班固《西都賦》(41) さて、こうして、天子は、属玉の館に登り、長楊官の台樹を通りぬける。そこで、山川の形勢に目をとめて、全軍の殺戮した獲物を仔細に視察なさるのである。原野は静まりかえり生物一つなく、四方の果てまで日はとどきわたる。鳥は上に下にと重なりあい、獣はたおれて重なりあう。この後で獲物を収容して士卒を集合させ、功を論じて胙を賜う。軽騎兵の軍官が列を組んで肉を丸焼きにし、酒の車を馳せて酒をつぐ。
班孟堅(班固)《西都賦》(41)#16(狩猟後の饗宴と昆明地ⅰ)-1 文選 賦<112―41>18分割55回 Ⅱ李白に影響を与えた詩995 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3523
(41)#16(狩猟後の饗宴と昆明地ⅰ)-1
於是天子乃登屬玉之館,歷長楊之榭。
さて、こうして、天子は、属玉の館に登り、長楊官の台樹を通りぬける。
覽山川之體勢,觀三軍之殺獲。
そこで、山川の形勢に目をとめて、全軍の殺戮した獲物を仔細に視察なさるのである。
原野蕭條,目極四裔。
原野は静まりかえり生物一つなく、四方の果てまで日はとどきわたる。
禽相鎮壓,獸相枕藉。
鳥は上に下にと重なりあい、獣はたおれて重なりあう。
然後收禽會眾,論功賜胙。
この後で獲物を収容して士卒を集合させ、功を論じて胙を賜う。
陳輕騎以行炰,騰酒車以斟酌。
軽騎兵の軍官が列を組んで肉を丸焼きにし、酒の車を馳せて酒をつぐ。
(42)#16-2
割鮮野食,舉烽命釂。
饗賜畢,勞逸齊。
大路鳴鑾,容與徘徊。
集乎豫章之宇,臨乎昆明之池。
左牽牛而右織女,似雲漢之無涯。
茂樹蔭蔚,芳草被隄。
(43)#16-3
蘭茞發色,曄曄猗猗。
若摛錦布繡,瀦燿乎其陂。
鳥則玄鶴白鷺,黃鵠鵁鸛。
鶬鴰鴇鶂,鳧鷖鴻鴈。
朝發河海,夕宿江漢。
沈浮往來,雲集霧散。
(41)#16(狩猟後の饗宴と昆明地ⅰ)-1
是に於いて天子 乃ち屬玉の館に登り,長楊の榭を歷る。
山川の體勢を覽,三軍の殺獲を觀る。
原野 蕭條として,目 四裔【しえい】を極める。
禽は相い鎮壓【ちんあつ】し,獸は相い枕藉【しんしゃ】す。
然る後 禽を收め 眾を會し,功を論じ胙を賜う。
輕騎を陳【つら】ねて以て炰【ほう】を行【や】り,酒車を騰【あ】げてて斟酌【しんしゃく】す。
(42)#16-2
鮮を割【さ】きて野に食らわしめ,烽を舉げて釂【しゃく】を命ず。
饗賜【きょうし】畢【おわ】り,勞逸【ろういつ】齊しく。
大路鑾【すず】を鳴らし,容與【ようよ】として徘徊す。
豫章【よしょう】の宇に集まり昆明の池に,臨む。
牽牛を左にし織女を右にし,雲漢の涯【かぎり】無きに似たり。
茂樹【もじゅ】蔭蔚【いんうつ】して,芳草 隄に被う。
(43)#16-3
蘭茞【らんし】色を發し,曄曄【えうえう】猗猗【いい】とする。
錦を摛【の】ぶると繡【しゅう】を布【し】くとの若く,其の陂【つつみ】に瀦【てり】燿【かがや】く。
鳥には則ち玄鶴【げんかく】白鷺【はくろ】,黃鵠【こうこく】鵁鸛【こうかん】あり。
鶬鴰【そうか】鴇鶂【ほうげき】,鳧鷖【ふえい】鴻鴈【こうがん】あり。
朝に河海を發し,夕べに江漢に宿す。
沈浮【ちんふ】往來して,雲のごとく集り霧のごとく散ず。
『西都賦』 現代語訳と訳註
(本文) (41)#16(狩猟後の饗宴と昆明地ⅰ)-1
於是天子乃登屬玉之館,歷長楊之榭。
覽山川之體勢,觀三軍之殺獲。
原野蕭條,目極四裔。
禽相鎮壓,獸相枕藉。
然後收禽會眾,論功賜胙。
陳輕騎以行炰,騰酒車以斟酌。
(下し文)
是に於いて天子 乃ち屬玉の館に登り,長楊の榭を歷る。
山川の體勢を覽,三軍の殺獲を觀る。
原野 蕭條として,目 四裔【しえい】を極める。
禽は相い鎮壓【ちんあつ】し,獸は相い枕藉【しんしゃ】す。
然る後 禽を收め 眾を會し,功を論じ胙を賜う。
輕騎を陳【つら】ねて以て炰【ほう】を行【や】り,酒車を騰【あ】げてて斟酌【しんしゃく】す。
(現代語訳)
さて、こうして、天子は、属玉の館に登り、長楊官の台樹を通りぬける。
そこで、山川の形勢に目をとめて、全軍の殺戮した獲物を仔細に視察なさるのである。
原野は静まりかえり生物一つなく、四方の果てまで日はとどきわたる。
鳥は上に下にと重なりあい、獣はたおれて重なりあう。
この後で獲物を収容して士卒を集合させ、功を論じて胙を賜う。
軽騎兵の軍官が列を組んで肉を丸焼きにし、酒の車を馳せて酒をつぐ。
(訳注)
(41)#16(狩猟後の饗宴と昆明地ⅰ)-1
於是天子乃登屬玉之館,歷長楊之榭。
さて、こうして、天子は、属玉の館に登り、長楊官の台樹を通りぬける。
○屬玉 館の名。「属玉は水鳥、鵁鶄に似る」(宣帝紀晋灼注)。これを館に作ってすえてある。場所は三輔の一つ右扶風にあり(『三輔黄図』)。栢梁台の火災後、縁起をかついで火に勝つ意から、上林苑の建物は多く水鳥の名をつける(『西京雑記』)。属玉は一説玉で飾るとある。
○長楊之樹 宮殿の名。樹は、土の台の上に木造の屋を建てたもの。「長楊の樹は長楊宮に在り。秋冬其の下に校猟し、武士に命じて禽獣を搏射せしめ、天子比に登りて以て観る」。
覽山川之體勢,觀三軍之殺獲。
そこで、山川の形勢に目をとめて、全軍の殺戮した獲物を仔細に視察なさるのである。
○三軍 中国、周代の兵制で、上軍・中軍・下軍それぞれ1万2500人、合計3万7500人の軍隊。周代の軍制で、天子の統率した6個の軍。一軍が1万2500人で、合計7万5000人の軍隊。六師(りくし)。
原野蕭條,目極四裔。
原野は静まりかえり生物一つなく、四方の果てまで日はとどきわたる。
禽相鎮壓,獸相枕藉。
鳥は上に下にと重なりあい、獣はたおれて重なりあう。
然後收禽會眾,論功賜胙。
この後で獲物を収容して士卒を集合させ、功を論じて胙を賜う。
○胙 ひもろぎ。神に供える肉。
陳輕騎以行炰,騰酒車以斟酌。
軽騎兵の軍官が列を組んで肉を丸焼きにし、酒の車を馳せて酒をつぐ。
○炰 物を包んで焼く。