李白39玉階怨 満たされぬ思いの詩。

 この詩は、掛けことばだらけの詩でおもしろい。宮中にいてできる詩ではなく想像の言葉遊びの詩と思う。

玉階怨

玉階生白露、 夜久侵羅襪。
白玉の階きざはしに白い露が珠のように結露し、 夜は更けて羅うすぎぬの襪くつしたにつめたさが侵みてくる。

却下水晶簾、 玲瓏望秋月。

露に潤った水晶の簾をさっとおろした、透き通った水精の簾を通り抜けてきた。秋の澄んだ月光が玉の光り輝くのを眺めているだけ。



白玉の階きざはしに白い露が珠のように結露し、 夜は更けて羅うすぎぬの襪くつしたにつめたさが侵みてくる。
露に潤った水晶の簾をさっとおろした、透き通った水精の簾を通り抜けてきた秋の澄んだ月光が玉の光り輝くのを眺めているだけ。

 面白いのは句は2語+3語だが、3語+2語でもよい。

生↔侵↔水↔望   玉階↔白露↔夜久↔羅襪↔ 却下↔水晶簾↔ 玲瓏↔秋月

それぞれの言葉が、それぞれの言葉で機能しあい意味を深くしていく。

・長く待って玉階に白露、夜久くて羅襪のままで 却下した水晶簾、 玲瓏の秋月、今夜も来ない。
生きている、浸みてくる、潤ってくる、希望したい。

 後宮でこの状態でいるのは、楊貴妃が後宮に入って玄宗に寵愛され始めたころとか、考えがちになるが、時期や人物の特定はこの詩からはしないほうがよい。後宮に入ることは、天使のお声がかかってのこと、一族名誉である。貴族階級、士太夫などでも、夫人は何人もいておかしくない時代だ。貴族夫人の邸の床が大理石であってもおかしくない。一方では喜びと他方では、悶々として暮らすこの矛盾を詠っている。
 満たされない思いを多くの女性たちが持っていたのだ。美貌により、一家が全員がのし上がっていけるそういう現実を考えながらこの詩をみていくと、いろんなことを考えさせてくれる。李白は天才だなと感じる。

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玉階に白露生じ、 夜久しくして羅襪ちべつを侵す。
水晶の簾を却下するも、 玲瓏として秋月を望む 。



玉階怨
 楽府特集『相和歌・楚調曲』。宮怨(失寵の閨怨)を歌う楽曲名。題意は、後宮の宮女が(なかなか来ない)皇帝の訪れを待ち侘びる、という意。

玉階生白露
白玉の階きざはしに白い露が珠のように結露し。 
・玉階:大理石の後宮のきざはし。外を誰かが通っていても玉階からの音で誰だかわかる。大理石に響く靴の音はそれぞれの人で違うのだ。ほかの通路とは違う意味を持っている。 ・生白露:夜もすっかり更けて、夜露が降りてきた。時間が経ったことをいう。

夜久侵羅襪
夜は更けて羅うすぎぬの襪くつしたにつめたさが侵みてくる。
 ・夜久:待つ夜は長く。 ・侵:ここでは(夜露が足袋に)浸みてくること。 ・羅襪:うすぎぬのくつした。 ・襪:〔べつ〕くつした。足袋。 足袋だけ薄絹をつけているのではなく全身である。したがって艶めかしさの表現である。


却下水精簾
露に潤った水晶の簾をさっとおろした。
 ・却下:下ろす。 ・水:うるおす。水に流す。水とか紫烟は男女の交わりを示す言葉。 ・精簾:水晶のカーテン。窓際につける外界と屋内を隔てる幕。今夜もだめか! 思いのたけはつのるだけ。


玲瓏望秋月
透き通った水精の簾を通り抜けてきた秋の澄んだ月光が玉の光り輝くのをただ眺めているだけ
 ・玲瓏:玉(ぎょく)のように光り輝く。この「玲瓏」の語は、月光の形容のみではなく、「水精簾」の形容も副次的に兼ねており、「透き通った『水精簾』を通り抜けてきた月光」というかけことばとして、全体の月光のようすを形容している。「却下・水・精簾+玲瓏・望・秋月。」 ・望秋月:待ちながらただ秋の月を眺め望んでいる。 ・望:ここでの意味は、勿論、「眺める」だが、この語には「希望する、待ち望む」の意があり、そのような感じを伴った「眺める」である。




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