漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之のブログ 女性詩、漢詩・建安六朝・唐詩・李白詩 1000首:李白集校注に基づき時系列に訳注解説

李白の詩を紹介。青年期の放浪時代。朝廷に上がった時期。失意して、再び放浪。李白の安史の乱。再び長江を下る。そして臨終の歌。李白1000という意味は、目安として1000首以上掲載し、その後、系統別、時系列に整理するということ。 古詩、謝霊運、三曹の詩は既掲載済。女性詩。六朝詩。文選、玉臺新詠など、李白詩に影響を与えた六朝詩のおもなものは既掲載している2015.7月から李白を再掲載開始、(掲載約3~4年の予定)。作品の作時期との関係なく掲載漏れの作品も掲載するつもり。李白詩は、時期設定は大まかにとらえる必要があるので、従来の整理と異なる場合もある。現在400首以上、掲載した。今、李白詩全詩訳注掲載中。

▼絶句・律詩など短詩をだけ読んでいたのではその詩人の良さは分からないもの。▼長詩、シリーズを割席しては理解は深まらない。▼漢詩は、諸々の決まりで作られている。日本人が読む漢詩の良さはそういう決まり事ではない中国人の自然に対する、人に対する、生きていくことに対する、愛することに対する理想を述べているのをくみ取ることにあると思う。▼詩人の長詩の中にその詩人の性格、技量が表れる。▼李白詩からよこみちにそれているが、途中で孟浩然を45首程度(掲載済)、謝霊運を80首程度(掲載済み)。そして、女性古詩。六朝、有名な賦、その後、李白詩全詩訳注を約4~5年かけて掲載する予定で整理している。
その後ブログ掲載予定順は、王維、白居易、の順で掲載予定。▼このほか同時に、Ⅲ杜甫詩のブログ3年の予定http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10-tohoshi/、唐宋詩人のブログ(Ⅱ李商隠、韓愈グループ。)も掲載中である。http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10-rihakujoseishi/,Ⅴ晩唐五代宋詞・花間集・玉臺新詠http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10-godaisoui/▼また漢詩理解のためにHPもいくつかサイトがある。≪ kanbuniinkai ≫[検索]で、「漢詩・唐詩」理解を深めるものになっている。
◎漢文委員会のHP http://kanbunkenkyu.web.fc2.com/profile1.html
Author:漢文委員会 紀 頌之です。
大病を患い大手術の結果、半年ぶりに復帰しました。心機一転、ブログを開始します。(11/1)
ずいぶん回復してきました。(12/10)
訪問ありがとうございます。いつもありがとうございます。
リンクはフリーです。報告、承諾は無用です。
ただ、コメント頂いたても、こちらからの返礼対応ができません。というのも、
毎日、6 BLOG,20000字以上活字にしているからです。
漢詩、唐詩は、日本の詩人に大きな影響を残しました。
だからこそ、漢詩をできるだけ正確に、出来るだけ日本人の感覚で、解釈して,紹介しています。
体の続く限り、広げ、深めていきたいと思っています。掲載文について、いまのところ、すべて自由に使ってもらって結構ですが、節度あるものにして下さい。
どうぞよろしくお願いします。

2012年10月

安世房中歌十七首(其10) 唐山夫人 漢詩<132>古詩源 巻二 女性詩569 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1524

 
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安世房中歌十七首(其10) 唐山夫人 漢詩<132>古詩源 巻二 女性詩569 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1524


第三部

都荔遂芳,窅窊桂華。孝奏天儀,若日月光。
乘玄四龍,回馳北行。羽旄殷盛,芬哉芒芒。
孝道隨世,我署文章。
十一
馮馮翼翼,承天之則。吾易久遠,燭明四極。
慈惠所愛,美若休德。杳杳冥冥,克綽永福。
十二
磑磑即即,師象山則。烏呼孝哉,案撫戎國。
蠻夷竭歡,象來致福。兼臨是愛,終無兵革。
十三
嘉薦芳矣,告靈饗矣。告靈既饗,德音孔臧。
惟德之臧,建侯之常。承保天休,令問不忘。
十四
皇皇鴻明,蕩侯休德。嘉承天和,伊樂厥福。
在樂不荒,惟民之則。

十五
浚則師德,下民咸殖。令問在舊,孔容翼翼。



都荔遂芳,窅窊桂華。
天の宮は都良、薜荔の香草が芳香を発している、桂華はよくしげって深遠に見える。
孝奏天儀,若日月光。
ここにてわが孝道を申し上げると、天神はここに降臨し給う。その輝かしさは日月のようにかがやく。
乘玄四龍,回馳北行。
黒い四頭の竜に乗り、あたりを馳せ回り、またかけめぐる。
羽旄殷盛,芬哉芒芒。
お供の人のもつ羽旄の旗は、盛んにして数多いが、遠ざかるにつれてついに見えなくなる。
孝道隨世,我署文章。
さて、わが天子の孝道は世々相うけてかわることがない。われはこの盛んなる祭りに際して孝徳の威儀をあきらかに表わそうと思う。
都荔【とれい】は芳を遂げ、窅窊【ようあ】たる桂華【けいか】あり。
孝奏【こうそう】し天儀【てんきた】り、日月の光の若し。
玄四龍に乗じ、回馳【かいち】北行し、
羽旄【うぼう】殷盛【いんせい】にして、芬【ふん】たる哉芒芒たり。
孝道【こうどう】は世に随ひ、我文章を署【あらわ】さん。



現代語訳と訳註
(本文)

都荔遂芳,窅窊桂華。孝奏天儀,若日月光。
乘玄四龍,回馳北行。羽旄殷盛,芬哉芒芒。
孝道隨世,我署文章。


(下し文) 
都荔【とれい】は芳を遂げ、窅窊【ようあ】たる桂華【けいか】あり。
孝奏【こうそう】し天儀【てんきた】り、日月の光の若し。
玄四龍に乗じ、回馳【かいち】北行し、
羽旄【うぼう】殷盛【いんせい】にして、芬【ふん】たる哉芒芒たり。
孝道【こうどう】は世に随ひ、我文章を署【あらわ】さん。


(現代語訳)
天の宮は都良、薜荔の香草が芳香を発している、桂華はよくしげって深遠に見える。
ここにてわが孝道を申し上げると、天神はここに降臨し給う。その輝かしさは日月のようにかがやく。
黒い四頭の竜に乗り、あたりを馳せ回り、またかけめぐる。
お供の人のもつ羽旄の旗は、盛んにして数多いが、遠ざかるにつれてついに見えなくなる。
さて、わが天子の孝道は世々相うけてかわることがない。われはこの盛んなる祭りに際して孝徳の威儀をあきらかに表わそうと思う。


(訳注) 十
都荔遂芳,窅窊桂華。
天の宮は都良、薜荔の香草が芳香を発している、桂華はよくしげって深遠に見える。
都荔 都良は都梁で薬草、薜荔共に香草の名。薜荔は和名、まさきのかずら。都良は都梁丸の原料。『漢書‧禮樂志』「都荔遂芳, 窅窊桂華。」にもみえる。
窅窊 良く繁り深遠のさま。


孝奏天儀,若日月光。
ここにてわが孝道を申し上げると、天神はここに降臨し給う。その輝かしさは日月のようにかがやく。
天儀 儀に來の義がある。天神の降り来たること。 


乘玄四龍,回馳北行。
黒い四頭の竜に乗り、あたりを馳せ回り、またかけめぐる。
四龍 四海を治めるとされる、蒼竜(青竜)、白竜、赤竜(紅竜)、黒竜(玄龍)の四人の竜王である。通常は「四海竜王」という。 地上では、蒼竜は東方、白竜は西方、赤竜は南方、黒竜は北方に潜み棲むとされる。
北行 北は古の背の字。背行は回馳と同義


羽旄殷盛,芬哉芒芒。
お供の人のもつ羽旄の旗は、盛んにして数多いが、遠ざかるにつれてついに見えなくなる。
・羽旄 昔の、軍隊を指揮する幢(はたぼこ)の一。雉(きじ)の羽と旄牛(ぼうぎゅう)(ヤク)の尾とを、竿(さお)の先端に飾りつけたもの。
・芬 盛んなさま。香りの高いさま。また、強くにおうさま。


孝道隨世,我署文章。
さて、わが天子の孝道は世々相うけてかわることがない。われはこの盛んなる祭りに際して孝徳の威儀をあきらかに表わそうと思う。

文章 あきらかに表わそうと思うこと。

安世房中歌十七首(其9) 唐山夫人 漢詩<131>古詩源 巻二 女性詩568 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1521

 
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安世房中歌十七首(其9) 唐山夫人 漢詩<131>古詩源 巻二 女性詩568 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1521


第二部(五~九)

海內有奸,紛亂東北。詔撫成師,武臣承德。
国土を侵略してくる異民族、匈奴がある、彼等はわが東北地方これを伐つために、高祖は詔をくだされ、兵を起こし騒乱を平定した民を安んじられた。武臣はよく皇帝の徳意をうけて命に従ったのである。
行樂交逆,《簫》、《勺》群慝。肅為濟哉,蓋定燕國。

軍隊は和楽して行軍するので、遠近の民はみなよろこんで迎えた、ついに群がる悪賊を徹底的に壊滅させたのである。
まことに厳粛にして威儀多きことをいきわたらせたのである、今や燕国をしてことごく平定ならしめた。

大海蕩蕩水所歸,高賢愉愉民所懷。
大海は広々として大きい、河の衆水は東流してみなこの大海に注ぐのである。高い徳を積んだわが君子は心から和楽しているから、衆民はみなこれに思いを一つに懐きつくことになる。
大山崔,百卉殖。民何貴?貴有德。
大山は高くそびえている、そして百草が成長する。
このように無辜の民はいかなる人を貴ぶのかといえば、大山のような高徳の仁君を貴ぶのである。

安其所,樂終產。樂終產,世繼緒。
わが君は大山のような高徳の施政をされ、無辜の民はその所にあんねいした、そして楽しく生を終わることが出来ることになったのだ。
楽しさをもってその一生を終わることができたなら、王室は世々と諸行を継承するのである。

飛龍秋,遊上天。高賢愉,樂民人。
天高い秋の空に竜にのり高くのぼり、上天を遊行することで下々を見渡す帝位につき給うのである。
こうして高い仁徳を持った賢明なる君は政を楽しみ、衆民はまた「安居楽業」ならしめるのである。

豐草葽,女羅施。善何如,誰能囘!
豊かな草が盛んに繁茂し、つたかずらは徳を積むことなく松柏(天子の御加護)の上に長くのびひろがる。出自だけでその地位を与えられるものである。
本人が善を行なえば誰がこれを乱すことができるというのか。
大莫大,成教德;長莫長,被無極。
天子の徳は教えの本たる孝徳を大きく成しとげ給うことは大いなることである。
豊草の長なるも大とするにたらず、孝徳を無極のはてまでおよぼし給うにくらべれば、つたかずらの長いのも長しとするにはたらぬ。

雷震震,電耀耀。
雷はゴロゴロと鳴って万物を動かし、電ほどカピカと光って万物を照らす。
明德鄉,治本約。
わが王は徳の方向を明示して、施政の根本をおさめ給う。
治本約,澤弘大。
施政の根本をおさめ給えて、それゆえに徳沢は弘大となる。
加被寵,咸相保。
なおそれで足るとしないでますます民に寵愛をほどこされ、民をことごとく護り給うたのである。
德施大,世曼壽

かくて王の徳施はいっそう大となり、天子の世代は長くつづくのである。


第二部(五~九)

海内 奸有り、東北を紛乱す。
詔【みことのり】して成師【せいし】を撫し、武臣【ぶしん】徳を承く。
行楽【こうらく】交【こもご】も逆【むか】へ、群慝【ぐんとく】を《簫》、《勺》【しょうしゃく】す。
粛として済を為せる哉、燕國【えんごく】を蓋定【がいてい】す。
#6
大海【たいかい】蕩蕩【とうとう】、水の歸する所、
高賢愉愉、民の懐【なつ】く所。
大山は崔たり、百卉【ひゃくき】は殖す。
民は何をか貴ぶ、有徳【ゆうとく】を貴ぶ。
#7
其の所に安んじ、産を終ふるを欒しましむ。
産を終ふるを欒しましめ、世々緒を繼ぐ。
飛龍 秋として、遊んで天に上る。
高賢愉しみ、民人を欒しましむ。
#8
豊草聾に、女羅【じょら】は施【し】く。
善何如【いかん】、誰か能く囘【みだ】さん。
大も大なる莫し、教徳【きょうとく】を成す。
長も長なる莫し、無極に被【こうむ】らす。

#9
雷 震震たり、電 耀耀【ようよう】たり。
徳 郷を明かにし、本約を治む。
本約を治め、澤【たく】弘大なり。
加【いよいよ】寵【ちょう】を被【こうむ】らしめ、咸【みな】相 保【やす】んず。
徳 施大に、世は曼壽【まんじゅ】なり。


現代語訳と訳註
(本文) 九

雷震震,電耀耀。明德鄉,治本約。
治本約,澤弘大。
加被寵,咸相保。德施大,世曼壽。


(下し文)
雷 震震たり、電 耀耀【ようよう】たり。
徳 郷を明かにし、本約を治む。
本約を治め、澤【たく】弘大なり。
加【いよいよ】寵【ちょう】を被【こうむ】らしめ、咸【みな】相 保【やす】んず。
徳 施大に、世は曼壽【まんじゅ】なり。


(現代語訳)
雷はゴロゴロと鳴って万物を動かし、電ほどカピカと光って万物を照らす。
わが王は徳の方向を明示して、施政の根本をおさめ給う。
施政の根本をおさめ給えて、それゆえに徳沢は弘大となる。
なおそれで足るとしないでますます民に寵愛をほどこされ、民をことごとく護り給うたのである。
かくて王の徳施はいっそう大となり、天子の世代は長くつづくのである。


(訳注) 九
雷震震,電耀耀。

雷はゴロゴロと鳴って万物を動かし、電ほどカピカと光って万物を照らす。


明德鄉,治本約。
わが王は徳の方向を明示して、施政の根本をおさめ給う。
・徳郷 郷は万の意。徳の方向。
・本約 約は要。政の根本。


治本約,澤弘大。
施政の根本をおさめ給えて、それゆえに徳沢は弘大となる。
 1 湿地。さわ。「沢畔/山沢・沼沢・藪沢(そうたく)」 2 物が豊かにあること。うるおい。「沢山/潤沢・贅沢(ぜいたく)」 3 人に施す恵み。「恩沢・恵沢・徳沢・余沢」 4 つや。


加被寵,咸相保。
なおそれで足るとしないでますます民に寵愛をほどこされ、民をことごとく護り給うたのである。
・加被寵 加は愈に同じ、王者ますます寵愛を施す意。


德施大,世曼壽。
かくて王の徳施はいっそう大となり、天子の世代は長くつづくのである。
・曼寿 曼は延、寿は長。王者の徳、施大にして王家長く続くこと。

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海內有奸,紛亂東北。詔撫成師,武臣承德。
行樂交逆,《簫》、《勺》群慝。肅為濟哉,蓋定燕國。

大海蕩蕩水所歸,高賢愉愉民所懷。
大山崔,百卉殖。民何貴?貴有德。

安其所,樂終產。樂終產,世繼緒。
飛龍秋,遊上天。高賢愉,樂民人。

豐草葽,女羅施。善何如,誰能囘!
大莫大,成教德;長莫長,被無極。

雷震震,電耀耀。明德鄉,治本約。
治本約,澤弘大。加被寵,咸相保。
德施大,世曼壽。



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現代語訳と訳註
(本文) 八
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(下し文)
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豐草葽,女羅施。

豊かな草が盛んに繁茂し、つたかずらは徳を積むことなく松柏(天子の御加護)の上に長くのびひろがる。出自だけでその地位を与えられるものである。
豊草 茂盛の草。
 盛んなるさま。
女羅施 『小雅‧甫田之什‧頍弁』「蔦與女蘿,施於松柏。」(蔦と女蘿と,松柏に施く)兄弟のような同性の諸臣(蔦と女蘿)は天子の庇護(松柏)を受けて朝廷にいる。


善何如,誰能囘!
本人が善を行なえば誰がこれを乱すことができるというのか。
誰能囘 囘は乱の意。


大莫大,成教德;
天子の徳は教えの本たる孝徳を大きく成しとげ給うことは大いなることである。
成教徳 徳を以て民を治め、教えを天下に成すこと。教徳は孝をいう。


長莫長,被無極。
豊草の長なるも大とするにたらず、孝徳を無極のはてまでおよぼし給うにくらべれば、つたかずらの長いのも長しとするにはたらぬ。

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第二部(五~九)

海內有奸,紛亂東北。詔撫成師,武臣承德。
行樂交逆,《簫》、《勺》群慝。肅為濟哉,蓋定燕國。

大海蕩蕩水所歸,高賢愉愉民所懷。
大山崔,百卉殖。民何貴?貴有德。

安其所,樂終產。樂終產,世繼緒。
飛龍秋,遊上天。高賢愉,樂民人。

豐草葽,女羅施。善何如,誰能回!
大莫大,成教德;長莫長,被無極。

雷震震,電耀耀。明德鄉,治本約。
治本約,澤弘大。加被寵,咸相保。
德施大,世曼壽。



安其所,樂終產。
わが君は大山のような高徳の施政をされ、無辜の民はその所にあんねいした、そして楽しく生を終わることが出来ることになったのだ。
樂終產,世繼緒。
楽しさをもってその一生を終わることができたなら、王室は世々と諸行を継承するのである。
飛龍秋,遊上天。
天高い秋の空に竜にのり高くのぼり、上天を遊行することで下々を見渡す帝位につき給うのである。
高賢愉,樂民人。
こうして高い仁徳を持った賢明なる君は政を楽しみ、衆民はまた「安居楽業」ならしめるのである。


現代語訳と訳註
(本文)七

安其所,樂終產。樂終產,世繼緒。
飛龍秋,遊上天。高賢愉,樂民人。


(下し文)
其の所に安んじ、産を終ふるを欒しましむ。
産を終ふるを欒しましめ、世々緒を繼ぐ。
飛龍 秋として、遊んで天に上る。
高賢愉しみ、民人を欒しましむ。


(現代語訳)
わが君は大山のような高徳の施政をされ、無辜の民はその所にあんねいした、そして楽しく生を終わることが出来ることになったのだ。
楽しさをもってその一生を終わることができたなら、王室は世々と諸行を継承するのである。
天高い秋の空に竜にのり高くのぼり、上天を遊行することで下々を見渡す帝位につき給うのである。
こうして高い仁徳を持った賢明なる君は政を楽しみ、衆民はまた「安居楽業」ならしめるのである。


 (訳注)七
安其所,樂終產。
わが君は大山のような高徳の施政をされ、無辜の民はその所にあんねいした、そして楽しく生を終わることが出来ることになったのだ。
終産 終生の意。


樂終產,世繼緒。
楽しさをもってその一生を終わることができたなら、王室は世々と諸行を継承するのである。


飛龍秋,遊上天。
天高い秋の空に竜にのり高くのぼり、上天を遊行することで下々を見渡す帝位につき給うのである。
飛竜秋 秋は飛ぶさま。易経・乾卦に「飛電天に在り、大人を見るに利あり」の語あり、帝位に上るに喩えた。
『楚辭』「九歌」「湘君」
駕飛龍兮北征,邅吾道兮洞庭。(飛竜に駕して北征し、邅りて吾れ洞庭に道す。)


高賢愉,樂民人。
こうして高い仁徳を持った賢明なる君は政を楽しみ、衆民はまた「安居楽業」ならしめるのである。
高賢愉 高い徳、賢明なる施政、王者愉々の徳あるをいう。心が晴れ晴れとして楽しい。「愉悦・愉快・愉楽」
 平和な世の中で、安心して暮らしており、落ち着いて楽しく仕事をしていること。安居楽業:「漢書-貨殖伝・序」「各安其居而楽其業、甘其食而美其服」、抜苦与楽。

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安世房中歌十七首(其6) 唐山夫人 漢詩<128>古詩源 巻三 女性詩565 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1512



大海蕩蕩水所歸,高賢愉愉民所懷。
大海は広々として大きい、河の衆水は東流してみなこの大海に注ぐのである。高い徳を積んだわが君子は心から和楽しているから、衆民はみなこれに思いを一つに懐きつくことになる。
大山崔,百卉殖。
大山は高くそびえている、そして百草が成長する。
民何貴?貴有德。

このように無辜の民はいかなる人を貴ぶのかといえば、大山のような高徳の仁君を貴ぶのである。


現代語訳と訳註
(本文) 六

大海蕩蕩水所歸,高賢愉愉民所懷。
大山崔,百卉殖。民何貴?貴有德。


(下し文)
大海【たいかい】蕩蕩【とうとう】、水の歸する所、
高賢愉愉、民の懐【なつ】く所。
大山は崔たり、百卉【ひゃくき】は殖す。
民は何をか貴ぶ、有徳【ゆうとく】を貴ぶ。


(現代語訳)
大海は広々として大きい、河の衆水は東流してみなこの大海に注ぐのである。高い徳を積んだわが君子は心から和楽しているから、衆民はみなこれに思いを一つに懐きつくことになる。
大山は高くそびえている、そして百草が成長する。
このように無辜の民はいかなる人を貴ぶのかといえば、大山のような高徳の仁君を貴ぶのである。


(訳注)六
大海蕩蕩水所歸,高賢愉愉民所懷。
大海は広々として大きい、河の衆水は東流してみなこの大海に注ぐのである。高い徳を積んだわが君子は心から和楽しているから、衆民はみなこれに思いを一つに懐きつくことになる。
蕩蕩 (1)広く大きいさま。広々としているさま。 (2)ゆったりしているさま。穏やかなさま。
愉愉 たのしい たのしむ心が晴れ晴れとして楽しい。


大山崔,百卉殖。
大山は高くそびえている、そして百草が成長する。
 詩経・周南・巻耳に崔鬼の語がある。土山の石を戴くもの、爾雅では石山の土を載くもの。山の高大険阻なものをいう。


民何貴?貴有德。
このように無辜の民はいかなる人を貴ぶのかといえば、大山のような高徳の仁君を貴ぶのである。
 


『詩経、周南篇・巻耳』

采采巻耳 不盈頃筐
嗟我懐人 寘彼周行
巻耳を采り采る、頃筐【けいきゅう】に盈たず。
嗟 懐人を我うて、彼の周行に寘く。

陟彼崔嵬、我馬虺隤。
我姑酌彼金罍、維以不永懐。
彼の崔嵬に陟れば、我が馬 虺隤【かいたい】たり。
我 姑【しばら】く彼の金罍【きんらい】に酌みて、維れ以って永く懐わず。

陟彼高岡、我馬玄黃。
我姑酌彼兕觥、維以不永傷。
陟彼砠矣、我馬瘏矣。我僕痡矣、云何吁矣。
彼の高岡に陟れば、我が馬玄黃たり
我姑らく彼の兕觥(じこう)に酌み、維れを以て不永く傷まざらん
彼の砠に陟れば、我が馬は瘏(や)む
我が僕は痡む、云何(いかん)せん 吁(ああ)


辺境の警備や宮殿建築等のために借り出された夫に、早く会いたいと思う気持ちだろう。草を摘むのは願かけで、夫に会いたいという。巻耳(はこべの一種)を頃筐(もっこや籠)に一杯になるまで摘むと願いが叶って遠く離れたあの人に会える。だけど一杯にならなかった。嗟(ああ!)あの人を思って、ようやく一杯になった籠を周行(東西に走る都の大通り)に寘(お)く。これも遠く離れたあの人の働いている方向に向かう大通りに置くことによって願掛けをする。
ニ、三は、男の立場から、歌ったもの。故郷をのぞむ高い山に登って酒を飲む、これも馬が疲弊するぐらい思いをしても登って酒を飲むことにより、故郷を懐かしみ精気を宿すという霊的なものがあったのだ。
ニは崔嵬(高い険しい岩山)に馬が虺隤(病みつかれる)ぐらいの思いをして陟(登)って姑(しばらく)金罍(青銅の酒壺)から酒を飲んで、魂を鎮める。
三は高い岡に馬が玄黄(疲れで色褪せる)ぐらいの思いをして陟(登)って姑(しばらく)兕觥(流し口のある酒器)から酒を注いで飲み、精神的な傷を癒す。

安世房中歌十七首(其5) 唐山夫人 漢詩<127>古詩源 巻三 女性詩564 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1509

 
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唐山夫人
姓唐山,漢高祖劉邦之寵姬。

安世房中歌十七首

大孝備矣,休德昭清。高張四縣,樂充官庭。
芬樹羽林,雲景杳冥,金支秀華,庶旄翠旌。

《七始》、《華始》,肅倡和聲。神來宴娭,庶幾是聽。
鬻鬻音送,細齊人情。忽乘青玄,熙事備成。
清思眑眑,經緯冥冥。

我定歷數,人告其心。敕身齊戒,施教申申。
乃立祖廟,敬明尊親。大矣孝熙,四極爰轃。

王侯秉德,其鄰翼翼,顯明昭式。清明鬯矣,皇帝孝德。
竟全大功,撫安四極。



海內有奸,紛亂東北。詔撫成師,武臣承德。
行樂交逆,《簫》、《勺》群慝。肅為濟哉,蓋定燕國。

大海蕩蕩水所歸,高賢愉愉民所懷。
大山崔,百卉殖。民何貴?貴有德。

安其所,樂終產。樂終產,世繼緒。
飛龍秋,遊上天。高賢愉,樂民人。

豐草葽,女羅施。善何如,誰能
大莫大,成教德;長莫長,被無極。

雷震震,電耀耀。明德鄉,治本約。
治本約,澤弘大。加被寵,咸相保。
德施大,世曼壽。


都荔遂芳,窅窊桂華。孝奏天儀,若日月光。
乘玄四龍,回馳北行。羽旄殷盛,芬哉芒芒。
孝道隨世,我署文章。
十一
馮馮翼翼,承天之則。吾易久遠,燭明四極。
慈惠所愛,美若休德。杳杳冥冥,克綽永福。
十二
磑磑即即,師象山則。烏呼孝哉,案撫戎國。
蠻夷竭歡,象來致福。兼臨是愛,終無兵革。
十三
嘉薦芳矣,告靈饗矣。告靈既饗,德音孔臧。
惟德之臧,建侯之常。承保天休,令問不忘。
十四
皇皇鴻明,蕩侯休德。嘉承天和,伊樂厥福。
在樂不荒,惟民之則。
十五
浚則師德,下民咸殖。令問在舊,孔容翼翼。
十六
孔容之常,承帝之明。下民之樂,子孫保光。
承順溫良,受帝之光。嘉薦令芳,壽考不忘。
十七
承帝明德,師象山則。雲施稱民,永受厥福。
承容之常,承帝之明。下民安樂,受福無疆。


安世房中歌十七首(其5) 唐山夫人 漢詩<126>古詩源 巻三 女性詩563 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1506



海內有奸,紛亂東北。
国土を侵略してくる異民族、匈奴がある、彼等はわが東北地方騒乱を起こしていた。
詔撫成師,武臣承德。
これを伐つために高祖は詔をくだされ、兵を起こし騒乱を平定した民を安んじられた。武臣はよく皇帝の徳意をうけて命に従ったのである。
行樂交逆,簫勺群慝。
肅為濟哉,蓋定燕國。
軍隊は和楽して行軍するので、遠近の民はみなよろこんで迎えた、ついに群がる悪賊を徹底的に壊滅させたのである。
まことに厳粛にして威儀多きことをいきわたらせたのである、今や燕国をしてことごく平定ならしめた。


現代語訳と訳註
(本文)

海內有奸,紛亂東北。詔撫成師,武臣承德。
行樂交逆,《簫》、《勺》群慝。肅為濟哉,蓋定燕國。


(下し文) 五
海内 奸有り、東北を紛乱す。
詔【みことのり】して成師【せいし】を撫し、武臣【ぶしん】徳を承く。
行楽【こうらく】交【こもご】も逆【むか】へ、群慝【ぐんとく】を《簫》、《勺》【しょうしゃく】す。
粛として済を為せる哉、燕國【えんごく】を蓋定【がいてい】す。


(現代語訳)
国土を侵略してくる異民族、匈奴がある、彼等はわが東北地方騒乱を起こしていた。
これを伐つために、高祖は詔をくだされ、兵を起こし騒乱を平定した民を安んじられた。武臣はよく皇帝の徳意をうけて命に従ったのである。
を騒乱におとしめている。
軍隊は和楽して行軍するので、遠近の民はみなよろこんで迎えた、ついに群がる悪賊を徹底的に壊滅させたのである。
まことに厳粛にして威儀多きことをいきわたらせたのである、今や燕国をしてことごく平定ならしめた。


(訳注) 五
海內有奸,紛亂東北。

国土を侵略してくる異民族、匈奴がある、彼等はわが東北地方を騒乱におとしめている。
・海內 海に至るまでが国内。
・奸 侵略してくる異民族。
・紛亂 紛争、騒乱。
・東北 万里の長城の向こう側を指す。


詔撫成師,武臣承德。
これを伐つために、高祖は詔をくだされ、兵を起こし騒乱を平定した民を安んじられた。武臣はよく皇帝の徳意をうけて命に従ったのである。
 懐柔政策などでおさえる。落ち着かせる。・成師 すでに定まり帰順している民である。師は周の制度では2500人の軍隊の単位で、戦争、征伐を意味する。高祖ほまずこれを撫安して兵を起こしたのである。・行楽交逆 漢書補注に「師行きて和楽し、遠適皆迎ふるなり」と注している。今これに従う。
赫赫師尹、民具爾瞻。有国者不可以不慎。辟則為天下僇矣。 「詩経」小雅の節南山編


行樂交逆,《簫》、《勺》群慝。
軍隊は和楽して行軍するので、遠近の民はみなよろこんで迎えた、ついに群がる悪賊を徹底的に壊滅させたのである。
・行樂 軍隊の行進と楽隊。
・簫勺 鋼鉄と音通、金属をとかし、形を変えること、壊滅させることの意。また粛清抱取(清めくみとる)の義ともいう。


肅為濟哉,蓋定燕國。
まことに厳粛にして威儀多きことをいきわたらせたのである、今や燕国をしてことごく平定ならしめた。
 済々の意。威儀多きことをいきわたらせる。
・蓋定 蓋は叛乱等を平定する。

安世房中歌十七首(其4) 唐山夫人 漢詩<126>古詩源 巻三 女性詩563 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1506

 
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安世房中歌十七首(其4) 唐山夫人 漢詩<126>古詩源 巻三 女性詩563 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1506



第一部(一~四)

大孝備矣,休德昭清。
わが帝の曾子のいう「三孝」の大孝は備わっており、その美徳は天下に清々しく昭らかとなった。
高張四縣,樂充官庭。
ここに堂の四面に高く欒器を懸けめぐらし、奏楽を設けて祖を祀ろうとする、奏楽の音は宮庭に充ちわたる。
芬樹羽林,雲景杳冥,
堂のまわり、数多の羽飾りの帷が、林のようにたちならんでいる様子は、五色の雲がはるか先まで続くように見える。
金支秀華,庶旄翠旌。
楽器をかける黄金の支柱は、とりわけはなやかで、そこに王朝の旗印の旄牛の尾や翡翠の羽が、美しく飾られている。

「七始」「華始」,肅倡和聲。
楽士が「七始」・「華始」の奏楽をつつしんでとなえる、これに唱和する衆声がおこるのである。
神來宴娭,庶幾是聽。
こうして天より神霊がくだり来たって和らぎよろこびとなる、この奏楽を聴き給わんことをこいねがうものである。
鬻鬻音送,細齊人情。
奏楽の終わりはおごそかにしずまりかえった、そして細やかな気持ちに人の心情をととのえたのだ。
忽乘青玄,熙事備成。
奏楽が終わり、神はたちまち青天にのぼり給うのである。やがて祭りの晴れやかなる次第はことごとく終わるのである。
清思眑眑,經緯冥冥。
列席にあずかった人々の心中には清らかな思いがゆかしくも生じてきて、こうして果てないところ隅々に至るまで天子の畏敬がおよぼされたのである。


我定歷數,人告其心。
わが天子、高祖は天の暦数に応じて帝位についた、下々の民にその慈しみの心を告げ知らしめた。
敕身齊戒,施教申申。
身を誡め、心身を清めて神に仕える、民に教えを布くこと懇切丁寧にしたのだ。
乃立祖廟,敬明尊親。
それよって祖先の廟を建立して、謹んで親を尊ぶ大孝の道をあきらかにされたのだ。
大矣孝熙,四極爰轃。

大いなるかな、孝道の福利、四方極遠の地民までも、わが天子を慕って集まってくる。

王侯秉德,其鄰翼翼,顯明昭式。
上王侯が徳を以て施政をとり行い、その近臣ものたちもその心をもってその列にならび、かくて万民のよるべき孝道の大法をあきらかにすることにあるのである。
清明鬯矣,皇帝孝德。
わが皇帝の孝徳はそのあまねく通じて、今まさに春の盛り清明の季節のようである。
竟全大功,撫安四極。

ついにその大功を完成し、四方僻遠の民にまで安寧の施政をなし給うのである。


現代語訳と訳註
(本文)

王侯秉德,其鄰翼翼,顯明昭式。
清明鬯矣,皇帝孝德。
竟全大功,撫安四極。


(下し文)
王侯【おうこう】德を秉【と】り,其の鄰は翼翼たり,昭式【しょうしき】を顯明【けんめい】す。
清明 鬯【ちょう】たり,皇帝の孝德。
竟に大功【たいこう】を全【まっと】うし,四極を撫で安んず。


(現代語訳)
上王侯が徳を以て施政をとり行い、その近臣ものたちもその心をもってその列にならび、かくて万民のよるべき孝道の大法をあきらかにすることにあるのである。
わが皇帝の孝徳はそのあまねく通じて、今まさに春の盛り清明の季節のようである。
ついにその大功を完成し、四方僻遠の民にまで安寧の施政をなし給うのである。


(訳注)四
王侯秉德,其鄰翼翼,顯明昭式。

上王侯が徳を以て施政をとり行い、その近臣ものたちもその心をもってその列にならび、かくて万民のよるべき孝道の大法をあきらかにすることにあるのである。
其鄰 『書経・益稷』に「臣なる哉、鄰なる哉、鄰なる哉、臣なる哉」の語あるによって鄰を近臣とする。
翼翼 そろって居並ぶ様子。『詩経、小雅、采微』「四牡翼翼、」に基づいている。
昭式 万民のよるべき孝道の大法をいう。


清明鬯矣,皇帝孝德。
わが皇帝の孝徳はそのあまねく通じて、今まさに春の盛り清明の季節のようである。

 古代の暢が字、通の意。

竟全大功,撫安四極。
ついにその大功を完成し、四方僻遠の民にまで安寧の施政をなし給うのである。

安世房中歌十七首(其3) 唐山夫人 漢詩<125>古詩源 巻二 女性詩562 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1503

 
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我定歷數,人告其心。
わが天子、高祖は天の暦数に応じて帝位についた、下々の民にその慈しみの心を告げ知らしめた。
敕身齊戒,施教申申。
身を誡め、心身を清めて神に仕える、民に教えを布くこと懇切丁寧にしたのだ。
乃立祖廟,敬明尊親。
それよって祖先の廟を建立して、謹んで親を尊ぶ大孝の道をあきらかにされたのだ。
大矣孝熙,四極爰轃。

大いなるかな、孝道の福利、四方極遠の地民までも、わが天子を慕って集まってくる。


現代語訳と訳註
(本文) 三

我定歷數,人告其心。敕身齊戒,施教申申。
乃立祖廟,敬明尊親。大矣孝熙,四極爰轃。


(下し文)三
我は歷數【れきすう】を定め,人に其の心を告ぐ。
身を敕【いま】しめて齊戒【さいかい】し,教を施す申申たり。
乃ち祖廟を立て,敬【つつし】んで尊親を明かにす。
大いなる矣【かな】孝熙【こうき】,四極も爰【ここ】に轃【いた】る。


(現代語訳)
わが天子、高祖は天の暦数に応じて帝位についた、下々の民にその慈しみの心を告げ知らしめた。
身を誡め、心身を清めて神に仕える、民に教えを布くこと懇切丁寧にしたのだ。
それよって祖先の廟を建立して、謹んで親を尊ぶ大孝の道をあきらかにされたのだ。
大いなるかな、孝道の福利、四方極遠の地民までも、わが天子を慕って集まってくる。


(訳注) 三
我定歷數,人告其心。

わが天子、高祖は天の暦数に応じて帝位についた、下々の民にその慈しみの心を告げ知らしめた。
暦数 1 太陽や月の運行を測って暦を作る技術。また、こよみ。 2年代の数。年数。3自然にめぐってくる運命。めぐりあわせ。命数。天の歴運によって帝位につく。歴数は天道をいう。『論語 堯曰第二十』「堯曰。咨爾舜。天之厤數在爾躬。」


敕身齊戒,施教申申。
身を誡め、心身を清めて神に仕える、民に教えを布くこと懇切丁寧にしたのだ。
斉戒 心身を清めて神に仕える。物忌みする、精進する。・申申 申は重ねる意。


乃立祖廟,敬明尊親。
それよって祖先の廟を建立して、謹んで親を尊ぶ大孝の道をあきらかにされたのだ。
尊親 『禮記 祭義』.「曾子曰。曾子曰:「孝有三:大孝尊親,其次不辱,其下能養。」(孝に三あり、大孝は親を尊び、其の次は辱めず、其の下は能く養ふ)


大矣孝熙,四極爰轃。
大いなるかな、孝道の福利、四方極遠の地民までも、わが天子を慕って集まってくる。
・孝熙 熙は福、孝道の福利。1 ひかる。かがやく。「光熙」 2 光が行きわたる。ひろまる。ひろめる。ひろい。「熙隆」 3 よろこぶ。たのしむ。・四極 四方極遠の地。


論語 堯曰第二十
堯曰。咨爾舜。天之厤數在爾躬。允執其中。
四海困窮。天禄永終。舜亦以命禹。
曰。予小子履。敢用玄牡。敢昭告于皇皇后帝。
有罪不敢赦。帝臣不蔽。簡在帝心。
朕躬有罪。無以萬方。
萬方有罪。罪在朕躬。周有大賚。
善人是富。雖有周親。不如仁人。
堯は曰く、咨、なんじ舜、天の暦数、なんじの躬にあり。允にその中を執れ。
四海困窮せば、天禄永く終らん、と。舜もまたもって禹に命ず。
(湯は)曰く、予小子履、あえて玄牡を用いて、あえて昭らかに、皇皇たる后帝に告ぐ。
罪あるはあえて赦さず。帝臣蔽わず。簡ぶこと帝の心にあり。
朕わが躬に罪あらば、万方をもってするなかれ。
万方に罪あらば、罪は朕が躬にあり、と。周に大いなる賚あり。
善人にこれ富めり。周親ありといえども、仁人にしかず。

安世房中歌十七首(其2) 唐山夫人 漢詩<124>古詩源 巻二 女性詩561 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1500

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杜甫詩index杜甫詩 李商隠index李商隠詩
李白詩index 李白350首女性詩index女性詩人 
上代~隋南北朝・隋の詩人初唐・盛唐・中唐・晩唐
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「七始」「華始」,肅倡和聲。
楽士が「七始」・「華始」の奏楽をつつしんでとなえる、これに唱和する衆声がおこるのである。
神來宴娭,庶幾是聽。
こうして天より神霊がくだり来たって和らぎよろこびとなる、この奏楽を聴き給わんことをこいねがうものである。
鬻鬻音送,細齊人情。
奏楽の終わりはおごそかにしずまりかえった、そして細やかな気持ちに人の心情をととのえたのだ。
忽乘青玄,熙事備成。
奏楽が終わり、神はたちまち青天にのぼり給うのである。やがて祭りの晴れやかなる次第はことごとく終わるのである。
清思眑眑,經緯冥冥。
列席にあずかった人々の心中には清らかな思いがゆかしくも生じてきて、こうして果てないところ隅々に至るまで天子の畏敬がおよぼされたのである。


現代語訳と訳註
(本文) 二
七始華始,肅倡和聲。
神來宴娭,庶幾是聽。
鬻鬻音送,細齊人情。
忽乘青玄,熙事備成。
清思眑眑,經緯冥冥。


 (下し文)
始華始、粛しんで侶へ和せる聾あり。
神来りて宴娭【あんき】し、庶幾【こいねがわく】は是れ聽かん。

鬻鬻【しゅくしゅく】たる音送【おんそう】、細かに人の情を齊【ととの】ふ。
忽ち青玄【せいげん】に乗じて、熙事【きじ】備【そなわ】り成る。
清思【せいし】の眑眑【ようよう】たる、冥冥【めいめい】を経緯【けいい】す。


(現代語訳)
楽士が「七始」・「華始」の奏楽をつつしんでとなえる、これに唱和する衆声がおこるのである。
こうして天より神霊がくだり来たって和らぎよろこびとなる、この奏楽を聴き給わんことをこいねがうものである。
奏楽の終わりはおごそかにしずまりかえった、そして細やかな気持ちに人の心情をととのえたのだ。
奏楽が終わり、神はたちまち青天にのぼり給うのである。やがて祭りの晴れやかなる次第はことごとく終わるのである。
列席にあずかった人々の心中には清らかな思いがゆかしくも生じてきて、こうして果てないところ隅々に至るまで天子の畏敬がおよぼされたのである。


(訳注) 二
七始華始,肅倡和聲。
楽士が「七始」・「華始」の奏楽をつつしんでとなえる、これに唱和する衆声がおこるのである。
・七始・華始 共に楽の名。七始は天・地・春・夏。秋・冬・人の始。華始は万物英華の始をいう。


神來宴娭,庶幾是聽。
こうして天より神霊がくだり来たって和らぎよろこびとなる、この奏楽を聴き給わんことをこいねがうものである。
・宴娭 娭は嬉。宴で和らぎ喜ぶ。


鬻鬻音送,細齊人情。
奏楽の終わりはおごそかにしずまりかえった、そして細やかな気持ちに人の心情をととのえたのだ。
粥粥 探静、しずまりかえるさま。 ・音送 楽のおわり。


忽乘青玄,熙事備成。
奏楽が終わり、神はたちまち青天にのぼり給うのである。やがて祭りの晴れやかなる次第はことごとく終わるのである。
熙事 晴れやかなる次第。


清思眑眑,經緯冥冥。
列席にあずかった人々の心中には清らかな思いがゆかしくも生じてきて、こうして果てないところ隅々に至るまで天子の畏敬がおよぼされたのである。
眑眑 幽静の意。
経緯冥冥 果てないところ隅々に至るまで天子の畏敬がおよぼされた。幽遠なる天地を経緯すること。天地を経緯するとは文理を天地問に布きおよぼす意。


安世房中歌十七首(1) 唐山夫人 漢詩<123>古詩源 巻二 女性詩560 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1497

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安世房中歌十七首(1) 唐山夫人 漢詩<123>古詩源 巻二 女性詩560 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1497


安世房中歌十七首
(第一部)

大孝備矣,休德昭清。高張四縣,樂充官庭。
芬樹羽林,雲景杳冥,金支秀華,庶旄翠旌。

《七始》、《華始》,肅倡和聲。神來宴娭,庶幾是聽。
鬻鬻音送,細齊人情。忽乘青玄,熙事備成。
清思眑眑,經緯冥冥。

我定歷數,人告其心。敕身齊戒,施教申申。
乃立祖廟,敬明尊親。大矣孝熙,四極爰轃。

王侯秉德,其鄰翼翼,顯明昭式。清明鬯矣,皇帝孝德。
竟全大功,撫安四極。

(第二部)

海內有奸,紛亂東北。詔撫成師,武臣承德。
行樂交逆,《簫》、《勺》群慝。肅為濟哉,蓋定燕國。

大海蕩蕩水所歸,高賢愉愉民所懷。
大山崔,百卉殖。民何貴?貴有德。

安其所,樂終產。樂終產,世繼緒。
飛龍秋,遊上天。高賢愉,樂民人。

豐草葽,女羅施。善何如,誰能
大莫大,成教德;長莫長,被無極。

雷震震,電耀耀。明德鄉,治本約。
治本約,澤弘大。加被寵,咸相保。
德施大,世曼壽。

(第三部)

都荔遂芳,窅窊桂華。孝奏天儀,若日月光。
乘玄四龍,回馳北行。羽旄殷盛,芬哉芒芒。
孝道隨世,我署文章。
十一
馮馮翼翼,承天之則。吾易久遠,燭明四極。
慈惠所愛,美若休德。杳杳冥冥,克綽永福。
十二
磑磑即即,師象山則。烏呼孝哉,案撫戎國。
蠻夷竭歡,象來致福。兼臨是愛,終無兵革。
十三
嘉薦芳矣,告靈饗矣。告靈既饗,德音孔臧。
惟德之臧,建侯之常。承保天休,令問不忘。
十四
皇皇鴻明,蕩侯休德。嘉承天和,伊樂厥福。
在樂不荒,惟民之則。
十五
浚則師德,下民咸殖。令問在舊,孔容翼翼。
十六
孔容之常,承帝之明。下民之樂,子孫保光。
承順溫良,受帝之光。嘉薦令芳,壽考不忘。
十七
承帝明德,師象山則。雲施稱民,永受厥福。
承容之常,承帝之明。下民安樂,受福無疆。


唐山夫人
安世房中歌 其一
大孝備矣,休德昭清。
わが帝の曾子のいう「三孝」の大孝は備わっており、その美徳は天下に清々しく昭らかとなった。
高張四縣,樂充官庭。
ここに堂の四面に高く欒器を懸けめぐらし、奏楽を設けて祖を祀ろうとする、奏楽の音は宮庭に充ちわたる。
芬樹羽林,雲景杳冥,
堂のまわり、数多の羽飾りの帷が、林のようにたちならんでいる様子は、五色の雲がはるか先まで続くように見える。
金支秀華,庶旄翠旌。

楽器をかける黄金の支柱は、とりわけはなやかで、そこに王朝の旗印の旄牛の尾や翡翠の羽が、美しく飾られている。
安世房中歌
大孝備【そなわ】り、休徳【きゅうとく】昭明【しょうめい】なり。
高く四縣【しけん】を張り、梁は官庭【かんてい】に充つ。
芬として樹てる羽林は、雲景の杳冥【とうめい】たるごとく、
金支【きんし】の秀華【しゅうか】なるは、庶旄【しょぼう】翠旌【すいせい】なり。


現代語訳と訳註
(本文)
安世房中歌 其一 唐山夫人
大孝備矣,休德昭清。高張四縣,樂充官庭。
芬樹羽林,雲景杳冥,金支秀華,庶旄翠旌。


(下し文)
安世房中歌  唐山夫人
大孝備【そなわ】り、休徳【きゅうとく】昭明【しょうめい】なり。
高く四縣【しけん】を張り、梁は官庭【かんてい】に充つ。
芬として樹てる羽林は、雲景の杳冥【とうめい】たるごとく、
金支【きんし】の秀華【しゅうか】なるは、庶旄【しょぼう】翠旌【すいせい】なり。


(現代語訳)
わが帝の曾子のいう「三孝」の大孝は備わっており、その美徳は天下に清々しく昭らかとなった。
ここに堂の四面に高く欒器を懸けめぐらし、奏楽を設けて祖を祀ろうとする、奏楽の音は宮庭に充ちわたる。
堂のまわり、数多の羽飾りの帷が、林のようにたちならんでいる様子は、五色の雲がはるか先まで続くように見える。
楽器をかける黄金の支柱は、とりわけはなやかで、そこに王朝の旗印の旄牛の尾や翡翠の羽が、美しく飾られている。


(訳注)
安世房中歌 其一 唐山夫人

唐山夫人 (紀元前206頃在世)姓は唐山,漢高祖劉邦之寵姬。高帝の宮人で名は未詳、生歿についても詳らかでない。

安世房中歌 郊廟の祭祀に用いる雅楽で、唐山夫人の所作。
房中歌としたのは、詩経の周南・召南の詩を王后国君・国君夫人が「房中楽歌」としたのにならって作ったから。
恵帝の時に名をあらためて「安世楽」とした。


大孝備矣,休德昭清。
わが帝の曾子のいう「三孝」の大孝は備わっており、その美徳は天下に清々しく昭らかとなった。
・大孝 『禮記 祭義』.「曾子曰。曾子曰:「孝有三:大孝尊親,其次不辱,其下能養。」(孝に三あり、大孝は親を尊び、其の次は辱めず、其の下は能く養ふ)
・休徳 休は美。


高張四縣,樂充官庭。
ここに堂の四面に高く欒器を懸けめぐらし、奏楽を設けて祖を祀ろうとする、奏楽の音は宮庭に充ちわたる。
高張四県 県は古の懸の字、鐘・磐などの楽器を木に懸け東西南北の四面に置くこと。


芬樹羽林,雲景杳冥,
堂のまわり、数多の羽飾りの帷が、林のようにたちならんでいる様子は、五色の雲がはるか先まで続くように見える
・芬 衆多のさま。
羽林 羽葆の盛んなこと林の如きをいう。羽葆は五色の羽を集めて作った垂絹(幢)。
・杳冥 奥深くしてうすぐらきさま。


金支秀華,庶旄翠旌。
楽器をかける黄金の支柱は、とりわけはなやかで、そこに王朝の旗印の旄牛の尾や翡翠の羽が、美しく飾られている。
金支 黄金の支柱で、鋸製が上に立て、その上に族や翠旗の飾りをつけたもの。

女性詩index <117>玉台新詠集・古詩源・文選  554 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1479

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文学に関わった女性は限られた数だが、その実態は特有のものがある。例えば後宮関係、文学者の家の縁者、特殊な階級の者には妓女・尼等がある。作品の質については作品数が極端に少量なので相対的評価はしがたい。一部の作者は高く評価できるものもある。
漢代では、班捷杼、班昭、六朝では蔡琰、沈満願、鮑令暉、唐代では李季蘭、篩濤、魚玄機である。
しばらくはこのリストに基づきブログを続けることとする。

玉台新詠集の中の女性詩。

巻一 1  答詩一首            徐嘉妻徐淑     じょしゅく  
答詩一首 秦嘉妻徐淑 女流<113-#1>玉台新詠集 女性詩 549 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1464
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巻四 2  雑詩六首 (一)擬青青河畔草    鮑令暉        ほうれいき 鮑照の妹 
巻四 3  雑詩六首 (二)擬客従遠方來                        ほうれいき  
巻四 4  雑詩六首 (三)題書後寄行人                        ほうれいき  
巻四 5  雑詩六首 (四)古意 贈今人                         ほうれいき  
巻四 6  雑詩六首 (五)代葛沙門妻郭小玉詩二首 二 君子將傜役  ほうれいき  
巻四 7  雑詩六首 (五)代葛沙門妻郭小玉詩二首 一 明月何皎皎  ほうれいき  
  香茗賦集                                                                     ほうれいき  
  錄其詩七首                                                                 ほうれいき  
巻十 8  寄行人一首 鮑令暉                                       ほうれいき 鮑照の妹 
      
巻五 9  詠歩揺花                              范靖婦沈満願     しんまんがん 沈約の孫娘 
詠歩揺花 范靖婦沈満願 宋詩<119>玉台新詠集巻四 女性詩 556 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1485

巻五 10  戯蕭娘                                  范靖婦沈満願 しんまんがん  
戯蕭娘 范靖婦沈満願 宋詩<120>玉台新詠集巻四 女性詩 557 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1488

巻五 11  詠五彩竹火籠                      范靖婦沈満願 しんまんがん
詠五彩竹火籠 范靖婦沈満願 宋詩<121>玉台新詠集巻四 女性詩558 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1491

巻五 12  詠鐙 范靖婦                         沈満願 しんまんがん  
詠鐙 范靖婦沈満願 宋詩<122>玉台新詠集巻四 女性詩559 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1494

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王昭君歎二首 其一 沈満願(梁の征西記室范靖の妻) <114-#1>玉台新詠集 女性詩 551 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1470

巻十 14  詩三首 王昭君歎二首(二)今朝猶漢地    范静妻 (沈満願) しんまんがん  
王昭君歎二首 其二 沈満願(梁の征西記室范靖の妻) 女流<115>玉台新詠集 女性詩 552 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1473

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巻八 20  和昭君                                     王叔英妻劉氏 りゅうれいかん  
巻九 21  贈答一首                                 王叔英婦 りゅうれいかん  
巻九 22  詩三首(一)光宅寺                  徐悱婦 りゅうれいかん  
巻九 23  詩三首(二)題甘蕉葉示人      徐悱婦 りゅうれいかん  
巻九 24  摘同心支子贈謝嬢因附此詩 徐悱婦 りゅうれいかん  
巻九 25  暮寒一首                                 王叔英婦 りゅうれいかん  
      
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詠鐙
綺筵日已暮、羅幃月未歸。
美しいむしろに日が暮れてきた。うすぎぬの帳にはまだ月かげは映らない。
開花散鶴彩、含光出九徴。
燈火の花が開く、そこには鮮やかな色の鶴の影が散っている。こうした光を含んでいる景色は西王母を迎える漢の武帝が灯した九徴の鐙のひかりがでているのだ。
風軒動丹焰、氷宇澹凊暉。
この鐙は風の吹く軒に丹い焔をうごかす。そして氷を思わせるほどすんだ空に青いひかりをうすく挙げている。
不吝輕蛾繞、唯恐曉蠅飛。

蛾や虫が軽やかに飛びまわるは惜しいとも何とも思わないのだけれど、ただ、待ち続ける夜が明けて蠅が飛びわるのだけは怖いことなのだ。(このような花の宴を設置するのなら来てほしい。その中で私は待っているのよ。)

綺筵【きえん】日 已に暮る、羅幃【らい】月 未だ歸らず。
開花 鶴彩【かくさい】を散じ、含光【がんこう】九徴よりも出づ。
風軒に 丹焰【たんえん】を動かし、氷宇に凊暉【せいき】澹たり。
吝【おし】まず輕蛾【けいが】の繞【めぐ】り、唯 恐る曉蠅【ぎょうぼう】の飛ばんことを。


現代語訳と訳註
(本文)
詠鐙
綺筵日已暮、羅幃月未歸。
開花散鶴彩、含光出九徴。
風軒動丹焰、氷宇澹凊暉。
不吝輕蛾繞、唯恐曉蠅飛。


(下し文) 詠鐙
綺筵【きえん】日 已に暮る、羅幃【らい】月 未だ歸らず。
開花 鶴彩【かくさい】を散じ、含光【がんこう】九徴よりも出づ。
風軒に 丹焰【たんえん】を動かし、氷宇に凊暉【せいき】澹たり。
吝【おし】まず輕蛾【けいが】の繞【めぐ】り、唯 恐る曉蠅【ぎょうぼう】の飛ばんことを。


(現代語訳)
美しいむしろに日が暮れてきた。うすぎぬの帳にはまだ月かげは映らない。
燈火の花が開く、そこには鮮やかな色の鶴の影が散っている。こうした光を含んでいる景色は西王母を迎える漢の武帝が灯した九徴の鐙のひかりがでているのだ。
この鐙は風の吹く軒に丹い焔をうごかす。そして氷を思わせるほどすんだ空に青いひかりをうすく挙げている。
蛾や虫が軽やかに飛びまわるは惜しいとも何とも思わないのだけれど、ただ、待ち続ける夜が明けて蠅が飛びわるのだけは怖いことなのだ。(このような花の宴を設置するのなら来てほしい。その中で私は待っているのよ。)


(訳注)
詠鐙

燈火について、夜を愛し、夜明けが来るのを恐れる女の気持ちを詠うのであるが、今日こそは自分を尋ねてくれ、一夜を過ごしたいと思って楽しみにしていた女性、待てども来ない夜、以前は楽しい中での燈火であったのである。朝が来るまでに来てほしいと女性は思うのである。それが最近続くので朝が怖いというものである。別の女性の所に行っていることへの嫉妬心はこの詩からは見えない。数多く詠った李商隠の女性を詠う詩の原型の詩である。


綺筵日已暮、羅幃月未歸。
美しいむしろに日が暮れてきた。うすぎぬの帳にはまだ月かげは映らない。
月未歸 歸は回、去って又帰って來る。


開花散鶴彩、含光出九徴。
燈火の花が開く、そこには鮮やかな色の鶴の影が散っている。こうした光を含んでいる景色は西王母を迎える漢の武帝が灯した九徴の鐙のひかりがでているのだ。
開花 燈火の花が開く。
九徴 九徴の鐙のひかり。西育時代の張華によって纏められたとされる『 博物志』に要約して次のように次のように書かれている。
西王母は'九華殿において武帝の請いに応じて元始天王から傳えられた長生の秘術を語る。語り終えた西王母はそのまま去ろうとするが'武帝は慇懃に九徴燈を設けて引き留める。そこで西王母はもう一 人の女仙上元夫人を招く。西王母と上元夫人をまじえた席で'武帝は西王母から「 五嶽眞形圖」と呼ばれるおふだの一種を'上元夫人から六甲靈飛など十二篇の紳雲を招く方を授かる。明旦に至って二人の女神は歸ってゆく。その後、武帝は西王母たちの戒めを守らなかったため'天火が下って授けられた経典は失なわれてしまう。


風軒動丹焰、氷宇澹凊暉。
この鐙は風の吹く軒に丹い焔をうごかす。そして氷を思わせるほどすんだ空に青いひかりをうすく挙げている。


不吝輕蛾繞、唯恐曉蠅飛。
蛾や虫が軽やかに飛びまわるは惜しいとも何とも思わないのだけれど、ただ、待ち続ける夜が明けて蠅が飛びわるのだけは怖いことなのだ。(このような花の宴を設置するのなら来てほしい。その中で私は待っているのよ。)

詠五彩竹火籠 范靖婦沈満願 宋詩<121>玉台新詠集巻四 女性詩558 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1491

      
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詠五彩竹火籠 范靖婦沈満願 宋詩<121>玉台新詠集巻四 女性詩558 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1491


詠五彩竹火籠
可憐潤霜質、繊剖復毫分。
愛らしいのは若竹の時の竹の表面の白粉をつけた時の潤のある竹質である、その竹を細かく裂き、そして、毛のように割かれるのである。
織作囘風苣、製爲縈綺文。
その裂かれた竹は燻製の煙がよく回るように丸い腰尻のように織り込まれ、めぐる綺麗な彩の綵絹をはりつけてできあがるのである。
含芳出珠被、曜彩接緗裙。
芳しい香りを含み、そして珠の付いた被服に出してくる、輝く彩と女性の下半身に着ける萌黄のはかまにかおりが接合している。
徒嗟金麗飾、豈念昔凌雲。
竹にとっては嘆かわしいことであろう、こんな風に黄金でもってきれいに飾られていることが、昔はあのように立派に雲を凌いで高く聳えていたというのにそんなことは今は思いもしないことだ。

(五彩の竹火籠を詠う)
可憐なる潤霜【じゅんそう】の質、繊剖【せんぼう】して復た毫分【ごうふん】す。
織りて囘風の苣【きょ】と作し、製して縈綺【けいき】の文と爲す。
含芳【がんほう】珠被【しゅひ】より出でて、曜彩【とうさい】緗裙【しょうくん】に接す。
徒【いたずら】に嗟して金麗の飾、豈念【おも】わんや昔 雲を凌ぎしを。


現代語訳と訳註
(本文)
詠五彩竹火籠
可憐潤霜質、繊剖復毫分。
織作囘風苣、製爲縈綺文。
含芳出珠被、曜彩接緗裙。
徒嗟金麗飾、豈念昔凌雲。


(下し文)
(五彩の竹火籠を詠う)
可憐なる潤霜【じゅんそう】の質、繊剖【せんぼう】して復た毫分【ごうふん】す。
織りて囘風の苣【きょ】と作し、製して縈綺【けいき】の文と爲す。
含芳【がんほう】珠被【しゅひ】より出でて、曜彩【とうさい】緗裙【しょうくん】に接す。
徒【いたずら】に嗟して金麗の飾、豈念【おも】わんや昔 雲を凌ぎしを。


(現代語訳)
愛らしいのは若竹の時の竹の表面の白粉をつけた時の潤のある竹質である、その竹を細かく裂き、そして、毛のように割かれるのである。
その裂かれた竹は燻製の煙がよく回るように丸い腰尻のように織り込まれ、めぐる綺麗な彩の綵絹をはりつけてできあがるのである。
芳しい香りを含み、そして珠の付いた被服に出してくる、輝く彩と女性の下半身に着ける萌黄のはかまにかおりが接合している。
竹にとっては嘆かわしいことであろう、こんな風に黄金でもってきれいに飾られていることが、昔はあのように立派に雲を凌いで高く聳えていたというのにそんなことは今は思いもしないことだ。


(訳注)
詠五彩竹火籠
(五彩の竹火籠を詠う)
五彩 竹の籠に張った絹の模様が五色である、五色糸で織られていれば錦となるが、五色に輝くでもよい。
竹火籠 火籠は内部で香を焚き上部に竹の籠を置いて衣服に香をしみこませるものである。竹製の燻籠のことをいう。女性の比喩としている。


可憐潤霜質、繊剖復毫分。
愛らしいのは若竹の時の竹の表面の白粉をつけた時の潤のある竹質である、その竹を細かく裂き、そして、毛のように割かれるのである。
潤霜 若竹の時の竹の表面の白粉をつけた時の事を云い、女の処女、乙女をいう。


織作囘風苣、製爲縈綺文。
その裂かれた竹は燻製の煙がよく回るように丸い腰尻のように織り込まれ、めぐる綺麗な彩の綵絹をはりつけてできあがるのである。
織作 竹細工で織り込んでいく。
囘風苣 ラッキョウのような丸い腰尻形をいう。
・縈綺文 めぐる綺麗な彩の綵絹


含芳出珠被、曜彩接緗裙。
芳しい香りを含み、そして珠の付いた被服に出してくる、輝く彩と女性の下半身に着ける萌黄のはかまにかおりが接合している。
含芳 竹かごに架けた被服に香燻が含まれる。
緗裙 女性の下半身に着ける萌黄のはかま。腰巻のような役割のもの。


徒嗟金麗飾、豈念昔凌雲。
竹にとっては嘆かわしいことであろう、こんな風に黄金でもってきれいに飾られていることが、昔はあのように立派に雲を凌いで高く聳えていたというのにそんなことは今は思いもしないことだ。
金麗飾 テクストによっては金を「今」に作るが芸妓の比喩であることからは、黄金の方がよい。
凌雲 青竹が高く聳えて生えていたこと。

戯蕭娘 范靖婦沈満願 宋詩<120>玉台新詠集巻四 女性詩 557 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1488

      
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戯蕭娘 范靖婦沈満願 宋詩<120>玉台新詠集巻四 女性詩 557 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1488


戯蕭娘
明珠翠羽帳、金薄綠綃帷。
ねやの奥座敷に輝いている真珠を鏤めた翡翠のとばり、その内側に金箔を飾った緑のうす絹のとばりがある。
因風時蹔擧、想像見芳姿
風に吹かれて時にはしばらくまくれ上がってしまう。きっとその中に(蕭娘さん)あなたの綺麗なお姿があると思います。
凊晨插歩揺、向晩解羅衣。
清々しい朝を迎えると外していた簪を髪に挿すのでしょう。それから晩方になればその奥座敷でうすぎぬの肌着をとくことでしょう。
意風流子、佳情詎肯私。

あなたはあの風雅なあの人(范靖)に心を寄せていますね。そういう男女の愛情について私は独り占めにしようなんて思ってもいませんから。


(蕭娘を戯むる)
明珠【めいしゅ】翠羽【すいう】の帳【とばり】、金薄【きんぱく】綠綃【りょくしょう】の帷【い】。
風に因りて時に暫く擧がる、想像して芳姿を見る。
凊晨【せいしん】に歩揺を插【さしはさ】み、晩に向いて羅衣【らい】を解く。
意を託すは風流の子、佳情 詎【なん】ぞ肯えて私にせん。


現代語訳と訳註
(本文)
戯蕭娘
明珠翠羽帳、金薄綠綃帷。
因風時蹔擧、想像見芳姿
凊晨插歩揺、向晩解羅衣。
託意風流子、佳情詎肯私。


(下し文) (蕭娘を戯むる)
明珠【めいしゅ】翠羽【すいう】の帳【とばり】、金薄【きんぱく】綠綃【りょくしょう】の帷【い】。
風に因りて時に暫く擧がる、想像して芳姿を見る。
凊晨【せいしん】に歩揺を插【さしはさ】み、晩に向いて羅衣【らい】を解く。
意を託すは風流の子、佳情 詎【なん】ぞ肯えて私にせん。


(現代語訳)
ねやの奥座敷に輝いている真珠を鏤めた翡翠のとばり、その内側に金箔を飾った緑のうす絹のとばりがある。
風に吹かれて時にはしばらくまくれ上がってしまう。きっとその中に(蕭娘さん)あなたの綺麗なお姿があると思います。
清々しい朝を迎えると外していた簪を髪に挿すのでしょう。それから晩方になればその奥座敷でうすぎぬの肌着をとくことでしょう。
あなたはあの風雅なあの人(范靖)に心を寄せていますね。そういう男女の愛情について私は独り占めにしようなんて思ってもいませんから。


(訳注)
戯蕭娘

蕭娘: 沈満願の夫の范靖、梁の征西記室范靖の愛人、第二夫人、家妓とおもわれる。戯れるは「因風」「想像」「凊晨」「向晩」末の二句にあらわしている。
沈滿願 :生卒年不詳。吳の武康の人。沈約の孫娘。征西記室范靖(靜)の妻。
西暦540年ごろの梁武帝最盛期頃に評価を受けたようである。ただ、沈約(441年 - 513年)は学問に精励し学識を蓄え、宋・斉・梁の3朝に仕えた。南斉の竟陵王蕭子良の招きに応じ、その文学サロンで重きをなし、「竟陵八友」の一人に数えられた。その後蕭衍(後の梁の武帝)の挙兵に協力し、梁が建てられると尚書令に任ぜられ、建昌県侯に封ぜられた。晩年は武帝の不興をこうむり、憂愁のうちに死去したというので、身分地位についてはそれほど高いものではなかったのではなかろうか。ただ、女性の立場で、王昭君の悲劇を呼んでいるわけで、詩界に参列できるだけのものであったことは間違いない。


明珠翠羽帳、金薄綠綃帷。
ねやの奥座敷に輝いている真珠を鏤めた翡翠のとばり、その内側に金箔を飾った緑のうす絹のとばりがある。
・翠羽 翡翠の羽毛。
綃帷 うす絹のとばり


因風時暫擧、想像見芳姿
風に吹かれて時にはしばらくまくれ上がってしまう。きっとその中に(蕭娘さん)あなたの綺麗なお姿があると思います。


凊晨插歩揺、向晩解羅衣。
清々しい朝を迎えると外していた簪を髪に挿すのでしょう。それから晩方になればその奥座敷でうすぎぬの肌着をとくことでしょう。
・凊晨 情交の後の夜明けをいう。
歩揺 かんざし。
羅衣 閨の女性の衣服。うす絹の肌着。


託意風流子、佳情詎肯私。
あなたはあの風雅なあの人(范靖)に心を寄せていますね。そういう男女の愛情について私は独り占めにしようなんて思ってもいませんから。
託意 こころをよせる。・風流子 范靖をさす。一夫多妻制の時代で、第二夫人以降は美人で素養がある女性ほど男性の株は上がったのである。
佳情 男女の愛情。・私 独り占めをするという意。


詠歩揺花 范靖婦沈満願 宋詩<119>玉台新詠集巻四 女性詩 556 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1485

      
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詠歩揺花 范靖婦沈満願 宋詩<119>玉台新詠集巻四 女性詩 556 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1485


沈約の孫娘
梁の征西記室范靖の妻
沈滿願 :生卒年不詳。吳の武康の人。沈約の孫娘。征西記室范靖(靜)の妻。
西暦540年ごろの梁武帝最盛期頃に評価を受けたようである。ただ、沈約(441年 - 513年)は学問に精励し学識を蓄え、宋・斉・梁の3朝に仕えた。南斉の竟陵王蕭子良の招きに応じ、その文学サロンで重きをなし、「竟陵八友」の一人に数えられた。その後蕭衍(後の梁の武帝)の挙兵に協力し、梁が建てられると尚書令に任ぜられ、建昌県侯に封ぜられた。晩年は武帝の不興をこうむり、憂愁のうちに死去したというので、身分地位についてはそれほど高いものではなかったのではなかろうか。ただ、女性の立場で、趙飛燕と班婕妤、王昭君の悲劇を呼んでいるわけで、詩界に参列できるだけのものであったことは間違いない。


詠歩揺花
珠華縈翡翠、寶葉間金瓊。
宝玉でかざった華が翡翠の羽毛をめぐらせている。美しい葉に金玉がまじりあっている。
剪荷不似製、爲花如自生。
切って作った蓮の葉なのだがとても作り物とは見えない、造花であるが天然に生えたもののようだ。
低枝拂繍領、徴歩動瑤瑛。
低く下がった枝は刺繍の襟元を払っていて、わずか体を動かすだけでも飾り瑛は揺れ動くのである。
但令雲髻插、蛾眉本易成。
とはいっても、雲型の黒髪の髻にこのかんざしを挿したらいいのだ、蛾の眉などを画くことなどは容易にできることなのだから。
珠華【しゅか】縈翡翠【ひすい】を【めぐ】り、寶葉【ほうよう】金瓊【きんけい】間【まじ】はる。
剪荷【せんか】製するに似ず、花と爲りて自生するが如し。
低枝【ていし】繍領【しゅうれい】を拂う、徴歩すれば瑤瑛【ようえい】動く。
但 令雲髻【うんけい】に插しましめん、蛾眉【がび】本【もと】成し易し。


現代語訳と訳註
(本文)
詠歩揺花
珠華縈翡翠、寶葉間金瓊。
剪荷不似製、爲花如自生。
低枝拂繍領、徴歩動瑤瑛。
但令雲髻插、蛾眉本易成。


(下し文) 歩揺花を詠う)
珠華【しゅか】縈翡翠【ひすい】を【めぐ】り、寶葉【ほうよう】金瓊【きんけい】間【まじ】はる。
剪荷【せんか】製するに似ず、花と爲りて自生するが如し。
低枝【ていし】繍領【しゅうれい】を拂う、徴歩すれば瑤瑛【ようえい】動く。
但 令雲髻【うんけい】に插しましめん、蛾眉【がび】本【もと】成し易し。


(現代語訳)
宝玉でかざった華が翡翠の羽毛をめぐらせている。美しい葉に金玉がまじりあっている。
切って作った蓮の葉なのだがとても作り物とは見えない、造花であるが天然に生えたもののようだ。
低く下がった枝は刺繍の襟元を払っていて、わずか体を動かすだけでも飾り瑛は揺れ動くのである。
とはいっても、雲型の黒髪の髻にこのかんざしを挿したらいいのだ、蛾の眉などを画くことなどは容易にできることなのだから。


(訳注)
詠歩揺花

・歩 かんざし。歩揺花:かんざしに花をつけている。
王樞 『徐尚書坐賦得可憐』(徐尚書の坐にて「可憐」を得て賦する)
紅蓮披早露、玉貌映朝霞。
飛燕啼妝罷、顧挿歩揺花。
溘匝金鈿滿、參差繍領斜。
暮還垂瑤帳、香鐙照九華。
紅蓮【こうれん】早露に披【ひら】き、玉貌【ぎょくぼう】朝霞【ちょうか】に映ず。
飛燕【ひえん】啼妝【ていそう】罷【や】み、顧みて歩揺【ほよう】の花を挿しはさむ。
溘匝【こうそう】金鈿【きんてん】滿ち、參差【しんし】繍領【しゅうれい】斜なり。
暮に還りて瑤帳【えいちょう】を垂る、香鐙【こうとう】九華【きゅうか】照る。


珠華縈翡翠、寶葉間金瓊。
宝玉でかざった華が翡翠の羽毛をめぐらせている。美しい葉に金玉がまじりあっている。
珠華 宝玉でかざった華。
翡翠 翡翠の羽毛。
寶葉 美しい葉。蓮の葉。
金瓊 金玉。瓊は玉。


剪荷不似製、爲花如自生。
切って作った蓮の葉なのだがとても作り物とは見えない、造花であるが天然に生えたもののようだ。


低枝拂繍領、徴歩動瑤瑛。
低く下がった枝は刺繍の襟元を払っていて、わずか体を動かすだけでも飾り瑛は揺れ動くのである。
繍領 襟元に刺繍模様がある着物。
徴歩 わずかに動くこと。


但令雲髻插、蛾眉本易成。
とはいっても、雲型の黒髪の髻にこのかんざしを挿したらいいのだ、蛾の眉などを画くことなどは容易にできることなのだから。
雲髻 高く結んだ、美しい婦人の髪。曹植『洛神賦』「雲髻峩峩、脩眉聯娟。」(雲髻 峩峩として、脩眉 聯娟たり。)漫成三首 其三 李商隠 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集-82 「参考」として曹植『洛神賦』とこの詩に関するものがたりを参照されたい。

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虞美人歌  秦末・虞美人 詩<118>古代 女性詩 555 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1482
            
秦末 虞美人


虞美人歌
漢兵已略地,四方楚歌聲。
漢の軍勢がすでに楚の国土を侵略してきたようだ。四方周りは敵の漢軍であるがその中に裏切りなのか故郷の楚の歌声が聞こえる。
大王意氣盡,賤妾何聊生。

落胆した覇王項羽大王の意気は尽き果てたのだ。この後、このわたくしは何を頼りに生きていけばいいのでしょうか。

虞美人歌
漢兵 已に地を略し,四方 楚の歌聲。
大王 意氣盡き,賤妾 何ぞ生を聊んぜん。

Flower1-001

現代語訳と訳註
(本文)
虞美人歌
漢兵已略地,四方楚歌聲。
大王意氣盡,賤妾何聊生。


(下し文) 虞美人歌
漢兵 已に地を略し,四方 楚の歌聲。
大王 意氣盡き,賤妾 何ぞ生を聊んぜん。


(現代語訳)
漢の軍勢がすでに楚の国土を侵略してきたようだ。四方周りは敵の漢軍であるがその中に裏切りなのか故郷の楚の歌声が聞こえる。
落胆した覇王項羽大王の意気は尽き果てたのだ。この後、このわたくしは何を頼りに生きていけばいいのでしょうか。 


(訳注)
虞美人歌

この詩は『史記正義』に出てくる楚の項羽(項籍)の女官である虞美人の作といわれる。項羽が、垓下で敗れたときに慷慨悲歌したときの詩
項羽『垓下歌
力拔山兮氣蓋世,時不利兮騅不逝。
騅不逝兮可奈何,虞兮虞兮奈若何!
であるが、それに対して虞美人が歌い舞った。
項羽と劉邦は戦いと和睦を繰り返しながら、垓下で雌雄を決する一戦を迎える。この時、項羽の少数の軍勢を大軍で取り囲んだ劉邦は、味方の兵士たちに項羽の祖国楚の歌を歌わせる。この歌を聞いた項羽は味方の兵が寝返ったのだと誤解して絶望する。その絶望の中で歌ったとされるのが、「垓下歌」である。
・西楚覇王・項羽の愛姫・虞姫の唱った歌。 
・この悲劇に基づき後世、同題の詩が作られる。 
・虞美人 項羽の女官。「美人」は位。
・実質上の妻。『史記・項羽本紀』虞姫は、どの戦闘にもついて行った。


漢兵已略地,四方楚歌聲。
漢の軍勢がすでに楚の国土を侵略してきたようだ。四方周りは敵の漢軍であるがその中に裏切りなのか故郷の楚の歌声が聞こえる。
漢兵 漢の劉邦の軍隊。 
 すでに。 
略地 略:侵略。地:領地が侵される。
・裏切られて漢の兵士に楚人がなってしまったということ。故国の楚は、敵・漢の手に落ちてしまったことをいう。四面楚歌のこと。


大王意氣盡,賤妾何聊生。
落胆した覇王項羽大王の意気は尽き果てたのだ。この後、このわたくしは何を頼りに生きていけばいいのでしょうか。 
大王 西楚覇王・項羽への虞美人からの呼称。
意氣盡 意気が尽きた。
賤妾 このわたくし。いやしき わたくしめ。女性が謙譲して使う自称。
 たよる。よりどころとする。やすんじる。

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王昭君歎二首 其一
早信丹青巧、重貨洛陽師。
あの絵師が、あんなに似顔絵をうまく書くと早くから信じていたなら、私はたくさんの貨幣を都洛陽の絵師に使っていたことだろう。
千金買蟬鬢、百萬寫蛾眉。
千金で蟬鬢の美しさを買って、壱百萬金をかけて蛾眉の美しい姿を写させていたものを。
早く丹青の巧なるを信ぜば、重く洛陽の師に貨す。
千金 蟬鬢を買い、百萬 蛾眉を寫さしめしに。


王昭君歎二首 其二
今朝猶漢地、明旦入胡關。
今朝、わたしはまだここ漢の国土にいる、明日の午前中には異民族の玉関門にいるだろう。
高堂歌吹遠、遊子夢中還。

漢の土地にある高楼の奥座敷では、歌や笙笛が遠く聞こえてくる、旅に出た身の上ではもう夢の中でしか買えることが出来ないだろう。
今朝は猶お 漢地、明旦【めいたん】は胡關に入らん。
高堂【こうどう】 歌吹【かすい】 遠し、遊子 夢中に還らん。


沈満願 映水曲 
輕鬢學浮雲、雙蛾擬初月。
軽やかな鬢は浮んでいる雲の形をまねたものである。二つ並んだ美しい眉は8月の初月と見まごうものである。
水澄正落釵、萍開理垂髪。
水の澄んでいるところでは落ちかかっている釵子を正しくなおし、浮草がひらけたところではまた垂れかかる髪を手入する。
輕鬢【けいびん】浮雲【ふうん】を學び、雙蛾【そうが】初月【はつづき】に擬す。
水澄みて落釵【らくさ】を正し、萍【へい】開きて垂髪【すいはつ】を理【おさ】む。


現代語訳と訳註
(本文)
映水曲 
輕鬢學浮雲、雙蛾擬初月。
水澄正落釵、萍開理垂髪。


(下し文) 映水曲 
輕鬢【けいびん】浮雲【ふうん】を學び、雙蛾【そうが】初月【はつづき】に擬す。
水澄みて落釵【らくさ】を正し、萍【へい】開きて垂髪【すいはつ】を理【おさ】む。


(現代語訳)
軽やかな鬢は浮んでいる雲の形をまねたものである。二つ並んだ美しい眉は8月の初月と見まごうものである。
水の澄んでいるところでは落ちかかっている釵子を正しくなおし、浮草がひらけたところではまた垂れかかる髪を手入する。


(訳注)
映水曲 

すみきった水面に白く輝く月の影を映してさらに清らかにしてくれる。美人は水に映る自分の姿を、風に吹かれ、船が揺れて乱れた髪を直す。芸妓の舟遊びを詠ったものか、奥座敷で二人で過ごしたその夜遅く鏡を見て詠ったものか後世に影響を与えた詩である。


輕鬢學浮雲、雙蛾擬初月。
軽やかな鬢は浮んでいる雲の形をまねたものである。二つ並んだ美しい眉は8月の初月と見まごうものである。
雙蛾 蛾の触角のように細く弧を描いた美しいまゆ。転じて、美人。
初月(はつづき、しょげつ). 三日月。陰暦3日(ごろ)の、月で最初に見え始める月。特に、陰暦8月の初月。


水澄正落釵、萍開理垂髪。
水の澄んでいるところでは落ちかかっている釵子を正しくなおし、浮草がひらけたところではまた垂れかかる髪を手入する。


王昭君歎二首 其二 沈満願(梁の征西記室范靖の妻) 女流<115>玉台新詠集 女性詩 552 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1473

      
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王昭君歎二首 其二 沈満願(梁の征西記室范靖の妻) 女流<115>玉台新詠集 女性詩552 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1473


王昭君歎二首 其一
早信丹青巧、重貨洛陽師。
あの絵師が、あんなに似顔絵をうまく書くと早くから信じていたなら、私はたくさんの貨幣を都洛陽の絵師に使っていたことだろう。
千金買蟬鬢、百萬寫蛾眉。
千金で蟬鬢の美しさを買って、壱百萬金をかけて蛾眉の美しい姿を写させていたものを。
早く丹青の巧なるを信ぜば、重く洛陽の師に貨す。
千金 蟬鬢を買い、百萬 蛾眉を寫さしめしに。


王昭君歎二首 其二
今朝猶漢地、明旦入胡關。
今朝、わたしはまだここ漢の国土にいる、明日の午前中には異民族の玉関門にいるだろう。
高堂歌吹遠、遊子夢中還。

漢の土地にある高楼の奥座敷では、歌や笙笛が遠く聞こえてくる、旅に出た身の上ではもう夢の中でしか買えることが出来ないだろう。
今朝は猶お 漢地、明旦【めいたん】は胡關に入らん。
高堂【こうどう】 歌吹【かすい】 遠し、遊子 夢中に還らん。




現代語訳と訳註
(本文)
王昭君歎二首 其二
今朝猶漢地、明旦入胡關。
高堂歌吹遠、遊子夢中還。


(下し文) 王昭君歎二首 其二
今朝は猶お 漢地、明旦【めいたん】は胡關に入らん。
高堂【こうどう】 歌吹【かすい】 遠し、遊子 夢中に還らん。



(現代語訳)
今朝、わたしはまだここ漢の国土にいる、明日の午前中には異民族の玉関門にいるだろう。
漢の土地にある高楼の奥座敷では、歌や笙笛が遠く聞こえてくる、旅に出た身の上ではもう夢の中でしか買えることが出来ないだろう。



(訳注)
王昭君歎二首 其二
 玉台新詠集 巻六
沈滿願 :生卒年不詳。吳の武康の人。沈約の孫娘。征西記室范靖(靜)の妻。
王昭君の七十余年前に、烏孫公主の故事がある。烏孫公主は漢の皇室の一族、江都王・劉建の娘で、武帝の従孫になる劉細君のこと。彼女は、西域の伊犂地方に住んでいたトルコ系民族の国家・烏孫国に嫁した。ともに漢王朝の対西域政策と軍略を物語るものである。
悲愁歌 烏孫公主(劉細君) 女流<108>542 漢文委員会kannuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1443



今朝猶漢地、明旦入胡關。
今朝、わたしはまだここ漢の国土にいる、明日の午前中には異民族の玉関門にいるだろう。
 匈奴。ウィグル異民族。
 漢の時代、西域の関所としては玉門関。



高堂歌吹遠、遊子夢中還。
漢の土地にある高楼の奥座敷では、歌や笙笛が遠く聞こえてくる、旅に出た身の上ではもう夢の中でしか買えることが出来ないだろう。
高堂 高は高楼、堂はその建物の中で最もよい座敷。
歌吹 歌は唄、吹は笙などの笛。
遊子 旅人。出征兵士。この場合、漢の土地を後にした王昭君のこと。

王昭君歎二首 其一 沈満願(梁の征西記室范靖の妻) <114-#1>玉台新詠集 女性詩 551 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1470

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王昭君歎二首 沈満願(梁の征西記室范靖<范静の妻>)
沈滿願 :生卒年不詳。吳の武康の人。沈約の孫娘。征西記室范靖(靜)の妻。
西暦540年ごろの梁武帝最盛期頃に評価を受けたようである。ただ、沈約(441年 - 513年)は学問に精励し学識を蓄え、宋・斉・梁の3朝に仕えた。南斉の竟陵王蕭子良の招きに応じ、その文学サロンで重きをなし、「竟陵八友」の一人に数えられた。その後蕭衍(後の梁の武帝)の挙兵に協力し、梁が建てられると尚書令に任ぜられ、建昌県侯に封ぜられた。晩年は武帝の不興をこうむり、憂愁のうちに死去したというので、身分地位についてはそれほど高いものではなかったのではなかろうか。ただ、女性の立場で、王昭君の悲劇を呼んでいるわけで、詩界に参列できるだけのものであったことは間違いない。


王昭君歎二首 其一
早信丹青巧、重貨洛陽師。
あの絵師が、あんなに似顔絵をうまく書くと早くから信じていたなら、私はたくさんの貨幣を都洛陽の絵師に使っていたことだろう。
千金買蟬鬢、百萬寫蛾眉。

千金で蟬鬢の美しさを買って、壱百萬金をかけて蛾眉の美しい姿を写させていたものを。

早く丹青の巧なるを信ぜば、
    重く洛陽の師に貨す。
千金 蟬鬢を買い、
    百萬 蛾眉を寫さしめしに。


宮島(3)

現代語訳と訳註
(本文)

王昭君歎二首 其一
早信丹青巧、重貨洛陽師。
千金買蟬鬢、百萬寫蛾眉。


(下し文)
早く丹青の巧なるを信ぜば、重く洛陽の師に貨す。
千金 蟬鬢を買い、百萬 蛾眉を寫さしめしに。


(現代語訳)
あの絵師が、あんなに似顔絵をうまく書くと早くから信じていたなら、私はたくさんの貨幣を都洛陽の絵師に使っていたことだろう。
千金で蟬鬢の美しさを買って、壱百萬金をかけて蛾眉の美しい姿を写させていたものを。


(訳注)
王昭君歎二首 其一
◎王昭君

前漢の元帝の宮女。紀元前33年(竟寧元年)、匈奴との和親のため、呼韓邪単于に嫁し、「寧胡閼氏」としてその地で没した。名は檣。昭君は字。明君、明妃は、「昭」字をさけたための晋以降の称。
『漢書・本紀・元帝紀』「竟寧元年春正月,匈奴 呼韓邪單于來朝。詔曰:「匈奴呼韓邪單于不忘恩德,鄕慕禮義,復修朝賀之禮,願保塞傳之無窮,邊垂長無兵革之事。其改元爲竟寧,賜單于待詔掖庭王檣爲閼氏。」
王檣 王昭君のこと。
閼氏 單于の正妻の称で皇后のこと。
『漢書・匈奴傳・下』「王昭君號寧胡閼氏,生一男伊屠智牙師,爲右日逐王。」
多くの子供をもうけ、夫の没後は、匈奴の習慣に従った再婚をし、父子二代の妻となり、更に子供を儲けている。子供達の名も記録されている。
辺疆安寧のための犠牲になったことで漢・匈奴友好使節の役を果たした。
李白33-35 王昭君を詠う 三首五言絶句『王昭君』、雑言古詩、『王昭君』、雑言古詩『于闐採花』、王昭君ものがたり、『王昭君 二首』 白楽天
李 白 楊貴妃を詠う
 ・ 李白 
王昭君 二首
  白楽天 楊貴妃を詠う
 ・
白楽天王昭君を詠う二首


聞歌
斂笑凝眸意欲歌,高雲不動碧嵯峨。
銅臺罷望歸何處,玉輦忘還事幾多。
靑冢路邊南雁盡,細腰宮裏北人過。
此聲腸斷非今日,香灺燈光奈爾何。
李商隠 3 聞歌


王昭君の七十余年前に、烏孫公主の故事がある。烏孫公主は漢の皇室の一族、江都王・劉建の娘で、武帝の従孫になる劉細君のこと。彼女は、西域の伊犂地方に住んでいたトルコ系民族の国家・烏孫国に嫁した。ともに漢王朝の対西域政策と軍略を物語るものである。
悲愁歌 烏孫公主(劉細君) 女流<108>542 漢文委員会kannuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1443


早信丹青巧、重貨洛陽師。
あの絵師が、あんなに似顔絵をうまく書くと早くから信じていたなら、私はたくさんの貨幣を都洛陽の絵師に使っていたことだろう。
丹青 1 赤と青。丹碧。 2 絵の具。また、彩色。「―の妙を尽くす」 3 《「たんぜい」とも》絵画。また、絵の具で描くこと。
重貨 貨は貨幣、絵師への賄賂ということ。賄賂を多くわたすということ。
洛陽師 絵師のこと。直接的な名前をぼかすため、洛陽の都の絵師をいうのであるが、王昭君の絵を描いたのは毛延壽は長安の人である。この絵師は斬首刑となっているので、こういう詩においては長安より洛陽という方が「粋」というものであろう。


千金買蟬鬢、百萬寫蛾眉。
千金で蟬鬢の美しさを買って、壱百萬金をかけて蛾眉の美しい姿を写させていたものを。
蟬鬢 蝉の羽のように美しい鬢。詩経で蟬を螓とする。
蛾眉  (1)(蛾の触角のような形の)細く美しい眉(まゆ)。 (2)美人。 (3)三日月。眉月。

『詩経、衛風、碩人』四章に美人の様子を詠っている。
「手如柔荑、膚如凝脂。領如蝤蠐、歯如瓠犀、螓首蛾眉。巧笑倩兮、美目盻兮。」(手は柔荑の如く、膚は凝脂の如し。領は蝤蠐の如く、歯は瓠犀の如し、螓首 蛾眉。巧笑 倩たり、美目 盻たり。)
“手は柔らかい「つばな」のよう、肌は白く凝った脂肪のようであり、領は蝤蠐の如く、歯は瓠犀の如し、蝉の羽のように薄く梳いた髪。「蛾眉」は、蛾の触覚のように弧をえがいた三日月形の眉、笑う口元のあでやかさ、ぱっちりとした美しい目。”




王昭君とは
前漢の元帝の時代、匈奴の呼韓邪単于が、漢の女性を閼氏(匈奴の言葉で君主の妻)にしたいと、元帝に依頼したところ(逆に漢王朝が持ちかけたという説もある)王昭君が選ばれた。『西京雑記』によると、元帝は匈奴へ贈る女性として後宮の中の一番醜い女性を選ぶため、宮女の似顔絵帳の中の一番醜い女性を選ぶことにした。宮女たちはそれぞれ自分の似顔絵を美しく描いてもらうため、似顔絵師の毛延寿に賄賂を贈っていたが、ただ一人賄賂を贈らなかった王昭君は一番醜く描かれていたため、王昭君が匈奴への嫁として選ばれた。皇帝に別れを告げるための式で王昭君を初めて見た元帝は王昭君の美しさに仰天したが、匈奴との関係悪化を恐れ、この段階になって撤回することも出来ないため渋々送り出した。その後の調査で、宮女たちから賄賂を取り立てていた毛延寿の不正が発覚し、激怒した元帝は毛延寿を斬首刑に処したという。

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答詩一首 秦嘉妻徐淑 女流<113-#2>玉台新詠集 女性詩 550 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1467


妾身兮不令。嬰疾兮來歸。
私の体の調子はあまりよくありません。病にかかってしまったのでそちらに行きかけたのですが帰ってしまいました。
沉滯兮家門。歷時兮不差。
家に帰ってからずっと静かに寝ておりますが、時節がたってもよくなりません。
曠廢兮侍覲。情敬兮有違。
旅先のあなたのおそばに連れ立っていたいのですがお目にかかるのさえ怠り、愛情、敬愛、礼儀にたがえてしまいました。
君今兮奉命。遠適兮京師。
あなたは今、あらたな命令を承け賜られて、遠く京師に往かれるそうですね。
悠悠兮離別。無因兮敘懷。

はるばるとしたお別れになりそうです、暫くは私の思いをのべる方法もないのでしょうね。
#2
瞻望兮踴躍。佇立兮徘徊。
そちらの方を眺めてはちょっとおどってみます、そして立ちどまったりしてぶらぶらしてみます。
思君兮感結。夢想兮容輝。
あなたのことを思っての感情が結ばれるよう、夢の中であなたの姿を思い浮かべてみます。
君發兮引邁。去我兮日乖。
あなたはこれから出発され、私から日ごとに離れて乖ことになります。
恨無兮羽翼。高飛兮相追。
恨めしいのは、羽がなくて高く飛べないしあなたを折って行けないことです。
長吟兮永嘆。淚下兮沾裳。

ただできるのは、この詩を長吟してこえをながくすることですが、落ちる涙で着物のすそもぐっしょりと濡れています。


現代語訳と訳註
(本文)#2
瞻望兮踴躍。佇立兮徘徊。思君兮感結。夢想兮容輝。
君發兮引邁。去我兮日乖。恨無兮羽翼。高飛兮相追。
長吟兮永嘆。淚下兮沾裳。


(下し文) #2
瞻望【せんぼう】して踴躍【ゆうやく】し、佇立【ちょりつ】して徘徊【はいかい】す。
君を思いて 感 結ばれ。容輝【ようき】を夢想す。
君 發して引邁【いんまい】し、我を去り 日に乖【そむ】く。
恨む無くは 羽翼【うよく】し、高く飛びて相い追うを。
長吟して永嘆し、淚下りて裳を沾【うるお】す。


(現代語訳)
そちらの方を眺めてはちょっとおどってみます、そして立ちどまったりしてぶらぶらしてみます。
あなたのことを思っての感情が結ばれるよう、夢の中であなたの姿を思い浮かべてみます。
あなたはこれから出発され、私から日ごとに離れて乖ことになります。
恨めしいのは、羽がなくて高く飛べないしあなたを折って行けないことです。
ただできるのは、この詩を長吟してこえをながくすることですが、落ちる涙で着物のすそもぐっしょりと濡れています。


(訳注)
瞻望兮踴躍。佇立兮徘徊。

そちらの方を眺めてはちょっとおどってみます、そして立ちどまったりしてぶらぶらしてみます。
瞻望 遠く見渡すこと。仰ぎ見て慕う。「咨嗟」はため息をつく。高貴な人のすばらしさを敬慕しつつ、ため息をついてうらやむ意味。
踴躍 踊躍。喜んで、おどり上がること。とびはねること。
佇立 しばらくの間立ち止まっていること。たたずむこと。ちょりゅう。


思君兮感結。夢想兮容輝。
あなたのことを思っての感情が結ばれるよう、夢の中であなたの姿を思い浮かべてみます。


君發兮引邁。去我兮日乖。
あなたはこれから出発され、私から日ごとに離れて乖ことになります。


恨無兮羽翼。高飛兮相追。
恨めしいのは、羽がなくて高く飛べないしあなたを折って行けないことです。


長吟兮永嘆。淚下兮沾裳。
ただできるのは、この詩を長吟してこえをながくすることですが、落ちる涙で着物のすそもぐっしょりと濡れています。


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答詩一首 秦嘉妻徐淑 女流<113-#1>玉台新詠集 女性詩 549 漢文委員会kannuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1464

秦嘉 贈婦詩三首
其一
人生譬朝露,居世多屯蹇。憂艱常早至,歡會常苦晚。
念當奉時役,去爾日遙遠。遣車迎子還,空往復空返。
省書情悽愴,臨食不能飯。獨坐空房中,誰與相勸勉。
長夜不能眠,伏枕獨輾轉。憂來如迴圈,匪席不可卷。
其二
皇靈無私親,為善荷天祿。傷我與爾身,少小罹煢獨。
既得結大義,歡樂苦不足。念當遠離別,思念敘款曲。
河廣無舟梁,道近隔丘陸。臨路懷惆悵,中駕正躑躅。
浮雲起高山,悲風激深谷。良馬不回鞍,輕車不轉轂。
針藥可屢進,愁思難為數。貞士篤終始,恩義不可屬。

其三
肅肅僕夫征,鏘鏘揚和鈴。清晨當引邁,束帶待雞鳴。
顧看空室中,仿佛想姿形。一別懷萬恨,起坐為不寧。
何用敘我心,遺思致款誠。寶釵好耀首,明鏡可鑒形。
芳香去垢穢,素琴有清聲。詩人感木瓜,乃欲答瑤瓊。
愧彼贈我厚,慚此往物輕。雖知未足報,貴用敘我情。

この詩に対して徐淑が返した詩で兮をはさんだ五言の形式ではあるが雰囲気だけの五言詩である。


答詩一首 秦嘉妻徐淑
妾身兮不令。嬰疾兮來歸。
私の体の調子はあまりよくありません。病にかかってしまったのでそちらに行きかけたのですが帰ってしまいました。
沉滯兮家門。歷時兮不差。
家に帰ってからずっと静かに寝ておりますが、時節がたってもよくなりません。
曠廢兮侍覲。情敬兮有違。
旅先のあなたのおそばに連れ立っていたいのですがお目にかかるのさえ怠り、愛情、敬愛、礼儀にたがえてしまいました。
君今兮奉命。遠適兮京師。
あなたは今、あらたな命令を承け賜られて、遠く京師に往かれるそうですね。
悠悠兮離別。無因兮敘懷。

はるばるとしたお別れになりそうです、暫くは私の思いをのべる方法もないのでしょうね。
#2
瞻望兮踴躍。佇立兮徘徊。思君兮感結。夢想兮容輝。
君發兮引邁。去我兮日乖。恨無兮羽翼。高飛兮相追。
長吟兮永嘆。淚下兮沾裳。


現代語訳と訳註
(本文)

妾身兮不令。嬰疾兮來歸。沉滯兮家門。歷時兮不差。
曠廢兮侍覲。情敬兮有違。君今兮奉命。遠適兮京師。
悠悠兮離別。無因兮敘懷。


(下し文)
妾が身 令【よ】からず、疾に嬰【かか】りて 來りて歸る。
家門に沉滯して、時を歷【ふ】るを 差【い】えず。
侍覲【じきん】を曠廢【こうはい】し、情敬【じょうけい】違【たが】うあり。
君 今 命を奉じ、遠く京師に適【ゆ】く。
悠悠たる離別、懷を敘するに因【よし】無し。


(現代語訳)
私の体の調子はあまりよくありません。病にかかってしまったのでそちらに行きかけたのですが帰ってしまいました。
家に帰ってからずっと静かに寝ておりますが、時節がたってもよくなりません。
旅先のあなたのおそばに連れ立っていたいのですがお目にかかるのさえ怠り、愛情、敬愛、礼儀にたがえてしまいました。
あなたは今、あらたな命令を承け賜られて、遠く京師に往かれるそうですね。
はるばるとしたお別れになりそうです、暫くは私の思いをのべる方法もないのでしょうね。


(訳注)
妾身兮不令。嬰疾兮來歸。
私の体の調子はあまりよくありません。病にかかってしまったのでそちらに行きかけたのですが帰ってしまいました。
妾身 古代女子对自己的谦称。・不令 不善。ふだんの状態とは違うこと。特に、貴人の病気についていう。婦人病。
嬰疾 病気にかかる。・嬰生まれたばかりの子、生まれたばかりの女の子、加える、首にかける、繞らせる、取り囲む、(攖と通じて)触れる、罪を犯す、(罌と通じて)土器、(瓔と通じて)首飾り、(纓と通じて)冠の紐、という意味がある。


沉滯兮家門。歷時兮不差。
家に帰ってからずっと静かに寝ておりますが、時節がたってもよくなりません。
沉滯 廟熱などで動けない状態にあること。月経不順、生理痛などで動けない状態。
家門 一門、一族。血統、系譜によって結び付けられた血縁集団のこと。ここでは自宅の門というところか。
不差 変わりばえがしない。同じようなもの。


曠廢兮侍覲。情敬兮有違。
旅先のあなたのおそばに連れ立っていたいのですがお目にかかるのさえ怠り、愛情、敬愛、礼儀にたがえてしまいました。
曠廢 すてる。なげやりにする。おこたる。・侍覲 面会して一緒にいる。おそばに連れ立っている。・情敬 情愛。敬愛。


君今兮奉命。遠適兮京師。
あなたは今、あらたな命令を承け賜られて、遠く京師に往かれるそうですね。
京師 みやこ。前漢(西漢)は長安。後漢(東漢)時代なので、洛陽。


悠悠兮離別。無因兮敘懷。
はるばるとしたお別れになりそうです、暫くは私の思いをのべる方法もないのでしょうね。
 しゃべる,話す叙家常世間話をする.(1) 述べる,陳述する.(2) 順序,等級を付ける铨叙《旧》官吏を評定する.(3) 序( xu )と通用.叙别 xubie[動]別れの語らいをする,別れのあいさつを交わす.

歸風送遠操 趙飛燕 女流<112>玉台新詠集 女性詩 548 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1461

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第一回李商隠 1 錦瑟
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趙 飛燕(ちょう ひえん、? - 紀元前1年)は前漢成帝の皇后。元名を宜主と称した。
正史である『漢書』での趙飛燕に関する記述は非常に簡単なものであるが、稗史においては美貌を以って記述されており、優れた容姿を表現する環肥燕瘦の燕痩が示すのが趙飛燕である(環とは楊貴妃の事、幼名・玉環による)。
その出生は卑賤であり、幼少時に長安にたどり着き、号を「飛燕」とし歌舞の研鑽を積み、その美貌が成帝の目にとまり妹「合徳」と一緒に後宮に迎えられた。後宮では成帝の寵愛を受け、更に妹の趙合徳を昭儀として寵愛を受けている。成帝は趙飛燕を皇后とすることを計画する。太后の強い反対を受けるが前18年12月に許皇后を廃立し、前16年に遂に立皇后が実現した。 
前7年、成帝が崩御すると事態が一変する。成帝が急死したことよりその死因を趙姉妹に嫌疑がかけられ、妹の趙合徳が自殺に追い込まれた。趙飛燕には、自ら子がなかったため哀帝の即位を支持、これにより哀帝が即位すると皇太后としての地位が与えられた。しかし6年後、前1年に哀帝が崩御し平帝が即位すると支持基盤を失った趙飛燕は、王莽により宗室を乱したと断罪され皇太后から孝成皇后へ降格が行われ、更に庶人に落とされ間もなく自殺した。


姉は「細腰」、妹はぽっちゃりと対照的な姉妹だったが、姉は皇后に妹は昭儀にそれぞれ立てられた。
趙姉妹は交代で皇帝の寵愛を受けたのである。


細腰
楚の霊王が細い腰を好んだという。
・『漢書・馬寥傳』「呉王好劍客,百姓多瘡瘢。楚王好細腰,宮中多餓死。」
・『荀子・君道』「楚莊王好細腰,故朝有餓人。」
・『韓非子』「越王好勇,而民多輕死。楚靈王好細腰,而國中多餓人。」「楚の霊王は細腰を好み、国中餓する人多し」。

李商隠『燕臺詩四首 其四 』
當時歡向掌中銷,桃葉桃根雙姊妹。

≪あの頃の歓びというものは王の趣向に迎合して、この掌中で消えていくか細さを求め餓死者さえ出たのだ。あまたの王、富貴が姉妹を妾家として迎えた、あの王獻之の妾家に「桃葉復た桃葉、桃樹は桃根に連なる」といって桃葉・桃根姉妹と同時に歓びを求めた。≫
○歡向 漢・成帝の寵愛を受けた趙飛燕は体が軽く、「掌上に舞う」ことができたという(『自民六帖』など)。また梁の羊侃の妓女張浄琬は腰周りがわずか一尺六寸(四十cm弱)、「掌中の舞い」ができたという(『梁書』羊侃伝)。○桃葉桃根 桃葉は東晋・王献之の愛人。「桃葉歌二首」其二「桃葉復た桃葉、桃樹は桃根に連なる。相憐れむは兩楽事なるに、獨我をして慇懃ならしむ」(『王台新詠』巻十)。そこから後人が桃菓・桃根を姉妹とする附会の説が生まれたと漏浩はいう。『土花漠漠として頽垣を囲み、中にあり桃葉桃根の魂、夜深く踏むことあまねし階下の月、憐れなり羅襪の終に痕なきを。』
「楚王細腰を好み朝に餓人有り」
 お上の好む所に下の者が迎合するたとえで、そのために弊害が生じやすいこと。春秋時代に、楚王が腰の細い美女を好んだので、迎合する官僚、宮女たちは痩せようとして食事をとらなくなり、餓死する者が多く出たという話から。「楚王細腰を好みて宮中餓死多し」ともいう。なお、楚王については、荘王とする説と霊王とする説がある。

燕臺詩四首 其四 冬#2 李商隠135 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集150- 134-2



趙飛燕 作 『歸風送遠操』

涼風起兮天隕霜。
涼風は秋風を起し吹きさらしてくると、天は純白の霜を降らせる季節に変わる。
懷君子兮渺難望。
我が夫(今は亡き哀帝)のことを思いうかべるけれども、遠く隔たっても望むこともできはしない。

感予心兮多慨慷。

私の心にあるのは悲しいことだけであり、それはいたずらに嘆くだけなのだ。

帰風送遠操【きふうそうえんそう】
涼風【りょうふう】起【おこ】って、天は霜を隕【おと】す。
君子を懐【おも】えども、渺【びょう】として望み難し。
予【わ】が心を感ぜしめ、慨慷【がいこう】多し。


現代語訳と訳註
(本文)

涼風起兮天隕霜。
懷君子兮渺難望。
感予心兮多慨慷。


(下し文)
涼風【りょうふう】起【おこ】って、天は霜を隕【おと】す。
君子を懐【おも】えども、渺【びょう】として望み難し。
予【わ】が心を感ぜしめ、慨慷【がいこう】多し。


(現代語訳)
涼風は秋風を起し吹きさらしてくると、天は純白の霜を降らせる季節に変わる。
我が夫(今は亡き哀帝)のことを思いうかべるけれども、遠く隔たっても望むこともできはしない。

私の心にあるのは悲しいことだけであり、それはいたずらに嘆くだけなのだ。

(訳注)
歸風送遠操

西京雜記(第五巻)に「趙皇后には宝琴があって、よくこの歌をなした。」とあり、この詩はそこにはなく、古詩紀「二巻」にある。紀元前1年に哀帝が崩御し平帝が即位して後、王莽の策謀により皇后、平民に貶められるまでの間の作であろう。


涼風起兮天隕霜。
涼風は秋風を起し吹きさらしてくると、天は純白の霜を降らせる季節に変わる。(王莽の陰湿な策謀でだれも見向きもしなくなる様子をいう)
・涼風 立秋の頃の涼しい風のこと。この時の風が突風ではないが、それが秋風を起す。そして悲愁を起す。
・隕 おちる おとす空から地上に落ちる。「隕石」


懷君子兮渺難望。
我が夫(今は亡き哀帝)のことを思いうかべるけれども、遠く隔たっても望むこともできはしない。
 水面などが限りなく広がっているさま。はるかにかすんでいるさま。


感予心兮多慨慷。
私の心にあるのは悲しいことだけであり、それはいたずらに嘆くだけなのだ。
慨慷 慷慨:1 世間の悪しき風潮や社会の不正などを、怒り嘆くこと。2 意気が盛んなこと。また、そのさま。



漢の成帝の寵妃であった班婕妤が寵を失い長信宮に移ってからのやるせない思いを王昌齢が詩にしたもの
王昌齢
怨歌行(秋扇賦)

芙蓉不及美人粧、水殿風来珠翠香。
却恨含情掩秋扇、空懸明月待君主。
芙蓉も及ばず 美人の粧い
水殿 風来って 珠翠香ばし
却って怨む 情を含んで秋扇を掩い
空しく明月を懸けて 君王の待ちしを
芙蓉の美しさも、美人の粧いに及ばない。
水殿に風が吹いて来て、珠翠が香しい。
却って恨む、情を含んで秋扇を掩い。
空しく名月を懸けて、君主の寵愛が戻るを待っている。



李白が楊貴妃を趙飛燕と比して詠った
まだ楊太真であった頃のものである。


宮中行樂詞八首 其二
柳色黃金嫩、梨花白雪香。
玉樓巢翡翠、珠殿鎖鴛鴦。
選妓隨雕輦、徵歌出洞房。
宮中誰第一、飛燕在昭陽。
宮中行楽詞 其の二
柳色(りゅうしょく)  黄金にして嫩(やわら)か、梨花(りか)  白雪(はくせつ)にして香(かんば)し。
玉楼(ぎょくろう)には翡翠(ひすい)巣くい、珠殿(しゅでん)には鴛鴦(えんおう)を鎖(とざ)す。
妓(ぎ)を選んで雕輦(ちょうれん)に随わしめ、歌を徴(め)して洞房(どうぼう)を出(い)でしむ。
宮中(きゅうちゅう)  誰か第一なる、飛燕(ひえん)  昭陽(しょうよう)に在り。

宮中行樂詞八首 其二 李白 Kanbuniinkai紀頌之の漢詩 李白143



清平調詞 三首 其二
一枝紅艷露凝香、云雨巫山枉斷腸。
借問漢宮誰得似、可憐飛燕倚新妝。
其の二
一枝の紅艶 露香を凝らす、雲雨 巫山 枉しく断腸。
借問す 漢宮 誰か似るを得たる、可憐なり 飛燕 新妝に倚る。

清平調詞 三首 其二 李白 :Kanbuniinkai紀頌之の漢詩 李白161


怨歌行 班婕妤(倢伃) 漢詩<111>玉台新詠集 ・古詩源・文選 女性詩547 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1458

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怨歌行  
新裂齊紈素,皎潔如霜雪。
新たらしい斉の国産の白練り絹を裂いている、それは純白、潔白で穢れない清い白さは、霜や雪のようだ。
裁爲合歡扇,團團似明月。
裁断して、両面から張り合わせの扇を作っている。丸くしてまるで満月のようです。
出入君懷袖,動搖微風發。
この扇はわが君の胸ふところや袖に出たり入ったりして、搖動かすたびに、そよ風を起していくでしょう。
常恐秋節至,涼風奪炎熱。
でもいつもこころに恐れていることがあるのは秋の季節が来ることなのです。秋の清々しい風は、わが君の情熱を奪って涼しくしてしまうのです。
棄捐篋笥中,恩情中道絶。
そうすると、屑籠の中に投げ捨てられてしまうことになります。わが君、帝王の寵愛が途中で絶えてしまうことになるのです。


怨歌行
新たに 齊の 紈素を 裂けば,皎潔にして  霜雪の 如し。
裁ちて 合歡の扇と 爲せば,團團として  明月に 似たり。
君が懷袖に  出入し,動搖すれば  微風 發す。
常に恐らくは  秋節の至りて,涼風  炎熱を 奪ひ。
篋笥の中に  棄捐せられ,恩情  中道に 絶えんことを。




怨歌行
『古詩源』では『怨歌行』、『玉台新詠』で『怨詩』とする。相和歌辞・楚調曲。
同様の趣に 、
謝玄暉 (謝朓)
『玉階怨』
  「夕殿下珠簾,流螢飛復息。長夜縫羅衣,思君此何極。」(夕殿 珠簾を下し,流螢 飛び 復(また) 息(とま)る。長夜 羅衣を 縫ひ,君を思うこと 此に なんぞ 極(きわ)まらん。)
『金谷聚』 「渠碗送佳人,玉杯邀上客。車馬一東西,別後思今夕。」(渠碗(きょわん) 佳人を 送り,玉杯 上客を 邀(むか)ふ。車馬 一(ひとたび) 東西にせられ,別後 今夕を 思はん。)
李白   『怨情』    「美人捲珠簾,深坐嚬蛾眉。但見涙痕濕,不知心恨誰。」
美人 珠簾(しゅれん)を捲き、深く坐して蛾眉を顰(ひそ)む。但(ただ)見る 涙痕の湿(うるおえる)を、知らず 心に誰をか恨む。  
班婕妤 王維
怪來妝閣閉,朝下不相迎。
總向春園裏,花間笑語聲。

怪しむらくは妝閣【さうかく】の 閉づることを,朝より下りて  相ひ迎へず。
總て春園の裏に 向いて,花間 笑語の聲。

李白  紫藤樹
紫藤掛雲木、花蔓宜陽春。
密葉隠歌島、香風留美人。
李白  客中行 
蘭陵美酒鬱金香,玉碗盛來琥珀光。
但使主人能醉客,不知何處是他鄕。


 
班婕妤(倢伃) (はん しょうよ、生没年不詳)は中国前漢の成帝の愛人。班況の娘で、班固や班超の従祖母に当たる女性。成帝の寵愛を得たが、後に趙飛燕に愛顧を奪われ、大后を長信宮に供養することを理由に退いた。長信宮に世を避けた倢伃は、悲しんで「怨歌行」を作る。その詩は『文選』『玉台新詠』『楽府詩集』『古詩源』などに載せられる。失寵した女性の象徴として、詩の主題にあつかわれることが多い。晋の陸機や唐の王維、王昌齢「西宮春怨・長信秋詞」などがそれである。




現代語訳と訳註
(本文)
怨詩  
新裂齊紈素,皎潔如霜雪。
裁爲合歡扇,團團似明月。
出入君懷袖,動搖微風發。
常恐秋節至,涼風奪炎熱。
棄捐篋笥中,恩情中道絶。


(下し文) 怨詩
新たに 齊の 紈素を 裂けば,皎潔にして  霜雪の 如し。
裁ちて 合歡の扇と 爲せば,團團として  明月に 似たり。
君が懷袖に  出入し,動搖すれば  微風 發す。
常に恐らくは  秋節の至りて,涼風  炎熱を 奪ひ。
篋笥の中に  棄捐せられ,恩情  中道に 絶えんことを。


(現代語訳)
新たらしい斉の国産の白練り絹を裂いている、それは純白、潔白で穢れない清い白さは、霜や雪のようだ。
裁断して、両面から張り合わせの扇を作っている。丸くしてまるで満月のようです。
この扇はわが君の胸ふところや袖に出たり入ったりして、搖動かすたびに、そよ風を起していくでしょう。
でもいつもこころに恐れていることがあるのは秋の季節が来ることなのです。秋の清々しい風は、わが君の情熱を奪って涼しくしてしまうのです。
そうすると、屑籠の中に投げ捨てられてしまうことになります。わが君、帝王の寵愛が途中で絶えてしまうことになるのです。


(訳注)
怨歌行

『古詩源』、『文選』では『怨歌行』、『玉台新詠』で『怨詩』とする。同様の趣に 、謝朓の『玉階怨』「夕殿下珠簾,流螢飛復息。長夜縫羅衣,思君此何極。」や、 李白の『怨情』「美人捲珠簾,深坐嚬蛾眉。但見涙痕濕,不知心恨誰。」などがある。


新裂齊紈素、皎潔如霜雪。
新たらしい斉の国産の白練り絹を裂いている、それは純白、潔白で穢れない清い白さは、霜や雪のよう。
新裂 あらたに、さきやぶる。
齊紈素 斉の国に産する白い練り絹。 
皎潔 白くて穢れなく清いさま。純潔。純白。「皎潔」を「鮮潔」ともする。
霜雪 霜や雪のように潔白な喩え。


裁爲合歡扇、團團似明月。
裁断して、両面から張り合わせの扇を作っている。丸くしてまるで満月のようです。
裁爲 裁断して…とする。
合歡扇 あわせおうぎ。細い絹で作ったもので、両面から張り合わせているもの。ここでは、自分を円くて潔白な扇におきかえたい、という願いでもある。・合歡:喜びをともにする。夫婦の情交。
團團 丸いさま。「団円」で家族や夫婦の憩いの集いをも暗示する。
・明月 清らかに澄んだ月。仲秋の月。満月。


出入君懷袖、動搖微風發。
この扇はわが君の胸ふところや袖に出たり入ったりして、搖動かすたびに、そよ風を起していくでしょう。
出入 出たり入ったりする。 
君懷袖 わが君の胸ふところや袖に出たり入ったりして。
動搖 ゆりうごかす。・微風 そよ風。・ 起きる。


常恐秋節至、涼風奪炎熱。
でもいつもこころに恐れていることがあるのは秋の季節が来ることなのです。秋の清々しい風は、わが君の情熱を奪って涼しくしてしまうのです。
・常恐 いつも(…を)おそれる。
・秋節至 秋の季節が来てしまうこと。
・涼風 秋の清々しい風が扇のいらない涼しい状態にする。
・奪炎熱 きびしい夏の暑さ。わが君の私に対する情熱が奪われること。


棄捐篋笥中、恩情中道絶。
そうすると、屑籠の中に投げ捨てられてしまうことになります。わが君、帝王の寵愛が途中で絶えてしまうことになるのです。
棄捐 すてる。すてられる。 
篋笥 はこ。小箱。竹で編んだ小箱や竹・葦で編んだ方形の籠。ここでは、屑籠のような物。
恩情 わが君、帝王の寵愛。 
中道絶 途中で絶える。






班倢伃三首 李白
班倢伃三首(其一)
玉窗螢影度  玉窗螢影たり
金殿人声絶  金殿人声絶ゆ
秋夜守羅幃  秋夜羅幃を守る
孤燈耿明滅  孤燈耿として明滅

班倢伃三首(其二)
宮殿生秋草  宮殿に秋草は生じ
君王恩幸疏  君王の恩幸は疏なり
那堪聞鳳吹  なんぞ鳳吹聞くを堪えん
門外度金輿  門外に金輿たり

班倢伃三首(其三)
怪来妝閣閉  怪しむらくは妝閣の閉ずるを
朝下不相迎  朝より下りて相迎えず
総向春園裏  総て向かう春園の裏
花間笑語声  花間に笑語の声
 


班婕妤 王維
怪來妝閣閉,朝下不相迎。
總向春園裏,花間笑語聲。


班婕妤
怪しむらくは妝閣【さうかく】の 閉づることを,朝より下りて  相ひ迎へず。
總て春園の裏に 向いて,花間 笑語の聲。



西宮秋怨  王昌齢

芙蓉不及美人粧、殿風来珠翠香。
却恨含情掩秋扇、空懸明月待君主。

芙蓉も及ばず 美人の粧い、水殿 風来って 珠翠香ばし。
却って怨む 情を含んで秋扇を掩い、空しく明月を懸けて 君王の待ちしを。

  

漢の成帝の寵妃であった班婕妤が寵を失い長信宮に移ってからのやるせない思いを王昌齢が詩にしたもの(「西宮春怨」という春の歌や長信秋詞というものもある)また唐詩選には彼女のことを歌った詩に、王維の「班婕妤」や崔国輔の「長信草」なども収められている。秋扇を掩いとは班婕妤自身がわが身を嘆いた詩(怨歌行)に秋になって不要になった扇を自らが隠すという風に使っている。ここでの芙蓉は蓮の花のことだそうです。


怨詩 王昭君  漢詩<110-#2>玉台新詠集 女性詩 546 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1455

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 李商隠詩李商隠/韓愈韓退之(韓愈)・柳宗元・李煜・王安石・蘇東坡 
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怨詩
秋木萋萋,其葉萎黄。
秋になって樹木がなお茂っているけれど、やがてその葉はしおれて黄ばんでいくことになる。
有鳥處山,集于苞桑。
鳥はそこここの山に棲んでいて、クワの木の根元に集まってくるものだ。
養育毛羽,形容生光。
養い育ててきた羽を育てて、容貌は光り輝いている。
既得升雲,上遊曲房。
雲の上のような宮殿に昇ることとなったばかりか、曲がりくねった女官の後宮に過ごす身となった。 
離宮絶曠,身體摧藏。
離宮は極めて広くわたしの体は、気力さえも衰えくじかれてきた。
志念抑沈,不得頡頏。
わたしの心は、沈鬱になってしまって、鳥のように大空に飛び上がったり、舞い下りたりすることがまったくできないのです。

雖得委食,心有徊徨。
食べることは至れり尽くせり養っていただいているとはいうものの、心の中だけでも、自由にさまようことを思うのです。
我獨伊何,來往變常。
わたしは、このようにひとりだけでどうしているのでしょう。人の行き来というものが世の常と異なっているのではないでしょうか。
翩翩之燕,遠集西羌。
燕がひらりひらりと身軽く飛んで、はるか西の方のチベット系の民族の許にあつまりとどまっている。
高山峨峨,河水泱泱。
此処と故郷を隔てる高山は、けわしく高大なものであるし、黄河の流れは、立派で大きくさかんにながれている。(大自然は何も変わらない)
父兮母兮,道里悠長。
父よ、母よ、故郷までの道程は、遙かに遠いものです。
嗚呼哀哉,憂心惻傷。
ああ、かなしいことです。表情や態度に表せないのですが憂えた心で、憐れみいたんでいるのです。

 
怨詩
秋木 萋萋【せいせい】として,其の葉 萎黄【いこう】す。
鳥有り 山に處【を】り,苞桑【ほうそう】に集【むらが】る。
毛羽を養育し,形容 光を生ず。
既に雲に升【のぼ】るを得て,上のかた 曲房に遊ぶ。
離宮 絶【はなは】だ 曠【ひろ】くして,身體 摧藏【さいぞう】す。
志念 抑沈【よくちん】して,頡頏【けつこう】するを得ず。

委食を得【う】と 雖も,心に 徊徨【かいこう】する有り。
我 獨り 伊【こ】れ 何ぞ,來往【らいおう】常を變ず。
翩翩【へんぺん】たる燕,遠く西羌【せいきょう)に集【いた】る。
高山峨峨【がが】たり,河水泱泱【おうおう】たり。
父や母や,道里 悠長なり。
嗚呼【ああ】 哀しい哉,憂心惻傷【そくしょう】す。


oushokun05
現代語訳と訳註
(本文)

雖得委食,心有徊徨。
我獨伊何,來往變常。
翩翩之燕,遠集西羌。
高山峨峨,河水泱泱。
父兮母兮,道里悠長。
嗚呼哀哉,憂心惻傷。


(下し文)
委食を得【う】と 雖も,心に 徊徨【かいこう】する有り。
我 獨り 伊【こ】れ 何ぞ,來往【らいおう】常を變ず。
翩翩【へんぺん】たる燕,遠く西羌【せいきょう)に集【いた】る。
高山峨峨【がが】たり,河水泱泱【おうおう】たり。
父や母や,道里 悠長なり。
嗚呼【ああ】 哀しい哉,憂心惻傷【そくしょう】す。


(現代語訳)
食べることは至れり尽くせり養っていただいているとはいうものの、心の中だけでも、自由にさまようことを思うのです。
わたしは、このようにひとりだけでどうしているのでしょう。人の行き来というものが世の常と異なっているのではないでしょうか。
燕がひらりひらりと身軽く飛んで、はるか西の方のチベット系の民族の許にあつまりとどまっている。
此処と故郷を隔てる高山は、けわしく高大なものであるし、黄河の流れは、立派で大きくさかんにながれている。(大自然は何も変わらない)
父よ、母よ、故郷までの道程は、遙かに遠いものです。
ああ、かなしいことです。表情や態度に表せないのですが憂えた心で、憐れみいたんでいるのです。


(訳注)
雖得委食,心有徊徨。

食べることは至れり尽くせり養っていただいているとはいうものの、心の中だけでも、自由にさまようことを思うのです。
委食 委ねやしなう。まかせくわせる。
心有 心の中では、…を思う。 
徊徨 さまよう。


我獨伊何,來往變常。
わたしは、このようにひとりだけでどうしているのでしょう。人の行き来というものが世の常と異なっているのではないでしょうか。
伊何 そもそもどうして。・伊:口調を整えリズムをとるために用いる。格別の意はない。
來往:往ったり来たりする。・變常:人とは異なる。通常の状態を変えて変則的になっている。


翩翩之燕,遠集西羌。
燕がひらりひらりと身軽く飛んで、はるか西の方のチベット系の民族の許にあつまりとどまっている。
翩翩 燕がひらりひらりと身軽く飛ぶさま。すばやいさま。宋玉『九辨』、「燕翩翩其辭歸兮,蝉寂漠而無聲。」(燕は翩翩として其れ辭し歸えり,蝉は寂漠として聲無し。)
遠集 遠く…にとどまる。・集:とどまる。鳥が木にあつまる。本来鳥が木につどうさまを表す。 
西羌 西の方のえびす。チベット系の民族。


高山峨峨,河水泱泱。
此処と故郷を隔てる高山は、けわしく高大なものであるし、黄河の流れは、立派で大きくさかんにながれている。(大自然は何も変わらない)
峨峨 山の高くけわしいさま。山の高大なさま。姿の立派なさま。
河水 黄河の流れ。 
泱泱 水の深く広いさま。立派で大きいさま。ながれのさかんなるさ。『詩経小雅・瞻彼洛矣』「瞻彼洛矣、維水泱泱」(彼の洛を瞻れば、維れ水の泱泱たり。)


父兮母兮,道里悠長。
父よ、母よ、故郷までの道程は、遙かに遠いものです。 
道里 道のり。道程。 
悠長 遙かにながい。


嗚呼哀哉,憂心惻傷。
ああ、かなしいことです。表情や態度に表せないのですが憂えた心で、憐れみいたんでいるのです。
嗚呼 ああ。ため息するときの言葉。 ・哀哉 かなしいなあ。
憂心 憂え。心配。 ・惻傷 憐れみいたましくおもう。表情や態度に表さない、心の中での歎きをいう。
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 李商隠詩李商隠/韓愈韓退之(韓愈)・柳宗元・李煜・王安石・蘇東坡 
   2011/7/11李商隠 1 錦瑟 
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   2012/1/11 唐宋 Ⅰ李商隠187 行次西郊作一百韻  白文/現代語訳 (全文) 
     
 謝靈運index謝靈運詩 
     

怨詩
秋木萋萋,其葉萎黄。
秋になって樹木がなお茂っているけれど、やがてその葉はしおれて黄ばんでいくことになる。
有鳥處山,集于苞桑。
鳥はそこここの山に棲んでいて、クワの木の根元に集まってくるものだ。
養育毛羽,形容生光。
養い育ててきた羽を育てて、容貌は光り輝いている。
既得升雲,上遊曲房。
雲の上のような宮殿に昇ることとなったばかりか、曲がりくねった女官の後宮に過ごす身となった。 
離宮絶曠,身體摧藏。
離宮は極めて広くわたしの体は、気力さえも衰えくじかれてきた。
志念抑沈,不得頡頏。

わたしの心は、沈鬱になってしまって、鳥のように大空に飛び上がったり、舞い下りたりすることがまったくできないのです。

雖得委食,心有徊徨。
我獨伊何,來往變常。
翩翩之燕,遠集西羌。
高山峨峨,河水泱泱。
父兮母兮,道里悠長。
嗚呼哀哉,憂心惻傷。

 
怨詩
秋木 萋萋【せいせい】として,其の葉 萎黄【いこう】す。
鳥有り 山に處【を】り,苞桑【ほうそう】に集【むらが】る。
毛羽を養育し,形容 光を生ず。
既に雲に升【のぼ】るを得て,上のかた 曲房に遊ぶ。
離宮 絶【はなは】だ 曠【ひろ】くして,身體 摧藏【さいぞう】す。
志念 抑沈【よくちん】して,頡頏【けつこう】するを得ず。

委食を得【う】と 雖も,心に 徊徨【かいこう】する有り。
我 獨り 伊【こ】れ 何ぞ,來往【らいおう】常を變ず。
翩翩【へんぺん】たる燕,遠く西羌【せいきょう)に集【いた】る。
高山峨峨【がが】たり,河水泱泱【おうおう】たり。
父や母や,道里 悠長なり。
嗚呼【ああ】 哀しい哉,憂心惻傷【そくしょう】す。


現代語訳と訳註
(本文)
怨詩
秋木萋萋,其葉萎黄。
有鳥處山,集于苞桑。
養育毛羽,形容生光。
既得升雲,上遊曲房。
離宮絶曠,身體摧藏。
志念抑沈,不得頡頏。


(下し文)
怨詩
秋木 萋萋【せいせい】として,其の葉 萎黄【いこう】す。
鳥有り 山に處【を】り,苞桑【ほうそう】に集【むらが】る。
毛羽を養育し,形容 光を生ず。
既に雲に升【のぼ】るを得て,上のかた 曲房に遊ぶ。
離宮 絶【はなは】だ 曠【ひろ】くして,身體 摧藏【さいぞう】す。
志念 抑沈【よくちん】して,頡頏【けつこう】するを得ず。


(現代語訳)
秋になって樹木がなお茂っているけれど、やがてその葉はしおれて黄ばんでいくことになる。
鳥はそこここの山に棲んでいて、クワの木の根元に集まってくるものだ。
養い育ててきた羽を育てて、容貌は光り輝いている。
雲の上のような宮殿に昇ることとなったばかりか、曲がりくねった女官の後宮に過ごす身となった。 
離宮は極めて広くわたしの体は、気力さえも衰えくじかれてきた。
わたしの心は、沈鬱になってしまって、鳥のように大空に飛び上がったり、舞い下りたりすることがまったくできないのです。


(訳注)
◎王昭君

前漢の元帝の宮女。紀元前33年(竟寧元年)、匈奴との和親のため、呼韓邪単于に嫁し、「寧胡閼氏」としてその地で没した。名は檣。昭君は字。明君、明妃は、「昭」字をさけたための晋以降の称。
『漢書・本紀・元帝紀』「竟寧元年春正月,匈奴 呼韓邪單于來朝。詔曰:「匈奴呼韓邪單于不忘恩德,鄕慕禮義,復修朝賀之禮,願保塞傳之無窮,邊垂長無兵革之事。其改元爲竟寧,賜單于待詔掖庭王檣爲閼氏。」
王檣 王昭君のこと。
閼氏 單于の正妻の称で皇后のこと。
『漢書・匈奴傳・下』「王昭君號寧胡閼氏,生一男伊屠智牙師,爲右日逐王。」
多くの子供をもうけ、夫の没後は、匈奴の習慣に従った再婚をし、父子二代の妻となり、更に子供を儲けている。子供達の名も記録されている。
辺疆安寧のための犠牲になったことで漢・匈奴友好使節の役を果たした。
李白33-35 王昭君を詠う 三首、五言絶句『王昭君』、雑言古詩、『王昭君』、雑言古詩『于闐採花』、王昭君ものがたり『王昭君 二首』 白楽天
聞歌
斂笑凝眸意欲歌,高雲不動碧嵯峨。
銅臺罷望歸何處,玉輦忘還事幾多。
靑冢路邊南雁盡,細腰宮裏北人過。
此聲腸斷非今日,香灺燈光奈爾何。

李商隠 3 聞歌

王昭君の七十余年前に、烏孫公主の故事がある。烏孫公主は漢の皇室の一族、江都王・劉建の娘で、武帝の従孫になる劉細君のこと。彼女は、西域の伊犂地方に住んでいたトルコ系民族の国家・烏孫国に嫁した。ともに漢王朝の対西域政策と軍略を物語るものである。
悲愁歌 烏孫公主(劉細君) 女流<108>542 漢文委員会kannuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1443

oushokun03

◎『怨詩』
空高く飛ぶ鳥のさまから己の身を想い、遙かに離れ去ることとなってしまった境遇を詠う。『樂府詩集』に基づく。『昭君怨』『怨曠思惟歌』ともする。


秋木萋萋,其葉萎黄。
秋になって樹木がなお茂っているけれど、やがてその葉はしおれて黄ばんでいくことになる。  
秋木 秋の樹木。 ・萋萋 草が茂っているさま。
萎黄 しおれて黄ばむ。


有鳥處山,集于苞桑。
鳥はそこここの山に棲んでいて、クワの木の根元に集まってくるものだ。
處山 山に居る。・處おる。いる。とまっている。おちつく。
集于 鳥が木にあつまる。(鳥が)とまる。とどまる。本来鳥が木につどうさまを表す。  
苞桑 クワの木の根。根本のしっかりしたもの。ものごとの根本のかたいこと、虫が多くいる。


養育毛羽,形容生光。
養い育ててきた羽を育てて、容貌は光り輝いている。  
養育 はぐくむ。養い育てる。 ・毛羽:鳥の羽。獣の毛と鳥の羽。羽毛。
形容 顔かたち。容貌。また、有様。形状。
生光 光を放つ。輝きを放つ。


既得升雲,上遊曲房。
雲の上のような宮殿に昇ることとなったばかりか、曲がりくねった女官の後宮に過ごす身となった。 
既得 ~をえて~となったばかりか。「升雲」となったばかりか「上遊曲房」となった。
升雲 立身出世する。雲居に昇る。
遊曲房 曲がりくねった女官のへや、屈曲した御殿、後宮において遊ぶ、過ごす。


離宮絶曠,身體摧藏。
離宮は極めて広くわたしの体は、気力さえも衰えくじかれてきた。
離宮 皇宮以外、別の場所に設けられた皇帝の宮殿。 
絶曠 はなはだ広い。・絶:はなはだ。きわめて。・曠:広い。大きい。遮るものが無く明かである。
摧藏 くじけひそむ。おとろえかくれる


志念抑沈,不得頡頏。
わたしの心は、沈鬱になってしまって、鳥のように大空に飛び上がったり、舞い下りたりすることがまったくできないのです。
志念 こころざし。こころざし思うこと。 
抑沈 おさえしずめる。抑制する。おさえつける。
不得 獲得できない。 
頡頏 鳥が飛び上がったり、飛んで下りたりすること。

白頭吟 卓文君 <109-#2>玉台新詠集 女性詩 544 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1449

白頭吟 卓文君 <109-#2>玉台新詠集 女性詩 544 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1449


     
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 李商隠詩李商隠/韓愈韓退之(韓愈)・柳宗元・李煜・王安石・蘇東坡 
   2011/7/11李商隠 1 錦瑟 
      2011/7/11 ~ 2012/1/11 まで毎日掲載 全130首(187回) 
   2012/1/11 唐宋 Ⅰ李商隠187 行次西郊作一百韻  白文/現代語訳 (全文) 
     
 謝靈運index謝靈運詩 
     

白頭吟 
皚如山上雪,皎若雲間月。
わたしの心はこれだけ真っ白で、山上の雪のようです、そして女としても、雲間に輝く清らかで澄んだ白い月光で、立派に貞操を守っている女なのです。
聞君有兩意,故來相決絶。
あなたが、心情を他人に遣るということが聞こえてきます。わたしはほとほと愛想が尽きたので、わざわざあなたと別れるためにやって来たのです。 
今日斗酒會,明旦溝水頭。
今日は二人にとっての最後のお酒を飲む機会だし、明日になれば堀端のほとりを歩くだけなのです。
躞蹀御溝上,溝水東西流。
お堀の畔をとぼとぼ歩くでしょう、すると掘割の水は西から東へ別れ、当たり前のように流れていくことでしょう。

淒淒復淒淒,嫁娶不須啼。
寒く冷ややかな上にも寒く冷ややかであっても、嫁入りは、必ずしも啼き悲しむものではない。
願得一心人,白頭不相離。
願うことなら嘘をつかないで愛し続けてくれる男夫を見つけて。白髪頭になるまで添い遂げたいのである。
竹竿何嫋嫋,魚尾何簁簁。
釣り竿は何としなやかなことではないか。夫は妻のことを思うべきである。女性は、こんなにも生き生きとしてすばらしいのに、どうして妻のすばらしさに気づかないのか。
男兒重意氣,何用錢刀爲。
男とは、金銭ではなくて情義を重んずるものだろうにどうして、銭金などがどうして用いようとするのだろうか。

白頭吟
皚【がい】たること山上の雪の 如く,皎【こう】たること雲間の月の 若【ごと】し。
聞く君 兩意有りと,故【ことさら】に來たりて相い決絶す。
今日斗酒の會,明旦溝水の頭【ほとり】。
御溝の上に躞蹀【しょうちょう】すれば,溝水は東西に流る。

淒淒【せいせい】復た 淒淒たり,嫁娶【かしゅ】に啼【な】くを須【もち】いず。
願はくは一心の人を得て,白頭まで相い離れざらん。
竹竿何ぞ嫋嫋【じょうじょう】たる,魚尾何ぞ簁簁【しし】たる。
男兒は意氣を重んず,何ぞ錢刀を用いるを爲さん。


現代語訳と訳註
(本文)

淒淒復淒淒,嫁娶不須啼。
願得一心人,白頭不相離。
竹竿何嫋嫋,魚尾何簁簁。
男兒重意氣,何用錢刀爲。

(下し文)
淒淒【せいせい】復た 淒淒たり,嫁娶【かしゅ】に啼【な】くを須【もち】いず。
願はくは一心の人を得て,白頭まで相い離れざらん。
竹竿何ぞ嫋嫋【じょうじょう】たる,魚尾何ぞ簁簁【しし】たる。
男兒は意氣を重んず,何ぞ錢刀を用いるを爲さん。


(現代語訳)
寒く冷ややかな上にも寒く冷ややかであっても、嫁入りは、必ずしも啼き悲しむものではない。
願うことなら嘘をつかないで愛し続けてくれる男夫を見つけて。白髪頭になるまで添い遂げたいのである。
釣り竿は何としなやかなことではないか。夫は妻のことを思うべきである。女性は、こんなにも生き生きとしてすばらしいのに、どうして妻のすばらしさに気づかないのか。
男とは、金銭ではなくて情義を重んずるものだろうにどうして、銭金などがどうして用いようとするのだろうか。


(訳注)
淒淒復淒淒,嫁娶不須啼。
寒く冷ややかな上にも寒く冷ややかであっても、嫁入りは、必ずしも啼き悲しむものではない。
淒淒 寒く冷ややかなさま。寒く厳しいさま。ぞっとする。ここの「淒淒」は、別れた後の女の心の形容。 
 また。ふたたび。その上。
嫁娶 嫁入り。縁談。結婚。 
不須 必要はない。もちいず。 
 声に出して泣く。

願得一心人,白頭不相離。
願うことなら嘘をつかないで愛し続けてくれる男夫を見つけて。白髪頭になるまで添い遂げたいのである。
 ねがうことなら。願望「得一心人,白頭不相離」をいう。 ・得:える。 
一心人 嘘をつかない男性。愛し続けてくれる人。一つ心の人。
白頭 白髪頭。老齢、老人をいう。 
不相離 離れてはいかない。離れはしない。 
 対象に向かって…てはいか(ない)。「相互に」の意では使われていない。


竹竿何嫋嫋,魚尾何簁簁。
釣り竿は何としなやかなことではないか。夫は妻のことを思うべきである。女性は、こんなにも生き生きとしてすばらしいのに、どうして妻のすばらしさに気づかないのか。
*『詩經・衛風』『竹竿』「籊籊竹竿,以釣于淇。豈不爾思,遠莫致之。」(籊籊たる竹竿,以って淇に釣る。豈爾を思わざらんや,遠くして之を致す莫し。)に基づく。『詩經・衛風』『竹竿』は、女子は嫁ぐものが道であり、兄弟親子で遊んだ故郷から、離れて行くのが定めであるというもの。
竹竿 昔仲良く遊んだ釣り竿のこと。 
 何と。疑問、感嘆を表す。 
嫋嫋 しなやかでゆれるさま。
・魚尾 魚。また、魚のシッポ。 
簁簁 動くさま。ピチピチとしている。


男兒重意氣,何用錢刀爲。
男とは、金銭ではなくて情義を重んずるものだろうにどうして、銭金などがどうして用いようとするのだろうか。。
意氣 心意気。気概。ここでは、真実の愛情の意で使われている。 *後世、唐の魏徴の『述懷』尾聯「人生感意氣,功名誰復論。」と使われている。
何用 どうして用いるのか。 
錢刀 ぜに。かね。銭貨。



卓文君
蜀卓氏之先,趙人也,用鐵冶富。秦破趙,遷卓氏。
致之臨,即鐵山鼓鑄,富至僮千人。田池射獵之樂,擬於人君。


『史記・司馬相如列傳』
會梁孝王卒,相如歸,而家貧,無以自業。素與臨令王吉相善,吉曰:『長卿(司馬相如の字)久宦遊不遂,而來過我。』於是相如往,舍都亭。臨令繆爲恭敬,日往朝相如。相如初尚見之,後稱病,使從者謝吉,吉愈益謹肅。臨中多富人,而卓王孫家僮八百人,程鄭亦數百人,二人乃相謂曰:『令有貴客,爲具召之。』并召令。令既至,卓氏客以百數。至日中,謁司馬長卿(司馬相如の字),長卿謝病不能往,臨令不敢嘗食,自往迎相如。相如不得已,彊往,一坐盡傾。酒酣,臨令前奏琴曰:「竊聞長卿(司馬相如の字)好之,願以自娯。」相如辭謝,爲鼓一再行。是時卓王孫有女(卓)文君新寡,好音,故相如繆與令相重,而以琴心挑之。相如之臨,從車騎,雍容閒雅甚都;及飮卓氏,弄琴,(卓)文君竊從戸窺之,心悅而好之,恐不得當也。既罷,相如乃使人重賜文君侍者通殷勤。文君夜亡奔相如,相如乃與馳歸成都。家居徒四壁立。卓王孫大怒曰:『女至不材,我不忍殺,不分一錢也。』人或謂王孫,王孫終不聽。文君久之不樂,曰:『長卿第倶如臨,從昆弟假貸猶足爲生,何至自苦如此!』相如與倶之臨,盡賣其車騎,買一酒舍酒,而令文君當鑪。相如身自著犢鼻褌,與保庸雜作,滌器於市中。卓王孫聞而恥之,爲杜門不出。昆弟諸公更謂王孫曰:『有一男兩女,所不足者非財也。今文君已失身於司馬長卿,長卿故倦游,雖貧,其人材足依也,且又令客,獨奈何相辱如此!』卓王孫不得已,分予文君僮百人,錢百萬,及其嫁時衣被財物。文君乃與相如歸成都,買田宅,爲富人。

白頭吟 卓文君 <109-#1>玉台新詠集 女性詩 543 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1446

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○白頭吟 辛苦を共にした夫が茂陵の女を妾にしようとした多情な夫をいさめる詩。

杜甫『奉贈王中允維』
中允聲名久,如今契闊深。
共傳收庾信,不比得陳琳。
一病緣明主,三年獨此心。
窮愁應有作,試誦白頭吟。
○白頭吟 漢の司馬相如の妻卓文君が夫が妾を買おうとするのをきいて賦した「白頭吟」を引き、王維の詩が天子に対して二心なきをいうのはこれと似ている。又、飽照の「白頭吟」の「直きこと朱糸の縄の如く、清きこと玉壷の氷の如し」といい、身の清直で潔白な旨を表現する。奉贈王中允維 杜甫詩kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 254

『古別離』孟郊
欲別牽郞衣,郞今到何處。
不恨歸來遲,莫向臨邛去。
唐宋詩203 Ⅶ孟郊(孟東野)紀頌之の漢詩ブログ 「古別離」孟郊(8

○臨邛 〔りんきょう〕司馬相如が卓文君と恋に落ちて駆け落ちを始めたところ。男を惑わす女の居る所の意で使う。臨邛は、秦の時代に置かれた県名。現・四川省邛耒県。 ○去 行く。去る。

卓文君
前漢時代、臨の大富豪である卓王孫の娘。司馬相如と恋に落ちて駆け落ちをする、愛情溢れる女性とされる。


白頭吟 
皚如山上雪,皎若雲間月。
わたしの心はこれだけ真っ白で、山上の雪のようです、そして女としても、雲間に輝く清らかで澄んだ白い月光で、立派に貞操を守っている女なのです。
聞君有兩意,故來相決絶。
あなたが、心情を他人に遣るということが聞こえてきます。わたしはほとほと愛想が尽きたので、わざわざあなたと別れるためにやって来たのです。 
今日斗酒會,明旦溝水頭。
今日は二人にとっての最後のお酒を飲む機会だし、明日になれば堀端のほとりを歩くだけなのです。
躞蹀御溝上,溝水東西流。
お堀の畔をとぼとぼ歩くでしょう、すると掘割の水は西から東へ別れ、当たり前のように流れていくことでしょう。

淒淒復淒淒,嫁娶不須啼。
願得一心人,白頭不相離。
竹竿何嫋嫋,魚尾何簁簁。
男兒重意氣,何用錢刀爲。

白頭吟
皚【がい】たること山上の雪の 如く,皎【こう】たること雲間の月の 若【ごと】し。
聞く君 兩意有りと,故【ことさら】に來たりて相い決絶す。
今日斗酒の會,明旦溝水の頭【ほとり】。
御溝の上に躞蹀【しょうちょう】すれば,溝水は東西に流る。

淒淒【せいせい】復た 淒淒たり,嫁娶【かしゅ】に啼【な】くを須【もち】いず。
願はくは一心の人を得て,白頭まで相い離れざらん。
竹竿何ぞ嫋嫋【じょうじょう】たる,魚尾何ぞ簁簁【しし】たる。
男兒は意氣を重んず,何ぞ錢刀を用いるを爲さん。


現代語訳と訳註
(本文)
白頭吟 
皚如山上雪,皎若雲間月。
聞君有兩意,故來相決絶。
今日斗酒會,明旦溝水頭。
躞蹀御溝上,溝水東西流。


(下し文)
皚【がい】たること山上の雪の 如く,皎【こう】たること雲間の月の 若【ごと】し。
聞く君 兩意有りと,故【ことさら】に來たりて相い決絶す。
今日斗酒の會,明旦溝水の頭【ほとり】。
御溝の上に躞蹀【しょうちょう】すれば,溝水は東西に流る。


(現代語訳)
わたしの心はこれだけ真っ白で、山上の雪のようです、そして女としても、雲間に輝く清らかで澄んだ白い月光で、立派に貞操を守っている女なのです。
あなたが、心情を他人に遣るということが聞こえてきます。わたしはほとほと愛想が尽きたので、わざわざあなたと別れるためにやって来たのです。 
今日は二人にとっての最後のお酒を飲む機会だし、明日になれば堀端のほとりを歩くだけなのです。
お堀の畔をとぼとぼ歩くでしょう、すると掘割の水は西から東へ別れ、当たり前のように流れていくことでしょう。


(訳注)
白頭吟
この作品は『玉臺新詠』、『古樂府詩 集』卷第四十一・『相和歌辭』『古詩源』にはあるものの、それ以前にはないようだ。樂府題。「共白髪」の意。卓文君の詩とするには疑わしいものである。

 
皚如山上雪,皎若雲間月。
わたしの心はこれだけ真っ白であり山上の雪のようである、そして女としても、雲間に輝く清らかで澄んだ白い月光である。貞操を守っている女である。
皚如 白いさま。霜や雪の白いさま。・皚:白い。霜や雪の白さをいう。
山上雪 山上の穢れない純白の雪。
皎若 白いさま。月光の白いさま。・皎 白い。月光の白さを発するさま。
雲間月 女としても、雲間に輝く清らかで澄んだ白い月光である。貞操を守っている女である。


聞君有兩意,故來相決絶。
あなたが、心情を他に遣るということが聞こえてきている。わたしは愛想が尽きたので、わざわざあなたとわかれるためにやって来たのだ。 
・退隠して住んでいる茂陵で、やはり茂陵に住んでいる女性を妾としたことを指す。 
 耳に入る。聞こえる。…噂がある。風聞がある。
有兩意 ふたごころ。二心。浮気心でなく本気で心をやっていること。ここでは、思いを他に遣るという表現であろうか。
故 わざと。ことさらに。ゆゑ。わけ。普通でない事柄。
決絶 愛想が尽きて永久の別れをする。


今日斗酒會,明旦溝水頭。
今日は二人にとっての最後のお酒を飲む機会だ。明日は堀端のほとりを歩くだけだ。
斗酒 わずかな酒。・斗 ます。少しばかりの量。 
 あつまる。よりあう。しる。とき。おり。しお。さかもり。訣別の宴の意。『古詩十九首之四』に「今日良宴會,歡樂難具陳。彈箏奮逸響,新聲妙入神。令德唱高言,識曲聽其真。」とある。

古詩十九首之四 (4) 漢詩<91>Ⅱ李白に影響を与えた詩523 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1386


溝水頭 堀端のほとりを歩くという意。・溝水:都市の中の堀。・頭:ところ。畔。


躞蹀御溝上,溝水東西流。
お堀の畔をとぼとぼ歩くと、掘割の水は西から東へ当たり前のように流れることでしょう
躞蹀 行く。しょんぼりとして行くさま。 
御溝 宮殿の周囲の掘り割り。
 ほとり。そば。ところ。
東西流 東と西に別れて流れゆこうということと別れたことがあたりまえのこととしてながれさっていく、「東流」という意味が重なって別れを強調する。

悲愁歌 烏孫公主(劉細君) <108>玉台新詠集 女性詩 542 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1443

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悲愁歌
吾家嫁我兮天一方,遠託異國兮烏孫王。
漢王室であるわたしの家は、わたしを天涯の西国に)嫁がそうとしている、遠く異民族の国である烏孫王の許へ嫁ぎゆかせるのである。
穹盧爲室兮氈爲牆,以肉爲食兮酪爲漿。
その国の風俗はテントの部屋で、毛氈を壁としている。 肉を常食として、馬乳製飲料を飲み物としている。
居常土思兮心内傷,願爲黄鵠兮歸故鄕。
この異郷に居住してふだんから漢の地を思いしのんで心の中は悲しい思いなのだ、願うことなら黄鵠となり、故郷に帰りたいのである。


現代語訳と訳註
(本文)
悲愁歌
吾家嫁我兮天一方。遠託異國兮烏孫王。
穹盧爲室兮氈爲牆,以肉爲食兮酪爲漿。
居常土思兮心内傷,願爲黄鵠兮歸故鄕。


(下し文)
悲愁歌
吾が家【いえ】我を嫁す、天の一方。遠く異國に託す  烏孫王。
穹盧【きゅうろ】を室と爲し 氈【せん】を牆【かき】と爲し,肉を以て食と爲し 酪【らく】を漿【しょう】と爲す。
居常【きょじょう】土を思して心内に傷め,願はくは黄鵠【こうこく】と爲りて故鄕に歸らん。


(現代語訳)
漢王室であるわたしの家は、わたしを天涯の西国に)嫁がそうとしている、遠く異民族の国である烏孫王の許へ嫁ぎゆかせるのである。
その国の風俗はテントの部屋で、毛氈を壁としている。 肉を常食として、馬乳製飲料を飲み物としている。
この異郷に居住してふだんから漢の地を思いしのんで心の中は悲しい思いなのだ、願うことなら黄鵠となり、故郷に帰りたいのである。


(訳注)
烏孫公主(劉細君)
烏孫公主 漢の武帝の時、西域、伊犂地方、トルコ系民族国家の烏孫国に嫁した漢の皇女で、名は劉細君という。江都王・劉建の娘で、武帝の従孫であった。異民族との和親を図るための政略結婚で、王昭君が匈奴に嫁いだのは、この劉細君の婚姻の七十余年後になる。どちらも漢王朝の対西域政策によるものである。 
公主 天子の娘。


吾家嫁我兮天一方、遠託異國兮烏孫王。
漢王室であるわたしの家は、わたしを天涯の西国に)嫁がそうとしている、遠く異民族の国である烏孫王の許へ嫁ぎゆかせるのである。
・吾家 わたしの家は。漢家は。劉家は。 ・兮 上古の詩によく見られる、リズムをとり、語調を整える辞(ことば)。
遠託 遠くとつぐ。・託:憑る。寄せる。まかせる。頼る。 
異國 異民族の国。ここでは烏孫国になる。  
烏孫王 烏孫の王。劉細君が烏孫王に嫁いだのは、紀元前105年(武帝の元封六年)のこと。


穹盧爲室兮氈爲牆、以肉爲食兮酪爲漿。
その国の風俗はテントの部屋で、毛氈を壁としている。 肉を常食として、馬乳製飲料を飲み物としている。
穹廬 弓なりに張った円いドーム状のテント。
 毛むしろ。もうせん。
 かき。塀。境。壁。
以肉爲食 獣肉を常食とする。
酪爲漿 馬乳飲料を。・酪 馬ちちざけ。ミルク。乳製飲料。・漿 どろりとした飲み物。濃いめの液体。こんず。汁。


居常土思兮心内傷、願爲黄鵠兮歸故鄕。
この異郷に居住してふだんから漢の地を思いしのんで心の中は悲しい思いなのだ、願うことなら黄鵠となり、故郷に帰りたいのである。  
・居常 ふだん。平生。日常。 
土思 ふるさとを思いしのぶ。 
心内傷 心のなかでいたましい思いをする。
願爲 願わくば…となり。
黄鵠 黄色みを帯びた白鳥。渡り鳥で、秋には南方に帰っていく。 
 故郷など本来居るべき所に戻っていくこと。かえる。 
故鄕 ふるさと。ここでは、漢の地を指す。

古詩十九首之十九 漢の無名氏(19) 漢詩<107>Ⅱ李白に影響を与えた詩541 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1440

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古詩十九首之第十九首
明月何皎皎,照我羅床緯。
なんと秋の月の光の明るいことよ。わたしの寝台牀のうすぎぬのカーテンを照らしている。
憂愁不能寐,攬衣起徘徊。
わたしは遠い旅に出ている夫の身を思うと心配で寝むれない、衣のすそをかかげてたちあがり、あたりをぶらぶら歩いてみる。
客行雖雲樂,不如早旋歸。
旅に出るのは楽しいとあなたはいいますが、早く帰宅する方が何よりいいはずでしょう。
出戶獨彷徨,愁思當告誰!
そんなことを思いながら戸口を出てひとり彷徨い歩くだけなのだ。こんな心の愁いは誰につげたらよいものか。
引領還入房,淚下沾裳衣。
首をながくのばして夫の方を望み、ふりかえって、わが部屋にはいるしかない、涙は流れおちて衣裳をぬらすのである。



現代語訳と訳註
(本文)
第十九首
明月何皎皎,照我羅床緯。
憂愁不能寐,攬衣起徘徊。
客行雖雲樂,不如早旋歸。
出戶獨彷徨,愁思當告誰!
引領還入房,淚下沾裳衣。


(下し文)
明月何ぞ皎皎たる、我が羅【うすぎぬ】の床緯【しょうい】を照す。
憂愁して寐【い】ぬる能はず、衣を攬【と】りて起って徘徊【はいかい】す。
客行楽しと云ふと雖も、早く旋歸【せんき】するに如【し】かじ。
戸を出でて獨り彷徨【ほうこう】し、愁思當【まさ】に誰にか告ぐべき。
領【くび】を引きて還りて房に入れば、涙下りて裳衣を清す。


(現代語訳)
なんと秋の月の光の明るいことよ。わたしの寝台牀のうすぎぬのカーテンを照らしている。
わたしは遠い旅に出ている夫の身を思うと心配で寝むれない、衣のすそをかかげてたちあがり、あたりをぶらぶら歩いてみる。
旅に出るのは楽しいとあなたはいいますが、早く帰宅する方が何よりいいはずでしょう。
そんなことを思いながら戸口を出てひとり彷徨い歩くだけなのだ。こんな心の愁いは誰につげたらよいものか。
首をながくのばして夫の方を望み、ふりかえって、わが部屋にはいるしかない、涙は流れおちて衣裳をぬらすのである。


(訳注)
第十九首

第十八首 十七詩と同じ、留守居の妻が遠方、月夜夫を憶うて感傷にひたる思慕の情を寄せたのである。男性の目から見た詩である。


明月何皎皎,照我羅床緯。
なんと秋の月の光の明るいことよ。わたしの寝台牀のうすぎぬのカーテンを照らしている。
明月 秋八月の月
古詩十九首之第七首
明月皎夜光,促織鳴東壁。
玉衡指孟冬,眾星何歷歷。
白露沾野草,時節忽復易。
秋蟬鳴樹間,玄鳥逝安適。
李白31 『関山月』「明月出天山、蒼茫雲海間。長風幾萬里、吹度玉門關。」
・皎皎 白く明るいさま。
・羅床緯 薄絹の寝床のたれまく。
古詩十九首 第ニ首
青青河畔艸、欝欝園中柳。
盈盈楼上女、皎皎当窓牅。
娥娥紅紛粧、繊繊出素手。
昔為倡家女、今為蕩子婦。
蕩子行不帰、空牀難独守。

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古詩十九首之第十首
迢迢牽牛星,皎皎河漢女。
纖纖擢素手,札札弄機杼。
終日不成章,泣涕零如雨。
河漢清且淺,相去復幾許。
盈盈一水間,脈脈不得語。

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憂愁不能寐,攬衣起徘徊。
わたしは遠い旅に出ている夫の身を思うと心配で寝むれない、衣のすそをかかげてたちあがり、あたりをぶらぶら歩いてみる。
・攬 手に持つ、つまみとる。


客行雖雲樂,不如早旋歸。
旅に出るのは楽しいとあなたはいいますが、早く帰宅する方が何よりいいはずでしょう。


出戶獨彷徨,愁思當告誰!
そんなことを思いながら戸口を出てひとり彷徨い歩くだけなのだ。こんな心の愁いは誰につげたらよいものか。


引領還入房,淚下沾裳衣。
首をながくのばして夫の方を望み、ふりかえって、わが部屋にはいるしかない、涙は流れおちて衣裳をぬらすのである。
・引領 首を伸ばして遠くを眺める。古詩十九首之十六首
古詩十九首之第十六首 #2
願得常巧笑,攜手同車歸。
既來不須臾,又不處重闈。
亮無晨風翼,焉能淩風飛?
眄睞以適意,引領遙相希。
徒倚懷感傷,垂涕沾雙扉。

古詩十九首之十八 漢の無名氏(18) 漢詩<106>Ⅱ李白に影響を与えた詩540 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1437

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古詩十九首之第十八首
客從遠方來,遺我一端綺。
遠方から訪ねて来た客が、わたしに一反のあやぎぬを届けてくれた。
相去萬餘里,故人心尚爾。
夫からの届け物で、別れて行って、万里以上も隔たってしまったのに、あの人のわたしへの心は昔のままでかわっていないのだ。
文彩雙鴛鴦,裁為合歡被。
この布地の織り模様は番いの鴛鴦であり、これを共寝の夜着に仕立てようとおもう。
著以長相思,緣以結不解。
夜着の中には「長相思」の綿をつめて、縁のかざりは「結不解」のかがり糸にして、固く結んで解けぬ意をもたせるのだ。
以膠投漆中,誰能別離此?
ニカワを漆の中に入れ込んだら、もう誰でも引き離すことはできないことであるように夫婦仲もそれと同じなのだ。


宮島(5)

現代語訳と訳註
(本文)
第十八首
客從遠方來,遺我一端綺。
相去萬餘里,故人心尚爾。
文彩雙鴛鴦,裁為合歡被。
著以長相思,緣以結不解。
以膠投漆中,誰能別離此?


(下し文)
客遠方より乗り、我に一端の綺を遣る。
相去ること萬餘里なるも、故人の心 尚ほ爾り。
文彩は雙鴛鴦、裁ちて合歓の被と為す。
著するに長相思を以てし、縁とるに結不解を以てす。
膠を以て漆中に投ぜば、誰か能く此を別離せん。


(現代語訳)
遠方から訪ねて来た客が、わたしに一反のあやぎぬを届けてくれた。
夫からの届け物で、別れて行って、万里以上も隔たってしまったのに、あの人のわたしへの心は昔のままでかわっていないのだ。
この布地の織り模様は番いの鴛鴦であり、これを共寝の夜着に仕立てようとおもう。
夜着の中には「長相思」の綿をつめて、縁のかざりは「結不解」のかがり糸にして、固く結んで解けぬ意をもたせるのだ。
ニカワを漆の中に入れ込んだら、もう誰でも引き離すことはできないことであるように夫婦仲もそれと同じなのだ。


(訳注)
第十八首

・第十八首 十七詩と同じ、留守居の妻が遠方、旅先の夫からあやぎぬの贈り物を受けて、思慕の情を寄せたのである。男性の目から見た詩である。


客從遠方來,遺我一端綺。
遠方から訪ねて来た客が、わたしに一反のあやぎぬを届けてくれた。
一端 一反。周代の制では布帛一丈八尺を端といった。
 文𥿻、あやぎぬ。


相去萬餘里,故人心尚爾。
夫からの届け物で、別れて行って、万里以上も隔たってしまったのに、あの人のわたしへの心は昔のままでかわっていないのだ。


文彩雙鴛鴦,裁為合歡被。
この布地の織り模様は番いの鴛鴦であり、これを共寝の夜着に仕立てようとおもう。
文彩 給の彩紋、織り模様。
合歓被 夫妻同歓の夜具。二枚重ねに縫う。


著以長相思,緣以結不解。
夜着の中には「長相思」の綿をつめて、縁のかざりは「結不解」のかがり糸にして、固く結んで解けぬ意をもたせるのだ。
・著 中に綿を詰める。
・長相思 綿の縁語。綿綿と長く続く意をとる。
 へりを飾る、ふちとる。
・結不解 糸をかがってほどけぬようにすること。


以膠投漆中,誰能別離此?
ニカワを漆の中に入れ込んだら、もう誰でも引き離すことはできないことであるように夫婦仲もそれと同じなのだ。

古詩十九首之十七 漢の無名氏 (17) 漢詩<104>Ⅱ李白に影響を与えた詩539 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1434

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古詩十九首之第十七首
孟冬寒氣至,北風何慘栗。
冬の初めというのに極寒の気がおとずれ来た、北風のなんとものすごくつめたいことであろうか。
愁多知夜長,仰觀眾星列。
愁いが鬱積して堪らないのに夜が長いのは身にしみるくるしさだ。見上げる空には多くの星かならんでいる。
三五明月滿,四五蟾兔缺。
月は三夜五夜と日々明るくなり、十五夜には満月になる、四夜五夜と蟾蜍に喰われ兔もいなくなり、二十日夜になると欠け月になる。
客從遠方來,遺我一書劄。
こうして辛い月日を過ごしたある日、遠方から訪ねて来た客が、わたしに一連の手紙を渡してくれた。
上言長相思,下言久離別。
夫からの便りで、始めの方には「いつまでも忘れぬ」とあり、文末の方には「もうすこしこの別れが久しくなる」と書いてあった。
置書懷袖中,三歲字不滅。
わたしはこの手紙を懐におさめて肌身離さず大切にし、三年たっても一字も消えてはいないのだ。
一心抱區區,懼君不識察。
心のなかにひとつあるのは夫を思う女心のこまごまとした思い、それをあなたが察してくださらないのかと心配でたまらないのです。


現代語訳と訳註
(本文)
第十七首
孟冬寒氣至,北風何慘栗。
愁多知夜長,仰觀眾星列。
三五明月滿,四五蟾兔缺。
客從遠方來,遺我一書劄。
上言長相思,下言久離別。
置書懷袖中,三歲字不滅。
一心抱區區,懼君不識察。


(下し文)
孟冬寒気至り、北風何ぞ慘栗たる。
愁多くして夜の表きを知り、仰いで衆星の列るを観る。
三五明月満ち、四五蟾兔【せんと】缺く。
客遠方より来り、我に一書札を遣る。
上には長く相思ふと言ひ、下には久しく離別すると言ふ。
書を懐袖【かいしゅう】の中に置き、三歳なるも字滅せず。
一心に區區を抱き、君の識察せざらんことを憤る。


(現代語訳)
冬の初めというのに極寒の気がおとずれ来た、北風のなんとものすごくつめたいことであろうか。
愁いが鬱積して堪らないのに夜が長いのは身にしみるくるしさだ。見上げる空には多くの星かならんでいる。
月は三夜五夜と日々明るくなり、十五夜には満月になる、四夜五夜と蟾蜍に喰われ兔もいなくなり、二十日夜になると欠け月になる。
こうして辛い月日を過ごしたある日、遠方から訪ねて来た客が、わたしに一連の手紙を渡してくれた。
夫からの便りで、始めの方には「いつまでも忘れぬ」とあり、文末の方には「もうすこしこの別れが久しくなる」と書いてあった。
わたしはこの手紙を懐におさめて肌身離さず大切にし、三年たっても一字も消えてはいないのだ。
心のなかにひとつあるのは夫を思う女心のこまごまとした思い、それをあなたが察してくださらないのかと心配でたまらないのです。


(訳注)
 第十七首

留守をまもる思婦が遠く旅先の夫からの音信を得たその情をうたう。男性の目から見たものに変わりはない。


孟冬寒氣至,北風何慘栗。
冬の初めというのに極寒の気がおとずれ来た、北風のなんとものすごくつめたいことであろうか。
・孟冬 初冬十月。
惨憺 寒さのひどくきびしいこと。


愁多知夜長,仰觀眾星列。
愁いが鬱積して堪らないのに夜が長いのは身にしみるくるしさだ。見上げる空には多くの星かならんでいる。


三五明月滿,四五蟾兔缺。
月は三夜五夜と日々明るくなり、十五夜には満月になる、四夜五夜と蟾蜍に喰われ兔もいなくなり、二十日夜になると欠け月になる。
蟾兔 蟾蜍と王兎、月の異名。古の英雄翠の妻恒(嫦)娥が夫から不死の薬を盗んで月中に逃げて、蟾蜍になったという説話(准南子・覧冥訓)と、玉兎が月中に住むという伝説(楚群・天間)とにもとづく。
」。・涼蟾 秋の月をいう。月のなかには轄蛤(ひきがえる)がいると考えられたことから、「蟾」は月の別称に用いられる。・蟾蜍 月に住むといわれるひきがえる。李白「古朗月行」月の満ち欠けはカエルが食べてかけていく。・素蛾・娥娥 嫦娥 神話中の女性。神話の英雄、羿(がい)が西方極遠の地に存在する理想国西王母の国の仙女にお願いしてもらった不死の霊薬を、その妻の嫦娥がぬすみ飲み、急に身軽くなって月世界まで飛びあがり月姫となった。漢の劉安の「淮南子」覧冥訓に登場する。なお、魯迅(1881-l936)にこの神話を小説化した「羿月」【がいげつ】と題する小説がある。


客從遠方來,遺我一書劄。
こうして辛い月日を過ごしたある日、遠方から訪ねて来た客が、わたしに一連の手紙を渡してくれた。
客従遠方来 「古楽府」飲馬長城窟行の「客従遠方来、遺我双鯉魚、呼児烹鯉魚、中有尺素書」(客遠方より来たり、我に双鯉魚を遺ル、児を呼んで鯉魚を烹んとすれば、中に尺素の書有り)に由来する。手紙のこと。「鯉魚尺素」の略。鯉の腹の中から白絹(=素)に書かれた手紙が出てきた故事による。


上言長相思,下言久離別。
夫からの便りで、始めの方には「いつまでも忘れぬ」とあり、文末の方には「もうすこしこの別れが久しくなる」と書いてあった。


置書懷袖中,三歲字不滅。
わたしはこの手紙を懐におさめて肌身離さず大切にし、三年たっても一字も消えてはいないのだ。


一心抱區區,懼君不識察。
心のなかにひとつあるのは夫を思う女心のこまごまとした思い、それをあなたが察してくださらないのかと心配でたまらないのです。
・区区 区は分かつこと。こまごま、くどくどなどの意。自己の愛情を謙遜していうもの。


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