昔人豪貴信陵君,今人耕種信陵墳。

  荒城虛照碧山月,古木盡入蒼梧雲。』

  梁王宮闕今安在,枚馬先歸不相待。

  舞影歌聲散綠池,空汴水東流海。』

  沉吟此事淚滿衣,黄金買醉未能歸。

  連呼五白行六博,分曹賭酒酣馳輝。』

  酣馳輝,歌且謠,意方遠。

  東山高臥時起來,欲濟蒼生未應晚。』



昔の人々は、魂の后陵君を、豪勇の貴人と仰いでいたのに、

今の人々は、信陵君の墓地あとで、田畑を耕し種をまいている。

荒れはてた都城を空しく照らすのは、青い山々にのぼった明るい月、

世々を経た古木の梢いちめんにかかるのは、蒼梧の山から流れてきた白い雲。』

梁の孝壬の宮殿は、いまどこに在るというのだろう。

枚乗(ばいじょう)も司馬相如も、先立つように死んでゆき、この身を待っては居てくれない。

舞い姫の影も、歌い女の声も、清らかな池の水に散ってゆき、

あとに空しくのこったのは、東のかた海に流れ入る汗水だけ。』

栄華の拶さを深く思えば、涙が衣服をぬらしつくす。

黄金を惜しまず酒を買って酔い、まだまだ宿には帰れない。

「五白よ五白よ」と連呼して、六博の賭けごとに興じあい、

ふた組に分かれて酒を賭け、馳せゆく時の間に酔いしれる。』

馳せゆく時の間に酔いしれて、

歌いかつ謡えば、

心は、今こそ遠くあこがれゆく。

かの東山に隠棲して、時が来れば起ちあがるのだ。

世の人民を救おうというこの意欲、遅すぎるはずはない。』





昔人豪貴信陵君,今人耕種信陵墳

昔の人々は、魂の后陵君を、豪勇の貴人と仰いでいたのに、今の人々は、信陵君の墓地あとで、田畑を耕し種をまいている。

○信陵君-戦国時代の讐昭王の公子、名は無忌。信陵(河南省寧陵)に封ぜられた。食客三千人を養い、讐助けて秦を破り、さらに十年後・五国の兵を率いて秦を破った。戦国の四公子(四君)の一人。○信陵墳-『太平宴字記』(彗)によれば、その墓は開封府の富県の「南十二里」にあるという。



荒城虛照碧山月,古木盡入蒼梧雲。

荒れはてた都城を空しく照らすのは、青い山々にのぼった明るい月、世々を経た古木の梢いちめんにかかるのは、蒼梧の山から流れてきた白い雲。』

○蒼梧雲-『芸文類衆』彗「雲」に所引の『帰蔵』に、「白雲は蒼梧自り大梁に入る」とあるのを誓えたもの=蒼梧」は、現在の湖南省南部にぁる山の名。一名「九疑山」。



梁王宮闕今安在,枚馬先歸不相待

梁の孝壬の宮殿は、いまどこに在るというのだろう。

枚乗(ばいじょう)も司馬相如も、先立つように死んでゆき、この身を待っては居てくれない。

〇枚馬-前漢時代の文学者、配剰青馬相如。ともに梁苑に来訪して、梁王の栄華に彩りを添えた。



舞影歌聲散綠池,空汴水東流海

舞い姫の影も、歌い女の声も、清らかな池の水に散ってゆき、あとに空しくのこったのは、東のかた海に流れ入る汗水だけ。』

○綠池-澄きった池。○汴水-汴水べんすい。黄河から汴州(開封)をへて准水に到る。大運河通済渠の唐宋時代の呼称。



つづく
この詩はブログ向きではなかった。詩をいくつかに区分するというのは詩に対して向き合うものとして許されないと考える。漢文委員会 7 漢詩ZERO 李白42 粱園吟 雑言古詩でぜひ読み直していただくお願いいたします。。


 


 


 


 


 


 


 

つづく

 

沉吟此事淚滿衣,黄金買醉未能歸

栄華の儚さを深く思えば、涙が衣服をぬらしつくす。黄金を惜しまず酒を買って酔い、まだまだ宿には帰れない。

 

連呼五白行六博,分曹賭酒酣馳輝。

「五白よ五白よ」と連呼して、六博の賭けごとに興じあい、ふた組に分かれて酒を賭け、馳せゆく時の間に酔いしれる。』

〇五白-購博の重義が黒く裏が白い五つのサイコロを投げて、すべて黒の場合(六里嘉最上、すべて白の場合〔五日)がその次、とする。〇六博-賭博の毎→二箇のコマを、六つずつに分けて質する。〇分嘉酒-二つのグループ(曹)に分かれて酒の勝負をする。○酎-酒興の盛んなさま。○馳曙-馳けるように過ぎゆく日の光、時間。

 

 

 

酣馳輝,歌且謠,意方遠。

馳せゆく時の間に酔いしれて、歌いかつ謡えば、心は、今こそ遠くあこがれゆく。

○歌且謠-楽曲の伴奏に合わせてうたうのが「歌」、無伴奏が「謡」、とするのが古典的な解釈(『詩経』慧「園有桃」の「毛伝」)。ここでは、さまざまな歌いかたをする、の意。

 

東山高臥時起來,欲濟蒼生未應晚。』

かの東山に隠棲して、時が来れば起ちあがるのだ。世の人民を救おうというこの意欲、遅すぎるはずはない。』

○東山高臥-東晋の謝安(字は安石)が、朝廷からしばしば出仕を催されながら、東山に隠棲したま基易に承知しなかったこと。人々は、「安石出づる喜んぜずんは、将た蒼生(人民)を如何んせん」と言って心配したD(『世説新語』「排調、第二十五」の二六)。「高臥」は、世俗の欲望を離れて隠棲すること。

 

韻字-君・墳・雲/在・待・海/衣・帰・曙/遠・晩

 

 

 この詩は、李白が朝廷を追放されたおりの作説もあるが、詩の内容から、行路難を追放されて杜甫に相談をもちかけたの時期と考えればそうした時期のさくとは考えにくい。若い時期のものと考える。