李白は5つのとらえ方で詩をとらえていかないといけない。その中でかなり多いのが、故事を新しくしてよみがえらせることに大きな役割を示している。
李白は第一に、叙事性を発展させた。李白の楽府を前代のものにくらべると「おはなし」的要素がふえている。第二に、シーン造型が巧みであり、豊富である。六朝の類型的な表現をやぶって、情景を印象ぶかく描き出し、その上に、可能なかぎりの連想をはたらかせている。第三に空想力がたくましい。無限の可能性をもつ世界へのあこがれは、ひろい民衆の層の共感をかちえた。第四に快楽を謳歌した。従来の詩人がおおむね感情の沈潜に向うのに反して、李白は活動的であり、びとびとのよろこびやすい詩をつくった
 第五に、これらの四つの事項は李白天才性を表している。そして思想的背景に道教にあり、すべてに関連しているのだ。。


李白67宣州謝朓樓餞別校書叔雲


宣州謝朓樓餞別校書叔雲
棄我去者昨日之日不可留、亂我心者今日之日多煩憂。
長風萬里送秋雁。對此可以酣高樓。
蓬萊文章建安骨。中間小謝又清發。
俱懷逸興壯思飛。欲上青天覽明月。
抽刀斷水水更流。舉杯消愁愁更愁。
人生在世不稱意。明朝散髪弄扁舟。


わたしを棄てて去っていく者、昨日という日に戻すことはできない。わたしの心をかき乱だす今日という日、いやな憂多い日にしてしまった。
ひゅうと長い風が萬里はるばる秋の雁を送ってきた、此の風を前にして高樓で酒盛りをしようではないか。
漢の時代の「蓬萊の文章」 建安の時代の気骨の者たち、その時から今のちょうど中間の時代の「小謝」(謝眺)は清々しく溌剌している。

彼らは皆、ずば抜けた高まった気持ちを抱きながら、元気盛んな思いを飛ばした。青空に上って明月を手に取ってみたいと思う。
刀を抜いて水を断ち切ってみても水はそのまま流れてゆく。杯を挙げて愁いを消そうとしても愁いは愁いを重ねていく。
人生というものは、この世間では思うようにならない。 明朝、髪をみだして勤めをやめ、小舟で湖上をさまよいたい

宣州の謝朓樓にて校書叔雲に餞別す
我を棄てて去る者は昨日の日にして留まる可からず、我が心を乱れる者は今日の日にして煩憂多し。
長風萬里 秋雁を送る、此に対して以って高樓に酣なるべし。
蓬萊の文章 建安の骨、中間の小謝 又 清發。
俱に逸興を懷いて 壯思 飛ぶ、青天に上りして 明月を覽と欲す。
刀を抽いて水を斷てば、水更に流れ、杯を挙げて愁を消せば、愁 更に愁。
人生 世に在りて 意に稱(かな)わざれば、明朝 髪を散じて、扁舟を弄せん。


宣州謝朓樓餞別校書叔雲
○宣州 安徽省宣城県。長江の南にある。 ○謝朓樓 六朝の南斉の詩人、謝朓が宣城の長官であった時、建てられた。北楼、謝公楼と呼ばれた。後世、畳嶂楼に改名された。 ○餞別 別れ、見送ること。 ○校書叔雲 校書は役職名。叔雲という人物。


棄我去者昨日之日不可留、亂我心者今日之日多煩憂。
わたしを棄てて去っていく者、昨日という日に戻すことはできない。わたしの心をかき乱だす今日という日、いやな憂多い日にしてしまった。
○煩憂 いろいろある心配事。

長風萬里送秋雁。對此可以酣高樓。
ひゅうと長い風が萬里はるばる秋の雁を送ってきた、此の風を前にして高樓で酒盛りをしようではないか。
○酣 たけなわ。


蓬萊文章建安骨。中間小謝又清發。
漢の時代の「蓬萊の文章」 建安の時代の気骨の者たち、その時から今のちょうど中間の時代の「小謝」(謝眺)は清々しく溌剌している。
○蓬萊 漢の時代の宮中のたくさんの書を収める書庫を東観という。仙人の書籍についてはすべて蓬莱山にあるという伝説になぞらえて東観を蓬莱と呼んだ。このことから『蓬莱の文章』というのは漢時代の文学のことを言う。  ○建安 2世紀末から3世紀にかけて三曹七賢とたくさんの詩人が出た。竹林の七賢といわれたが李白は竹渓の六逸と称して文人と交友した。  ○小謝 謝朓のこと。謝霊運を「大謝」という。  ○清發 すっきりして気が利いていること。


俱懷逸興壯思飛。欲上青天覽日月。
彼らは皆、ずば抜けた高まった気持ちを抱きながら、元気盛んな思いを飛ばした。青空に上って明月を手に取ってみたいと思う。
○逸興 ずば抜けた気分のたかまり。 ○壯思 元気盛んなおもい。 ○覽 手にとって見る。

抽刀斷水水更流。舉杯消愁愁更愁。
刀を抜いて水を断ち切ってみても水はそのまま流れてゆく。杯を挙げて愁いを消そうとしても愁いは愁いを重ねていく。


人生在世不稱意。明朝散發弄扁舟。
人生というものは、この世間では思うようにならない。 明朝、髪をみだして勤めをやめ、小舟で湖上をさまよいたい。
○散發 役人の象徴の頭にかぶる冠を捨てて、自由なザンバラ髪になること。   ○扁舟 小舟。




李白68秋登宣城謝眺北楼


秋登宣城謝眺北楼
江城如畫裏、山曉望晴空。
兩水夾明鏡、雙橋落彩虹。
雙橋落彩虹、人烟寒橘柚。
人烟寒橘柚、秋色老梧桐。
誰念北樓上、臨風懷謝公。


長江に臨む宣城の街は、さながら絵の中の風景。山に日が傾くころ晴れわたった空を眺める。
街を流れる両の川は 夕日に映えてあかるい鏡のようで双つの橋を彩やかな虹の輝きを落おとす
人いえの煙は立ち上る ミカンの実は寒そうだ。秋の気配に青色の桐は枯れている。
いま、誰たれが北楼の上で佇んでいる、秋風に吹かれているここでありし日の謝公を懐う気持ちはたれが分かってくれるのか

秋登宣城謝朓北樓
(秋あき、宣城せんじょうの謝朓しゃちょう北楼ほくろうに登のぼる) 
◦五言律詩。空・虹・桐・公(平声東韻)。
『宋蜀刻本唐人集叢刊 李太白文集』(上海古籍出版社)には、題下に「宣城」との注あり。
 
江城如畫裏、山曉望晴空
長江に臨む宣城の街は、さながら絵の中の風景。山に日が傾くころ晴れわたった空を眺める。
◦曉 … 『瀛奎律髓刊誤』(掃葉山房)では「色」に作り、「曉」との傍注あり。『靜嘉堂文庫蔵宋刊本 李太白文集』(平岡武夫編『李白の作品』、京都大学人文科学研究所)、『宋蜀刻本唐人集叢刊 李太白文集』(上海古籍出版社)、『分類補註李太白詩』(『四部叢刊 初篇集部』所収)、『(分類補註)李太白詩』(『和刻本漢詩集成 唐詩2』所収)、『李翰林集』(江蘇廣陵古籍刻印社)、王琦編注『李太白全集』(中国書店)では「晩」に作る。
 
兩水夾明鏡、雙橋落彩虹。
街を流れる両の川は 夕日に映えてあかるい鏡のようで双つの橋を彩やかな虹の輝きを落おとす

人烟寒橘柚、秋色老梧桐。
人いえの煙は立ち上る ミカンの実は寒そうだ。秋の気配に青色の桐は枯れている。
◦寒  『宋蜀刻本唐人集叢刊 李太白文集』(上海古籍出版社)、王琦編注『李太白全集』(中国書店)には「一作空」との注あり。
 
誰念北樓上、臨風懷謝公。
いま、誰たれが北楼の上で佇んでいる、秋風に吹かれているここでありし日の謝公を懐う気持ちはたれが分かってくれるのか
◦懷 … 『瀛奎律髓刊誤』(掃葉山房)では「憶」に作る。

江城こうじょう 画裏がりのごとく、山やま暁あけて 晴空(せいくう)を望のぞむ。
両水りょうすい 明鏡めいきょうを夾はさみ、双橋そうきょう 彩虹さいこうを落おとす
人烟じんえん 橘柚きつゆう寒さむく、秋色しゅうしょく 梧桐ごとう老おゆ。
誰たれか念おもわん北楼ほくろうの上うえ 、
風かぜに臨のぞんで謝公しゃこうを懐おもわんとは


李白の詩 連載中 7/12現在 75首

2011・6・30 3000首掲載
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李白69久別離



久別離

別來几春未還家、玉窗五見櫻桃花。

況有錦字書、開緘使人嗟。

至此腸斷彼心雲鬟綠鬢罷梳結。 

愁如回飆亂白雪、去年寄書報陽台。

今年寄書重相催、東風兮東風。

為我吹行云使西來、待來竟不來、落花寂寂委青苔。





お別れしてから幾度目かの春なのに、あのひとはまだ家に帰ってこない。宝玉で飾った窓辺に、桜桃梅の花のさくのを、もう五回も見た

そのうえ、わびしい思いを織りこんだ錦の手紙がここにある。封をひらいてよみかえすと、ためいきが出る。

そこまで考えて来ると、わたしはハラワタがちぎれる。あのひとの心はつめたくなってしまった。雲のような髪も、みどりの鬢も、櫛けずって結う気もしない。

かなしい心の中は、つむじ風が白雪をかきみだすかのようだ。去年、手紙を出して、巫山の陽台にいるあのひとに、この気持を知らせた。

今年も手紙を出して、かさねて催促してみた。東風、東風よ。

わたしのために、雲のただようようなあのひとを、この西の方へ吹きよせておくれ。いつ来るかと待ちわびたが、とうとう来ない。散りおちた花びらが、寂しく淋しく青い苔の上にくずおれてゆく。







久別離

別来幾春か 未だ家に還らず、玉窓 五(ごたび)見る 桜桃の花

(いわん)や錦字の書有り、鍼を開けば 人をして嗟かしむ

此に至り腸断、彼の心は絶え、雲登録贅 琉結を罷む

愁は回楓の白雪を乱れるがごとし、去年書を寄せて 陽台に報じ

今年書を寄せて 重ねて相催す、東風や東風

我が為に行雲を吹いて西に来らしめよ、来るを 待てどもついに来らず、落花寂寂として 青苔に委す。



久別離

○久別離 李白には、ほかに「遠別離」という楽府がある。これらは古い別離の曲にもとづいて作られたという。



別來几春未還家、玉窗五見櫻桃花。

お別れしてから幾度目かの春なのに、あのひとはまだ家に帰ってこない。宝玉で飾った窓辺に、桜桃梅の花の咲くのを、もう五回も見た

○別来 別れてからこのかた。○桜桃 ゆすらうめ。ばら科の落葉潅木。春の初、白い花をひらく。



況有錦字書、開緘使人嗟。

そのうえ、わびしい思いを織りこんだ錦の手紙がここにある。封をひらいてよみかえすと、ためいきが出る。

○錦字書 六朝の竇滔(とうとう)の妻が、遠い任地にいる夫を思う詩を織りこんで、錦の手紙をつくった。「烏夜啼」の詩の注に見える故事をふまえる。○鍼 手紙の封。

る。



至此腸斷彼心雲鬟綠鬢罷梳結。

そこまで考えて来ると、わたしはハラワタがちぎれる。あのひとの心はつめたくなってしまった。雲のような髪も、みどりの鬢も、櫛けずって結う気もしない。

○雲鬟綠鬢 女のうつくしい髪の毛を、みどりの雲にたとえ〇校結 髪をくしけずり、結う。

 

愁如回飆亂白雪、去年寄書報陽台。

かなしい心の中は、つむじ風が白雪をかきみだすかのようだ。去年、手紙を出して、巫山の陽台にいるあのひとに、この気持を知らせた。

〇回飆 つむじ風。○陽台・行雲 李白の詩にしばしば出てくる巫山の夢の故事。陽台は山の名。四川省巫山県の城内の北の角にある。巫山の女神がこの山の上に住んでいたと伝えられる。むかし楚の嚢王が高唐の丘に遊んだとき夢の中で美女と枕をかわした。女がすなわち、朝には芸となり、暮には雨となる巫山の女神であった。



今年寄書重相催、東風兮東風。

今年も手紙を出して、かさねて催促してみた。東風、東風よ。



為我吹行云使西來、待來竟不來、落花寂寂委青苔。

わたしのために、雲のただようようなあのひとを、この西の方へ吹きよせておくれ。いつ来るかと待ちわびたが、とうとう来ない。散りおちた花びらが、寂しく淋しく青い苔の上にくずおれてゆく。

○寂寂 さびしく、しずかなさま。











李白70估客行


估客行

海客乘天風。 將船遠行役。

譬如雲中鳥。 一去無蹤跡。



行商人は 天風に乘って、船で遠くに行商する。

まるで雲の中へ飛んでいる鳥のようだ、 ひとたび飛んで行ってしまったらどこに行ったか分からない。





海客 天風に乘り、船を將って遠く行役す。

(たと)えば 雲中の鳥の如し、 一(ひとたび)去って蹤跡無し。



估客行

○估客 旅商人。 ○行 うた。



海客乘天風。 將船遠行役。

行商人は 天風に乘って、船で遠くに行商する。

○海客 船に乗る人。○行役 用事で旅行すること。



譬如雲中鳥。 一去無蹤跡。

まるで雲の中へ飛んでいる鳥のようだ、 ひとたび飛んで行ってしまったらどこに行ったか分からない。

○蹤跡 あしあと。ゆくえ。