しばらくはここに留まっているつもりであるが、この時、若しここを立ち去るということになるなら、今度は、全く浮世と絶縁して、三清の大空へ昇天したいとおもうのだ。
73-#2 《冬日歸舊山》Index-3Ⅰ- 2-720年開元八年20歳から23歳 成都・峨嵋山に遊ぶ <73-#2> Ⅰ李白詩1238 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4738
index-3*Ⅰ-3- 720年開元八年20歳 | 6首 | ||
No. | 詩題 | 詩文初句 | |
1 | 大鵬一日同風起, | 卷八 | |
2 | 酬宇文少府見贈桃竹書筒 | 桃竹書筒綺繡文, | 巻十八 |
3 | 登錦城散花樓 | 日照錦城頭, | 巻二十 |
4 | 登峨眉山 | 蜀國多仙山, | 巻二十 |
5 | 冬日歸舊山 | 未洗染塵纓, | 巻二十五 |
6 | 春感詩 | 茫茫南與北, | 巻二十五 |
制作年: 720年開元八年20歲
卷別: 卷一八五 文體: 五言古詩
詩題: 冬日歸舊山
作地點: 戴天山(劍南道北部 / 綿州 / 無第三級行政層級)
及地點: 戴天山 (劍南道北部 綿州 昌明) 別名:大康山、大匡山、匡山
冬日歸舊山
(この詩は、冬日、むかしの山居に帰るときに心境を詠った。)#1
未洗染塵纓,歸來芳草平。
塵に染まった冠の紐を未だに洗うことなどしないままで、旧山に帰ってみるとその辺一帯はあれはてて芳草が平らかにしいた様に生えている。
一條藤徑綠,萬點雪峰晴。
そこに通じている一筋の小道には、藤の蔓がからみあっていて、その色は緑であるし新たに雪を頂きにかぶった万点の峰は、晴れた空にくっきりと聳えている。
地冷葉先盡,谷寒雲不行。
地には、日光を受けずして、冷ややかなるによって、葉はまずすべて落ち去って、谷は寒く、雲も湧いてゆくことはない。
嫩篁侵舍密,古樹倒江橫。
若竹は、家を侵して、密に繁り、古樹、古木は江水の辺に倒れて横たわっている。
白犬離村吠,蒼苔壁上生。
白い犬は、村を離れて吠え、青苔は壁上にしょうじている。
#2
穿廚孤雉過,臨屋舊猿鳴。
それから、厨房が穿っていて、そこから一羽の雉が飛び過ぎていく。屋根の上には、昔馴染みの猿がないている。
木落禽巢在,籬疏獸路成。
中に入って、寝牀を掃うと蒼鼠が走り回り、手文庫をひっくり返してみると紙魚が驚いて飛び出す。
拂床蒼鼠走,倒篋素魚驚。
それから硯を洗って、この屋の修繕について良策を書き連ねてみる、松の木を敲いて、この身も、松特有の貞節になぞられるものとおもうのだ。
洗硯修良策,敲松擬素貞。
しばらくはここに留まっているつもりであるが、この時、若しここを立ち去るということになるなら、此時重一去,去合到三清。
今度は、全く浮世と絶縁して、三清の大空へ昇天したいとおもうのだ。
冬日歸舊山
未だ洗わず 塵に染むるの纓,歸り來れば芳草平らかなり。
一條 藤徑綠に,萬點 雪峰の晴。
地 冷やかにして 葉 先ず盡き,谷寒くして雲行かず。
嫩篁【どんこう】舍を侵して密,古樹 江に倒れ橫たう。
白犬 村を離れて吠え,蒼苔 壁上りて生ず。
#2
廚を穿って孤雉【こち】過ぎ,屋に臨んで舊猿鳴く。
木落ちて禽巢在り,籬 疏にして 獸路成る。
床を拂えば蒼鼠【そうそ】走り,篋【きょう】を倒【さかしま】にすれば素魚驚く。
硯を洗うて良策を修し,松を敲いて素貞に擬す。
此の時 重ねて一去,去らば合【まさ】に 三清に到るべし。
『冬日歸舊山』 現代語訳と訳註
(本文)#2
穿廚孤雉過,臨屋舊猿鳴。
木落禽巢在,籬疏獸路成。
拂床蒼鼠走,倒篋素魚驚。
洗硯修良策,敲松擬素貞。
(下し文)#2
廚を穿って孤雉【こち】過ぎ,屋に臨んで舊猿鳴く。
木落ちて禽巢在り,籬 疏にして 獸路成る。
床を拂えば蒼鼠【そうそ】走り,篋【きょう】を倒【さかしま】にすれば素魚驚く。
硯を洗うて良策を修し,松を敲いて素貞に擬す。
此の時 重ねて一去,去らば合【まさ】に 三清に到るべし。
(現代語訳)
それから、厨房が穿っていて、そこから一羽の雉が飛び過ぎていく。屋根の上には、昔馴染みの猿がないている。
中に入って、寝牀を掃うと蒼鼠が走り回り、手文庫をひっくり返してみると紙魚が驚いて飛び出す。
それから硯を洗って、この屋の修繕について良策を書き連ねてみる、松の木を敲いて、この身も、松特有の貞節になぞられるものとおもうのだ。
しばらくはここに留まっているつもりであるが、この時、若しここを立ち去るということになるなら、今度は、全く浮世と絶縁して、三清の大空へ昇天したいとおもうのだ。
(訳注) #2
冬日歸舊山
(この詩は、冬日、むかしの山居に帰るときに心境を詠った。)#2
穿廚孤雉過,臨屋舊猿鳴。
それから、厨房が穿っていて、そこから一羽の雉が飛び過ぎていく。屋根の上には、昔馴染みの猿がないている。
穿廚 厨房が穿っている。台所には食べ物の残りかすがあり、屋根が破れて、そこから雉が飛び出した。
木落禽巢在,籬疏獸路成。
木の葉はすっかり落ちて、鳥の巣が丸見えでわかるし、籬は疎らになっていて、野獣の通路が出来上がっている。
拂床蒼鼠走,倒篋素魚驚。
中に入って、寝牀を掃うと蒼鼠が走り回り、手文庫をひっくり返してみると紙魚が驚いて飛び出す。
床 寝牀。
篋 書物を蔵する箱。
素魚 「シミ(衣魚、紙魚)」と総称される。人家に生息するものが本を食害すると思われていたため「紙魚」と書かれる。
洗硯修良策,敲松擬素貞。
それから硯を洗って、この屋の修繕について良策を書き連ねてみる、松の木を敲いて、この身も、松特有の貞節になぞられるものとおもうのだ。
素貞 松特有の貞節が男としての貞節に擬す。
此時重一去,去合到三清。
しばらくはここに留まっているつもりであるが、この時、若しここを立ち去るということになるなら、今度は、全く浮世と絶縁して、三清の大空へ昇天したいとおもうのだ。
到三清 三清の大空へ昇天したいということ。