯れ、天雞【てんけい】は風に和して 弄【もてあそ】ぶ。
化を撫して心 厭【あ】く無く、物を覧て眷【けん】彌【いよい】よ重なる。
惜しまず去る人の遠きを、但だ恨む与【とも】に同【とも】にする莫きを。
孤遊【こゆう】は情の歎ずるに非ず、賞すること廃れば理誰か通ぜん?』
現代語訳と訳註
(本文)
于南山往北山經湖中瞻眺
朝旦發陽崖,景落憩陰峯。
舍舟眺迥渚,停策倚茂松。
側徑既窈窕,環洲亦玲瓏。
俛視喬木杪,仰聆大壑灇。
石橫水分流,林密蹊絕蹤。』
(下し文) (南山より北山に往き湖中の瞻眺を経たり)
朝旦【ちょうたん】に陽崖【ようがい】(南山)を発し、景【ひ】落ちて陰峰【いんぽう】(北山)に憩う。
舟を舎てて迥渚【かいしょ】を眺め、策【つえ】を停【とど】めて茂れる松に倚る。
側徑【そくけい】既に窃窕【ようちょう】、環洲も亦た玲瓏【れいろう】なり。
俛して喬木【きょうぼく】の杪【こずえ】を視、仰ぎて大壑の灇【そそ】ぐを聆く。
石は横たわりて水 流れを分かち、林は密にして蹊【みち】は蹤【あと】を絶つ。』
(現代語訳)
故郷の会稽の南山の仏教修行館から北山の別荘に行く途中巫湖の中から見上げ眺めた風景。
夜が明け朝のうちに南の日向の崖を出発して、夕陽が西におちる頃、北の日蔭の峯に着いて休む。
次いで、舟を乗り捨てて陸行すると、遠ざかる方で廻っているなぎさを眺める。そして杖をとどめて茂った松に倚りかかる。
側に寄った狭い小道は遠くうねり曲がり、川水めぐる中洲もまた夕日に明るく輝いている。
目を俛せたあと高い木のこずえを見あげ、仰ぎみると大きな谷川の水のそそぐ音がきこえてくる。
巌は川の中に横たわって流れを二つに分け、林は密に茂って山道には人の足あともまったく見えない。
(訳注)
于南山往北山經湖中瞻眺
故郷の会稽の南山の仏教修行館から北山の別荘に行く途中巫湖の中から見上げ眺めた風景。
○経湖中階跳 故郷の会稽の巫湖の中から見上げ眺めた風景。湖の南北の山に仏教修行館や謝霊運の居所があり、南山から北山に行く途中の作。紹興中部の山会平原 (山陰―会稽平原) は, もともと沼沢地. であった。現在, 水郷風景が広がっている.会稽の曹娥なる女子は、その父が巫覡であったが、五月五日、(父は)神を迎えるため長江の大波に逆らって溺死した。紹興市東浦鎮。古い景観を残す水郷地帯。
朝旦發陽崖,景落憩陰峯。
夜が明け朝のうちに南の日向の崖を出発して、夕陽が西におちる頃、北の日蔭の峯に着いて休む。
○陽崖 宿の崖。山の南を陽という。
舍舟眺迥渚,停策倚茂松。
次いで、舟を乗り捨てて陸行すると、遠ざかる方で廻っているなぎさを眺める。そして杖をとどめて茂った松に倚りかかる。
○迥渚 曲がったなぎさ。
側徑既窈窕,環洲亦玲瓏。
側に寄った狭い小道は遠くうねり曲がり、川水めぐる中洲もまた夕日に明るく輝いている。
○側径 側に寄った狭い小路。○窈窕 遠くうねり続く。○環洲 水流めぐる中島。・玲瓏 明るく揮く。
俛視喬木杪,仰聆大壑灇。
目を俛せたあと高い木のこずえを見あげ、仰ぎみると大きな谷川の水のそそぐ音がきこえてくる。
○杪 水の音。○聆 聴く。○大壑灇 大きな谷川の水のそそぐ音
石橫水分流,林密蹊絕蹤。』
巌は川の中に横たわって流れを二つに分け、林は密に茂って山道には人の足あともまったく見えない。
○蹤 足あと。