李白66 遠別離

李白に「久別離」がある。(7月9日ブログ)
この詩は、舜のふたりの皇后、皇・英を主人公にして、権力の簒奪を憤ったものである。李白の政治性を示すためのもので故事にならってのものを示したものと考える。老荘思想の政治舞台から引き込んでの隠遁ということと道教はこの時代積極的に朝廷への働きかけを行っていた。

遠別離
古有皇英之二女、乃在洞庭之南、瀟湘之浦。
海水直下萬里深、誰人不言此離苦。
日慘慘兮雲冥冥、猩猩啼煙兮鬼嘯雨。
我縱言之將何補。』

皇穹竊恐不照余之忠誠、雷憑憑兮欲吼怒。      
堯舜當之亦禪禹      
君失臣兮龍為魚、權歸臣兮鼠變虎
或云堯幽囚、舜野死。
九疑聯綿皆相似、重瞳孤墳竟何是 』


帝子泣兮綠雲間、隨風波兮去無還。
慟哭兮遠望、見蒼梧之深山。      
蒼梧山崩湘水絶、竹上之涙乃可緘。』

段落は便宜的に韻で区切った。

昔ふたりの皇后がいた、名を皇と英といった。ふたりは洞庭の南の瀟・湘の岸辺に立った。
ふたりが悲しみのために流した涙は、海水の万里の深さまで流れ落ちた、この別れの悲しみはだれが言うことができようか、できはしない。
日は見る間に黒い雲にかき消され、ひいひいと猿は霧の中で啼き叫び、幽鬼が雨の中で雄叫びをあげる。
わたしがたとえ何を言っても何ができようか。』

天の大空をかすみとってもわたしたちの忠誠を照らすことはないのです、雷が轟々となって怒りくるう声を上げるのは、堯・舜にかわって禹が帝位につくからです
君が臣下を失えば竜も小さな魚となり、臣下が権力を握ればネズミもトラに変わります、あるいは堯が幽囚せられたら、舜は野たれ死したという。
九つの偽りの山がそこに並んでいまる、どれも同じようにみえるが、いったいそれらの山のどこに、わたしたちの夫の墓があるというのか』

こうして皇后たちは綠雲の間に泣かれ、涙は風波に隨って飛び散っていった、ふたりが慟哭しながら遠くを眺めると、蒼梧の深山がみえる。
この山が崩れ湖水が絶えるときでないと、ふたりの涙がやむことはないでしょう



雑言古詩 遠別離
古有皇英之二女、乃在洞庭之南、瀟湘之浦。
海水直下萬里深、誰人不言此離苦。
日慘慘兮雲冥冥、猩猩啼煙兮鬼嘯雨。  
我縱言之將何補  』
    

古(いにしへ) 皇と英 二女有り、乃ち洞庭の南に在り、瀟と湘の浦。
海水直(ただち)に下る 萬里の深さ、誰人か此の離れの苦しみを言わせず。
日は慘慘として 雲は冥冥たり、猩猩煙に啼いて 鬼は雨に嘯(うそぶ)く
我に縱(たとい) 之を言う 將って何をか補わん

昔ふたりの皇后がいて、名を皇と英といわれた。ふたりは洞庭の南の瀟・湘の岸辺に立たれた、
ふたりは悲しみのために涙を流され、それが海水のように万里の深さまで流れ落ちていく、それほどふたりの別離の悲しみは深かったのだ、日は黒い雲に覆われ、猿は霧の中で叫び、幽鬼が雨の中で雄叫びをあげる
わたしがたとえ何を言っても何ができようか。』

皇穹竊恐不照余之忠誠、雷憑憑兮欲吼怒。      
堯舜當之亦禪禹      
君失臣兮龍為魚、權歸臣兮鼠變虎
或云堯幽囚、舜野死。
九疑聯綿皆相似、重瞳孤墳竟何是  
    

皇穹 窃に恐る 余への忠誠を 照らさざるを 
雷は憑憑として 吼へ怒らんと欲す 
堯・舜之に當って 亦 禹に禪(ゆずる)
君 臣を失えば 龍 魚に為り、權 臣に帰れば 鼠 虎に變ずる
或は云う 「堯は幽囚せられ、舜は野死す」と
九疑 聯綿として皆 相 似たり
重瞳の孤墳 竟に何れか是なる


天もわたしたちの忠誠を照らすことはないのです、雷が轟々となって怒りの声を上げるのは、堯・舜にかわって禹が帝位につくからです
君が臣下を失えば竜も小さな魚となり、臣下が権力を握ればネズミもトラに変わります、あるものは堯は幽囚せられ、舜は野死したといいます、九つの偽りの山がそこに並んでいますが、どれも同じようにみえます、いったいその山のどこに、わたしたちの夫の墓があるのでしょう


帝子泣兮綠雲間、隨風波兮去無還。
慟哭兮遠望、見蒼梧之深山。      
蒼梧山崩湘水絶、竹上之涙乃可緘。

帝子は泣く 綠雲の間、風波に隨って 去って還ること無し
慟哭して遠く望めば、蒼梧の深山を見る
蒼梧山崩れて 湘水絶えなば、竹上の涙 乃ち緘す可けん

こうして皇后たちは綠雲の間に泣かれ、涙は風波に隨って飛び散っていった、ふたりが慟哭しながら遠くを眺めると、蒼梧の深山がみえます、この山が崩れ湖水が絶えるときでないと、ふたりの涙がやむことはないでしょう


伝説によれば、堯は自分のふたりの娘、皇・英を舜に嫁がせた上で舜に帝位を譲ったが、宰相たちが陰謀をたくらんで舜を失脚させ、禹を帝位につかせた。

 唐朝は玄宗以前、政争続きであったが、玄宗により、唐朝は最盛期を迎えていた。その裏で、李林甫と、宦官らによって、朝廷はゆだねられ始めていた。
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68長門怨二首

其一
天囘北斗挂西樓。 金屋無人螢火流。
月光欲到長門殿。 別作深宮一段愁。

天は北斗七星を廻転させ、宮中の西楼の屋根に星がかかった。黄金造りの家には人影はなく、ホタルの光だけが不気味に流れ飛ぶ。
月の光が長門殿に差し込んで来ようとした時、 更に宮殿にひとしお憂いが増してゆく。


長門怨
○長門怨 古くからある歌謡の題。漢の武帝の陳皇后のために作られたものである。陳皇后は、幼い頃は阿嬌とよぱれ、いとこに当る武帝のお気にいりであ。たが、帝の寵愛が衛子夫(のちに皇后)に移ると、ひどいヤキモ
チをやいたので、ついに長門宮に幽閉された。長門宮は、長安の東南の郊外にある離宮である。悶悶と苦しんだ彼女は、当時の文豪、司馬相如にたのみ、黄金百斤を与えて、帝の気持をこちらへ向けなおすような長い韻文を作ってもらった。これが「長門の賦」である。後世の人は、その話にもとづき「長門怨」という歌をつくった。


天囘北斗挂西樓。 金屋無人螢火流。
天は北斗七星を廻転させ、宮中の西楼の屋根に星がかかった。黄金造りの家には人影はなく、ホタルの光だけが不気味に流れ飛ぶ。
○北斗 北斗七屋。○西楼 長安の宮中の西楼。
○金屋 金づくりの家。武帝は少年の日、いとこの阿嬌が気に入って言った。「もし阿嬌をお嫁さんにもらえたら、黄金づくりの家(金屋)に入れてあげる

月光欲到長門殿。 別作深宮一段愁。
月の光が長門殿に差し込んで来ようとした時、 更に宮殿にひとしお憂いが増してゆく。

長門殿にはやきもちの憂いが漂っている、後宮において皇帝の寵愛を受けている時分、怨が最高潮に達する。


天は北斗を囘らして西樓に挂かる。 金屋 人 無く 螢火 流れる。
月光 到らんと欲す 長門殿。 別に作す 深宮一段の愁。

69
其二
桂殿長愁不記春。 黃金四屋起秋塵。
夜懸明鏡青天上。 獨照長門宮里人。
 
柱の香木の御殿にすみながら、あまり長く愁にとじこめられて、幸福だった春の日の記憶もなくなった。
黄金を張りつけた四方の壁も、衰えゆく季節とともに、塵を立てるだけだ。
 夜が明るい鏡を青天の上にかけてくれても、長門宮の中にすむ人を、ただひとり、さびしく照らすだけ である。



桂殿長愁不記春。 黃金四屋起秋塵。
柱の香木の御殿にすみながら、あまり長く愁にとじこめられて、幸福だった春の日の記憶もなくなった。
黄金を張りつけた四方の壁も、衰えゆく季節とともに、塵を立てるだけだ。
○桂殿 香のよい桂の木でつくった宮殿。○記 心にとめる。記憶する。○起秋塵 六朝の鮑照の詩に「高墉宿寒霧、平野起秋塵」とある。(高い城壁につめたい霧が立ちこめ、平野に秋の塵がおこる) 


夜懸明鏡青天上。 獨照長門宮里人。
 夜が明るい鏡を青天の上にかけてくれても、長門宮の中にすむ人を、ただひとり、さびしく照らすだけ である。
○夜懸明鏡 司馬相如の「長門の賦」に「懸明月以自照兮、徂清夜於洞房」とある。(明月を空にかけて自分を照らし、清らかな夜を奥深い部屋でくらす)○長門宮裏人 陳皇后。

桂殿 長く愁て 春を記せず。 黃金四屋 秋塵起る。
夜 明鏡を懸け青天の上。 獨照らす長門宮里の人。





李白の詩 連載中 7/12現在 75首

2011・6・30 3000首掲載
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