李白24 子夜呉歌其三 秋
この詩は、李白詩で、日本人に膾炙している秀作作品のひとつ。
李白は兵士の妻の閨怨を詠っているが、だからといってこの詩に反戦思想は感じられません。
子夜呉歌其三 秋
長安一片月、万戸擣衣声。
秋風吹不尽、総是玉関情。
何日平胡虜、良人罷遠征。
長安の空に輝く月ひとつ
あちこちの家から聞こえるのは砧(きぬた)を擣(う)つの声
夜空をわたる秋風(あきかぜ)も 吹きちらせ尽くせない。
それらの一つ一つの音はすべて 玉門関の夫を思うもの
いつの日に胡虜を平定して
恋しい夫は、遠征をやめてかえってくるのか
「擣(う)つ砧を臼にいれ、布を杵(棒杵)でつく。砧でつくのは洗濯ではなく、冬用の厚いごわごわした布を柔軟にするため。
長安一片月、万戸擣衣声。
秋風吹不尽、総是玉関情。
何日平胡虜、良人罷遠征。
子夜呉歌(しやごか) 其の三 秋
長安 一片の月
万戸 衣(い)を擣(う)つの声
秋風(しゅうふう) 吹いて尽きず
総て是(こ)れ玉関(ぎょくかん)の情
何(いず)れの日か胡虜(こりょ)を平らげ
良人(りょうじん) 遠征を罷(や)めん
李白25 子夜呉歌其四 冬
「冬」は「秋」のつづき。「秋」が幻想的に比べ、「冬」は極めて現実的。
子夜呉歌其四 冬
明朝駅使発、一夜絮征袍。
素手抽針冷、那堪把剪刀。
裁縫寄遠道、幾日到臨洮。
明日の朝には駅亭の飛脚が出発する
今夜のうちにこの軍服に綿入れして仕立てなきゃ
白い手で針を運ぶ 指はこごえつめたい
はさみを持つ手は もっとつらい
縫いあげて 遠いかなたのあなたに送ります
幾日たてば 臨洮に着くやら
明日の朝に駅亭の使者が発つ、それに託するため、今夜中に冬用の軍服を仕立て上げなければならないと、妻はこごえる手をこすりながら針を使う。なお、唐初の徴兵は、服などの壮備は本人負担であった。「臨洮」は甘粛省にある。広く西方の駐屯地でここから西方の万里の長城の始まりでその臨洮からさらに西に行く。
下に示す図の中心に長安(西安)があり、そのまま左方向(西)に赤ポイントが臨洮、甘粛省は左上に万里の長城を囲むようにずっと伸びる。
ちょうどこのころ、長く続いた、府兵制度は崩壊します。傭兵は主体になっていきます。しかし、この万里の長城を守る安西方面の守りについては、税金と同様に庶民に義務として課せられていた。当初は、3年官であったものが、やがて帰ってこない出征に代わっていきます。唐時代の人々は、この制度に不満を持っていた。
出征したら、帰ってこないという詩はたくさん残されています。王維 高適 賈至 岑參 王昌齢、王之渙、杜甫、・・・盛唐の期の詩が多いい。 http://kanbuniinkai7.dousetsu.com/
辺塞詩をうたう。http://kanbuniinkai7.dousetsu.com/99_hensaishijin013.html
万里の長城を詠う。 http://kanbuniinkai7.dousetsu.com/99banri014.html
名朝駅使発、一夜絮征袍。
素手抽針冷、那堪把剪刀。
裁縫寄遠道、幾日到臨洮。
子夜呉歌(しやごか)其の四 冬
明朝(みょうちょう) 駅使(えきし)発す
一夜にして征袍(せいほう)に絮(じょ)せん
素手(そしゅ) 針を抽(ひ)けば冷たく
那(なん)ぞ 剪刀(せんとう)を把(と)るに堪えん
裁縫して遠道(えんどう)に寄す
裁縫して遠道(えんどう)に寄す
幾(いずれ)の日か 臨洮(りんとう)に到らん
詩に詠われた 万里の長城・関所 http://kanbuniinkai7.dousetsu.com/99banri014