善哉行二首 曹丕(魏文帝)
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善哉行 曹丕(魏文帝) 魏詩<9-#1>玉台新詠・文選楽府 古詩源 巻五 630 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1737
善哉行二首
其一 #1
上山採薇,薄暮苦饑。 谿谷多風,霜露沾衣。
野雉群雊,猿猴相追。 還望故鄉,鬱合壘壘!
高山有崖,林木有枝。 憂來無方,人莫之知。
#2
人生如寄,多憂何為? 今我不樂,歲月如馳。
湯湯川流,中有行舟。 隨波轉薄,有似客遊。
策我良馬,被我輕裘。 載馳載驅,聊以忘憂。
其二 #1
有美一人,婉如清揚。 妍姿巧笑,和媚心腸。
知音識曲,善為樂方。 哀絃微妙,清氣含芳。
流鄭激楚,度宮中商。
#2
感心動耳,綺麗難忘。 離鳥夕宿,在彼中洲。
延頸鼓翼,悲鳴相求。眷然顧之,使我心愁。
嗟爾昔人,何以忘憂?
その一
山に上り薇を采り、薄暮【はくぼ】饑【う】えに苦しむ。
谿谷【けいこく】風多く、霜露衣を霑す。
野雉【やち】羣【むらが】り雊【な】き、猿猴【えんこう】相い追う。
還りて故郷を望むに、鬱として何ぞ壘壘【るいるい】たる。
高山に崖有り、林木に枝有る。
憂い来たりて方を無くし、人の之を知ること莫れ。
人生は寄るが如く、多く憂えるも何をか為さん。
今我楽しまずんば、歳月馳するが如しなり。
湯湯たる川の流れ、中【なかほど】に舟をして行くもの有り。
波に随って轉薄【てんぱく】し、客遊に似たる有り。
我が良馬に策【むちう】ち、我が軽裘【けいきゅう】を被【こうむ】る。
戴【すなわ】ち馳せ戴ち驅【か】る、聊【いささ】か以って憂いを忘れん。
善哉行二首
其一 #1
上山採薇,薄暮苦饑。
日暮れになっておなかがすきすぎて苦しむというので山に登ってわらびを取ることにする。
谿谷多風,霜露沾衣。
渓谷にはいると風が多く吹き着物を巻き上げる、暫くすると霜や露がおりてきて衣を濡らすほどになる。
野雉群雊,猿猴相追。
野生の雉は鳴き声で群れをなしているようだ。猿と手長猿たちは追いかけあって戯れている。
還望故鄉,鬱合壘壘!
わたしは独り他国から故郷の空をかえり見ると、そこにはただ樹木の鬱蒼たる山がはてしなく重なり合っているのである。
高山有崖,林木有枝。
高い山には常に崖があるものであり、林の木には必ず枝があるものである。
憂來無方,人莫之知。
それが当たり前というのに、人に憂いに思うことが来るというのは法則もなければ方策もない、だからひとは誰でもそれを予知することなどしても仕方がないのだ。
#2
人生如寄,多憂何為? 今我不樂,歲月如馳。
湯湯川流,中有行舟。 隨波轉薄,有似客遊。
策我良馬,被我輕裘。 載馳載驅,聊以忘憂。
『善哉行二首 其一』 現代語訳と訳註
(本文) 善哉行二首
其一 #1
上山採薇,薄暮苦饑。 谿谷多風,霜露沾衣。
野雉群雊,猿猴相追。 還望故鄉,鬱合壘壘!
高山有崖,林木有枝。 憂來無方,人莫之知。
#2
人生如寄,多憂何為? 今我不樂,歲月如馳。
湯湯川流,中有行舟。 隨波轉薄,有似客遊。
策我良馬,被我輕裘。 載馳載驅,聊以忘憂。
(下し文)その一
山に上り薇を采り、薄暮【はくぼ】饑【う】えに苦しむ。
谿谷【けいこく】風多く、霜露衣を霑す。
野雉【やち】羣【むらが】り雊【な】き、猿猴【えんこう】相い追う。
還りて故郷を望むに、鬱として何ぞ壘壘【るいるい】たる。
高山に崖有り、林木に枝有る。
憂い来たりて方を無くし、人の之を知ること莫れ。
(現代語訳)
日暮れになっておなかがすきすぎて苦しむというので山に登ってわらびを取ることにする。
渓谷にはいると風が多く吹き着物を巻き上げる、暫くすると霜や露がおりてきて衣を濡らすほどになる。
野生の雉は鳴き声で群れをなしているようだ。猿と手長猿たちは追いかけあって戯れている。
わたしは独り他国から故郷の空をかえり見ると、そこにはただ樹木の鬱蒼たる山がはてしなく重なり合っているのである。
高い山には常に崖があるものであり、林の木には必ず枝があるものである。
それが当たり前というのに、人に憂いに思うことが来るというのは法則もなければ方策もない、だからひとは誰でもそれを予知することなどしても仕方がないのだ。
(訳注)
善哉行二首其一 #1
「古詩源巻三 漢詩 楽府歌辭『善哉行』文末に掲載。貧困の士太夫が盛宴に列して感じる所を述べたもの。」を踏まえて作る。
上山採薇,薄暮苦饑。
日暮れになっておなかがすきすぎて苦しむというので山に登ってわらびを取ることにする。
・二句は倒句で読む。
谿谷多風,霜露沾衣。
渓谷にはいると風が多く吹き着物を巻き上げる、暫くすると霜や露がおりてきて衣を濡らすほどになる。
野雉群雊,猿猴相追。
野生の雉は鳴き声で群れをなしているようだ。猿と手長猿たちは追いかけあって戯れている。
還望故鄉,鬱合壘壘!
わたしは独り他国から故郷の空をかえり見ると、そこにはただ樹木の鬱蒼たる山がはてしなく重なり合っているのである。
高山有崖,林木有枝。
高い山には常に崖があるものであり、林の木には必ず枝があるものである。
・二句 平坦で楽なものばかりではない。突然崖のような苦しみがあっても当然のこととしてとらえよ。「高山之有崖,林木之有枝,愚智同知之。今憂來仍無定方,而人皆莫能知之。《說苑》曰:「莊辛謂襄成君曰:『昔《越人之歌》曰:「山有木兮木有枝,心悅君兮君不知。」
憂來無方,人莫之知。
それが当たり前というのに、人に憂いに思うことが来るというのは法則もなければ方策もない、だからひとは誰でもそれを予知することなどしても仕方がないのだ。
・二句 先のことを憂いて沈んでいるより今を愉しめということに繋いでゆくものである。論語孟子 諺有之曰:「人莫知其子之惡,莫知其苗之碩。」に基づく。
尚、曹丕が参考にしたと思われる同名の詩をあげる。
古詩源巻二漢詩 楽府歌辭『善哉行』
善哉行
來日大難,口燥唇乾。今日相樂,皆當喜歡。
經歷名山,芝草翻翻。仙人王喬、奉藥一丸。
自惜袖短,內手知寒。慚無靈輒,以報趙宣。
月沒參橫,北斗闌干。親交在門,饑不及餐。
歡日尚少,戚日苦多。以何忘憂,彈箏酒歌。
淮南八公,要道不煩,參駕六龍,遊戲雲端。