李白18 相逢行
 このころ、李白の詩を24歳のころ認めてくれていた官僚で詩人の蘇廷はなくなっていた。王維は10年前に科挙に合格し、洛陽の地方官をしている。結婚し、宗之問の別荘であった、輞川荘を、購入している。張説(64)が没し、張九齢が後継者となっていた。詩を献上したり、何らかの士官活動はみられない。この李白の長安滞在の前後して、盛唐の多くの詩人は長安に集まり、科挙の試験に及第している。杜甫は、呉越(江蘇・浙江)に遊ぶ。


 長安の多数の坊(ぼう)には、もっぱら貴顕の住む坊が出来あがっていて、住んでいることが本人にとって誇りであり、そこの住人と知人であることさえ自慢になる。街で出会った貴族同士の自慢話を描いています。


相逢行 
         
相逢紅塵内、高揖黄金鞭。
万戸垂楊裏、君家阿那辺。


にぎやかな街で出逢い
黄金の鞭を上げて挨拶する
垂楊の陰に  家のひしめく大都会
お宅は確か  あの辺でしたね

 長安で、「土埃」は人馬の賑やかさの示し、「紅塵」という場合、歓楽街を示す。その街で乗馬の二人が、黄金の飾りのついた鞭を上げて挨拶をかわし、「君が家は阿那の辺」と街の一角に視線を投げる。


相逢紅塵内、高揖黄金鞭。
万戸垂楊裏、君家阿那辺。


相逢行(そうほうこう)
相逢(あいあ)う   紅塵(こうじん)の内
高揖(こうゆう)す  黄金(おうごん)の鞭
万戸垂楊(すいよう)の裏(うち)
君が家は阿那(あな)の辺(へん)


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李白19  玉階怨
 「玉階怨」も有名な楽府題で、宮女の夜の閨怨を詠うもの。

玉階怨 
         

玉階生白露、夜久侵羅襪。
却下水精簾、玲瓏望秋月。


白玉の階(きざはし)に白い霧が珠を結び、
夜は更けて、たたずむ妃(ひめ)の羅(ら)の靴下に冷たさが滲みとおる
水晶の簾(すだれ)をおろした
玲瓏とさらに透明に輝いて、秋の月影をのぞんでいる

  「玉階」は大理石の階(框)のことで、中国宮殿で院子(前庭)から廊に上がる階段のこと。通常左右にふたつあり、王侯の来臨を待って永いあいだ大理石の階段に佇んでいる。「玲瓏」は、透明に光り輝くさま。白露が宮女の薄絹の靴下の中まで滲みとおってくるという濃厚な哀憐の詩情だが、すべて楽府題にもとずく空想の作品。 

玉階生白露、夜久侵羅襪。
却下水精簾、玲瓏望秋月。


玉階(ぎょくかい)に白露(はくろ)生じ
夜久しくして羅襪(らべつ)を侵(おか)す
水精(すいしょう)の簾(すだれ)を却下(きゃっか)するも
玲瓏(れいろう)として秋月(しゅうげつ)を望む
玉階怨(ぎょくかいえん)