邊塞詩 戦争に行っていない李白が戦場や、外敵から守るための塞、などを題材にして歌う。漢文委員会ではこれを妻の立場で歌う、「春思う」、や「秋思う」等も邊塞のグル-プとしてとらえていく。


李白26 塞下曲六首

(1)塞下曲    李白
五月天山雪,無花祗有寒。
五月に、天山では雪が降る。花はなく、ただ、寒さだけがある

笛中聞折柳,春色未曾看。
笛の調べ折楊柳の曲を聞いた、春の気配など、まだまったく見たことがない

曉戰隨金鼓,宵眠抱玉鞍。
朝、鐘と太鼓に従って戦い。夜には、立派なくらを抱いて眠る。

願將腰下劍,直爲斬樓蘭。

できることならば、腰に下げた剣で,ただちに樓蘭を斬ってしまいたいものだ。


旧暦の五月(=夏)に、天山では雪が降る。(春や夏の訪れを示す)花はなく、ただ、寒さだけがある。
笛の調べで、折楊柳の曲を聞いた(が),(実際には、柳の芽吹く)春の気配など、まだまったく見たことがない
朝(からの戦闘で)は、鐘と太鼓に従って戦い。夜には、立派なくらを抱いて眠る。
できることならば、腰に下げた剣で,ただちに樓蘭を斬ってしまいたいものだ。


 戦争にまったく行っていない人が、辺疆の砦附近の風物や戦争のありさま、出征兵士の心情を詠ったものの詩題にしている。この詩は六連作のその1。こういった詩の特徴の一つに、塞に出征した兵士の気持ちを詠うものだが、それぞれの句に 雪、花、柳、春色、金、玉、剣、蘭と花と色が散りばめられている。詩がお遊びの一つになっている。特にこの時期則天武后の末期にあった、朝廷内のごたごたを張説らにより収められ、太平になっていた。均田制と府兵制をベースにした律令制の中で、府兵制が人民に与えた負担は大きかった。砂漠の砦に贈られた兵士の悲壮感だけを詠うのではなく、こうした、色をちりばめて少し華やかに気持ちを切り替えた。
  同時期の同様な詩はhttp://kanbuniinkai7.dousetsu.com/辺塞詩、王翰、王昌齢、王之渙を参照にされたい。李白にとって楽府、辺塞、塞下の詩は就職活動の一つであったのだろう。

五月天山雪
旧暦の五月(=夏)に、天山では雪が降る。
 ・五月:陰暦五月で、夏になる。 ・天山:〔てんざん〕新疆にある祁連山〔きれんざん〕(チーリェンシャン) 。天山一帯。当時の中国人の世界観では、最西端になる。天山山脈のこと。新疆ウイグル(維吾爾)自治区中央部タリム盆地の北を東西に走る大山系で、パミール高原の北部に至る。雪山。ここでは「異民族との戦闘の前線」の意として、使われている。


無花祗有寒
(春や夏の訪れを示す)花はなく、ただ、寒さだけがある。
 ・無花:花は(咲いてい)ない。 ・祗有:〔しいう〕ただ…だけがある。「無花祗有寒」の句中で前出「無」との揃いで用いられる表現。「無花祗有寒」。≒只有。 ・寒:寒さ。


笛中聞折柳
笛の調べで、折楊柳の曲を聞いた(が)。
 ・笛中:胡笳の調べで。葦笛の音に。 ・聞:聞こえる。 ・折柳:折楊柳の曲。


春色未曾看
(実際には、柳の芽吹く)春の気配など、まだまったく見たことがない。
 ・春色:春の気配。春の景色。 ・未曾:まだ…でない。…いままでに、…したことがない。 ・看:見る。


曉戰隨金鼓
朝(からの戦闘で)は、鐘と太鼓に従って戦い。
 ・曉:明け方。朝。あかつき。 ・戰:戦う。 ・隨:…にしたがって。 ・金鼓:(軍中で用いる)鉦(かね)と太鼓。進むのに太鼓を用い、留まるのに鉦(かね)を用いたことによる。


宵眠抱玉鞍
夜には、立派なくらを抱いて眠る。
 ・宵:夜。よい。 ・眠:眠る。 ・抱:だく。いだく。 ・玉鞍:〔ぎょくあん〕立派なくら。玉で作ったくら。


願將腰下劍
できることならば、腰に下げた剣で。
 ・願:願わくは。 ・將:…を持って。・腰下:腰に下げた。 ・劍:つるぎ。元来は、諸刃(もろは)の刺突用武器を指す。


直爲斬樓蘭
ただちに樓蘭を斬ってしまいたいものだ。
 ・直:ただちに。 ・爲:〔ゐ〕…のために。…に対して。…に向かって。目的や原因を表す介詞。また、なす。する。致す。動詞。 ・斬:傅介子等が楼蘭王を斬り殺した故実のように、征伐をする。 前漢の昭帝の頃、傅介子等が樓蘭王を殺したことを指す。 ・樓蘭:〔ろうらん〕漢代、西域にあった国。都市名。天山南路のロブノール湖(羅布泊)の畔にあった漢代に栄えた国(都市)。ローラン。原名クロライナ。現・新疆ウイグル(維吾爾)自治区東南部にあった幻の都市。天山の東南で、新疆ウイグル自治区中央部のタリム盆地東端、善〔善+おおざと〕県東南ロブノール湖(羅布泊)の北方にあった。そこに住む人種は白人の系統でモンゴリアンではなく、漢民族との抗争の歴史があった。四世紀にロブノール湖(羅布泊)の移動により衰え、七世紀初頭には廃墟と化した。現在は、楼蘭古城(址)が砂漠の中に土煉瓦の城壁、住居址などを遺しているだけになっている。 ・終:どうしても。いつまでも。とうとう。しまいに。ついには。 ・不還:還(かえ)らない。戻らない。かえってこない。


○韻 寒、看、鞍、蘭。

五月天山雪,無花祗有寒。
笛中聞折柳,春色未曾看。
曉戰隨金鼓,宵眠抱玉鞍。
願將腰下劍,直爲斬樓蘭。


 塞下曲       
五月  天山の雪,
花 無くして  祗(た)だ 寒のみ 有り。
笛中  折柳(せつりう)を 聞くも,
春色  未だ 曾(かつ)て 看ず。
曉(あかつき)に戰ふに  金鼓に 隨(したが)ひ,
宵(よひ)に眠るに  玉鞍を 抱(いだ)く。
願はくは  腰下(えうか)の劍を 將(も)って,
直ちに 爲(ため)に  樓蘭(ろうらん)を斬らん。



■漢詩の利用法

●手紙の書きだし ヒント。
先日、私がお友達に出した手紙の書き出しです。

冥冥細雨來・・・・・。しとしとと雨が続きます。(杜甫 梅雨より)
お元気ですか。梅雨は「湿気」と意外に「冷え」にも注意がいるそうです。私のほうは、おかげさまでここ数年何事もなく元気に過ごさせていただいています。
・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・
     草々(こういう手紙の時終りに書く)
追伸
私の好きな杜甫の詩を添えておきます。
梅  雨      杜甫51歳 成都 浣花渓草堂
南京犀浦道,四月熟黃梅。湛湛長江去,冥冥細雨來。
茅茨疏易濕,雲霧密難開。竟日蛟龍喜,盤渦與岸廻。

南京の犀浦県の吾が居宅の道では四月に梅のみが熟する。このときの長江の水は湛湛とたたえて流れ去り、暗っぽくこまかな雨がふってくる。吾が家のかやぶきのやねはまばらであるから湿りやすく、雲や霧は濃くとざして開けがたい。一日じゅう喜んでいるものは水中の蛟龍であり、水面のうずまきは岸勢にしたがって回転しつつある

成都郊外に我が家があり、4月は梅が熟している。
川にあふれんばかりの水が流れ、厚い雲でしとしとと小雨が降っている。
カヤぶきの屋根は湿気がはいる、雲や霧は戸をあけておくことができない。
こんな時でも一日中喜んでいる奴は水中の蚊龍。水面の渦巻きは岸辺に沿って流れていく。



形式とか、韻とか無視してもっと要約してこれだけ取り出してもいいのかもしれません。

南京犀浦道,四月熟黃梅。
湛湛長江去,冥冥細雨來。

4月になると我が家には、梅が熟している。近頃続く雨に家前の川は水嵩があふれんばかりにを増している、
厚い雲で暗くなっていて小雨もしとしと降り続く、


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私としては塞下曲六首 すべてそうしているものと思い込んでいました。長い分はブログに向かないのでしょうか。李白は、六首作っているわけですから、割愛するわけにはいきません。別の漢詩総合サイトには完全に掲載しています。漢文委員会7漢詩ZERO塞下曲六首其の一 其の二 其の三 其の四 其の五 其の六
其二
天兵下北荒,胡馬欲南飲。
橫戈從百戰,直為銜恩甚。
握雪海上餐,拂沙隴頭寢。
何當破月氏,然後方高枕。


天子の軍隊は北方の荒地へ出勤し、えびすの馬は南へ永を飲みに来ようとして衝突する。曳をかまえて百回の戦闘に参加するのは、ただ天子の恩を深く心にきざんでいるためだ。、
湖のほとりでは、雪をにぎって食べ、ゴビの砂漠のあたりでは、砂をかぶって寝る。
いつになったら月氏を破り、そうしてはじめて、枕を高くして眠ることができよう。


其の二
天兵下北荒,胡馬欲南飲。
天子の軍隊は北方の荒地へ出勤し、えびすの馬は南へ永を飲みに来ようとして衝突する。
○天兵 天子が指揮するところの軍隊。○北荒 北方の荒地。○胡馬欲南飲 菅、中国の北方にいた遊牧民族は、いつも南の方への進出をねらっていた。

橫戈從百戰,直為銜恩甚。
かまえて百回の戦闘に参加するのは、ただ天子の恩を深く心にきざんでいるためだ。
○横曳 曳は、諸刃の剣に長い柄をつけた武器。ほこを横にして構える。○銜恩 恩を心に深く留める。

握雪海上餐,拂沙隴頭寢。
湖のほとりでは、雪をにぎって食べ、ゴビの砂漠のあたりでは、砂をかぶって寝る。
○海上 海は東方の大海ではない。砂漠の中のみずうみ。○随頭 甘粛省のあたり。ゴビの砂漠のほとり。○何当 
何當破月氏,然後方高枕。
何時におなじ。○月氏 菅の西域の国名。もともとは傲燈、都連の間に住み、現在の甘粛省中部の西境と青海省の東境一帯を占領していた。漠の時代に、旬奴に打ち破られ西方にうつり、現在のインドのガンジス川流域、カシ二、、ル、アフガニスタン、パミール高原一帯を占領したものを大月氏と称一部は現在の甘粛省張披県と青海省酉寧県一帯に留まり、小月氏と称した。

○韻  飲、甚、寢、枕。


天兵下北荒,胡馬欲南飲。橫戈從百戰,直為銜恩甚。
握雪海上餐,拂沙隴頭寢。何當破月氏,然後方高枕。


其の二
天兵 北荒を下り、胡馬 南に飲わんと欲す
曳を横たえて 百戦に従うは、直だ恩を街むことの甚だしきが為なり
雪を握って 海上に餐し、抄を払って 陳頭に寝ぬ
何か当に月氏を破り、然る後 方に枕を高うせん.


李白28塞下曲六首 
其三
駿馬似風飆,鳴鞭出渭橋。
彎弓辭漢月,插羽破天驕。
陣解星芒盡,營空海霧消。
功成畫麟閣,獨有霍嫖姚。

疾風のような駿馬にまたがり、むちを鳴らして渭橋を出る。弓をびきしぼって、中国の月に別れをつげ、矢を腰にさしはさんで、天の庸子とうぬぼれるえびすを打ち破る。
陣立を解くと、戦争のきざしであった星の禁りもきえうせ、兵営がからになると暗くたちこめていた湖の霧がはれあがる。しかし、手柄を立てても、麒麟閥にその肖像がえがかれるのは、嘉桃のような大将、ただびとりだけ。そうして兵士たちはうちすてられたままだ。


駿馬似風飆,鳴鞭出渭橋
疾風のような駿馬にまたがり、むちを鳴らして渭橋を出る。
○風飆 疾風。○渭橋 横橋とも中渭橋ともいう。長安の北を流れる洞水に架けた橋で、ここを渡ると成陽の町。唐の時代には西域に通じる要道の一。

彎弓辭漢月,插羽破天驕
弓をびきしぼって、中国の月に別れをつげ、矢を腰にさしはさんで、天の庸子とうぬぼれるえびすを打ち破る。
○插羽 李白の「胡無人」には「流星白羽腰間插」という句がある。白羽の矢を腰のあたりにさす。○天騎 えびすの王はみずから、天の騎子(天の誇高き息子)と称して、中国の天子のメンツをきずつけた。

陣解星芒盡,營空海霧消
陣立を解くと、戦争のきざしであった星の禁りもきえうせ、兵営がからになると暗くたちこめていた湖の霧がはれあがる。
○星芒 星がはなつ矢のような光。中国の古代の迷信では、星のひかりが白色に変ると戦争のきざしと見た。○海霧砂漠のみずうみに立ちこめた霧。 

功成畫麟閣,獨有霍嫖姚。
○麟閣 麒麟閣の略。もとは漢の高祖の時、蒲何が建てて、図書を蔵していたが、のち漢の宜帝は功臣を紀念して表彰するため、霍光等十一人の像を閣上に画かした。〇霍嫖姚 漢代の名将、霍去病。霍光の兄。漢の武帝の時に匈奴を防いで功があり、嫖姚校尉となった。○麒麟閣にえがかれたのは、じつは弟の霍光であって、兄の霍去病ではない。李白の思いちがいかもしれない。


○韻 橋  驕  消  姚


其三
駿馬似風飆,鳴鞭出渭橋。彎弓辭漢月,插羽破天驕。
陣解星芒盡,營空海霧消。功成畫麟閣,獨有霍嫖姚

駿馬は 風貌の似く、鞭を鳴らして渭橋を出づ
弓を攣いて漢月を辞し,羽を挿しはさんで 天驕を破る
陣は解けて星空尽き、常は空しゅうして 海霧消ゆ
功成りて 麟闇に画かるるは独り零媛桃有るのみ

李白29塞下曲六首 

其四
白馬黃金塞,雲砂繞夢思。
那堪愁苦節,遠憶邊城兒。
螢飛秋窗滿,月度霜閨遲。
摧殘梧桐葉,蕭颯沙棠枝。
無時獨不見,流淚空自知。


白馬にまたがって黄金の塞を出た、あの人を思うと、砂漠の雲と砂が夢をぐるぐると取りまく。かなしみの季節に、遠く国境守備の人をおもうことの、なんというつらさよ。
ほたるは秋の窓辺いっぱいに飛びかう。月は霜のふる閏一宮ゆっくり照らす。
あおぎりの葉は枯れて落ち、沙柴の枝に木がらしが鳴る。
いつまでもあの人は帰ってこない。涙を流して、ただむなしく自分の運命を知るばかり

白馬黃金塞,雲砂繞夢思。
白馬にまたがって黄金の塞を出た、あの人を思うと、砂漠の雲と砂が夢をぐるぐると取りまく。
○黃金塞 昔の国境の地名。今その場所はわからない。

那堪愁苦節,遠憶邊城兒
かなしみの季節に、遠く国境守備の人をおもうことの、なんというつらさよ
○愁苦節 愁苦の時節。

螢飛秋窗滿,月度霜閨遲
ほたるは秋の窓辺いっぱいに飛びかう。月は霜のふる閏一宮ゆっくり照らす。

摧殘梧桐葉,蕭颯沙棠枝
あおぎりの葉は枯れて落ち、沙柴の枝に木がらしが鳴る。
○摧殘 くだきやぶる。○粛颯 ものさびしい風の声。○沙棠 昆崙山中に隼見るといわれる珍木。○無時獨不見 いつまでも夫が帰らないことをいうのであろう。李白には「独不見」と題する楽府があり、その結びに「終然独不見、流涙空自知」という句があるほか、この詩と同じ語句が多い。無時は未詳。

○韻 思、兒、遲、枝。


其四
白馬黃金塞,雲砂繞夢思。那堪愁苦節,遠憶邊城兒。
螢飛秋窗滿,月度霜閨遲。摧殘梧桐葉,蕭颯沙棠枝。
無時獨不見,流淚空自知。

白馬 黄金の塞、雲砂 夢息を繰る
邪んぞ堪えん 愁苦の節、遠く辺城の児を憶うを
螢飛んで 秋窓に満ち、月は霜閏を度ること遅し
推残す 梧桐の菓、粛楓たり 沙柴の枝
時として独り見ざること無し、涙を流して 空しく自ずから知る

李白30塞下曲六首 

其五
塞虜乘秋下,天兵出漢家。
將軍分虎竹,戰士臥龍沙。
邊月隨弓影,胡霜拂劍花。
玉關殊未入,少婦莫長嗟。

国ざかいのえびすは、秋の季節になると、きまって攻めてくる。天子の軍隊が、漢の朝廷から出征する。
将軍は、天子から徴兵の割符をいただき、兵隊は、ゴビの砂漠で夜営する。国境の月は、弓の影のままにまるく、砂漠の嘉は、剣にふりかかって花とさく。生きて再び玉門関に入ろうなど、思いもよらぬことだ。わかい嫁よ。ながいためいきをつくな。どうにもならないことだ。


塞虜乘秋下,天兵出漢家
国ざかいのえびすは、秋の季節になると、きまって攻めてくる。天子の軍隊が、漢の朝廷から出征する。
○この詩は唐詩選にとられている。○塞虜 国境のえびす。旬奴をののしって言った言葉。○天兵 天子の軍隊。○漢家 漢の朝廷。

將軍分虎竹,戰士臥龍沙。
将軍は、天子から徴兵の割符をいただき、兵隊は、ゴビの砂漠で夜営する。
○虎竹 兵士を徴発する時に用いる剖符。銅片又は竹片を用い、虎の形を刻み、まっぷたつに剖。、半分はみやこに留め、あと半分は各地の将軍にあたえる。○竜沙 白竜堆の砂漠、つまり今の蒙古のゴビの砂漠。

邊月隨弓影,胡霜拂劍花
国境の月は、弓の影のままにまるく、砂漠の嘉は、剣にふりかかって花とさく。
○辺月 国境の月。○胡霜 胡地の霜

玉關殊未入,少婦莫長嗟。
生きて再び玉門関に入ろうなど、思いもよらぬことだ。わかい嫁よ。ながいためいきをつくな。どうにもならないことだ。
○玉関 玉門関の略。中国本部からの出口に当る関所。甘粛省の西北端にあり、現在は油田開発の町。当時はここを出て戦地に行けば、ちょっと戻れない。○少婦 わかいよめ


○韻  家、沙、花、嗟。

塞虜乘秋下,天兵出漢家。將軍分虎竹,戰士臥龍沙。
邊月隨弓影,胡霜拂劍花。玉關殊未入,少婦莫長嗟。

塞虜 秋に乘じて下る,天兵 漢家を出づ。
將軍は虎竹を分かち,戰士は龍沙に臥す。
邊月 弓影に従い,胡霜 劍花を拂う。
玉關 殊に未だ入らず,少婦 長嗟すること莫れ。

李白31塞下曲六首 

其六
烽火動沙漠,連照甘泉雲。
漢皇按劍起,還召李將軍。
兵氣天上合,鼓聲隴底聞。
橫行負勇氣,一戰淨妖氛。

のろし火がゴビの砂漠にあがると、つぎつぎに伝えられて甘泉宮にかかる雲まで照らす。
漢の天子は剣に手をかけて起ち上られ、又もや李将軍をお招きになる。
戦争のきざしが天の上でおこり、太鼓の音が隣西と甘粛のさかいにある大きな坂の下で聞こえる。勇気をたのんで縦横無尽に活躍し、一戦して妖しい空気を静めたい。

烽火動沙漠,連照甘泉雲。
のろし火がゴビの砂漠にあがると、つぎつぎに伝えられて甘泉宮にかかる雲まで照らす。
○燥火 のろし。国境へ外敵が侵入したことを知らせる火。○沙漠 ゴビの砂漠。○甘泉 宮殿の名。駅西省浄化県の甘泉山上にある。秦の時代に建てられた離宮で、漠の武帝の時に増築修理され、毎年夏の避暑に用いられた。

漢皇按劍起,還召李將軍。
漢の天子は剣に手をかけて起ち上られ、又もや李将軍をお招きになる。
○漢皇 漢の天子。○按剣 刀のつかに手をかける。○李将軍 「漢の飛将軍」といわれた李広。旬奴とたびたび戦って勝ち、旬奴におそれられた将軍である。

兵氣天上合,鼓聲隴底聞。
戦争のきざしが天の上でおこり、太鼓の音が陝西と甘粛のさかいにある大きな坂の下で聞こえる。
○兵気 戦争の気配。○鼓声 進軍合図の太鼓の音。○隴底 陝西と甘粛のさかいにある大きな坂の下。

橫行負勇氣,一戰淨妖氛。

勇気をたのんで縦横無尽に活躍し、一戦して妖しい空気を静めたい
○横行 ほしいままに歩く。○妖氛 (ようぶん) あやしい悪気。


○韻 雲、軍、官、氛。

烽火動沙漠,連照甘泉雲。漢皇按劍起,還召李將軍。
兵氣天上合,鼓聲隴底聞。橫行負勇氣,一戰淨妖氛。

蜂火 沙漠に動き、連なり照らす 甘泉の雲
漠皇 剣を投じて起ち、還た召す 李将軍
兵気 天上に合し、鼓声 陳底に聞こゆ
横行して 勇気を負み、一戦 妖気を静めん