李白 侍從宜春苑,奉詔賦龍池柳色初青,聽新鶯百囀歌 #1
東風已綠瀛洲草,紫殿紅樓覺春好,池南柳色半青青。
縈煙嫋娜拂綺城,垂絲百尺掛雕楹。
(天子に興慶宮の宜春苑に扈従して「龍池柳色初青、聴新鶯百囀」(龍池の柳色はじめて青く、新鴬の百囀を聴く)ということを題にして、歌を作れという勅命を受けに賦して作つた歌である)
東方の仙人の島の瀛洲と見紛う宜春苑には春を呼ぶ風、東風が緩やかに吹き渡って、満地の草々、木々を緑にし、すでに大明宮の紫宸殿、紫蘭殿の紫の宮殿、金鑾殿、綾綺殿の紅の楼閣、すべてに 春の景色がひろがっていて、興慶宮の龍池の南水辺の柳の色も黄緑から青々としてきた。暖かき虹の春霞はただよいはじめしなやかに長安城、宮城の壁を覆い払っている。龍池のしだれ柳はその枝を百尺ものながさで枝垂れて、彫刻で飾った楼の柱にかかっている。
743年(54)李白 卷六04-《侍從宜春苑,奉詔賦龍池柳色初青,聽新鶯百囀歌》Index-23Ⅲ― 2-743年天寶二年43歳 94首-(54)Ⅰ李白詩1712 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ7108
743年 天寶2年(李白43歳) |
正月 |
1.安禄山が入朝した。玄宗皇帝が特別厚く寵遇していたので、 彼は時期によらずに謁見できた。
安禄山は上奏した。
「去年、営州で虫害が起こり、苗が食べられてしまったので、臣は香を焚いて天へ祈りました。
『臣の心がもし曲がっていて主君に不忠で仕えるならば、どうかこの虫に臣の心臓を食べさせてください。
もしも臣が神の御心に背いていないなら、どうかこの虫を追い散らしてください。』
そうすると、沢山の鳥が北から飛んできて、虫をたちどころに食べ尽くしてしまいました。
どうか、検分の役人を派遣してください。」
これに従った。
2. 李林甫は、吏部尚書を兼ねていて、毎日政事堂に出勤しており、人事は侍郎の宋遙と苗晋卿に
全て委ねていた。
御史中丞・張倚が玄宗皇帝から気に入られ始めたので、宋遙も苗晋卿も彼と近づきになりたくなった。
この時、登用を望む者は一万人もいたのに、採用されたのは六十四人しかいなかった。
張倚の子息の張奭はその首席だったので、群議が沸騰した。
前の薊令・蘇孝韞が安禄山へ告げると、安禄山は入って上言した。
玄宗皇帝は、採用された人間を全員召集してこれを面前で試験した。張奭は試験用紙を手にしたまま、
終日一文字も書けなかった。時の人はこれを「曳白」と言った。
3. 癸亥、宋遙は武当太守に、苗晋卿は安康太守に、張倚は淮陽太守に左遷された。 この人選に関与した礼部郎中・裴朏らは、みな、嶺南の官に左遷された。
743年 天寶2年(李白43歳) |
3月 |
1.
江・淮南租庸等使・韋堅が滻水の水を引き込んで望春楼の下に沢を造ろうとした。そこで江淮の運船をかき
集め、人夫や匠を使って運河を掘らせた。徴発された役夫は、まるで丘をなすように大勢で、
江淮から京城へ至るまで、民間は労役に苦しめられて愁い怨んだ。
工事は、二年掛けて完成した。
2.
丙寅、玄宗皇帝は望春楼へ御幸して、新しい沢を観た。韋堅は、新船数百艘をこぎだした。
各々の船には平べったい板に郡名が書かれており、郡中の珍貨を船背に載せていた。
陜尉の崔成甫はきらびやかな錦の半袖、緑色のシャツで肌脱ぎになり、紅のスカーフを首に巻き、
船の先頭で得寶歌を歌った。飾り立てた百人の美人に唱和させ、船の列は数里も連なった。韋堅は跪いて諸郡の軽貨を
献上し、上は百牙の盤にて食した。
玄宗皇帝の宴会は終日終わらず、見物人は山積みとなった。
743年 天寶2年(李白43歳) |
4月 |
1.
韋堅に左散騎常侍を加え、その僚属吏卒も各々の地位に合わせて褒賞を下賜された。
その沢は、廣運と名付けられた。
この時、京兆尹の韓朝宗も渭水から水を引いて西街へ沢を造り、 材木の貯蔵所とした。
2.
丁亥、皇甫惟明が軍を率いて西平らから出陣し、吐蕃を撃った。 千余里を行軍し、洪済城を攻撃し、これを破った。
年:743年天寶二年43歳 94首-(53)
卷別: 卷一六六 文體: 七言古詩
詩題: 侍從宜春苑,奉詔賦龍池柳色初青,聽新鶯百囀歌
作地點: 長安(京畿道 / 京兆府 / 長安)
及地點: 樂遊原 (京畿道 京兆府 長安) 別名:宜春北苑、宜春北院、宜春苑、太平公主山莊、曲江、樂遊苑、樂遊園、江頭
龍池 (京畿道 京兆府 長安)
大明宮 (京畿道 京兆府 長安) 別名:永安宮、蓬萊宮、含元殿、蓬萊殿
交遊人物/地點:
侍從宜春苑,奉詔賦龍池柳色初青,聽新鶯百囀歌 #1
東風已綠瀛洲草,紫殿紅樓覺春好,池南柳色半青青。
縈煙嫋娜拂綺城,垂絲百尺掛雕楹。
(天子に興慶宮の宜春苑に扈従して「龍池柳色初青、聴新鶯百囀」(龍池の柳色はじめて青く、新鴬の百囀を聴く)ということを題にして、歌を作れという勅命を受けに賦して作つた歌である)
東方の仙人の島の瀛洲と見紛う宜春苑には春を呼ぶ風、東風が緩やかに吹き渡って、満地の草々、木々を緑にし、すでに大明宮の紫宸殿、紫蘭殿の紫の宮殿、金鑾殿、綾綺殿の紅の楼閣、すべてに 春の景色がひろがっていて、興慶宮の龍池の南水辺の柳の色も黄緑から青々としてきた。
暖かき虹の春霞はただよいはじめしなやかに長安城、宮城の壁を覆い払っている。龍池のしだれ柳はその枝を百尺ものながさで枝垂れて、彫刻で飾った楼の柱にかかっている。#2
上有好鳥相和鳴,間關早得春風情。
春風卷入碧雲去,千門萬戶皆春聲。
是時君王在鎬京,五雲垂暉耀紫清。
#3
仗出金宮隨日轉,天回玉輦繞花行。
始向蓬萊看舞鶴,還過茝若聽新鶯。
新鶯飛繞上林苑,願入簫韶雜鳳笙。
(宜春苑に侍従し、詔を奉じて、龍池の柳色はじめて青く、新鴬の百囀を聴くの歌を賦す)
東風すでに緑にす瀛洲の草、紫殿 紅楼 春の好きを覚ゆ。
池南の柳色なかば青青、烟を縈【めぐ】らせ裊娜【ジョウダ】として綺城を払ふ。
垂糸百尺雕楹【チョウエイ】に挂(かか)り。
上に好鳥のあひ和して鳴くあり、間関はやくも得たり春風の情。
春風 巻いて碧雲に入って去り、千門 万戸みな春声。
この時 君王は鎬京【コウケイ】にゐませば、五雲も暉【ひかり】を垂れて紫清に耀く。
仗【ジョウ】は金宮を出でて日に随って転じ、天は玉輦を回【めぐら】して花を繞って行く。
はじめ蓬萊に向って舞鶴を看【み】、また茝石を過ぎて新鴬を聴く。
新鴬は飛びて上林苑を繞り、簫韶【ショウショウ】 に入って鳳笙に雑【まじは】らんと願ふ。
『侍從宜春苑,奉詔賦“龍池柳色初青,聽新鶯百囀”歌』 現代語訳と訳註解説
(本文)
侍從宜春苑,奉詔賦龍池柳色初青,聽新鶯百囀歌 #1
東風已綠瀛洲草,紫殿紅樓覺春好,池南柳色半青青。
縈煙嫋娜拂綺城,垂絲百尺掛雕楹。
(下し文)
(宜春苑に侍従し、詔を奉じて、龍池の柳色はじめて青く、新鴬の百囀を聴くの歌を賦す)
東風すでに緑にす瀛洲の草、紫殿 紅楼 春の好きを覚ゆ。
池南の柳色なかば青青、烟を縈【めぐ】らせ裊娜【ジョウダ】として綺城を払ふ。
垂糸百尺雕楹【チョウエイ】に挂(かか)り。
(現代語訳)
侍從宜春苑,奉詔賦龍池柳色初青,聽新鶯百囀歌 #1(天子に興慶宮の宜春苑に扈従して「龍池柳色初青、聴新鶯百囀」(龍池の柳色はじめて青く、新鴬の百囀を聴く)ということを題にして、歌を作れという勅命を受けに賦して作つた歌である)
東方の仙人の島の瀛洲と見紛う宜春苑には春を呼ぶ風、東風が緩やかに吹き渡って、満地の草々、木々を緑にし、すでに大明宮の紫宸殿、紫蘭殿の紫の宮殿、金鑾殿、綾綺殿の紅の楼閣、すべてに 春の景色がひろがっていて、興慶宮の龍池の南水辺の柳の色も黄緑から青々としてきた。
暖かき虹の春霞はただよいはじめしなやかに長安城、宮城の壁を覆い払っている。龍池のしだれ柳はその枝を百尺ものながさで枝垂れて、彫刻で飾った楼の柱にかかっている。
(訳注)#1
侍從宜春苑,奉詔賦“龍池柳色初青,聽新鶯百囀”歌
(天子に興慶宮の宜春苑に扈従して「龍池柳色初青、聴新鶯百囀」(龍池の柳色はじめて青く、新鴬の百囀を聴く)ということを題にして、歌を作れという勅命を受けに賦して作つた歌である)
1.
李白の経歴中、天寶の初、玄宗の知遇を蒙り、待詔として宮中に出仕したのが、その一生の最も光栄ある得意の時代であった。そして、ある時、天子の駕に扈従して、宜春苑へ往った時に、「龍池柳色初青、聴新鶯百囀」ということを題にして、歌を作れという勅命を受けて、即時に賦して作つたのが、即ちこの詩である。他人の應制とは異にして、古體を用いては居るが、なは且つ放逸の句法を避けて、自然初唐の風格を帯びて居る。
2.
宜春北苑 《雍録》「天寶中,即東宮置宜春北苑。按既日北苑,當在宜春宮之北。」
3.
龍池 唐詩《紀事》云:「龍池,興慶宮也,明皇潛龍之地。」《會要》云:「開元元年,內出祭龍池樂章。十六年,築壇於興慶宮,以仲春月祭之。」《長安誌》:龍池,在南內南薰殿北、躍龍門南,本是平地,垂拱後因雨水流潦成小池,後又引龍首支渠分溉之,日以滋廣,彌亙數頃深至數丈,常有雲氣,或見黃龍出其中,謂之龍池。
東風已綠瀛洲草,紫殿紅樓覺春好,池南柳色半青青。
東方の仙人の島の瀛洲と見紛う宜春苑には春を呼ぶ風、東風が緩やかに吹き渡って、満地の草々、木々を緑にし、すでに大明宮の紫宸殿、紫蘭殿の紫の宮殿、金鑾殿、綾綺殿の紅の楼閣、すべてに 春の景色がひろがっていて、興慶宮の龍池の南水辺の柳の色も黄緑から青々としてきた。
4.
東風 春風。
5.
瀛洲 東方海上にある仙人の住む山、蓬莱山、方丈山、瀛州山。
6.
紫殿 大明宮の中には紫宸殿、紫蘭殿など翰林院からすべて東側にあるもの。
7.
半青春 萌木色。黄緑。
縈煙嫋娜拂綺城,垂絲百尺掛雕楹。
暖かき虹の春霞はただよいはじめしなやかに長安城、宮城の壁を覆い払っている。龍池のしだれ柳はその枝を百尺ものながさで枝垂れて、彫刻で飾った楼の柱にかかっている。
8.
縈煙 春霞。
9.
裊娜 しなやかな様。
10.
綺城 美しい長安城、宮城の壁。
11.
垂糸 しだれ柳の枝。