曹植 《上責躬應詔詩表》
愚かな子でもあわれんでその能力を求め愛するのは、慈父の恩というものです。
こういうことで、今愚である臣下の私は陛下のご恩徳の施しにすがって生きのび、自らを棄てずにおる次第です。
2013年4月30日 | 同じ日の紀頌之5つのブログ |
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上責躬應詔詩表 曹植 魏詩<74-#4> 750 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2298
上責躬詩表 #1
臣植言:臣自抱釁歸蕃,
下臣である曹植が申し上げます。私罪を受けて藩地の鄄城に帰りました。
刻肌刻骨,追思罪戾,
肌をきざみ、骨をきざむ思いでおり、過去の罪になやみ思う日々を追いました。
晝分而食,夜分而寢。
まず、正午にはきちんと食事し、夜半になるときちんと眠ることにしております。
誠以天綱不可重罹,聖恩難可再恃。
忠誠の考えにたって見ますと、天子による法網は二度と犯してはならないということ、陛下のおなさけを重ねてたのみとすることはよろしくないことであります。
#2
竊感《相鼠》之篇,無禮遄死之義,
心の中でほかの『詩経、鄘風、相鼠』に「人でありながら礼儀がないなら速かに死ぬるがよい」とある意に感じたということであります。
形影相弔,五情愧赧。
形と影とが互いに弔い合うようななにもかにもそうしつしたようなたよりない気持になって慚愧の情に堪えませんでした。
以罪棄生,則違古賢夕改之勸;
そこで罪のためにいっそ死のうかと思えば、古の賢人骨子の言った「朝過ちをしても晩に改めさえすればよい」との勧めに背くこととなると理解したのです。
忍垢苟全,則犯詩人胡顏之譏。
それなら恥を忍んでともかくも生き永らえようとすれば、詩人の「どんな顔で恥をさらりと生きているのか」との譏を犯すことになります。
#3
伏惟陛下德象天地,恩隆父母,
そこであつかましくもここに伏して陳情申し上げる次第であります。思えば陛下の道徳の表れは天地の如く広大であり、ご恩は父母の恩よりも高いのです。
施暢春風,澤如時雨。
陛下の施政は春風のごとく暖かく包まれ、恩徳の施しは時を得た雨のごとくにゆきわたっています。
是以不別荊棘者,慶雲之惠也。
これをもって、荊棘のような悪木でも、わけ隔てをせずに育てるものであり、瑞雲の恵みであります。
#4
七子均養者,鳲鳩之仁也。
七人の子を、むらなく養うのは鳲鳩の仁徳の心であります。
舍罪責功者,明君之舉也。
その罪を問わずに功を挙げることを責めるのは、明君のなされることなのです。
矜愚愛能者,慈父之恩也。
愚かな子でもあわれんでその能力を求め愛するのは、慈父の恩というものです。
是以愚臣徘徊於恩澤,而不敢自棄者也。
こういうことで、今愚である臣下の私は陛下のご恩徳の施しにすがって生きのび、自らを棄てずにおる次第です。
『上責躬應詔詩表』 現代語訳と訳註
(本文) #4
七子均養者,鳲鳩之仁也。
舍罪責功者,明君之舉也。
矜愚愛能者,慈父之恩也。
是以愚臣徘徊於恩澤,而不敢自棄者也。
(下し文) #4
七子 均しく養うは,鳲鳩の仁なり。
罪を舍てて功を責むるは,明君の舉なり。
愚を矜んで能を愛するは,慈父の恩なり。
是を以って愚臣 恩澤に徘徊して,而不敢て自ら棄てざる者なり。
(現代語訳)
七人の子を、むらなく養うのは鳲鳩の仁徳の心であります。
その罪を問わずに功を挙げることを責めるのは、明君のなされることなのです。
愚かな子でもあわれんでその能力を求め愛するのは、慈父の恩というものです。
こういうことで、今愚である臣下の私は陛下のご恩徳の施しにすがって生きのび、自らを棄てずにおる次第です。
(訳注) #4
七子均養者,鳲鳩之仁也。
七人の子を、むらなく養うのは鳲鳩の仁徳の心であります。
〇七子均養 『詩経、曹風、鳲鳩』「鳲鳩在桑、其子七兮。」(鳲鳩桑に在り、其の子七つ)とあり、毛伝に「鳲鳩の其の子を養うや、朝は上よりして下り、暮には下よりして上り、平均なること一の如し」と注してある。
○鳲鳩 「ふふとり」「つつどり」「なわしろどり」「よぶこどり」などの和名がある。
舍罪責功者,明君之舉也。
その罪を問わずに功を挙げることを責めるのは、明君のなされることなのです。
○舍罪 つみをゆるす。
矜愚愛能者,慈父之恩也。
愚かな子でもあわれんでその能力を求め愛するのは、慈父の恩というものです。
是以愚臣徘徊於恩澤,而不敢自棄者也。
こういうことで、今愚である臣下の私は陛下のご恩徳の施しにすがって生きのび、自らを棄てずにおる次第です。