李白《玉真公主別館苦雨贈衛尉張卿,二首之一》-#1(玉真公主の別館のサロンに長雨に振り込まれ、長逗留に気兼ねして賦した詩を衛尉である張卿に贈る)
141-#1 《玉真公主別館苦雨贈衛尉張卿,二首之一》Index-10 Ⅱ―5-730年開元十八年30歳 李白<142> Ⅰ李白詩1327 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ5183
李白詩index- 9 《730年開元十八年30歳 安陸から長安に遊ぶ。》
年:730年開元十八年30歳
卷別: 卷一六八 文體: 五言古詩
詩題: 玉真公主別館苦雨贈衛尉張卿,二首之一
作地點: 終南山(京畿道 / 京兆府 / 盩厔)
及地點: 金張館 (京畿道 京兆府 盩厔) 別名:別館
交遊人物:玉真公主 詩文提及
玉真公主別館苦雨贈衛尉張卿,二首之一
(玉真公主の別館のサロンに長雨に振り込まれ、長逗留に気兼ねして賦した詩を衛尉である張卿に贈る)
秋坐金張館,繁陰晝不開。
公主の別館は、古の金氏と張氏、二氏の邸宅に比すべきこの公主別館に逗留しているところへ、折からの秋の空が搔き曇り、昼になっても鬱陶しく、長雨となった。
空煙迷雨色,蕭颯望中來。
空には中天に煙雲がかかり、雨色を迷わしていたのであるが、果然、蕭颯として雨が降り注ぐのを眺めるのであった。
翳翳昏墊苦,沈沈憂恨催。
そこで、もやもやして、暗くて、湿気が多くなるのに閉口し、沈々とした気分は続き、憂恨の念が催してきたのである。
清秋何以慰,白酒盈吾杯。
吟詠思管樂,此人已成灰。
獨酌聊自勉,誰貴經綸才。
彈劍謝公子,無魚良可哀。
(玉真公主別館に苦雨に衛尉張卿に贈る,二首の一)
秋 金張の館に坐し,繁陰 晝 開かず。
空煙 雨色を迷い,蕭颯として 望中より來る。
翳翳【えいえい】として昏墊【こんてん】苦,沈沈として憂恨 催す。
清秋 何を以て慰めん,白酒 吾が杯に盈つ。
吟詠 管樂を思い,此の人 已に灰に成る。
獨酌 聊【いささ】か 自ら勉む,誰か貴ばん 經綸の才。
劍を彈じて 公子に謝す,魚無きは 良【まこと】に哀しむ可し。
『玉真公主別館苦雨贈衛尉張卿,二首之一』 現代語訳と訳註解説
(本文)
玉真公主別館苦雨贈衛尉張卿,二首之一
秋坐金張館,繁陰晝不開。
空煙迷雨色,蕭颯望中來。
翳翳昏墊苦,沈沈憂恨催。
(下し文)
(玉真公主別館に苦雨に衛尉張卿に贈る,二首の一)
秋 金張の館に坐し,繁陰 晝 開かず。
空煙 雨色を迷い,蕭颯として 望中より來る。
翳翳【えいえい】として昏墊【こんてん】苦,沈沈として憂恨 催す。
(現代語訳)
(玉真公主の別館のサロンに長雨に振り込まれ、長逗留に気兼ねして賦した詩を衛尉である張卿に贈る)
公主の別館は、古の金氏と張氏、二氏の邸宅に比すべきこの公主別館に逗留しているところへ、折からの秋の空が搔き曇り、昼になっても鬱陶しく、長雨となった。
空には中天に煙雲がかかり、雨色を迷わしていたのであるが、果然、蕭颯として雨が降り注ぐのを眺めるのであった。
そこで、もやもやして、暗くて、湿気が多くなるのに閉口し、沈々とした気分は続き、憂恨の念が催してきたのである。
(訳注)
玉真公主別館苦雨贈衛尉張卿,二首之一
(玉真公主の別館のサロンに長雨に振り込まれ、長逗留に気兼ねして賦した詩を衛尉である張卿に贈る)
この詩は李白が玉真公主別館に滞在する間に、長雨に遭い、申し訳なく感じていたので、この詩を賦して、張説の息子張垍(求職を訴えていた)に贈ったもの。
玉真公主は睿宗のむすめ、字は持盈【じえい】、大極元年、出家して道士となった人である。この詩はその玉真公主に献じたものである。魏顥の言に倚れば李白は事あるごとに公主に献じていたという。
衛尉 宮殿の門内に役所あり衛士と屯兵とを掌る。丞(輔佐)一人。属官には、国事、散召を掌る公車司馬(官車で召された人を送迎また宮中を夜間巡視する宮殿の司馬門の役所を掌る武官)、衛士(宿衛の士)、旅蕡三令丞(戎と盾とをもち王車を護衛する三人の令、長と丞、衛士三人の丞)、また諸屯の衛候(見張役)、司馬二十二人(宮殿の外門を総称して司馬門といいまた単に司馬ともいう。その近衛兵)。
張卿 張垍(? - 至徳2載(757年))は、唐代玄宗朝に仕えた政治家。名宰相とされる張説の次子であり、玄宗の娘婿であったが、安史の乱の際、安禄山に仕えたため、処刑された。兄に張均、弟に張埱がいる。
秋坐金張館,繁陰晝不開。
公主の別館は、古の金氏と張氏、二氏の邸宅に比すべきこの公主別館に逗留しているところへ、折からの秋の空が搔き曇り、昼になっても鬱陶しく、長雨となった。
金張館 古の金氏と張氏、二氏の邸宅に比すべき玉真公主の別館。
晝不開 空が晴れることが無くなる。昼になっても鬱陶しくて心がひらかない。
空煙迷雨色,蕭颯望中來。
空には中天に煙雲がかかり、雨色を迷わしていたのであるが、果然、蕭颯として雨が降り注ぐのを眺めるのであった。
翳翳昏墊苦,沈沈憂恨催。
そこで、もやもやして、暗くて、湿気が多くなるのに閉口し、沈々とした気分は続き、憂恨の念が催してきたのである。
昏墊 暗くて、湿気が多くなる。
憂恨 (忧恨) 1.猶愎恨。 固執, 乖戾。 2.憂愁怨恨。 南朝梁沈約《從軍行》「惜哉征夫子, 憂恨良獨多。」